少年☆周波数 ― 王様の棋譜 ―/佐久間智代
182 名前:少年☆周波数 登場人物等 投稿日:04/09/14 20:04:23 ID:???
「少年☆周波数 ― 王様の棋譜 ―」 佐久間智代

入江裕貴:私立恵和高校に通うプロ棋士。四段。
山根容:五段。裕貴の親友で兄弟子。同じく恵和高校在籍。
北村透:九段。棋界史上最強の棋士。四冠王。
家鋪一順:七段。北村の2歳年上でライバル的存在。故・家鋪路洋九段の孫で日英ハーフ。
芳賀史隆:横浜恵和の生徒会役員。

横浜恵和:通称、横恵。恵和と同系列の学園だが、こちらはお坊ちゃま学校。恵和とは対立しがち。

☆ 将棋は四段以上からがプロ。
☆ タイトル戦は七番勝負。先に4勝したほうが勝ち。

183 名前:少年☆周波数 1 投稿日:04/09/14 20:05:48 ID:???
入江裕貴は秋にプロになったばかりの高校生棋士。
時として素人でもやらないようなミスを犯す裕貴は、いずれは名人位を狙える格の棋士と注目されている同門・同学年の山根にコンプレックスを抱いている。
また、対局全般への興味より、山根に勝ちたいという気持ちが勝ったりということもあり、自分はプロに向いていないのではないかと考える。
棋士に学歴は必要ないが、このまま将棋を続けるべきか迷う裕貴は、大学に進学するか否かでも迷う。
そんな裕貴に山根は「逃げ道作ってんじゃねーよ」と言い、その言葉に激昂した裕貴は、棋士をやめると言い出す。

それを聞いていた北村透九段は、これからがおもしろくなるから対局を見ていけと言う。
現在、北村は覇王戦の真っ只中。北村覇王は挑戦者である家鋪一順七段に3連敗していた。
そして第4局。記録係が途中で倒れてしまったために、裕貴は臨時で代行することになる。
この4局目でも、北村は敗色濃厚と言われていたが、最終局面で一気に逆転する。
記録係をしていた裕貴は間近でそれを見て、北村と、そして将棋全体にも強い興味を持つようになる。
裕貴の心からは、棋士をやめようとする思いはすっかり消えていた。
また、北村はその後も連勝し、タイトル戦で3連敗後に4連勝という前代未聞の記録を作り、覇王位を防衛する。

それからも、山根の留年の危機など色々あるが、裕貴たちは互いをフォローしながら、学校生活と棋士としての仕事を両立させていこうとする。


裕貴はタイトル戦の1つ、飛竜戦で2連敗する。次の対局相手は家鋪一順七段。
北村は観戦に来るが、対局中、家鋪が指したとたん、なぜか笑い出し退出。
北村は自分に見えていない何かを盤上に見出したのでは、と思った裕貴は長考に入る。
結果は裕貴の勝利であった。
祝いを述べ、対局中に笑ったことを詫びる北村に、自分にはいいヒントになったと返す裕貴。
裕貴は、家鋪が指した手が失着の一手だから北村が笑ったのだと考えたのだ。
だが、北村は対局とは全然別のことを考えて笑い出してしまったという。
しかし、どちらにせよ北村の行動が、裕貴が考えるきっかけとなったのは事実。
裕貴は改めて四冠の威力を思い知る。

184 名前:少年☆周波数 2 投稿日:04/09/14 20:08:46 ID:???
一方、恵和の兄弟校にあたる横浜恵和学園にて。
生徒会役員である芳賀史隆は、恵和のスポーツ大会の見学に行った際に見かけた裕貴のことを「絶対どこかで見た」と気にかけていた。
そんなとき、生徒会長が置いていた将棋雑誌の中に裕貴の写真を見つけ、彼が棋士であることを知る。
さらに、そこから裕貴を父親の将棋のビデオの中で見たことを思い出す。
「――そうだよ 思い出した 赤い服着てた」

