トップ オブ ザ ワールドな人たち/小坂理絵
453 名前:トップ オブ ザ ワールドな人たち 1[sage] 投稿日:05/01/21 00:42:24 ID:???
雅野学園高等部に入学した香月礼弥(あやみ)は、
人とかかわるのが苦手なため帰宅部を希望する。
友人の御子紫百合(クールな秀才)は演劇部に、
近原深雪(明るいスポーツ少女)は運動部を五つかけもちする予定。
しかし雅野学園の生徒は必ず部活に所属しなければならず、
また部活の掛け持ちも禁止されていた。
「部活強制なの!?あたし団体活動ぜんぜんダメなのにー!」
「かけもち禁止!?あたしに五つのうち四つを捨てろと!?」
発狂寸前の二人。一人動じない百合。
礼弥は渋々、人が少なく男子生徒のいない華道部に入ると決めた。

二人に付き添ってもらい、礼弥は入部届を出しにいく。
そこへ、作り物の翼を背につけた鳥人間(のようなもの)が空から現れ礼弥に直撃。
鳥人間に潰され茫然自失としている礼弥の前に数人の男子生徒が現れ、
「きみたちは飛行妨害の責任上、チャレンジ部に入部してもらう」と一方的に告げた。
ぶつけられたこちらが被害者なのになんで責任を取らないといけないんだと百合は怒る。
「こちらがぶつかった代償としては、きみたちに好きな時に好きな部員を
 コマしていいことにする。男ばっかりだから選び放題」
そんなもんいるかと百合は言うが、問答無用で三人はチャレンジ部部室に連れて行かれる。

チャレンジ部は世界一を目指す部。
ジャンルを問わず出来そうな事になんでもチャレンジして
ギ○ス(作中では版権上の問題のためネッシーと表される)記録に載るのが目標。
見かけからして濃いチャレンジ部の人たちに礼弥は引きまくるが、
百合と深雪は面白そうだから入部すると言う。
二人が入るのに鳥人間とぶつかった張本人である礼弥が入らないわけにはいかない。
三人はチャレンジ部に入部した。

翌日チャレンジ部の部室へ行く礼弥。百合と深雪は用事があってこれない。
どうやって部室に入ろうかと礼弥が悶々としていると、
「どうした 鍵開いてない?」と後ろから声がかかった。
振り向いた礼弥は、声の主の男子生徒に一目ぼれをする。

460 名前:トップ オブ ザ ワールドな人たち 2[sage] 投稿日:05/01/21 02:59:12 ID:???
男子生徒の名前は剣崎。顧問の父親に無理矢理入らされただけで、
いつもやる気がなくボーっとしている。

その他のチャレンジ部部員

菫谷   ゴツいオカマ。剣崎にベタ惚れ。
道明寺 鳥人飛行でギネス記録を目指す。
天根   顔が白塗りで髪はオールバック。深雪は歌舞伎先輩と呼んでいる。
工藤   板前みたいな顔。
内田   目立たない人。途中で顔がものすごく変わる。
速水   生徒会長。女子生徒に人気がある。
堀    目つきが鋭い。ツッコミ役。
長尾   顔が黒い。深雪は湘南と呼んでいる。

礼弥は部員たちと共に断食合宿を行ったり(暑さと空腹でみんな発狂)、
ドミノ積みにチャレンジしたり(ギ○ス記録を破るものの、崩れてしまう)する。
しかし剣崎との仲は縮まらず、剣崎の捨てたテストの答案や
剣崎の触った部のボールペンを盗んだりとストーカーまがいの事をする。
呆れた百合は、入部する時に言われた「コマし権」を利用して
既成事実をつくり、ストーカーから足を洗って彼女にでもなれと言う。
半ば強制的に礼弥はコマし権を使う事になる。
部員たちは、子供をつくって出産記録の世界記録を目指せとはやしたてる。

