舞姫 テレプシコーラ/山岸凉子
256 :舞姫 テレプシコーラ 1 :04/04/11 16:53 ID:???
 小学五年生の篠原六花(ゆき)はバレエスクールを営む母のもと、
一つ上の姉の千花と共にバレエを習っている。
ある日六花のクラスに顔も服装も男にしか見えない無口な少女、
須藤空美(くみ)が転校して来る。空美の外開きの歩き方から、
六花は空美がバレエを習っている事に気づく。
 バレエスクールの小学生の部でトップを誇る千花と違い、
六花は足を180度開く事すら出来ない。
練習不足が原因かと思っていたが、母と共に行った病院で
股関節に異常があるために180度開脚が困難だという事を医師から聞く。

 一方空美は、働かずに酒ばかり飲み家計を食いつぶす父のせいで
金を稼ぐためにポルノビデオに無理矢理出される。
悲惨な日々を過ごす空美の唯一つの生きがいは叔母の美智子が
教えてくれるバレエだけだった。しかし叔母の家は父の借金のために
差し押さえられる事になる。狭い自分の家ではとてもバレエのレッスンなどできない。
どうしようかと悩む空美は、六花の家がバレエスクールをしている事を知る。
 六花はどうせ頑張っても180度開けないのだと絶望し、バレエをやめると母に告げる。
しかし自分からやめると言ったのに、バレエの未練は消えない。
そんな時に市の体育館で空美が高度なストレッチをしている所を見かける。
六花が話し掛けると空美は「レッスン場をタダで貸してほしい」と言ってきた。
無料体験の日があるのでその日ならいいと六花は返事をした。

257 :舞姫 テレプシコーラ 2 :04/04/11 16:56 ID:???
 元旦、それなりに裕福な篠原姉妹がお年玉を貰って浮かれている一方で、
いつもの倍のお金を出すからと、空美は男と絡むポルノ物を撮らされる。
男に無理矢理股を広げられいじられ、空美は心に傷を負う。
 無料体験の日に空美は六花の家へレッスンにやってきた。
遅刻をした上、態度が悪く、挨拶もしない空美にその日レッスンを
担当していた金子先生は不快に思うが、空美の素晴らしい技術にその思いも消えた。
空美は年上の千花でさえまだマスターしていないイタリアン・フェッテすら軽やかに
こなした。ただただ驚くだけの六花の隣で、千花は空美をライバル視するようになる。
六花は空美と千花の踊る姿を見、また自分もバレエをしたいと思うようになる。

 空美の叔母の美智子が失踪した。美智子は飼い猫を探しに行ったまま道に迷ったらしく、
警察に保護されていた。美智子はボケてしまったのか、おかしな事ばかり言った。
空美は母の美智子への態度に何かおかしい物を感じた。母は自分や父よりも
美智子を大事な人扱いしていた。母にとって美智子は一体どういう存在なのだろう…?

 またバレエをやり出したいと母に言いづらくてうじうじしている六花に
金子先生が、ある有名なプリマも六花のように180度開脚が出来ないらしいと言った。
もしかしたら自分も頑張ればそのプリマのようになれるかも…六花は胸を躍らせた。
258 :マロン名無しさん :04/04/11 18:09 ID:???

■ちょっとだけ無駄な豆知識
空美ちゃんはどう見ても男にしか見えませんが、それもきりっとした美少年系って
訳では無く、研ナオコの顔面に1発決めたような感じです。

265 :舞姫 テレプシコーラ 3 :04/04/11 20:13 ID:???
 学年が上がり、千花はF大付属中学校に入学し、六花と空美は六年生になった。
F中への通学は往復で三時間かかるが、F中はバレエスクールの本部に近いので、
月曜日と木曜日の帰りに本部に行って習えると千花は喜んだ。
六花もバレエを再開する事にした。
 金曜日にだけ月謝免除でバレエスクールに通う空美をライバル視する千花は、
中学生にもかかわらず金曜日にだけ小学生の部に通っている。千花は空美を
意識しながらやるが、空美はあくまでも自分のみに集中してバレエのレッスンをしていた。