芳賀はそのビデオを父の書斎で見直すが、その中での裕貴はグレーの服を着ていた。
記憶違いかと思って、ふと書架のほうを見ると、そこには将棋雑誌のバックナンバーが何冊も。
めくってみると、そのどれも入江裕貴が出ている部分に付箋がしてあった。
また、歌手・松浦理加子の引退記事を切り取ったものも見つける。
それについて図書館で調べる芳賀は、さらに引っかかりのある事柄を見つけ出してしまう。
そして、芳賀は横恵の春祭に、もともと呼ぶ予定だったOBの家鋪の他に入江裕貴も呼べないかと生徒会長に提案する。


裕貴は母に、将棋雑誌以外には、テレビや雑誌に一切出るなと釘をさされていた。
テレビトーナメント杯が近づいていることもあり、どうするべきか悩む裕貴。
そんなとき、裕貴は北村からの頼みで「週刊文秋」の記者に会うことになる。
担当の記者は北村の兄・健志だった。
取材・撮影とも滞りなく終了し、帰ろうとする裕貴に、北村は、テレビ棋戦の予選を見に行くからと告げる。
そこでやっと母の言葉を思い出した裕貴は、将棋雑誌以外の取材を受けたことをまずいと考え、写真のことを北村に確かめる。
北村は、載ったとしても小さな記事になると思うと返答。
不安になりながらも、大丈夫だよなと裕貴は自分を納得させようとする。

185 名前:少年☆周波数 3 投稿日:04/09/14 20:10:29 ID:???
名将戦。この日は北村と家鋪の対局ということで、裕貴と山根も見にきていた。
2人は別室で観戦するが、山根は、北村がどんなに不調でも家鋪が勝つ、と主張。
その理由は、裕貴が“家鋪先生の疫病神”だからというもの。
裕貴が側にいるとき、家鋪が敗戦したということが3回もあったので、山根はすっかり面白がっているのだ。
その対局中、北村の眼鏡をうっかり壊してしまった裕貴。
裸眼だと駒の字が読めないという北村に頼まれ(ほとんど脅し)、対局の読み上げをやるハメに。

一方、家鋪のほうは少年時代のことを思い出していた。
家鋪路洋九段を祖父にもつ彼は、子供の頃から嫌々将棋をやらされていた。
そして、自分が将棋嫌っていることを、年下ながらも奨励会では1年先輩にあたる北村には見抜かれていたのだった。

そのような中、読み上げ役として裕貴が対局室に入室。
家鋪のほうは、覇王戦での4連敗を思い出すが、裕貴は関係ないと考え直す。
だが、またもそんな家鋪の胸中を見抜く北村。
「そう考えることがすでに俺に負けてんだよ!」
結果、家鋪はそのとおりに北村に敗北する。

その後、北村の視力が本当はさほど悪くないことが発覚。
だまされたと怒る裕貴は、自分が誰かの疫病神だなんて嫌だと北村に訴える。
偶然それを聞いていた家鋪は、裕貴のせいではなく自分が弱かったからだ、という言葉を残して、その場を去った。

193 名前:マロン名無しさん 投稿日:04/09/15 03:22:07 ID:???
>>185
乙です。
その先輩プロ二人は何才くらいなんですか?
ヒカルの碁のイメージで割とおっさんをイメージしてたけど
もしかしてけっこう若いのかな
196 名前:少年☆周波数 書き手 投稿日:04/09/15 18:08:18 ID:???
>193
北村は、23〜24歳。
家鋪は最初に書いたように、その2歳上。
このあと出てくる関口も、家鋪と同年くらいかと思われます。

