鉄錆廃園/華不魅
232 名前:鉄錆廃園1/6[sage] 投稿日:2007/08/01(水) 00:16:35 ID:???
鉄錆廃園行きます。
(華不魅作 ビブロス発行(リブレで再販予定?))
ファンタジーSFで、世界観は、普通の人間の暮らしは中世っぽく、魔法使いや魔物が普通にいるようです。また、昔栄えた古代人種の遺産として、高度な科学の片鱗も所々にあります。
また、魔界、トゥエの故郷は隣接する別次元という設定です。

あらすじ
かなり大きなドーム状の建物には、死体が点々としていた。
杖を持った長い髪の女性、額に丸い何かをつけた肩までの髪の青年、体格が良く大剣らしい物を持った短髪で片目に眼帯をつけた青年が、それらに驚きの声をあげている。建物の突き当たりの祭壇に祭られていた箱の蓋が開かれている。
「イーサメルの封印がとかれている?!」
「何?!」
「まさか…奴を復活させる気か?!」と眼帯の青年が言った時、羽音と共に
「後をたどる」
と言う声があった。
次の瞬間、
「ソファーズエリス様!」
と空に向かって叫ぶ女性の姿があった。

233 名前:鉄錆廃園2/6[sage] 投稿日:2007/08/01(水) 00:17:34 ID:???
ここで扉絵となり場面が変わる。
森で鳥達が怯えた声を上げる中、魔方陣を敷き、何か儀式を行っている一団がいた。
先頭に立つのは、長い金髪の巻き毛、そして金の縦長の眼と尖った耳を持つ異形の女性だった。彼女は、エネルギーを放つ何かの前で言う。
「終わったらすべて焼き払え。後を残すな。気取られるな。600年かかったんだ。闇の王にして、死の王、イーサメルよ。我らが王の帰還だ」と。
それに、
『天と大地で世界は築かれ、昼と夜とで、日は重ねられ、光と闇とで人は生まれる』
との言葉が被る。
次の瞬間、黒い長髪、黒装束の額に三つの三角の飾りがある青年が不吉な笑みをたたえ、巨大なドラゴンと共に現れたのだった。
『そして、お前と私で、世界は終わる!』
との言葉と共に。
森が焼かれ、散り散りになる鳥の中に、草の蔓らしき物を銜えた物が一羽いた。


234 名前:鉄錆廃園3/6[sage] 投稿日:2007/08/01(水) 00:19:08 ID:???
またシーンがかわる。
人々が集まる市場らしき場所で、顔をすっぽり隠し、ぼろ布を纏った人物が、何か訳の分からないことをブツブツ言いながらふらついていた。
おなじ場所で、一人の黒髪の少年が、猫の目を持つ女を頭とした魔族の集団を探していた。少年の目の下には黒い三角が4つ組みあわさった刺青らしき物があった。
それに、先程の人物がぶつかる。少年はその人物が持つ腕輪に驚き、声をかけながら肩に手をかけると、それは、ずるりと倒れた。
「おい?! どうし…」
声をかける少年の目の前で、それはいきなり何本もの蔓に変形し、彼を襲ってくる。
「魔物か」
少年は、持っていた剣を抜きなぎ払うが、なぎ払った部分から、酸をだすのに気づき焦る少年。時遅く頭の上に蔓の破片が、ぱらぱらと落ちようとした時、輝く人物が現れ、それに巻きついた蔓は攻撃をやめた。「ソダイ! ヤット見ツケタ。会イタカッタ」と。

235 名前:鉄錆廃園4/6[sage] 投稿日:2007/08/01(水) 00:23:41 ID:???
その人物は杖を持った人物−魔法使いだった(この世界では魔法使いの杖は身分証をかねている)
「けがは無いか」と、その金髪の魔法使いは尋ね、少年が「無い」と答えるとすぐさま去ろうとする。少年は追いかけながら「俺の腕輪、返せよ」と怒鳴る。
魔法使いに追いついた少年は、蔓が囁くのを聞く。
「イーサメルが蘇り、ソダイがくれた私達の森や仲間や鳥や動物が、みんな焼かれた」と。魔法使いは顔色を変え、場所を変えようと言うのだった。
魔法使いの宿は、歓楽街の一部屋だった。
「魔法使いのくせにいい所住んでるな」と言う少年に魔法使いは「勝手だろ」と言いながらガラスの器を置く。そこには先ほどの蔓の破片がいた。
「これ魔物だろ?」と問う少年に「たんなる森の精(アルセイデス)だ」と魔法使いは答える。少年は酸でぼろぼろになった剣を見ながら「タダのが酸まくのかよ。ムコウ側の森の精だろ」と言い、挑戦的に続ける。「魔物だ」と。
それを複雑な顔で見ながら、魔法使いは腕輪を取り出した。
それを見た少年は独白する。「本当は姉のだ。一月前浚われたリィスの。あいつら−9人の魔物ども−忘れるものか−
黒い翼を持ったもの、角がある奴、金色に光る猫の目を持つ女…親父を殺し、姉を連れ去り…一族を…村を焼き払い…」

236 名前:鉄錆廃園5/6[sage] 投稿日:2007/08/01(水) 00:25:58 ID:???
そこで、少年は言葉を切った。彼に蔓が巻き付いていたのだ。「俺…何もしてないぞ」「森を焼いた連中と同じ奴ららしいな」「その森はどこだ?」血相を変える少年に、魔法使いは「連れてってやるよ」と言った。「森が蘇るかもしれないから」と。
魔法使いは少年に名前を尋ねた。少年はハザ・トゥエと名乗った。「あんたは、ソダイ?」と問うハザに、魔法使いは「いや、ジェルソミーナだ。外れのジェルソミーナ」と答えるのだった。

(外れ−変わり者って事か? こんな所に住んでいる魔法使いなんて聞いた事が無い)と思いながら、ベッドで眠りにつくカラ。
その隣の部屋では「ソダイ、ナゼ顔ヲ変エタ? 見ツケルノ大変ダッタ」「しっ、その名前は禁止だ。恐い連中が追いかけて来る」
「恐イ、コワーイ、死ノ王ガ、ヤッテクル」「−にしても、こんな偏狭にトゥエ一族の末裔がいるとは。やっかいなものを拾ったな」「タクサン、タクサンノ、死ヲ連レテ、ヤッテクル」と言う会話が交わされていた。