 美智子は、北村優という男が自分を監視していると、空美の母の艶子に激しく訴えた。
しかし北村は20年も前にもう亡くなっており、彼の所属するバレエ団ももう無くなっていた。
(この北村優の正体などはまだ明らかになっていません)

 篠原姉妹はバレエのコンクールに出る事になった。
千花はスワニルダ、六花は青い鳥のフロリナ王女を踊る。
千花は自分の実力で踊れるのだろうかと不安に思った。

267 :舞姫 テレプシコーラ 4 :04/04/11 20:18 ID:???
 成長期の空美は足が大きくなり、元々ボロボロだったポアントもシューズも
はけなくなってしまった。しかし家には金がない。親に買ってとねだる事さえ無理だ。
仕方なく裸足でバレエのレッスンに出たら、金子先生がスクールに置いてある
予備のシューズを貸してくれた。空美は沢山あるのだからばれないだろうと
シューズを盗み、持ち帰ろうとするが、罪悪感にかられすぐ戻しに行く。
しかしそこを六花に見られ、空美は盗もうとした事をばれたのかと動揺する。
 タイツに穴があき、レオタードまでほつれてき、これでは踊れないと空美は艶子に言う。
「あんた、美智子先生以外のレッスンを受けているの?でも…あんたそんなお金は持っていないわね」
「わたし、上手だって。だからそこではお月謝いらないんだって」空美は言うが、艶子は
「せっかくお義姉さん(美智子)と私で正当なワガノワバレエを教えたのに、
変な癖でもつけたりしたら…第一他人のほどこしを受けるなんて恥ずかしくないの?」と言った。
 空美は美智子が昔使っていたシューズとレオタードを借り、艶子が生活保護の打ち切りについて
もめている間にバレエスクールへ向かった。
 バレエスクールからの帰り、サイズの合わないレオタードを着ている空美に、六花は善意から
使っていないレオタードを渡した。空美には、それが可哀想な物への哀れみに見え、
その申し出を断り走り去った。艶子の「他人のほどこを受けるなんて…」という台詞が浮かんだ。

 滅多にかかってこない須藤家の電話のベルが鳴った。家人がいないので空美が出ると、
電話の相手はポルノ撮影関係者の神埼だった。空美は嫌悪感を抱きながらも、また撮影をして
お金をもらえばレオタードが買えると思い、自ら神崎の元へ向かった。
 空美は美智子にコンクールの話をした。技術はあるが、容姿が良くなく、姫の役の似合わない空美に
「お前でも踊れるのがあるわ。傑作よ。みんな驚くわ」と美智子は笑いながら言った。
しかしコンクールには衣装代など莫大なお金がかかる。撮影で稼いだ金も新しいレオタードを買った事で残りわずかだ。
 一方で篠原姉妹は、コンクールでの衣装は本部からのレンタルではなく、奮発して新調する事にした。

268 :舞姫 テレプシコーラ 5 :04/04/11 20:21 ID:???
 空美は金を手に入れるために神崎へ電話をした。電話の途中、普段外をふらついてばかりの父が帰って来た。
撮影の事は艶子しか知らず、父には内緒にしてあった。父は空美を殴り神崎の元へ連れて行かせた。
 父は艶子を殴り、空美に稼がせた金をどこにやったんだ!出せ!と喚き散らした。
しばらく暴れた後、父は部屋を出て行った。肋骨が折れたのかうずくまる艶子を空美は心配する。
「お父さん神崎さんから大金をせしめるつもりよ。そうなったらどんな撮影になるか!」その言葉に空美は涙を流す。
 撮影で稼いだ金で空美はスタジオを借り、そこで美智子と艶子と共にレッスンをした。
しかし、今まで以上に酷い苦痛を伴った撮影の事が頭をかすめ、空美はレッスンに身が入らなかった。