おっさんもいますが、観戦者や対局相手として出てくる程度であり、
10代20代の若手棋士を中心に話は進みます。

197 名前:少年☆周波数 4 投稿日:04/09/15 18:09:44 ID:???
横浜恵和の春祭。
横恵に招かれた裕貴の役割は、生徒会主催の多面指しでの家鋪の交代要員。
多面指しの間、芳賀が裕貴の相手をしていたが、そこに芳賀の後輩が役員の仕事のことで相談しにくる。
その会話に出てきた「俺にどうしろっていうの」という芳賀の台詞に、突如「逃げなきゃ」という感覚に襲われる裕貴。
芳賀の側を離れ、家鋪に交代を申し出るが、逆に裕貴が倒れてしまい、裕貴は保健室へ。
保険医がいなかったこともあり、芳賀はその場に残ることになった。
芳賀は気を失った裕貴の様子を見ているうちに、彼の額に大きな傷跡が残っているのを発見する。

多面指しのほうは無事終了。裕貴も意識を取り戻す。
裕貴は、家鋪と芳賀の会話で、芳賀が芸能プロダクション「芳賀企画」の社長令息であると知る。
その間に裕貴のほうも落ち着き、家鋪と裕貴は帰ることに。
その去り際、芳賀は裕貴に尋ねる。
「ニュースキャスターの松浦加織に似てるって言われるでしょう」
そんなこと言われたの初めてです、と返す裕貴。
だが内心では、やはり似ているのかと感じる。
裕貴と松浦加織は親子だったのだ。

一方、芳賀のほうも考える。
松浦加織。本名、入江加織。早川映子事務所所属のニュースキャスター。
松浦理加子の芸名で歌手デビューした彼女は、芸能プロダクションの社長との不倫・出産疑惑ののち引退。
そして、棋士・入江裕貴の連絡先は、自宅ではなく早川映子事務所。
―――入江裕貴は弟かもしれない。

198 名前:少年☆周波数 5 投稿日:04/09/15 18:11:23 ID:???
そして問題のテレビ棋戦の最終予選の日がやってきた。
対局相手は関口宗任六段。
関口は歌手としても活動していたが、棋士であることを常に優先していた。
裕貴のほうは、テレビに出ないようにするため、この対局で積極的に戦おうとしない。
それを感じた関口が投了すると言い出したり、北村から「『つまらないミスで負ける棋士』というレッテルをはられる」などの言葉を聞いたりと、色々あり、裕貴は最終的に本気で戦うことを決意。
結果、裕貴はこの対局で関口に勝利する。

また、この対局中、北村のところへ女性が別れ話のことで怒鳴り込んでくるというハプニングが発生。
裕貴は彼女を北村の元カノかと考えるが、実は彼女の友人である芳賀の姉・若葉だった。


三段リーグ。
裕貴と山根は観戦に行くが、そのあまりに緊迫した雰囲気に裕貴は驚く。
裕貴のときは、他の対局者同士でつぶしあいになり、初参加でまだマークされていなかった裕貴が運良く昇段するような形になったので、このような過酷さの実感がなかったのだ。
こんなに真摯に将棋に向き合っている人たちを飛び越えて、裕貴は先にプロになった。
なのに自分は次の対局で最初から負けるつもりでいるのだ。

一方、北村は裕貴の誕生日を知ったのをきっかけに、彼のことを改めて調べなおす。
入江裕貴の四段昇段時の年齢は、歴代の最年少から数えて4番目。
また、奨励会に入会してからプロになるまでの期間は、最短の2年2ヶ月。
今までさほど目立たなかったが、こうして見ると充分にタイトルを狙える格の棋士だ。

そんな中、裕貴の記事が載った「週刊文秋」が発売される。
北村の言葉とは違い、グラビアで大きくとりあげられ、さらにTV棋戦のことまで書いてあった。
これを見て、裕貴の母は激怒する。

199 名前:少年☆周波数 6 投稿日:04/09/15 18:12:38 ID:???
TV棋戦の日。裕貴は逃げ出すが、結局北村につかまり、対局に出ることになった。
しかし、頭の整理がつかない裕貴は対局に集中できず敗退する。
裕貴という棋士がいることを世間に広めたかった北村は、内心憤る。
また、この一件により、北村は兄の健志から、裕貴が松浦加織の隠し子であることを知らされる。