237 名前:鉄錆廃園6/6[sage] 投稿日:2007/08/01(水) 00:29:47 ID:???
ハザは夢を見ていた。『ハザ−父さんが呼んでる』自分を呼ぶ同じ三角の印を持った少女。(リィス?)彼女の顔は、すぐさま、同じ印を持った壮年の男に代わる。
(親父!)『じき魔物が来る。人でないものだ。我らに敵対するものだ。お前達の母はトゥエ一族最後の直系−生き延びねばならん』
シーンが変わり、捕らえられた父の背後には猫の目の女の持つ血まみれの剣が迫っていた。父は続ける『生きのびろ。そして、トゥエの役目を果たせ。天の玉座に会え!』と−
「起きろ」ハザが腹を蹴飛ばされ起きると、まだ夜だった。文句を言うハザに「私ツケラレテイタ」と言う者がいた。
「アル…セイデス?」そこに立っていたのは、蔦ではなく髪の長い美少女だった。
3人が町の通りに出ても、人の声もせず、霧が漂っていた。ジェルソミーナによるとみんな眠らされているらしい。
ハザは突然、飛竜に襲われる。剣を抜くが間に合わず、その爪に瓦礫に埋められてしまう。それを見ていた全身を衣で被った敵は笑う。
しかし、次の瞬間、飛竜は光よ包まれ、悲鳴と共にハザの右手の甲に吸い込まれ竜の形の痣となった。それは、生き物を痣に変え共生するトゥエの能力だった。
それを見た敵はほくそ笑んだ。「トゥエの生き残りがいた。やはり鍵はリィスだけで無かったらしい。これで扉が開く。イーサ・メル様にご報告申し上げねば…」その頭上から、彼に襲い掛かる者がいた

238 名前:鉄錆廃園7/7[sage] 投稿日:2007/08/01(水) 00:33:06 ID:???
それはジェルソミーナだった。彼が敵を杖で突いた時に、残っていたのは、相手が全身に纏っていた衣だった。
衣を脱いで上空に舞ったそれは、ハザを襲った者の一人、竜のような角と羽と尻尾を持った魔物だった。
魔物は片手から火を発し、ジェルソミーナの全身が炎に包まれた。「下級魔法使いが相手になるか」と勝ち誇る魔物に「なるほど、イーサメルが俺を見つけた訳ではないんだな」炎が割れ、無傷のジェルソミーナが現れた。
「−と言う事はお前を倒せばいいんだな」と。「ほざくな」と魔物は、また火炎を放つが「無駄だ」と言う言葉と共に、ジェルソミーナの放った光に包まれたのだった。
「よし、お前の名前はノトスだ。呼んだら出て来いよ」
ハザが竜型の痣に言っている所に、ジェルソミーナ達が合流する。なぜかアルセイデスは、ジェルソミーナが作ったという小鳥を持っていた。
ジェルソミーナはハザに尋ねる。「リィスとお前は双子か?」「何で、それを」「なるほど、二人で一人前と言う訳か」ジェルソミーナの脳裏には、敵の『トゥエの鍵はリィス一人だけでは無かった訳か』との言葉があった。
「ちょっと、どういう事、これ!! 私の店が」
戦いで壊された建物から目を覚ましたらしい町の人間の悲鳴が上がった。「やばい」ハザはノトスを呼び出し、それに3人は乗り飛び立った。
「東に向かえ、そうすれば鉄錆廃園に辿り着く」言うジェルソミーナに、裏がありそうだと感じながらも、リィスの為にハザは東に向かうのだった。

取り合えず、ここまで。これで一巻の4分の1です。

242 名前:鉄錆廃園1/6[sage] 投稿日:2007/08/01(水) 22:34:56 ID:???
ジェルソミーナに倒された魔物が脱ぎ捨てた装飾品を踏みにじる人物がいた。二人連れだった。
「ガーズめ、離れなどにやられるとは。あれで9将軍とは笑わせるわ」二人とも口元以外は衣で覆っている。
覗いた足や口元から女性のようだ。飛竜が飛びさって行くのを見送くる二人「さて、どうする?雷鴉(ライア)」片方が尋ねる。
「私が奴等を尾ける。零鴉(レイア)は皆に知らせに戻って…」雷鴉が言うのを遮り、彼女の方が足が早いからと衣を脱ぎ捨て飛び立つ零鴉。
「お前一人では」と雷鴉は止めようとするが諦め、衣を脱ぎ捨てると鴉に変化し飛び去る。
零鴉と逆方向に飛び立った雷鴉は塔が幾つも建ち並ぶ街に辿り着き、その中心に立つ塔に向かった。
「あの王宮の真ん中にある塔はなんだい?街中にも…5年前に来た時はなかったが」その塔を見ながら店の人間に尋ねる旅人らしき人間がいた。
店の少年は「神殿だよ」と答え、続けた。5年前に宗旨がえして神を祭るようになってから国中に変な塔を立て、税は重くなる。
皆王様がどうかしたのではないかと言ってる、と。

塔の上部についた雷鴉は人型に戻る。現れたのは左に黒い羽を持ち、黒い長髪を髪飾りで後ろに一つにまとめた女(9人の魔物の一人)の姿だった。
それを大蛇を体に纏わりつかせた黒い肌の少年(9人の魔物の一人)が出迎える。
ガーズの行方を尋ねる少年に、零鴉と離れて不機嫌そうな雷鴉は答える。
「ガーズが殺された」と。少年はそれに驚愕する。

牢の前で何者かが「例の娘は」と尋ねている。
老婆は「トゥエの?相変わらず何も聞き出せない。トゥエは器用だ。自分の意志で自らの生死を扱える」と答える。
牢内の板の寝台には仮死状態らしいリィスが横たわっていた。
雷鴉がやって来て黒猫とチェスをしている老婆に「廃園に行く。飛ばしてくれ」と頼む。
扉越しに雷鴉は尋ねる。「リィス。お前の弟はハザというのだね」

243 名前:鉄錆廃園2/6[sage] 投稿日:2007/08/01(水) 22:36:07 ID:???
ハザの名前にリィスは目覚め、牢にいた鼠を取り込み、また放すと、道を探して外に出るよう命じる。
リィスはまた寝台に横になる。
(この世界は、光と闇、生と死、そして人界と魔界、全てが対になり、この世界を保っている。
でもトゥエは違う。私達はこの世界に属さない。トゥエはこの空間の外から来た。死んでしまったトゥエの世界。
そして今なお地表を徘徊する死に神-それをここへ呼ぼうとしている…だから、ハザ、私達は会ってはいけない。
そう決めたはず!)と思いながら。

ハザ達は廃園に着いたが、そこは森というより街のような場所だった。ジェルソミーナは「古代遺跡だ」と答える。
塔が建ち並ぶ風景にハザは既視感を覚える。彼らは、手がかりを探すが見つからない。(会うなっていう事か?)と感じるハザ。
その横でアルセイデスが「誰モイナイ」と寂しそうに呟く。
杖で土を掘りながらジェルソミーナが「ここはイーサ・メルの封印を解くにはうってつけだ」と語るのにハザは驚く。
「イーサ・メル!?大災害(マグナディザスタ)の!?」伝説的な魔法使いが自分の敵と知り呆然とするハザ。
今度は手で土を掘りながらジェルソミーナは「ヨナ(天の)・エリドゥに行くんだな」と助言する。
正義の味方。秩序の番人。南の山の上にある古代王国で智で魔法使いを統べている、と。
そして、ユナ(地の)・エリドゥと言う武で統べる古代王国があるが、保管していた封印石を奪われるぐらい
弱体化しているから、あてにならない。ヨナなら力を貸してくれるはずだ、と続ける。
信用出来るか疑うハザに保証すると言う相手に、お前が信用できないんだと思いつつ
「何をしてるのか?」と尋ねるハザ。「根を探している」とジェルソミーナ。
彼らの頭上に舞い降りる鴉の姿があった。その零鴉にシンクロしている雷鴉が忠告する。「あまり近付くな今そこに行く」