 夏休みになり、コンクールの日が近づいてきた。コンクール前日、用意をし、ストレッチをして
六花はベッドに入るが、緊張して眠れない。一睡もしないうちに、朝はやってきた。

294 :舞姫 テレプシコーラ 6 :04/04/11 23:36 ID:???
 こんな大事な日に眠らなかったなんて!六花はベソをかくものの、何とか失敗せずに踊った。
踊り終わった後、応援しに来ていた六花の友達たちが口々に誉めてくれた。
友達たちが去った後、六花は椅子に寝転び眠った。眠っている間、誰かが近くで
「篠原…よ」「思いっきり」「下手だったら」「笑っちゃう」と言っている声が途切れ途切れに聞こえた気がした。

 楽屋に行くと、千花は既に衣装に着替えていた。本部のエリートで、千花のライバルであるひとみもいた。
 千花が踊る前に、六花はトイレに行った。その途中で本番用のポアントにソックスも何もつけないまま
歩いている人がいた。廊下にはワックスが塗ってある。本番用のポアントの上にソックスなどを
履かないまま廊下を歩くとワックスがうつり、舞台ですべってしまう危険があるのに。
 六花はひとみの母と共に舞台を見た。ひとみはドン・キホーテのキトリを踊る。
ひとみの前に踊っていた子もキトリを踊っていたが、本部の優等生のひとみの方がずっと上手だった。
しかし、ひとみは途中で転倒してしまう。ひとみもひとみの母も泣き出した。
 驚く事に、ひとみの次に踊った人も転びはしない物の、派手にすべった。
次の二人は大丈夫だったが、その次の人もまたすべった。
もしかしたら床が濡れていたりするのかも…六花は不安に思ったが、千花はすべる事無く完璧に踊った。
本部から来た、明日踊る桜子が「もうプロのバレリーナみたい」と褒め称えるほどだった。
 篠原姉妹は無事コンクールの予選に通過した。千花はともかく自分が…六花は感激のあまり泣いた。

 翌日、桜子を応援しに篠原姉妹は会場へ向かった。
 次々と色んな子が踊るのを見ていく中、「青い鳥」を踊る、跳躍力と柔軟力の素晴らしい少年が出た。
オペラグラスで見てみると、その少年は空美と瓜二つの顔をしている。
急いでプログロムを確認すると、出場者の名前は「須藤空」と書かれていた。
名前は一字足りないがあれはどうみても空美だ。何故空美が男の子として出ているのだろう?
女が偽って男のヴァリエーションで踊ったら、どんなに素晴らしい踊りでも失格になる。
楽屋に行って確かめようと思ったが、すぐ後に桜子が踊るので、それを見るために場を離れる事は出来なかった。

295 :舞姫 テレプシコーラ 7 :04/04/11 23:38 ID:???
 桜子が予選に落ち、結局本部から出た二人共落ちてしまった。六花は自分はよっぽどラッキーだったんだなと思った。
本部の貝塚先生から千花の母へ電話が来る。審査員の話によれば、千花が優勝候補だというのだ。
だが、もう一人候補者がいて、それは「青い鳥」を踊った男の子だという。

