わたしが死んだ夜/曽祢まさこ
254 名前:わたしが死んだ夜1/3 曽祢まさこ[sage] 投稿日:2006/10/11(水) 22:55:02 ID:???
クレアとエバは一卵性の双子。2人とも我が強くて仲が悪い。
周囲は羨ましがるが、頻繁に間違えられる本人達としてはとても迷惑な話である。
容姿だけでなく、スポーツも勉強もエバを引き離せない。抜いては抜かれる、これの繰り返し。
クレアはこれが何時まで続くのかとうんざりしていた。
ある時、母親にエバと間違えられた彼女は「見分けがつくのなら」と髪を短く切るが、エバもまた
同じように切っていた。どうして同じ事をしてしまうのだろう……。

高校生になった2人は、金髪が自慢の美人姉妹との評判だった。
クレアは2歳上の他校生・レインと出逢う。彼とは気が合い、デートする仲に。
ある日、姉妹のいとこ・エドウィンが家を訪れる。少し前に亡くなった祖母・エリザベスの遺品を
整理した際、祖母の前夫・ヘンリーの遺品も混じっていた為、彼は届けに来てくれたのだった。
(姉妹とエドウィンは血の繋がりはない)
その中には50年前に書かれた祖父の日記や写真等があり、姉妹は祖父の青春時代に興味を持つ。

美しい娘・エリザベスに一目惚れをしたヘンリー。
2人はデートを重ねるが、弟・アーネストに紹介すると弟も彼女を愛するようになった。
もっとエリザベスの心を掴んでから弟に逢わせるべきだったと後悔する。
今までも兄弟は事あるごとに衝突してきた。何故同じ物、同じ人物に惹かれるのか。
エリザベスが迷うのも無理はない、どうやって選べと言うのか。同じ顔に同じ声、親でさえ見分けの
つきかねる自分達を。このままでは殺し合いさえやりかねない。
兄弟はカードで決着をつける。揉めた時、最終的に使う手段だった。
敗者は永久にエリザベスから手を引く──この勝負に勝ったのはヘンリーだった。
弟は志願兵として欧州へ渡り、戦死する。
その2年後、エリザベスとの結婚を翌日に控えた所で日記は終わっていた。

見知らぬ青年に話しかけられるエバ。クレアが双子だと知らなかったレインが、勘違いをして
エバに声をかけたのだ。これをキッカケに彼女もレインに惹かれるようになる。
クレアはレインに、どちらをより好きになれそうか聞いてみるが、彼の返事はハッキリしない。
レインを取られたくない。エバさえ居なければ……。

255 名前:わたしが死んだ夜2/3[sage] 投稿日:2006/10/11(水) 22:56:09 ID:???
写真では仲良く肩を並べているのに、本当は憎み合っていた祖父達。
クレアは祖父の遺品にあった拳銃を持ち出した。実弾を1つ込めて、地下室でエバとロシアン
ルーレットの勝負をする。敗者は永久にレインから手を引かなければならない。

勝者はクレアだった。弾が入っていたのは5発目で、そのまま行けばクレアが当たるはずだった。
残り3発の時、エバが恐怖で勝負を続行出来なかったのだ。
レインだけでなく、何に措いてもクレアと肩を並べる事は許さない、とエバは迫られる。
その日からクレアにとってエバは死んだも同然になった。

エバは髪を短く切り、レインを諦め、クレアより目立たないよう振る舞いだす。
何も知らないレインは気軽にエバに話しかけるが、彼女は「好きな人が出来た」と素っ気ない。
レインは、遊びに来ていたエドウィンとエバが和やかに話すのを見る。
エドウィンがその想い人なのだと察し、エバに尋ねてみた。彼女は否定しなかった。

カップルは暫くの間上手く行っているかに見えたが、クレアはレインから突然別れを告げられる。
彼はエバが好きだと気づき、彼女と同じ顔のクレアと顔を合わせるのが辛いと言う。
クレアは、勝者である自分がエバに劣るなんて許せない。
髪を短く切り、エバの振りをして1人暮らしのレインの所へ逢いに行く。
受け入れかけるレインだったが、目の前に居るのがクレアだとすぐに気づいて拒む。
激昂したクレアは、置時計でレインを背後から思い切り殴りつけた。
彼は頭から血を流し、倒れたままピクリとも動かない。クレアは自分の行為に呆然とする。
「愛していたのに、この手で彼を死なせるなんて……」と雪の中を彷徨い歩いた。

レインは頭に怪我をして入院したものの、命に別状はなかった。
自殺しようとしたクレアをエドウィンが何とか探し出す。興奮状態の彼女はその場で気を失った。
一昼夜眠り続け、目覚めた彼女に母親はホッとして話しかけるが、どうも様子がおかしい。
「あたしはエバよ」と返事するのだ。
エドウィンがエバにある物を手渡す。祖父の日記の続きである。
人目に触れさせる気になれない、と彼が遺品を引き渡す前に破っておいたのだ。

256 名前:わたしが死んだ夜3/3[sage] 投稿日:2006/10/11(水) 22:56:51 ID:???
あの勝利はヘンリーがインチキをして得たものだった。
アーネストが欧州へ発った後も、エリザベスの態度はハッキリしない。弟へは婚約して幸福な
生活を送っていると手紙を出し、期待通り、最後の希望を打ち砕いた。
弟の戦死通知が届き、ヘンリーは1人勝利に酔いしれるが、その日から彼は鏡を見る度に不安を
感じるようになる。
『エリザベスと築き上げた平和な家庭。こんなものは幻だ!
鏡に映る死人の顔──私が追いつめて殺した弟の……。この手についているのはあいつの血だ!
アーネストが死んだ時、私も死んでしまった……』

事故で死ぬ前、かなりのノイローゼだった祖父。祖父達と同じ罠に落ちていた、死ぬまでクレアの
影から逃れられないかもしれないと嘆くエバをエドウィンは励ました。
続きを見せた理由は、「強くなって、クレアの分まで幸せを掴んでほしい」という思いからだった。

「レインはあたしが好きだったの。クレアじゃなく、このあたしが」
はずみとは言え、愛する人を殺すなんて可哀相と医者に話すクレア。母親が呼んでも反応がない。
躊躇いがちに「エバ」と呼ぶと、「なあに、ママ」と微笑んだ。
「あなたは今日から死んだも同じ」と地下室で高らかに笑った少女はもう居ない。

【終わり】