海野つなみ短編集 tsunamix/海野つなみ
52 名前:世界の終わりに君を思う 簡潔版[sage] 投稿日:05/01/27 23:23:43 ID:???

中学校の卒業式の日、3年3組の生徒たちは嫌われ者の吉良先生に呪いをかけた。
みんなは遊び半分でやったのだが、しばらくして吉良先生は事故で足を怪我した。
次に落雷によって校庭の木が割れ、そして3年3組の担任だった浅野先生が亡くなった。
一連の事件は呪いのせいだ。そのうちみんなも死んでしまうかもしれない。
生徒たちはパニックになる。どうせ死んでしまうのなら、最後の一人にはなりたくない。
誰かの死を傍目で見るぐらいなら、いっそみんなで死のう。
校舎の屋上から、37人の生徒たちは手をつないで飛び降り自殺した。

47 名前:世界の終わりに君を思う 1[sage] 投稿日:05/01/27 23:12:26 ID:???
7月20日午前五時ごろ、○県○市内の公立中学校で子供たちが倒れているとの通報があった。
倒れていたのは三月に同中を卒業した高校一年生ら47名で、全員が三年生当時の同級生だった。
生徒たちは19日深夜から20日未明にかけて、お互いに手をつないで校舎の屋上から飛び降りたと見られ、
県警では集団自殺として調べを進めている。亡くなった生徒たちの三年生当時の担任が
6月に病死していることがわかっているが、事件との関連性は不明。

3月9日(事件四ヶ月前) 中学校卒業式
担任の浅野先生が春からよその学校に飛ばされる事になった。
生徒たちは、浅野先生に目をつけている生徒指導の吉良先生のせいではないかと疑う。
「チキ様に言いつけてやろうぜ」
「そうだよチキ様に頼めばいいじゃん。あいつ信じてないんだろ?」
「吉良がチキ様を馬鹿にするからいけないんだよ」
千木神社の宮司の息子である大石良平に、原や片岡を中心とした
クラスメートたちは吉良先生を呪うように冗談混じりに頼む。
宮司の息子とはいえ大石は祈祷のやり方などわからないので適当ながら、
吉良先生の盗んできたサンダルに、もう二度と生徒を追いかけれないようにと祈る。
そこへ浅野先生がやって来た。何をしているのかと聞かれ、堀部は受験合格の祈願ですと誤魔化した。
「そっかーじゃ先生も一緒に祈らしてもらうよ。みんなの願いがかないますように」

4月8日(祈祷一ヵ月後) 高校入学式
同じ高校に入った大石と堀部と不破。
「おう不破!悪いねーお前の彼氏は俺のクラスだ」
ふざけながらそう言う堀部に、不破は切羽詰った様子で叫ぶ。
「ふたりともまだ知らないの!? 吉良先生事故にあったって!
 しかもケガしたの足だって! みんな呪いのせいじゃないかって言ってる…」
あんなインチキ祈祷が聞くわけない、ただの偶然だと大石は笑い、
元々みんな吉良先生にむかついて祈祷をしたのだ、
ラッキーだとでも思えばいいじゃないかと言うと、
「あんた最低見損なった」と怒鳴って不破は去っていった。

48 名前:世界の終わりに君を思う 2[sage] 投稿日:05/01/27 23:14:13 ID:???
4月21日(高校入学2週間後) 中学校教室
吉良先生の事故の後、落雷によって校庭の木が二つに割れた。
みんなはあの落雷をチキ様の呪いのせいだと思い、
吉良先生にかけた呪いが自分たちに返ってきたのではないかと恐れた。
二つの事件に共通性はなく、どちらもただの偶然だ。
しかしみんなの中には後ろめたさがあり、
今度は大石にチキ様のお祓いをさせた。
お祓いが終わり、みんなはホッとした様子で帰っていった。
大石と不破は並んで帰る。「この前はごめんね」と不破は謝る。
不破の兄が病気になり、その事で不破家は荒れ、不破も神経質になっていた。
その事を言う不破に「大丈夫うまくいく。何もかも」と大石は励ました。

49 名前:世界の終わりに君を思う 3[sage] 投稿日:05/01/27 23:16:01 ID:???
6月20日(お祓いの儀式2ヶ月後) 千木神社務所
浅野先生が亡くなった。みんなは呪いのせいだと不安がる。
お祓いの場に浅野先生を呼ばなかったせいかもしれない。
「わたしたちが先生を殺したんだ…」
みんなは泣き出したり怒鳴ったりと、混乱している。
「お祓いが効かなかったって事は、わたしたちどうなるの?」
不破の言葉に、一瞬みんなが止まった。
みんなも浅野先生のように死んでしまうかもしれない。
一人が、どうすればいいんだと大石に訊ねかける。
「浅野先生が亡くなってこれでチキ様の怒りは鎮まるのか。
 それとも最後の一人まで続くのか…」
大石のその言葉に寺坂が激昂する。
「ふざけんな大石! なにもかもお前のせいじゃねーか!
 怪しげなまじないしやがって俺たち巻き込みやがってよ!」
大石はみんなに頼まれてやっただけだろうと
他の生徒が抑えようとするが、寺坂は怒り続け、もみ合いになる。
「やめて! みんなの意見でやったのよ!責任はここにいるみんなにあるわ」
小野寺の言葉にみんな黙り込む。
誰かが「最後の一人にはなりたくない」とつぶやいた。
「え!? 最後ってみんなが死んでいくのを見てなきゃなんないの?」
「そんなの蛇の生殺しじゃねーか」
「だったら最初に死ぬほうがマシだよ」
またみんなは混乱していく。そこへ吉田が提案する。
「じゃあみんな一緒に死ぬか」
元委員長だからと仕切るな、死にたいならお前ら勝手に自殺しろ、そう寺坂は怒鳴る。
「じゃあお前が最後に死んでくれるんだ。先生みたいに」
堀部は落ち着いた態度で寺坂に言った。
「俺は死なない。俺は関係ない。俺は悪くない。悪いのはみんなお前らだ。
 死にたいなら勝手に死ねばいい!俺は絶対死なねーぞ!」