 決戦の日、六花はいつもより遅いテンポで踊る事にした。テンポが遅い方がそれだけ
ポーズをキープする時間が長くなるので、難易度が高く、また評価も高くなる。
慣れないテンポで少しミスをしてしまったが、六花は何とか踊れた。
 ひとみと同じドン・キホーテのキトリを踊った人も予選通過していた。それから後の人はほとんど落ちていた。
すべったりとトラブルがあったから仕方がない。でも何故連続で皆すべったのだろう?
六花は廊下でポアントにソックスをつけずに歩いていた人の事を思い出した。
廊下についているワックスをポアントにつけると、踊った時に見えないワックスが舞台にベタベタとつく。
ソックスをつけるのは自分がすべらないようにするためだけではなく、舞台の床にワックスを残さないためのものでもある。
あの時廊下を歩いていた人は自分より後の者の踊りを妨害するためにわざとソックスをつけていなかったのだろうか?
六花がその想像にびくびくしている中、千花は華麗に舞台で踊りだした。
 順調に踊っていたが、千花は途中で踏み外してしまう。素人目には些細な失敗だが、千花は悔し涙を流した。
 あんなのミスのうちに入らないよ。入賞出来るよ、と千花を励ますみんなの後ろで、何時の間にか居た女の子二人が
「無理!すべったじゃんよ」「ミスはミスだって」と笑った。六花がにらむとその二人は逃げ去った。

 六花はうっかり青い鳥を踊った少年の正体が空美である事を母に言ってしまう。
母はとんでもない事だと言い、空美の楽屋へ飛び込む。空美は艶子と共にその場を逃げ出した。
篠原姉妹も追うが、空美はタクシーで逃げてしまい、追いつけなかった。


320 :舞姫 テレプシコーラ 8 :04/04/12 22:52 ID:???
 本部の貝塚先生は、かなりの技術を持つという青い鳥を踊った少年を
楽しみに待っていたが、少年は棄権してしまった。がっかりする貝塚の後ろで、
「なんだってあの子が踊らないのよ!陰謀なんじゃないの!?」と車イスに乗った
女性が叫んでいた。プロのバレリーナは若い頃無理して踊ったために晩年足を
悪くする人が結構居る。遠めだからその女性の顔はわからなっかたが、貝塚は
何か気になり女性の後を追った。しかし、一足遅かったのか女性はもういなかった。
廊下には篠原家と金子先生がいた。貝塚が篠原母に青い鳥の少年が棄権した事を話すと、
篠原母はその少年が実は女だと言った。貝塚は驚くと同時に、空美(くみ)の姓の『須藤』にある者を連想した。

 千花(ちか)はまだ決選の結果も出ないうちにもう帰ろうなどと言う。失敗したからもう結果など見ても無駄だと言う。
そんな千花を六花(ゆき)と金子先生は励まし、千花は渋々結果を聞きにホールに戻った。
賞には一位が一人、二位が二人、三位が三人の計六名が選ばれる。自分には関係のない事だと
千花はぼんやりとしていたが、なんと二の一に選ばれた。一位に該当するものはおらず、実質一位だった。
 貝塚はビデオに撮られていた、予選の時の空美の踊りを見る。審査員が今回一位の者を出さなかった
理由がわかるほどに素晴らしい演技だった。貝塚は空美に指導をしたのは須藤美智子ではないかと
篠原母と金子に言う。若い者は知らないが、貝塚の世代でバレリーナを目指した者なら誰もが知っている
伝説のプリマだ。彼女は10代で海外へ渡り、噂では大きな怪我をして帰ってきたという。
そして彼女が帰国してから一人だけつけた内弟子が空美の母である艶子である。

 二学期が始まり、六花も本部のバレエスクールへ通う事になった。
エリートばかりの本部で自分のようなものが通用するのだろうかと六花は冷や汗をかいた。

 桜子はひとみに、千花の事で変な話を聞いたと話した。変な話って何?誰から聞いたの?
そう聞くひとみに桜子は「誰なのかはわからない。インターネットで見た話だから」と答えた。

