宇宙船製造法/藤子・F・不二雄
143 名前:藤子F不二雄「宇宙船製造法」[sage] 投稿日:2006/09/16(土) 21:48:59 ID:???
舞台ははるか未来、反重力エンジン搭載の超光速宇宙船がレジャー用品として存在する世界。
八人の若者を乗せた宇宙ヨットが、ワープ中の事故で無人の惑星へ墜落する。
機関部は無事だったが、機体に穴が開いてしまい宇宙空間の飛行には耐えられない。
救援を求める手段も無く、八人はこの星で自給自足の生活を強いられることになる。
生活拠点を構え、今後の方針を話し合う一同。宇宙船を修理する方法を考えようと言う小山と
あてのない修理法より、永住のための環境確保に全力を尽くそうと訴える、秀才肌の志貴杜が対立する。
議論は志貴杜の勝ちとなり、小山も含めた全員で食料探しが始まるが
間もなく、暴力的な性格の堂毛が不平をもらし、志貴杜を無視して暴れまわるようになる。
元々ケンカが強い上に、唯一の火器である熱線銃を振りかざしてグループの実験を握った堂毛は
王様を気取って、皆が働く中でふんぞり返って食料を食い散らかしていた。
だが、間もなく皆の不満が爆発し、志貴杜を中心にグループは反堂毛で団結する。
ケンカ自慢の堂毛もついに袋叩きにされ、グループの実権と熱線銃は志貴杜の手に渡った。
理性的な志貴杜がリーダーとなり、グループの生活は安定したかに見えたが
やがて、前とは別の不満が溜まり始める。志貴杜の労働統制はあまりにも厳格だったのだ。
言っていることは正論だけに、表立って志貴杜に反論できる者はいないが
ミスに対する刑罰まで定めるようになった彼に、グループの面々は苛立ちを隠せない。
そんな中、ずっと宇宙船の修理方法を考えていた小山は、ある日ついに修理方法を思いついた。
その方法とは、極地の大きな流氷を、熱線銃で少しずつ溶かしながらそこに宇宙船を埋没させ
氷ごと反重力エンジンで宇宙に飛び立つ、というものであった。
確実性にこだわる志貴杜はこの計画を認めようとしないが、不満を募らせていた他のメンバーは
ここぞとばかり小山を支持。特に、堂毛が強く小山に賛同したこともあって、修理計画は決行される。
二日がかりの作業の後、皆が息を飲んで見守る中、彼らの新造宇宙船は見事に飛び立った。
最後まで修理計画に苦言を呈していた志貴杜の姿が見当たらないのに気付いた小山が
志貴杜の私室を覗くと、彼は帰郷が叶った嬉し涙を流しつつ母親の名を呼んでいたのだった…