カラオケボックスに閉じ込められた礼弥と剣崎。
そこで剣崎は、小学五年生の時に円周率暗記でギ○スに載った事があると言う。
ギ○スマニアの父に言われてやった物の、次の年には100桁ほどの差で破られた。
抜き返せと言われたが無理で、それ以来無気力になった。

話すうちに二人の間に良さげな雰囲気が漂うが、空気の読めない部員たちに妨害される。
礼弥は剣崎の使ったストローをさりげなくパチり、百合に「進歩がない」と怒られた。

461 名前:トップ オブ ザ ワールドな人たち 3[sage] 投稿日:05/01/21 03:02:40 ID:???
実績がないためにチャレンジ部の部費が60%も減少した。
一刻も早くギネスに載らなければ、廃部の危機さえある。
留年をかけたテストを前に道明寺が死にかけなため、鳥人飛行はできない。
その他の部員たちはそれぞれギ○スに載ろうと様々な事にチャレンジする。
日本人らしく巨大折り鶴をつくろうと深雪が提案。
現在の記録の巨大折り鶴は16m。
それを超えるために部員たちはいらないノートやプリントを集め、
でんぷんで張り合わせて巨大なひとつの紙にしようとする。

以前より積極的になった礼弥に誘われ、剣崎も珍しく部活動に参加する。
紙を集めるため書道部に強奪に行ったり焼却炉からかき集めたりしている所へ、
テストが終わり晴れ晴れとした顔の道明寺が「これも使え」と100点のテストを差し出した。
部員たちが紙を集めている一方で、浪人生なみに勉強した道明寺は留年を免れた。

試験期間中、数学の問題用紙が一枚紛失した。
人気のない時間に、紙を集めに職員室のプリント類を漁るチャレンジ部員が目撃されており、
留年直前の道明寺が100点を取ったのは、問題用紙を盗んだためではないかと疑われる。
道明寺が努力していた事を無視して、最初から疑ってかかる顧問との口論の末、剣崎は部活に出なくなる。
礼弥は何度か剣崎を呼びに行くが、剣崎は部室に来る事を拒む。
沈鬱としながらも巨大折り鶴の作成に励む部員たち。
しかし、でんぷんをつくる鍋の不始末で折り鶴ごと部室が燃えてしまう。

「試験問題の件すら解決していないのにボヤまで起こすとは何事だ!
 チャレンジ部は本日を持って廃部にする!
 だいたいギ○スに載るというのがはじめから無謀だったんだ!」
理事長の言葉にギ○スマニアの顧問は怒り狂う。
「いいでしょう!載ってやりますよギ○スに!
 もし十日以内に達成できなかったら、あんたの言うとおり廃部で結構だ!」
部員たちは卵一気飲み、片足立ち、耐久しりとりなどでギ○スを目指すが、上手くいかない。
期限はあと三日。
破られたとはいえ一度ギ○スに載った事のある剣崎にも参加してもらおうと礼弥は説得する。
しかし剣崎は嫌がる。感情的になった礼弥は泣きながら剣崎を怒鳴り、勢いで好きだと打ち明けてしまう。

462 名前:トップ オブ ザ ワールドな人たち 4[sage] 投稿日:05/01/21 03:05:52 ID:???
「……やっぱり一回の高校生がネッシーに載ろうなんて最初から間違いだったのか……?」
「……そんな 最終回にきてすべてを根底から否定するような…」
今日で十日の期限が切れる。どんよりとした雰囲気が漂うチャレンジ部。
礼弥は勢いで告白してしまった事で一際暗いオーラを纏っている。
そこへ理事長がやって来て、これでもうチャレンジ部は廃部だと告げる。
「やだっ!まだ今日は終わってないもん!まだ六時間ぐらい残ってるもん!!」
礼弥が泣き叫んでいると「……六時間…なんとか間に合うな…」と言いながら剣崎が現れた。
剣崎は世界記録の一桁上の、四万二千百九十六桁の円周率を暗記してきたのだ。
まわされたビデオカメラの前で、剣崎は円周率を暗唱する。