323 :舞姫 テレプシコーラ 9 :04/04/12 22:56 ID:???
 篠原姉妹はボーイズスクールを覗き込んだ。そこには軽やかに舞う美少年の佐藤大地と、
対照的に荒々しく乱暴に、まるで猪が突進するかのように踊る池永拓人がいた。
 六花は本部の先生である五嶋に皆とともにレッスンを受けた。五嶋はキツい口調で物を言い、
気のせいか六花に辛く当たる。五嶋は胸に力の入りすぎていた桜子に向かい「そんなだから…」と呟く。
そんなだから予選落ちしたと言いたかったの?桜子は落ち込む。
 金子は六花に空美の事を訊ねる。六花が教師から聞いた話によると、艶子がN県から
いきなり転校手続きをしてくれとの手紙を送ってき、すぐに手続きの手紙を送ったら、
宛て先不明で戻ってきてしまったという。教師にもよくわからないらしいが、六花の通う学校から
転校してしまったという事だけは確かだ。手続きの書類が戻ってきたという事は、転入手続きが
出来ないという事だ。空美は学校をどうするのだろうか?義務教育を。金子は頭をひねらせる。

 五嶋は同僚から聞いた最近噂になってるという掲示板を見る。
そこには、一位候補で青い鳥を踊った少年を千花が無理矢理追い出した結果一番になった、
千花のバックにはバレエ界の大物がついているからそのせいでミスをしたくせに賞を取ったんだ、と書かれていた。
こんな事を書くのは誰なのだろう?それにこれは本当なのか?もしそうだったら大問題ではないか。

 千花は用事があり遅れるので、六花は一人で本部へと向かった。五嶋に叱られてばかりで千花はシュンとする。
しばらくして千花はやっと来た。何故遅れたのかと聞くと、履いてまだ半年も経っていないのに学校の
上履きに穴があいてしまったので、新しいのを買っていたためだという。
次の日も千花は送れてレッスンにやって来た。人身事故で送れた上に、人に当たって転び背中をスリむいたからだと言った。

326 :舞姫 テレプシコーラ 10 :04/04/12 22:59 ID:???
 くるみ割り人形の舞台で千花はクララ役をする事になった。しかも、プロの貝塚バレエ団での公演な上、
国内の賞を総なめにしている野上水樹とダブルキャストだ。
 キャストの書かれた紙を見て、桜子はひとみに「あの掲示板、先生見てないんだ」と呟く。
五嶋は「ひとみちゃん、貴方ももう少し細かったらクララ役になれたのに」と言った。

 皆が舞台に向けての練習をしている中、一人だけ役を与えられなかった六花は
惨めな気持ちになりながらも皆が軽やかにレッスンする所を見学していた。
六花は千花が腕に包帯を巻いている事、少し太めなひとみがやせはじめている事に気づいた。
途中でダブルキャストでクララ役をやる水樹と、フリッツ役をやる大地が来た。
水樹は思っていたよりも背が高くスラっとしていて、千花に負けず劣らずバレエがかなり上手かった。

 篠原母は六花に、F中を受験しなさいと言った。六花は近くの公立の三中でいいと言うが、
F中に入ったほうが受験が楽で、中学三年生になってから受験にかまかけてバレエを怠る事もないだろう、
入れなかったら、F中と同じくレベルが高いと評判のS付属でもいいからと言った。
千花はS付属の方に入る事を推奨した。

 拓人はしばらくバレエを休むらしい。サッカーに夢中になっているからだ。
男の子では活発な子であればあるほど他のスポーツの方に関心が行ってしまう。
 次の日、千花が遅れるというので六花は一人で本部へ行った。着替える前にトイレへ行くと
隣の部屋から水や尿を流す音とは違う、何か気持ちの悪い音がした。
 ある日、しっかり者の千花が電車の網棚にバレエグッズを忘れたといって六花の物を借りてレッスンを受けた。
置くと忘れてしまうからと、千花は網棚に荷物を置かない主義なのに何故…?六花は疑問に思った。

342 :舞姫 テレプシコーラ 11 :04/04/13 14:48 ID:???
クララの役はただ踊りが上手いだけでは出来ない。
バレエを通して演技もしななくてはならない。
演技しようとするあまり踊りにミスをする子が多い一方、
冷静な千花は技術はあるものの演技はいまいちだった。
演技が上手く出来なくて悩む千花に六花は、
練習の時だけ振りにセリフをつけないかと提案する。
セリフがついた事により、クララの心情などが理解しやすくなり、
千花は満足いく演技を出来るようになった。