244 名前:鉄錆廃園3/6[] 投稿日:2007/08/01(水) 22:37:40 ID:nNoH5Dca
魔法陣で転移する雷鴉達を猫目の女の魔物が止めようとするが、間に合わない。
彼女は雷鴉以外にも転移する長髪の女がいた事に気づく。
「どうしたのだ?ラウラ」女にイーサ・メルが話しかける。
せっかく跡を残さなかった廃園に行く事に不満そうな女−ラウラに彼は「何を恐れている?」と問う。
そして続ける「何も恐れる事は無い」と。
イーサ・メルの魔力によって魔界の不毛な大地とそこを彷徨う魔物達達のイメージが再現される
「私は哀れではならない…神に見放された魔界に閉じ込められ、そこで生き続けるしかないお前達が−−
そして愛しい」彼はラウラに近付き頬に優しく触れた後、邪悪な笑いを浮かべ言う。
「お前達に今度こそ、この豊かな人界を与えてやろう。そのためにもっと多くの塔を!もっと高い塔を!
私に捧げておくれ」と
ラウラが去った後、背後から王に問う者がいた。壮年の男(9人の魔物の一人)だった。
「王は、事の他廃園にいる魔法使いが気になる様子。いつもなら手元から離さない、あの女まで廃園に送って」
何者か?と重ねる男。
イーサ・メルは「お前は私が世界を手にした時、私を殺すつもりだろう?」と楽しそうに笑いながら、姿を消すのだった。

245 名前:鉄錆廃園4/6[sage] 投稿日:2007/08/01(水) 22:39:18 ID:???
「だめだ。みんな腐ってる」ジェルソミーナの手からボロボロの蔦が零れた。ハザが尋ねる。
「魔法で生き返らせる事はできないか?」
「アルセイデスが嫌がる。魔法で「生き返らせる」ってのは−ゾンビにする事だ」その時アルセイデスの悲鳴が上がる。
駆け付ける二人の前に球系の結界に封じられたアルセイデスがいた。
それを取り囲む杖を持った女と剣を持った男(冒頭のシーンに出て来た二人)がいた。
そして、もう一人顔以外を衣ですっぽり覆った額に三角の飾りをつけていた青年がいた。
「お前達は何者だ?ここで何をしている」と尋ねる青年に「それが人に者を尋ねる態度かよ。アルセイデスを離せ!」と反発するハザ。
「答えよ」という言葉と共に、ハザは吹き飛ばされ遺跡の壁に叩き付けられる。「この…!」
剣を抜くハザをジェルソミーナが杖で制止する。
「ヨナ・エリドゥも落ちたな。魔物と人の区別もつかないのか」「あいつらがヨナ・エリドゥ!?」
彼らの睨み合いを緊迫感の無い声が破った。「あっれー、ジェルソミーナじゃん。皆も何やってんの」
額に丸い飾り(?)をつけた、もう一人の青年が現れた。昼寝していた彼に、脱力する一同。
その青年−カラの説明で一同は敵の魔物だと言う誤解が解けるのだった。ハザにしがみ付くアルセイデスに
三角の額飾りをつけた青年が「人になつく森の精はめずらしい」と言う。その時、女性が尋ねる。
「ところであの魔物もあなたの連れ?」「え!?」「違うのね!」女性が放った風が鴉を引き裂く。
悲鳴と共に鴉は片羽の女に姿に変えた。それはハザの村を襲った魔物の一人だった。
片羽で飛びながら逃げる魔物を、追いかけるハザ。「逃がすな!唯一の手がかりだ」
ジェルソミーナはそれを尻目に「行こう。用はすんだ」とアルセイデスに言う。「デモ魔物ガ…ハザハ」
「ヨナにまかせればいいさ……−−もう関わりたくない」そういう彼にアルセイデスは告白する。
「復活したのはイーサ・メルだけでなく、一緒に巻き込まれた魔物や怪物も…それから…」と。
彼女は耐え切れないというように顔を手で覆う。

246 名前:鉄錆廃園5/6[] 投稿日:2007/08/01(水) 22:40:25 ID:nNoH5Dca
一方ハザは眼帯の男と口論しながら、魔物を追っていた。「見つけた!」物陰に蹲る魔物に切りかかるハザ。「何!?」
魔物の足下の地面から手が現れ、すぐさま雷鴉と魔法陣が現れ、雷でハザは吹き飛ばされた。
眼帯の男の背後には、いつの間にか目の部分を隠す仮面をつけた女が迫り、瞬時に彼の右腕を切り落とした。
「ヴァレリー」女性とカラが青年の名を叫ぶ。雷鴉は零鴉を抱え魔法陣で転移しながら命じる。
「黒髪と金髪は殺すな!連れて来いとの命だ!」「よくも!」を傷つけられ怒る女性が風を起こす。
その前に仮面の女が「遅い」と彼女に切りかかる。金属音が響く。女の剣を受けたのはハザだった。
だが、剣は女の力に絶え切れず折れてしまう。次の瞬間、女は、杖で殴りかかるジェルソミーナから宙返りし避ける。
その時、女の仮面が外れた。「グラディス!?」一同は驚きに包まれる。
中でもジェルソミーナは衝撃を受けた様子だった。
グラディス、それは軍神と呼ばれ大災害の時、イーサ・メルと戦った女性だった。
「グラディスはイーサ・メルに殺された!!」叫びながらカラが巨大な冷気を女に放つ。
それは軽々と片手で受け止められてしまう。「いかん。お前達では太刀打ち出来ん!逃げよ!」
三角の額飾りをつけた青年が衣を取る。その背には白い翼が生えていた。
「しかし、エリス様」女性が異を唱えるがエリスと呼ばれた青年は、構わずグラディスに空から迫る。
「一人でも生き延びてヨナ・エリドゥに帰れ!天の玉座に伝えよ」と叫びながら。
その言葉に、父の言っていた天の玉座がヨナ・エリドゥにあるのか、と思うハザ。
エリスとグラディスが対決しようという時、目の眩む光と共にグラディスの前に何者かが立った。
アルセイデスが「ソダイガ、アルセイデスニ会イニイク」と呟く。
自分を呼び掛ける声に何かを思い出しそうになるグラディスだが「戻れグラディス!」
と言う言葉と共に雷が落ち、グラディスと光は消えたのだった。

