鉄人28号 皇帝の紋章/原作:横山光輝 漫画:長谷川裕一
598 名前:鉄人28号 皇帝の紋章[sage] 投稿日:2006/01/03(火) 15:29:05 ID:???
舞台は昭和30年代初頭の日本。東京の少年探偵、金田正太郎の元に、一人の少女が訪れる。
少女の名はアリス・ドラグネット。近年急逝したロボット工学者、ドラグネット博士の娘だった。
彼女を追うように現れた謎のロボット群を、正太郎は愛機「鉄人28号」で撃退するも
怪ロボットの操縦者であるナチス残党によって捕らえられてしまう。
楽団に偽装されたナチス残党のリーダー、ネルケは、ヒトラーが遺した「秘宝」について語る。
ヒトラーが生前に選抜した7組のロボット開発者。その各人に送られたの「皇帝の紋章」を
ロボット同士の闘争で奪い合い、7つの紋章を全て揃えれば、ヒトラーの隠した秘宝が手に入るという。
すでにネルケ達は自軍のロボット「バッカス」を日本に持ち込んでおり、イギリスチームのロボット「サターン」と
決闘の構えに入っていた。辛うじて脱出に成功した正太郎は、鉄人を連れて決闘の現場に駆けつけ
アリスや大塚署長、ギャングの村雨健次らの助けを得てバッカスとサターンを撃破する。

紋章争奪戦による被害を食い止めるべく奔走する正太郎。秘宝の在り処を示す暗号に基づいて
彼は青森の岩木山で、イタリアの十字結社が操る「モンスター」と戦い、これを倒した。
だが、岩木山での調査を続ける彼らの前に、フランスのグラン・フランム博士の「炎(フランム)二世」が現れる。
(横山先生の原作では、ビッグファイア博士とファイア二世だが、本作ではフランス人ということでこの呼び名となる)
操縦者を直接攻撃するフランム二世の卑劣な攻撃に、雪の中を掘り進んで奇襲するという策を用い
鉄人は辛うじてフランム二世を退け、その場を離脱する。
だが、負傷した正太郎が気絶したところに、バッカスを失って逃走中のネルケ達ナチス残党が立ちはだかった。
一方、機体を覆う軟質素材のおかげでほぼ無傷だったフランム二世の前にも新たな敵が現れる。
ドイツからアメリカへ亡命した天才科学者、フランケン博士率いる「ブラックオックス」。

599 名前:鉄人28号 皇帝の紋章[sage] 投稿日:2006/01/03(火) 15:30:24 ID:???
復讐に燃えるナチス残党の手から、駆けつけた村雨の助けを得て逃れた正太郎一行。
だが、彼らの前に、フランム二世をあっさり破壊したブラックオックスが姿を現す。
オックスの能力は、人間に操縦されず自律する電子頭脳と、周囲の無線を阻害する電磁波。
リモコンを無効化するオックスに鉄人も成す術はなく、フランケン博士に捕らえられる。
オックスが基地とする米軍空母で、フランケン博士は正太郎に己の未来予想図を語った。
核ミサイル当の遠隔兵器による大戦争を回避するには、オックスのような妨害電波を発して
誘導装置を無効化できるロボット兵器を介した代理戦争を実現するしかないのだと。
博士のスポンサーである米軍や軍事企業を納得させるため、彼は鉄人との完全決着を望んでいた。
博士は宣言する。一週間後にオックスは羽田空港を襲う、ベストコンディションの鉄人でそれを止めてみろ、と。
直後、空母が謎の敵による攻撃を受け混乱する中、正太郎とアリスは
共に捕らえられていたネルケを助けつつ脱走に成功。打倒オックスの策を練り始める。

米軍空母からの脱走から6日後、オックスが空港を奇襲。妨害電波で着陸できない飛行機を人質に取り
正太郎と鉄人に真剣勝負を強いる。正太郎が用意した策、それは鉄人と操縦機の有線化だった。
下策と笑うフランケン博士。だが正太郎には勝算があった。オックスの知能は決して高いものではない。
複雑な動きで翻弄すれば、混乱したオックスは自ら電磁波を切り、博士に指示を求めるはず。
はたして、無謀なまでの鉄人の連撃に耐えかね、オックスが博士に通信を始めた一瞬を見切って
正太郎はケーブルを切り、ロケット噴射によるダッシュでオックスを捕らえ、抱えあげた。
すかさず電磁波を再発生させ、鉄人に極める隙を与えまいとするフランケン博士。だが、サポートの村雨が
銛撃ちの要領でケーブルを繋いだフックを鉄人に引っ掛け、再び鉄人を有線化する。
この連携によって、ついに鉄人は、オックスを腰部から真っ二つに破壊、この戦いに勝利した。
この決着を受けて、アメリカチームはフランケン博士を射殺する。博士のスポンサーたちは
ロボットの代理戦争より、より利益の出る従来型の戦争の方を支持していたのだった。
一方、鉄人の元に新たな敵出現の報が入る。ソビエトの潜水艇ロボ「ギャロン」。