ホールでのリハーサルの日、本番までに自分の踊りを
チェックしたいと言われ、六花はビデオカメラで千花たちの踊りを撮る事に。
 六花はリハーサルが始まる前にトイレへ行った。
本部で聞いたのと同じ、気味の悪い音が隣から聞こえてきた。
怖がりながら聞いていると、「ゲフッ」と嘔吐しているような声が漏れてきた。
六花は一体誰なのだろうと思い、トイレを出、廊下の隅に隠れて誰が出てくるかを見ていた。
驚く事に、トイレから出てきたのは ひとみ だった。
六花は昔食中毒で吐いた事がある。苦しくて苦しくて……ひとみのするように、
声もなく吐息もつかず、水を流すかのような物ではなかった。
それに ひとみは腹などを痛めている様子もなかった。もしかしてこれは…

 リハーサルが始まった。千花は衣装もメーキャップも決まっていて、とても可愛かった。
でも、最近千花はアクシデントばかりでどこかおかしい。何か隠し事をしているのだろうか?
千花と同じく可愛らしい格好をした ひとみも踊り出てきた。前と比べ明らかに痩せている。
スレンダーとまではいかないが、もう太めには見えない。
みんなおかしい。みんな何かを隠している。

343 :舞姫 テレプシコーラ 12 :04/04/13 14:49 ID:???
 本番の日、千花が青い顔をしていた。初潮がきてしまったのだという。
何もこんな大事な日に来なくてもいいのにと六花は千花を心配するが、
本番前の舞台稽古で千花はいつもと変わらず優雅に踊っていた。
順調に進んでいたのだが、途中でひとみが倒れてしまう。
ボーイーズスクールの講師で今回の公演の指導もしている鳥山先生は
ひとみの手に吐きダコがある事に気づいた。
家で千花の練習に付き合っていた六花は千花以外の者の振りも覚えており、
急遽ひとみの代役をする事に。ひとみは大丈夫だからと鳥山の前で踊るが、
また貧血で倒れてしまう。こんなに頑張ったのに、どうして?ひとみは泣きだし、
次の日にもある公演の事を考え、体調を整えるため帰った。

 本番、初潮が来たばかりの千花も、ぶっつけ本番の六花もなんとか何とか上手く踊った。
しかし、悲劇は思わぬ所に起きた。クララの見せ場で、雪の精役の人たちが
紙でつくられた雪を偶然同じ場所に蹴り上げ、積もらせたために丁度そこへ舞い降りた
千花が転び、怪我を負ってしまった。千花はすぐに病院へ連れて行かれた。
怪我を負った千花の代わりにダブルキャストの水樹を躍らせようとしたが、
水樹は事情があり来るのがだいぶ遅れていて、間に合わない。
千花に背格好も顔も似ている妹の六花が主役であるクララを踊る事になった。

344 :舞姫 テレプシコーラ 13 :04/04/13 14:50 ID:???
 六花は舞台裏からクララの出る上手(かみて)へ向かうが、
誰かが「違う!クララはあっち側からよ!」と
叫んだので下手(しもて)に行くと、そこにはクララが乗るはずのソリがなく、
上手の方にソリがあった。誰かが下手に行けといったのに何故?
六花は下手から上手にクララがグラン・ジュテで向かうのも
劇の一シーンだと見せかけ、何とかその場を乗り切った。
 一度クララが舞台裏へ戻り、そこで到着した水樹と入れ替わった。
六花はすぐに千花のいる病院へ向かった。千花は膝の靭帯を痛めたらしい。
母は当てにしていたスポーツ医学で有名な先生がいないというので手術を渋っていたが、
千花の倍にも腫れ上がった足を見て、仕方なく他の医師に手術をしてもらった。