247 名前:鉄錆廃園6/6[sage] 投稿日:2007/08/01(水) 22:40:56 ID:???
呆然とする一同の前で魔物が転送して来た魔法陣が消えて行く。
「ピム」ハザは小さな飛竜(?)を呼び出し、魔法陣から転送させるのだった。
「ソ…ジェルソミーナ。グラディスは?!」現れたソダイに駆け寄るアルセイデス。
ジェルソミーナは自嘲するような表情を浮かべる。「奴は、どうあっても俺を放っておく気はないらしい」
それに青ざめるアルセイデス。

ヴァレリーを魔法で治療しながらエリスは言う。「グラディスはイーサ・メルについた。
大災害の時イーサ・メルを封じた彼女は引きずり込まれ、
命をおとし封じられた。
そして奴の魔法により生きる屍にされたのだ」と。その言葉を治療を受けながら聞いているハザに、
ジェルソミーナが剣を拾ったからやる、と立派な剣を放る。その剣を気にするエリス。「え?」
ハザが気づくと彼は視線をそらし、ジェルソミーナに「私達はどこかで会ったような気がする」と言う。
ジェルソミーナは笑って相手にしないが「ヨナ・エリドゥに帰るんだろ?俺も用ができた、つきあうよ」と言い出す。
その言葉に、ハザも声をあげるのだった。「俺もそいつに会う!」

一方、街の中心の塔の一室でイーサ・メルは気を失ったグラディスを傍らに笑っていた。
(見つけたぞ、ソダイ…。私からは逃げられはしない…お前のいる場所は私のところしかないのだから)と。

今日はここまで。まだ一巻。次からはもうちょっと、捲くりたい

249 名前:鉄錆廃園1/6[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 23:30:28 ID:???
エリスは回想する。600年前に起こった大災害。開くはずの無い道が開き、幾千幾万もの魔軍が人界を襲った。

250 名前:鉄錆廃園1/6[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 23:32:19 ID:???
エリスは回想する。600年前に起こった大災害。開くはずの無い道が開き、幾千幾万もの魔軍が人界を襲った。
すべての元凶はイーサ・メル。人にして魔法使いでありながら、人界を裏切り、魔物の王になった男だった。
あれは、何度目の戦いだっただろうか?絶望的な状況を救った謎の光。「似ていると思わないか? カラ?」
エリスに尋ねられてカラは頭を掻く。「さあ俺は後方部隊だったから。第一師団の奇跡は良く聞いたけど」
「奇跡か」(どこが?誰も生き残らなかった)第一師団を思い浮かべたエリスは、
ある人物が生きている事を思い出す。
戦いが終わると姿を消したその男はジェルソミーナとは似ても似つかないが、雰囲気が似ている。
だが、特異体質のカラや自分の一族でも無い限り生き残っている訳が無い、
と打ち消したエリスは遺跡の方に興味を向ける。「古代人の遺跡には違いないが都市としての機能が少なすぎる」
エリスの言葉に「こんな遺跡のどこに剣かあったんだろうね?」とジェルソミーナにくっつくカラ。
「また、エリス様の病気が始まった。古代人種の事となると、他に目が行かない」と魔法使いの女性。
ヴァレリーが反論する。「エリス様は天人だ。守護族として、古代人種に関心があるのは当然だろう」
「天人?魔物じゃないのか?」ハザの言葉にヴァレリーが彼の襟首を掴んだ。
「あの方は天人だ。魔物などと一緒にするな」天人とは古代人種の守護族の事である。
そして、古代人種とは、空を飛ぶ船や夜でも昼のように輝く街−科学という力で理想郷を築き、
世界中を支配しした存在だった。彼らは2千年前のある日を境に滅んだ。
伝説と遺跡と彼らを守る為創られた守護族を残して。そう説明した女性はエリスを指して
「だから彼は探しているのよ。守るべき守護族を」
守るべき物がないと生きられないなんて自分には理解できないけどね、と締めた。
「お前は冷たいからな」と言うヴァレリーに「あら合理的なのよ」と笑った女性はハザに「トゥエの鍵は廃したら?」と尋ねる。
「そうすれば魔物に狙われなくなる」ハザは「俺たちに帰るなって?」と反論する。「帰れるの?」「帰れるさ、奴さえ死ねば」

251 名前:鉄錆廃園2[] 投稿日:2007/08/02(木) 23:34:11 ID:1J2gP6bz
「俺たちはあいつが死に故郷に帰るのをまっているんだ。トゥエの願い」
回想の中村の人間達が、ハザに口々に言う。『ハザ様』『いつか』『私達を連れて』と。
ハザは思う。(嘘だ。本当は−俺は−俺がしたかったのは)「迷惑な話だ」言ったのはジェルソミーナだった。
「出るぞ、新手が来る」それでも遺跡を調べているエリスにカラが苛立ちの声をあげたが、
それをヴァレリーが逆に煩いとたしなめる。「どういう事だ?」
遺跡に刻まれた古代人種の額の印はイーサ・メルと同じだった。
(イーサ・メルと!古代人種に関係があるのか!!)
外に出たエリスは「船を呼ぶ」と手から天に向かう光を発しながらハザに語りかけた。
「お前にとっては仮の世界かもしれないが、少しでも好ましく思うなら、この世界を守って欲しい」と。
「俺は好きだよ。ここ…けど」うつむいていたハザは轟音に気づき顔を上げた。
空に光呼応し現れた物が浮かんでいた。それは海を行く帆船の形をしていた。
古代人種の遺産の一つ。反重力と言う物で浮かんでいる。原理は分からないがと女性が説明した。
アルセイデスが「モウ一ツ何カガ降リテクル」と言った。
雲間から現れた細長い巨大な影の口から火球が放たれる。ジェルソミーナの警告で散る一同。
彼らの目の前には、角の何本も生えた蛇型の竜とその背にのった肌の黒い魔族の少年が現れた。
その周りには何匹もの竜が身をくねらせていた。

一方、根城にしている王国で、ラウラは人間に化け、王の愛妾になっていた。
そして王を思うままに操り重税をかけ塔を立て、憎しみのまま人間を苦しめていた。
王の決議に反対し自分の正体を疑う大臣を操って殺したラウラを、9将軍の一人である壮年の男−ドーマ−が嗜める。
(嫌な男)と思いながら、ラウラは彼の占いはどうかと尋ねる。男は「例の砦も落ち−時期に南の国での戦いがおきるでしょう」と予言するのだった。