「救世主さまー!」「ケンちゃんステキー!」興奮するチャレンジ部一同。
12時直前に、剣崎は四万二千百九十六桁の円周率をいい終えた。
世界記録を達成したからと廃部は取り消しになった。
連日ギ○スに挑戦していた部員たちは疲れのためその場で眠りに落ちる。
起きていた剣崎は、同じく剣崎への気まずさで眠れずにいる礼弥にキスをした。

翌日、円周率暗唱のために回っていたビデオカメラが、暗唱の後も回され続けていた事が発覚。
ビデオテープを見られたら礼弥と剣崎のキスも知られてしまう。
剣崎は証拠隠滅のためにビデオテープをぶっ壊し、円周率暗記の記録も消えてしまった。


――チャレンジ部の戦いの日々は終わらない。


463 名前:トップ オブ ザ ワールドな人たち 5[sage] 投稿日:05/01/21 03:07:46 ID:???
番外編「百合のキモチ」

綺麗で賢い百合は男子生徒に人気があるが、百合自身は男嫌い。

しかし一人だけ嫌悪感を持たない男性がいる。それはオカマの菫谷だ。
「あれは反則だろう…」「たしかに男の人だけど…」
なんでよりによって菫谷なんだと納得できない礼弥と深雪。

ある日チャレンジ部に女子生徒の白石が訪ねてくる。
彼女は先週の金曜日に、なんでここまでというほど豪快に
クラス全員分の資料を廊下にぶちまけてしまった。
その時通りすがりの男子生徒が、何も言わずに黙々と資料を集めてくれた。
白石は彼に一目ぼれをして、彼を探して部室を歩き渡っているのだ。
その男子生徒とは菫谷だった。
菫谷は拾わなければ廊下を通れなかったから手伝っただけだが、
白石はすっかり菫谷を男らしい素敵な人だと世紀の勘違いをし、
菫谷を慕ってチャレンジ部に入部した。
せっかくの新入部員を逃がしてはいけないと、
白石がいる時は、オカマっぽい言動を慎むよう菫谷は強制される。

意地でも男言葉を使いたくない菫谷は部室では無口に無愛想に振る舞い、
白石は「シャイでカッコイイ人」だと菫谷への憧れを益々強くさせる。
それを見ても百合は何もできずにいる。

464 名前:トップ オブ ザ ワールドな人たち 6[sage] 投稿日:05/01/21 03:09:40 ID:???
連日オカマな言動を出来ず、抑圧された菫谷は剣崎に襲い掛かる。
それを目撃した白石は「オカマならオカマでわかりやすいようにしとけ!」
と泣き叫びながら退部。
恋愛感情は抱けないものの、あまりにもよく慕ってくる白石を
妹のように思い始めていた菫谷はショックを受け、
オカマと書かれたタスキを肩にかけて落ち込む。
「なにもそこまでわかりやくしなくても…」
部員たちは励まそうとするが菫谷は完全にへこんでいる。

百合は菫谷のために、礼弥から徴収した剣崎の使用済みストロー、
おはし、空き缶、ハンカチ、髪の毛、ちょっと危ない写真などを差し出す。
興奮して鼻血を流す菫谷に百合は言う。

「本当はこんなもので元気出してほしくなかった。
 剣崎先輩の物なんかじゃなくて…駄目ですか?あたしじゃ」
女なんて論外よと答える菫谷に、そう言うと思ったと百合は穏やかに笑う。

「いい? あんたオカマに血迷うなんてこれで最後にしなさいよ。
 ちゃんとしたいい男みつけて結婚してそれで幸せになんなきゃ。
 あんた たぶん女にしては上等な方なんだから」
菫谷はそう説教し、しばらく百合とくだらない話をする。
雑談をしながら、この先菫谷と別の場所で生活するようになっても、
菫谷が今日の事を思い出してくれる日があればいいなと百合は思った。

<完>