50 名前:世界の終わりに君を思う 4[sage] 投稿日:05/01/27 23:19:28 ID:???
7月19日(事件当日) 中学校教室
かつてみんなが使っていた教室に、寺坂以外の全員が集まっていた。
「みんなごめんな。巻き込んじゃって。俺は死んで当然だ…全部俺のせいだから。
 俺がチキ様を怒らせたんだよ。あんないいかげんなまじないやって」
悔やむ大石をみんなは、お前のせいじゃない責任はみんなにあると励ます。

「俺はいいよ。死んでも。先輩殴ってバスケ部辞めちゃったし、もーどーでもいいよ」
堀部はそう言う。
「……わたし高校入って友達いないの。暗いんだよとか言われて……
 でもしょうがないでしょう? こんな事があってそれで明るくできるわけないじゃない?
 勉強だって手につかないし…学校になんか行っても苦しいだけ」
そう告白する武林に向かって吉田は言う。
「俺はやってるよ勉強。死に物狂いでやってるんだ。なにも考えなくていいように」
気づくといつも、吉田の後ろにもう一人の自分がいる。
そいつは吉田に向かって言う「こんな事してたって逃げられないよ。おまえなんかしんじまえ」

いつのまにか大石と不破がいなくなっていた。二人で最後の会話をしているのだ。
「好きなやつと死ねるっていいよな…」誰かがつぶやいた。
大石は不破に言う。本当は寺坂と同じように自分も死ぬ事を怖がっていると。
「なにもかもいらない。良平が一緒だったらもうなにもいらない。
 お父さんもお母さんもお兄ちゃんもどうでもいいよ。わたしが良平のそばにいる。ずっと…」

一同は屋上に集まり、手を繋ぎながら唱えた。
「荒びたまう我が産砂の千木神社の神よ。我らが願い聞こしめしてどうか鎮まりたまえ」
36人は飛び降りた。そこへ、はじめから屋上に隠れていた寺坂が現れた。
本当に死んでしまったのかを確かめに、寺坂は屋上から下を覗き込む。
壮絶な光景に怯えた寺坂もまた、足の震えによって屋上から落ちた。

51 名前:世界の終わりに君を思う 5[sage] 投稿日:05/01/27 23:21:28 ID:???
再び3月9日(中学校卒業式) 職員室
教員の一人が、向こうは空気もいいし体にいいですよと浅野先生に話しかける。
「浅野先生。生徒たちに病気のことは」
「いえ、もう公立受験直前ですし。なにも言わずこのまま…」
浅野先生の転勤は、病気療養のためだった。
「子供らは転勤がわたしのせいだと思ってるらしいがね」
吉良先生に「すみません」と浅野先生は謝る。
「生活指導はいつも憎まれ役ですよ。損な役だ」

1月7日(事件半年前) 三学期始業式
「最近校内で『チキ様』という遊びがはやってるみたいですが、
 これについてはPTAからも苦情が来ており全面的に禁止にしたいと思います」
始業式の吉良先生の言葉に生徒たちがざわめく。
そこで誰かが、なんで始業式に浅野先生がいないのかと隣の生徒に訊いた。
原と片岡がチキ様を怒らせてしまったからと午前三時に神社に行った時に、
付き添った浅野先生は三日間の謹慎処分になったのだ。
「なにソレ浅野悪くないじゃん!」
「それでチキ様禁止かよアホらしー」
「いっつもうるせーよな吉良のジジイ」

7月18日(事件一年前) 中学校・放課後
教室で女子生徒が『こっくりさん』の亜流の『チキ様』をやっている。
それを見て大石は馬鹿みたいだと非難し、
「お前もやったりすんの?」と不破に訊ねた。
「恋占いとかね」と答え不破はそのまま帰っていこうとする。
大石は不破を呼び留め「俺ずっとおまえのこと好きだったんだ」と告白した。
不破は頬を赤くさせ「嬉しい」と答えた。

<完>

101 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:05/01/30 23:08:38 ID:???
>>38
「たまごやき」
借金の支払いのために主人公は卵子を売る事になる。
結局強制された不法な行為として、警察によって卵子の売買は止められるが、
主人公はいつもは生理で捨てるだけだった卵子の重みを知る。

「両手に愛をつかめ!」
魚人の人権が認められた時代、
魚人と人間とのハーフの少年と、
転校生で魚人を生理的に受け付けれない、
水恐怖症の少女の話。