252 名前:鉄錆廃園3/6[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 23:35:13 ID:???
リィスは出口を求めて彷徨っていたネズミが枕元に置かれた為、意識を取り戻す。目の前には金髪猫目の青年が立っている。
酷い目に遭いたくなければ二度とするなと警告し壁をすり抜け消える青年。
老婆が零鴉の怪我に大騒ぎする雷鴉の事を愚痴りながら自室に帰ってくる。老人は「立場を忘れては困る」と言って、2股の尻尾を持つ黒猫に言う。
「お前もだルー・マイル。ネズミをどうしたんだい?馬鹿だねえ、お前は人間に情けをかけても無駄だってのに」老人は呟く。「わしらは相容れない…
憎しみあい、殺しあうしか術がない…帰るにも魔界への道は閉ざされ、一度知った人界の豊かさを手放す事も出来ない」と。

ハザたちの前に立った魔族の少年は、ガーズを倒した者を尋ねる。彼の乗っている竜は赤部龍といい、魔法が効かないとの事だった。
剣を取り出し、カラにもっと効かないと突っ込まれるハザ。少年はキハナの街の名前をだした。ジェルソミーナとハザがであった街だった。
ジェルソミーナが名乗り出るが挑発するような言葉で少年を怒らせてしまう。彼の率いる竜の吐き出す炎にジェルソミーナは魔法で応戦するが赤部龍に阻まれてしまう。
ハザは、少年に接近し切りつけるが、腕で受け止められてしまう。迫る赤部龍の牙。その時だった。
ハザの腕から、共生生物達が何個も融合した姿で赤部龍に応戦したのた。彼らを呼び戻すハザを隙を見ていた女性が捕まえ一緒に飛行船に転移する。
しかし、そこにも赤部龍が迫る。ハザが赤部龍を切りつけようとした時、彼の持つ剣が光を放ち、赤部龍の頭を吹き飛ばした。
カラはすぐさま他の竜たちを凍らせ、他のメンバーも飛行船に転移した。後を追おうとする少年の傍を舞う小鳥がいた。
その小鳥から、メッセージが発せられる『セト、養い子よ。引け,お前には無理だ。私の事なら案ずるな』と。
「ガーズ!?」少年−セトは叫ぶが小鳥は飛び去ってしまう。それを指に止まらせたのは、アルセイデスを抱えたジェルソミーナだった。
彼は「イーサ・メルに言っておけ。グラディスは必ず返してもらう」と言い残し転移する。南−ヨナに向かう飛行船。
小さくなっていく廃園をみながら、アルセイデスは「廃園が遠くなる。ソダイの街が」と言うのだった。


253 名前:鉄錆廃園4/6[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 23:37:17 ID:???
赤部龍がやられたとの報告にはラウラが驚きの声を上げていた。そこでは9将軍の4人が会合していた。ドーマが「ガーズに続いてか」と言う。
だが、なぜ彼が戻ってこないか分からないセトはその生存を報告できないでいる。その横で婆が零鴉の事を報告する。
「魔族の持つ優れた再生能力の無い零鴉は、今夜がもつかどうかだ」と。「魔物には治癒魔法は使いこなせないが、イーサ・メルに頼めば」と婆が言う。
その時傷ついた魔族が「雷鴉が大変だ!」と駆け込んでくる。雷鴉は瀕死の雷鴉の為にリィスの生き胆を食べさせようとしていたのだ。
「逆上して見境がなくなったか」と驚くみんなに婆が「雷鴉の世界は、零鴉だけで完結している。見境もなくなる」と語る。

一人残された瀕死の零鴉の前にイーサ・メルが現れる。「助けて、やろうか。永遠の命は欲しくないか」と彼は怯える零鴉の前に不吉な笑みを浮かべるのだった。

雷鴉に吹き飛ばされるルーマイル。そこにラウラが現れる。雷鴉はラウラも攻撃するが逆に吹き飛ばされる。その力の振動は城中に伝わった。
驚きと感嘆の声を上げる魔物達。複雑な表情のルーマイル。雷鴉はラウラが力を加減したので命は失ってはいなかった。
「雷鴉」にらみ合う二人の前に無傷の零鴉が現れる。イーサ・メル様が治してくれたと。魔族たちは、それに驚き喜ぶ。「あの方に従い千年王国を作ろう!」と。
それをドーマは冷笑する。(9将軍、魔軍といったところで、しょせん大災害の残党。忠誠心も結束も弱い。だが、伝説の魔王がこれほど役に立つとは−
あの変な塔もいくらでも建ててやる)そこで、ドーマは懸念の表情を浮かべた。(飾りのつもりで封印を解いたが気になるのはそれを忘れてしまったような−)
その視線の先には陶然としているラウラがいた。彼女は座り込んでいるルーマイルに気づくが何も言わず、去っていく。
婆が「冷たいね姉弟なのに」と声をかける。ルーマイルは「あの人は僕を憎んでいる。でもそれは仕方ない事だ」と立ち上がる。

零鴉は嬉しそうに雷鴉に自分は力を得た、と言うが、雷鴉はそれに違和感を覚えるのだった。

254 名前:鉄錆廃園5/6[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 23:44:50 ID:???
9将軍がイーサ・メルに呼び出され彼の部屋に行くと、そこには他の9将軍ユーシスという細身の青年とガルガンテと言う全身を衣で覆った巨躯の魔物がいた。
「アライド王国はどうした?」とほかの者達は詰め寄るが、彼らは意識体だった。「これで、ガーズ以外は揃ったな」とグラディスを伴い現れるイーサ・メル。
ユーシスが「強引な方だ」と言うのをドーマが咎めるが、イーサメルが「よい、大災害からのつきあいだ。よく生き残っていた」ととりなす。
「鳥も通わぬ熱砂の奥の虚(うろ)の中で眠っていた」とユーシス。「時折、夢を飛ばしていたが、ヨナもユナも弱体化しており、今が好機」と報告する。
イーサ・メルは「だが急がねばならん。アレが動き出した。赤部龍を倒したのは、古代人種の剣」「アレとは?」問う一同に答えたのはユーシスだった。
「ソダイ」と。何者かとまどう一同の中で(どこかで聞いた事があるが、どこで聞いたか思い出せない)と思うグラディス。
「王と共に魔界に下りた魔法使いだ。大災害では、四天王厳海妃軍の軍師を勤めた」との言葉に「人間に寝返った反逆軍の!?」と驚く。
「厳海妃も死んではおるまい。四天王の相手に部が悪いお前達に贈り物だ」イーサ・メルの背後の扉を開けると光る物体が浮かんでいた。
ユーシスは強く思っていた。(今度こそ、その首をもらうぞ。裏切り物め!)と。彼らの部屋の片隅にはピムが隠れていた。

飛行船でハザは剣が赤部龍を吹っ飛ばした事でジェルソミーナ問い詰めようとするがうまくいかない。逆に共生生物が変な出方をした事を聞かれ焦るハザ。
エリスが「お前は目的がなく不自然だ」と指摘する。「何かあるのか?」とハザに聞かれ契約をしようと言い出すジェルソミーナ。
契約とは魔法使いは破る事のできない約束の事である。「イーサ・メルを殺す」「人界から魔族を追い出す」事を契約すると言うジェルソミーナ。
不可能な契約だと口々に言うカラ達。「引き換えはグラディス」「術中にあるグラディスはイーサ・メルが死ねば消し飛ぶ、それこそ不可能だ」と言うヴァレリー。
「何とかなるさ」とジェルソミーナは寝るからとその部屋を出る。「なぜ、グラディスを?」と問うエリスに彼は言う。「あんたはもう気づいていると思ったがな」