 公演が終わり、桜子は例の掲示板を見ていた。
そこには以前と変わらず千花の悪口が書き連ねられている。
「あの篠原千花が舞台上で靭帯切る大ケガ!実力以上の事するから天罰だよね!」
「知ってる?靭帯切るとバレリーナとしては再起不能なんだよ!チョーコワ」
舞台で会った事を知っているなんて、これを書いている奴は何者なんだろう?桜子は怪しんだ。
 桜子は ひとみ やその他の本部の仲間たちと共に千花のお見舞いに行った。
口々に千花へ心配の言葉を言う本部生たちを桜子は、本当にこいつらは千花を心配しているんだろうか、
強力なライバルが一人減ったと喜んでいるんじゃないだろうかと疑った。
ひとみは最近また太ってきた。摂食障害は拒食と過食を繰り返すというのは本当なのだと桜子は思った。

695 名前:舞姫・補完1[sage] 投稿日:2007/11/23(金) 14:16:49 ID:???
立ち読みでうろ覚えなので、前の方が書かれていた分の続きをあらすじだけ。

六花は、中学受験に成功、翌年のクララにも選ばれる。
そして中学のダンス部の振り付けを手伝い、大成功を収める。
その後、バレエ発表会で、眠りの森の美女の「カラボス」を独自の解釈で
踊ったり、海外の振付師がレッスンに来た際、発想力を褒められたりと振付の才を見せ始め
、留学の誘いも出てきたりする。
 クララの舞台では、六花がひいきによりクララに選ばれたと誤解されたため、友人からもらったお守りを隠されたり
といやがらせをされたり、舞台の直前に過呼吸を起こしたりアクシデントに
悩まされつつも、自然な演技で観客を引き付ける。
しかし、ダブルキャストのライバル・茜が対抗心から大技を見せたため、
注目されることはなかった。
 
 千花は、手術が成功したのもつかの間、医療ミスが原因でじん帯のトラブルが再発
してしまう。母は、「踊らない千花など考えられない」と千花に移植手術をさせるが
、またも医療ミスで「サイクロプス・シンドローム」という障害にかかってしまい、復帰が絶望的に
なってしまう。更に、母の実家の経済的トラブルや、手術費のせいで、一家の経済も
少しずつ困窮し始めていた。

 千花は、自分と違って踊れるにもかかわらず弱音ばかり吐いている六花に
八つ当たりし、自己嫌悪に陥る。さらに、千花は学校でもいじめにあっていた。
千花は「医者になりたい」と口走るが、千花が踊りへのプレッシャーからどれだけ
追い詰められているか知らない周囲は、聞き流してしまう。
 さらに千花を可愛がっていた祖母も亡くなってしまった。
「祖母のためにも頑張らなくては」と決意したかに見えた千花だったが。

 

696 名前:舞姫・補完2[sage] 投稿日:2007/11/23(金) 14:20:29 ID:???
六花は千花が飛び降り自殺したとの報を金子先生から受け取る。
母はショックで倒れ、家事を六花が担当。六花は千花の悪口を言う茜をたしなめるなど
、精神的に強くなっていった。
「自殺者は成仏できない」という話を聞いた六花は、この世とあの世の境にあるという川「トゥオネラ」で踊り続ける
千花の夢を見る。以前聞いた「トゥオネラの白鳥」という曲の影響だった。
六花は、「白鳥の湖」のオデットの振り付けを元に、「トゥオネラの白鳥」という
クラシックバレエの常識を無視した独創的な踊りを作り、発表会で何とか踊りきる。
彼女の踊りはプロからも賞賛され、彼女はコリオグラファー(振付師)の卵として認められる
のだった。
第二部:ローザンヌコンクールに選ばれた茜と六花。高校生になった六花は、空港の鏡の自分の顔を
千花に見立てて語りかけていた。しかし、そこに雪で飛行機が欠航になったという報が。
第二部はまだ一話なのでここまで。