600 名前:鉄人28号 皇帝の紋章[sage] 投稿日:2006/01/03(火) 15:31:15 ID:???
東京都心で、鉄人とギャロンの戦いが始まる。だが、対オックス戦で満身創痍の鉄人は圧倒的不利。
その状況を覆したのは、虫の息のフランケン博士だった。アリスを人質に、都内の秘密基地へ向かった博士は
そこに隠されていたスペアボディにオックスの電子頭脳を換装。そして、腕時計型のオックス操縦機の声紋登録を
アリスのものに変更して息絶えた。ほぼ無傷で戦線復帰したオックスと共闘して、鉄人はギャロンを倒す。

ついに正太郎は7つの紋章を全て手に入れた。ナチスの秘宝は決まった日にしか現れないという彼の推理に従い
正太郎とアリスは「その日」までの数ヶ月を穏やかに過ごす。
その平穏を破ったのは、潜伏していたネルケの一報だった。アリスの父、故ドラグネット博士の遺作
未完成と思われていた「ギルバート」が消えたという。そしてアリスの前に謎の黒コートの男が現れる。
男の正体はアリスの兄ケリー。ギルバートは、改造人間となったケリーの体によって遠隔操作されるロボットだった。
ポーランド生まれで、祖国を破壊したドイツやその同盟国日本に憎悪を燃やすケリー。
ギルバートへの攻撃が、ケリーの体にもダメージを与えることを知った正太郎はギルバートを攻撃できない。
代わってケリーを倒すため、米軍空母で助けられて以来正太郎に好意的になっていたネルケが
村雨と共にケリーを追い、そしてネルケはケリーと相打ちになって死ぬ。
次々と人が死ぬことを嘆きながら、それでも正太郎は涙をぬぐい、暴走状態に陥ったギルバートを破壊した。

そして、暗号に予告されていた8月15日、奇しくも終戦記念日に、ナチスの秘宝たる潜水艦が姿を見せた。
7つの紋章を掲げ艦内に入った正太郎達が見たのは、高い知能を持った人間大のロボット…暗号機エニグマの開発中
偶然に完成した人工知能「ロビー」。紋章争奪戦とは、その戦いのデータをロビーに与え
彼に最強のロボットを造らせるためのものだったのだ。だが、既にロボット戦争がありえぬことも知っていた彼は
自ら作った原子力ロボ“溶鉱炉(シュメルツ・オーフェン)”を米国に撃ち込んで報復核システムを作動させ
人類の滅亡をもって己の勝利とするプランを実行し始めた。

601 名前:鉄人28号 皇帝の紋章[sage] 投稿日:2006/01/03(火) 15:32:23 ID:???
溶岩を噴射して相手を溶かす“溶鉱炉”の前に、ブラックオックスは破壊され、鉄人も追い詰められる。
防戦一方の鉄人は、自らの足を折り取って盾代わりにし、全壊を免れるも、反撃は出来ない。
自らの勝利を宣言した“溶鉱炉”が、自らを「発射」する瞬間、正太郎と鉄人が動いた。
鉄人が“溶鉱炉”に組み付き、そのまま共に大気圏外へと離脱していく。同時に正太郎は、鉄人の操縦機を
残骸となったオックスの電磁波放射装置に繋ぎ、リモコンの到達距離を伸ばそうと試みる。
核爆発の影響が少ない上空で、相打ち承知で“溶鉱炉”を倒す。それが正太郎の苦渋の決断だった。
“けして…けして忘れるわけじゃないから だから 頑張れ鉄人!負けるな鉄人! ぼくの…一番大切な…鉄人28号!”
そして、“溶鉱炉”と鉄人は大気圏外に至る。操縦電波が届いていないのを確認し、嘲笑と共に
鉄人を振りほどいて、地上への攻撃を開始しようとする“溶鉱炉”。だが、そのとき鉄人が動き始めた。
確かに電波は途切れているはずなのに、鉄人は地球を慈しむように手を伸ばし…拳を固めて“溶鉱炉”を貫いた。

“溶鉱炉”の最期の爆発は、地上にいた正太郎達にも見えた。
動かなくなった操縦機を置き、皆に背を向けて立ちすくむ正太郎の背中を、アリスはただ見つめることしか出来なかった。
   鉄人28号〜皇帝の紋章〜 完


原作:横山光輝 漫画:長谷川裕一 講談社マガジンZKC 全3巻 マガジンZ 04年1月号〜05年2月号連載

テレビ東京での新作アニメ版公開とのタイアップで連載開始された作品。
前作「クロノアイズ・グランサー」の急な終了からすぐの連載で、長谷川氏のファンの間で色々憶測を呼んだりもした。
正直、アニメも映画も今一ぱっとしなかった作品を、マイナー漫画誌でタイアップしてどうすると思ってしまうが
そこは「すごかが」の長谷川、独自色を入れてエンタテイメントとしてうまく纏めている。
「ロボット兵器は実在したが、失伝したため架空兵器と思われている」というSF考証を基とするストーリー、
そして、原作からの持ち出しであるブラックオックスやロビーを使い、得意の「被造物の尊厳」というテーマを
展開していくあたりは流石と言えよう。