255 名前:鉄錆廃園6/6[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 23:46:47 ID:???
エリスは「彼はソダイだ」と言い出す。ソダイとは、あまり知られていないがグラディスと組み、影と呼ばれた黒髪の男だった。
グラディスの英雄伝にいつもいて強く第一師団もこの二人には適わないと言われていたのだった。それで彼の目的はグラディスかと閃くハザ。
「彼がソダイなら、なぜ、彼が名前や姿を変えて外れなんかに?」ヴァレリーが問うのに
「さぁ彼は元々第一師団にいたのではなくグラディスが連れてきた。得体の知れない所があるが、敵でない事はたしかだ」とエリスは言うのだった。

部屋に案内されベッドに横になるハザ。体から共生生物の塊が溢れ出る。悲鳴を上げるが、気づくと何もなっていない。(夢…違う夢じゃない、罰だ!)
部屋を出るハザ。(リィス助けてくれ。俺が変わっていく)先ほどいた部屋で見張りのカラを探すがいない。
外で光る物がありソダイが使い魔でメッセージを飛ばしていた。『回船狭市に集まれ』と。
部屋に戻る二人。カラは眠れないソダイに見張りを押しつけ寝たらしい。「剣を返す」言うハザに「これも契約だから、必要ない」とジェルソミーナ。
「トゥエの扉が開けば、イーサ・メルどころじゃないからな。と言っても俺はお前を守ってやるつもりはない。
あの剣はお前を守るようにしてあるが万能じゃない。力は貸すが、及ばないかもしれないし及ばない事もあった」その言葉はグラディスの事だと感じるハザ。
「最後に頼れるのは自分しかない」という相手にハザは「俺は逃げるのは上手い」と言う。「自分が助かったのはいつも逃げていたからだ」と。
小さくて険しい山に囲まれた30人しかトゥエの村。外との交流も月一の隣村へ行く時と年に一度「天の玉座」の執行者が来る以外しかない。
いつか山を越えて外の世界に出たいと思っていた。だが、トゥエ、しかも鍵である自分は勝手は許されないと言われていた。
何度も山を越えようとしたが超えられなかった。ずっと、トゥエや村も人も自分も、わずらわしかった。
(村が襲われた時、山を越える道を知っていたが、リィス達は…)血まみれの村人達を思い出し「罰だ」と呟くハザ。


256 名前:鉄錆廃園7/7[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 23:49:05 ID:???
ハザの座っているすぐ横のソファーの背もたれが蹴られる。
ジェルソミーナがハザを睨んでいた。「間違えるな、世界はお前のためだけにある訳じゃない。お前がどう思おうと、いようがいまいが世界は動いていくんだ。
魔物は村を襲い鍵を奪っていくだろう」。表情を変えたハザに表情を和らげ続ける。
「思い悩む事が無駄だとはいわない。それはそれで意味があるはずだ。けれど、それに囚われて、したい事や、しなくてはならない事迄見失うのは、
とても愚かだ。ハザ、お前にはすべき事があるだろう」と。

各地で、ソダイの使い魔を受け取った者がいた。巨大な両端に刃を持つ剣を持った人の女剣士。地面に埋まっていた全身を毛に覆われた魔物。
海を行く巨大な蛇のようなもの。彼らは回船狭市を目指し移動していた。

ジェルソミーナの「見えてきた」という言葉に外を見たハザは、飛行船が行きかう雲海より上の山頂で光り輝く台形の巨大な都市を見るのだった。
「ヨナ・エリドゥ、通称「天の丘」最後の古代王国」ジェルソミーナの言葉と共に。

ここまでで一巻です。

261 名前:鉄錆廃園[sage] 投稿日:2007/08/03(金) 21:58:47 ID:???
今回は人物紹介だけいきます。
【】の部分は、1巻では出てない部分や名前です。

ハザと共にいるキャラ
ハザ
黒髪短髪のの少年。トゥエ一族の生き残りで、トゥエの鍵の片割れ。一族を滅ぼしリィスを連れ去った9人の魔物を探している。

ジェルソミーナ(ソダイ) 
金の短髪の外れの魔法使い。ソダイと言う名と違う姿で600年前、グラディスと共にヨナの第一師団におり、イーサメルと戦った。
イーサ・メルと敵対する魔族の軍師もやっていらしい。イーサ・メル何か関わりがあり、執着されている。

アルセイデス
ジェルソミーナにくっついている森の精。少女の姿が多いが草のような形にもなる。

カラ 
額に丸い印をつけ肩までの髪の青年。ヨナの魔法使い。冷気を操る。不真面目な性格で寝てばかりいる。

【シューサー】 
エリスに付き添っていた髪の長いヨナの魔法使いの女性。風を使う。クール。

ヴァレリー 
大剣らしい物を持った短髪で前髪を立てている。片目に眼帯をつけた青年。エリスの部下。

エリス(ソファーズエリス)
背に大きな羽を持つ天人(守護族)【青年に見え、彼と言われているが実はセクスレス】

262 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2007/08/03(金) 22:03:47 ID:???
9人の魔物(9将軍)
*魔族は異形のものと人に変わらないものがいるが、人に近いものも耳が尖っている。エリスやアルセイデスは尖っていない。

ラウラ 
長い波打つ金髪と金の猫目の女。9将軍のリーダー格。人間を強く憎んでいる。

雷鴉・零鴉
対になる黒い片羽を持ち、黒い巻き髪の長髪を後ろに一つにまとめた女達。零鴉は瀕死のところをイーサ・メルに助けられた。

ドーマ
黒髪の壮年の男。野心家でラウラのライバル。イーサ・メルが世界を支配したら倒そうと思っている。

ガーズ 
竜のような角と羽と尻尾と鱗を持っている。襲ったジェルソミーナに小鳥にされ、彼らの傍にいる。

セト
黒い肌の少年。竜を操る。ガーズの養い子。

婆【オリギナ】 
600年前の生き残りの老婆。転送魔法を操る。ルーマイルと一緒にいる事が多い。

ユーシス
肩までの銀髪で細身の青年。ソダイに強い復讐の念を抱いている。600年前の生き残り。

ガルガンテ 
仲間の前でも全身を衣で覆っている巨躯の人物。



263 名前:鉄錆廃園人物紹介[sage] 投稿日:2007/08/03(金) 22:07:02 ID:???
その他
イーサ・メル
魔王。黒い長髪、黒装束で額に三つの三角の飾りがある青年。人間の魔法使いだが、魔族を率い600年前の大災害を引き起こした。
ラウラによって封印石から開放された。

グラディス 
大災害でイーサメルと戦った伝説の女剣士。ストレートの長髪を所々まとめる髪飾りをつけている。片目の色が違う。
イーサ・メルと共に封じられ死んだのだが、開放された彼にゾンビにされ僕になっている。

リィス 
ハザの双子の姉。黒髪の優しげな少女。トゥエの鍵の片割れ。ラウラたちに捕らえられている。

ルーマイル 
金髪で猫目の青年。ラウラの弟だが、彼女には憎まれているらしい。リィスに目をかけている。

厳海妃
魔界四天王の一人で、600年前、人間に寝返りイーサ・メルと戦った反逆軍のメンバー。

メインで20人近くいました。確かに混乱しますな。もう少し増えます。一巻ごと人物紹介を追加・修正していこうかと。土日はアップ休みます。

272 名前:鉄錆廃園1/4[sage] 投稿日:2007/08/06(月) 20:51:36 ID:???
鉄錆廃園行きます。人物紹介は>261-263
>264 その通りです。すいません。

ヨナ・エリドゥは、夜明け前にも光り輝き、動く道や空飛ぶ船が行きかう都市だった。港を境に街と王宮が分かれているというジェルソミーナの体が光を乱反射しているのにハザは気づくが、動く道に誤魔化されてしまう。
「もしかして、古代人種の遺跡?」というハザに「古代人種の墓だ。王宮のてっぺんには主(あるじ)が永眠(ねむ)っている。だから、ここも眠るべきじゃないか」とジェルソミーナは言い、舞い降りてくる天人たちを「墓守どもだ」と続ける。

一方船の一室で、エリスは、ヴァレリーに切られた傷が癒えたか尋ねる。癒えたと聞き、他の天人の下でもすぐ務まるなと言うが、ヴァレリーはエリス以外は嫌だと断る。
「ならどうするのだ?」と尋ねられ「どうしたらいいか分からない」というヴァレリーに「自分で決めろ。お前は残れ」と部屋を出るエリス。
その背中を意味深に見つめながら「ただ誰かが選んでくれさえすれば」とヴァレリーは呟くのだった。

エリスは天の玉座の前で、事の次第を報告する。「魔軍により、ユナは滅びイーサ・メルは復活し、トゥエの鍵は奪われたのですね?ソファーズ・エリス」と尋ねる玉座。
横にいるカラが「全部見えてたくせに。その為に俺を同行させたんだろ?」と言うのに「いや、エリスを守るためだ。じき眠る私の後、玉座を継ぐ者、それがエリスだ」と答える玉座。「ヴァレが知ったら、なんて言うかな?」というカラの言葉に
「ヴァレリーは知っている。人間ごときには関係のない話だ」とエリスは答えるのだった。

273 名前:鉄錆廃園2/4[] 投稿日:2007/08/06(月) 20:52:19 ID:kMoAaXxy
ヴァレリーは、ハザ達と一緒にいた。その前には玉座の代弁者達に会い、知識を買いに来たり、魔法使いと契約する人々がいた。
「だから、智で統べるか」というハザに「玉座は何でも知っている。世界の全てを。だから、世界中から「客」はやって来る。彼らは欲望のまま、全てを知ろうとし、知らなかった不幸から知ってしまった不幸を嘆いている」
と語るヴァレリー。それに「知らなくていい事は誰もしろうとしない、知りたかったのだから、嘆いても仕方が無い」とハザ。「お前は子供だから」とヴァレリーとの間に険悪な雰囲気が流れるが、「玉座が呼んでいる」というシューサーに止められる。
玉座というのは、一人の全身が機械に繋がった天人だった。その周りには天人たち(クローンで同じ顔)が並んでいる。
玉座の前に来たハザは、額にカラと同じ丸い飾り−印}をつけられてしまう。印とは、外せば死ぬ上、見る物話す物すべて玉座に伝わってしまう物だった。
取れと怒るハザに、天人たちは「お前は危険な存在だ。この世界のバランスを崩す」と口々に言う。
(ほら、エリス聞こえただろ。こちらがいくら好ましく思っていても、そっちが俺を拒むじゃないか。いつも−)と思うハザ。
「分をわきまえろ。我々の庇護のもと暮らせて来たんだ」「庇護!? 閉じ込めただけだろ。何故31人目の赤ん坊が生まれてこないか分かった! お前達だ!」「バランスが狂う。そういう契約だ」
「馬鹿馬鹿しい。破棄する」ときびすを返すカラ。「ヨナを出れば命は無いぞ」と天人達が脅すが「殺せば?俺が死ねばリィスの所に鍵が行って、魔物どもは楽して完全な鍵を手に入れられるぞ」とハザは去ろうとする。
だが、そこで足を踏まれ転んでしまう。踏んだのはジェルソミーナだった。「あんたも同じかよ」と怒るハザに「お前は頭が悪い」と言い玉座に「イーサ・メルの居場所を知りたくないか?」と尋ねるジェルソミーナ。
ハザの送ったピムに同調すれば風景ぐらいは分かるのを聞いた玉座が「では話せ」と聞こうとするのに「ただで聞こうと言うのですか?」応じるジェルソミーナ。
「金を取ろうと言うのか?」と天人に言われ「トゥエに印をしない、それだけです」と言うジェルソミーナ。彼を少し見直すハザ。天の玉座はそれに応じ,イーサ・メルの情報の代わりに印をつけない事を決めるのだった。

274 名前:鉄錆廃園3/4[sage] 投稿日:2007/08/06(月) 20:53:30 ID:???
ユーシスとガルガンテはアライドの砦から、運河を行きかう同盟国の船を襲っていた。全身に火をまとった魔物に「一隻は残せ、自国に帰させてやるんだ」と命令するユーシス。
「目立たぬよう様、この砦を落とすのは手間取ったが、これは楽にすんだ。イーサ・メルの贈り物は役に立つ」と言うユーシスに「俺は死人との仕事はゴメンだ」とガルガンテは傍を離れる。
ユーシスは火の魔物に「かまうな、続けろ。早く眠りたいだろう」と命令するのだった。

アライドの砦の生き残りがヨナに「アライドは商船を襲っていない。戦争を回避したい」という伝言を伝えるため、気球型の飛行船を飛ばすが、飛竜や空を飛ぶ魔物とそれに載ったユーシスの一団に追いつかれ、人の何十倍もある人型の魔物に握りつぶされてしまう。
勝ち誇った笑みを浮かべるユーシスだが、地上に何かを見つけ、そのまま飛竜から飛び降りていってしまう。慌てる部下達に「放っとけ。あれは誰にもなれない」とガルカンテ。
ユーシスが飛び降りた先には、海岸線を馬で移動するソダイの仲間の女剣士がいた。襲い掛かるユーシスに女剣士は剣で応じるが彼の速度についていけない。
ユーシスの攻撃を彼女の馬が邪魔するが、彼の爪に切り裂かれてしまう。馬の死体の傍に蹲る女剣士。
「久しぶりだな、シャリート。奴はどこだ」「奴とは?」「とぼけるな。それとも死ぬか?」「ばかな。死ぬのはお前だ」と応じるシャリートは擬態を解き魔物の姿を現していた。
「私のかわいいシャリートをいじめるとは誰かと思えば」ユーシスの背後の海から人の数十倍の大きさの巨大な影が現れた。
「ソダイの周りをうろついていた子鬼じゃないか」それは人の女の上半身に蛇のように長い下半身を持った魔物、それは魔界四天王の一人、巌海妃だった。
「シャリートとは従姉妹であろう、仲良くせねば」と言う巌海妃に「先に裏切ったのはそちらでしょう?」とユーシス。
「あなた方をそそのかし、魔物を裏切ったあの男はいるのでしょう?」との言葉に、巌海妃は身を捩じらせて笑った。「子鬼。魔物−ではなくお前をであろう!」

275 名前:鉄錆廃園4/4[sage] 投稿日:2007/08/06(月) 20:54:48 ID:???
「ごらん」真剣な表情になった巌海妃は、天に手を差し伸べる。その先にはひび割れた空があった。それは大災害で歪んだバランスによって作られた歪だった。
それが力ある者以外にも見えるようになった時、世界は終わり、すべて夢のように砕け散ってしまう。
「全てイーサ・メルの企み。目を覚ませ、ユーシス。今でも奴が魔族の為に大災害を起こしたと思っているのか?……奴は破壊のために存在する悪鬼よ!」説得する巌海妃にユーシスは笑った。
「だとしても、なんの不都合がある? 我らも壊したいのだ。人の国も、ヨナも、そして全てを手に入れる」ユーシスは死霊石と呼ばれる石を取り出す。
「出でよ。四天王、火魎鬼。巌海妃を焼き尽くせ」呼ばれて現れたのは、あの火の魔物だった。
「哀れな。宿業から逃れ安息を得た火魎鬼を呼び戻したか」と嘆いた巌海妃は、シャリートを伴い、海へ退く。
ユーシスは追おうとするが火魎鬼が暴走しそうになり、それを戻すために彼女達を見失うが「この近くにいる」と待ち構える体勢になるのだった。

277 名前:鉄錆廃園1/2[sage] 投稿日:2007/08/07(火) 23:42:38 ID:???
ヨナの住民街の市民は、異常気象や、魔軍が攻めてくるといった噂でもちきりだった。そこへ各地の戦闘集団達が現れ、古の契約によりヨナの王宮に入っていく。ヨナの魔法軍が編成されるらしい。
ほとんど同時にヨナを取り巻く防御壁がせり上がり、魔法使い達が3日以外に逃げる者は去れ、戦う者は残れと通達する。
その外では、ヨナを監視していた魔物が将軍にその事を伝えようとしていた。「そうはさせない」
オレンジの髪の少年が一匹の魔物を切り倒した。だが、もう一匹にはよけられ地面に叩きつけられてしまう。少年に迫る魔物。その時、少年の腕に鱗が生えているのに魔物が気づく。
「なぜ、魔物が邪魔をする?」と問う魔物に「俺は人間だ!」と手を使わず剣を動かし魔物に突き刺す少年。「ユナの魔法剣士か。なぜ魔物が…」絶命する魔物。
少年は布で腕を隠すと「ヴァレリー様、まだヨナにいるかな。俺の事覚えていてくれるかな」とヨナに向かうのだった。

ヨナの医療施設らしい所にエリスはおり、水槽のような物の中でチューブに繋がれていた。それをチェックしている天人達は「天人の寿命はとうにすぎているから40%が使いものにならない。
だが玉座の−人工知能の代弁者機関としては十分だろう」と言っている。ヴァレリーは、その部屋の外で立っている。

一方ハザはピムとの同調を行っていた。しかし、見えたのはトゥエ一族の姿だった。同化した鳥を飛ばしながら、「なぜ月闇姫は世界をはみ続けるのだろう」と言うトゥエ一族達。
その先にはトゥエの世界をみ続ける狂った巫女姫がいた。その巫女姫のイメージが喰自分と重なり、目の前にリィスの幻影が現れ言う。「ハザ、世界を喰むの?」
『そんな者に捕っていては、リィスを助けだせないぞ』金色に輝く何者かが言った。ハザは悪夢に囚われていた事に気づき、ピムを探すのだった。

278 名前:鉄錆廃園2/2[sage] 投稿日:2007/08/07(火) 23:43:47 ID:???
ヨナの一室でハザの同調を見守っているシューサーやカラ、ジェルソミーナ達。ジェルソミーナが目を開けた時、ハザは脈拍が落ちた状態から回復する。
「精神飛行に似てるのね。危なくなったら私が連れ戻す」とシューサー。
それを見ながら、ジェルソミーナにくっくき「体温が減る。特異体質だと分かっているのが?」と怒られるカラ。
「空間の歪みのせいで、そんでもない魔力を持つ凶兆児のおかげで、印はつけられるわ、人から凍ると言われるわ。ヨナでは凍気がもれないよう完全防御服を着せられるわで、寒くて死にそう」と嘆くカラ。
「起きてると本当に寒いから氷室で寝たい」と言うカラに「眠るといっても凍ってるだけじゃない。年をとらないなら意味ないでしょう?」とシューサー「うん、でも」「寝たいのなら、寝れば」「いいの」「逃げてばっかり」
笑うジェルソミーナに「ち、笑ってろ。昔はかわいかったんだけどな」とカラ。昔、10年前ヨナの誰かが拾ってきたらしい。無表情な子供だったのだが、なついて来た、と言うから。
「でも、駄目だな。俺は印持ちで2年も3年眠りっぱなしだったりするし。この間起きたら、シューサー様だぜ。天人つきの「金位」年寄りおしのけて最上級の魔法使いになってやんの。可哀想なカラ、みんなに取り残されて」
また嘆く彼に「逆だろ。お前が取り残してる」とジェルソミーナ。その様子を(可哀想なカラ、逃げてばかりで。自分を哀れんでばかりで。ずっとそうしてればいいわ)と思うシューサー。
その時、ハザの同調が成功する。ピムはイーサ・メルの部屋にいた。そこは寒くグラディスを始め生き返らされた魑魅魍魎が蠢いていた。魔物に襲われそうなピムを転移させ助けるグラディス。
文句を言う魔物に「死んでいるくせに」と言うグラディスに「お前はどうなの?」と尋ねるラウラ。グラディスは「私はいいんだ。生きてようとしんでようと関係ないんだ」と微笑むのだった。
転送されたピムは建物の外に出た。目の前には塔の立ち並ぶ町並みが広がっていた。