そして、偶然この放送を見ていた広告代理店は、裕貴に目をつける。
酒造会社からの依頼に合う手の持ち主を探していたのだ。
CMへの出演を依頼された裕貴は、はじめは断るが、手タレ代わりと聞いて承諾する。

一方、裕貴の母・加織は息子がテレビに出たことに不安を覚えていた。
所属事務所の早川は、いまどき未婚の母なんてマイナスにはならないと言うが、加織が恐れるのは自分のことではなかった。
「私は『あいつ』から裕貴を守りたいのに このままでは見つかってしまう」と加織は恐慌状態に陥る。

裕貴のほうには広告代理店から再び連絡がきていた。
依頼にはなかったが、裕貴の顔を出した60秒バージョンのCMも作ってみたので、それもクライアントに見せたいのだという。
母のテレビには出るなという言葉がまた頭をよぎるが、裕貴はこれを了承。
「テレビに出てはいけない」ということが気にかかりTV棋戦で集中できなかった裕貴は、他の人々が色々なものを捨てて真っ直ぐに将棋に向かっているのを見て、自分もそこから抜け出そうと考えたのだ。

200 名前:少年☆周波数 7 投稿日:04/09/15 18:17:34 ID:???
北村の名人就位式。
裕貴はそこで、家鋪から芳賀の父・芳賀建彦を紹介される。
挨拶を交わし、少しの間会話をするが、何故かそのあと裕貴は立ちくらみをおこしてしまった。

翌日、恵和の学園祭。
横浜恵和の生徒会役員であるということで招待を受けていた芳賀は、1人、裕貴に会いに行く。
芳賀に会った裕貴は、芳賀の父と会ったことを話す。
会話しているうちに芳賀の話し方が苦手だったことを思い出す裕貴。
そんな裕貴に、芳賀は2人で話したいことがあるので時間を取れないかと言う。

戸惑いながらも承諾した裕貴を、芳賀は強引に腕を引いて階段のほうへ。
その様子に裕貴は、何か嫌な感じを覚える。
人気のなくなったところで芳賀は問う。
「芳賀建彦のことをどこまで知ってる?」
先日会って挨拶をしたくらいの関わりしかない裕貴は、それを答えていくが、何故か動悸がおさまらない。
そうしている間に裕貴は気づく。
以前芳賀としゃべったときと、芳賀の父と話したあとにめまいをおこしたときの気分の悪さは似ている、と。
そのとき突然、芳賀は裕貴の首に手をかける。
とっさに「殺される」と思った裕貴は、逃げようして足を踏み外し、階段から転落してしまった。
また芳賀のほうも、自分のとった行動に驚き、その場を逃げ去る。

芳賀は自分の行動が信じられずにいた。
憎いと思っていたわけではないのに、どうして裕貴の首をしめるなどということをしたのか。
自分でもわけがわからない芳賀は、それでも次に会ったら本当に殺してしまうかもしれないという恐怖心を持ち、裕貴に接触することをやめようと考える。

一方、その現場を見ていた山根は、裕貴が芳賀に何かされていないかと心配する。
裕貴は、あの時は自分が足を滑らせらだけで、芳賀はそれに驚いて帰っただけだと説明。
しかし、首をしめられた一件があり、裕貴は芳賀に関わりたくないと思っていた。

209 名前:少年☆周波数 8 投稿日:04/09/16 23:05:59 ID:???
タイトル戦で対局ラッシュの中、学校のほうも期末が終わり、もうすぐ夏休み。
将棋に中心で生活できると喜ぶ裕貴と山根に、関口は、家鋪の別荘に皆で集まるから休みになったら来いと誘う。
2人は行きたがるが、将棋関係で学校の欠席が多いため、補習に行かなくてはならないと断る。

そんなとき広告代理店のほうから60秒バージョンのCMの放送が決定したという連絡が来る。
「週刊文秋」とTV棋戦の件以来、母とは冷戦状態にあった裕貴だが、黙っているわけにはいかないと、加織にCMの放送決定を伝える。
加織はまたも激怒。事務所に電話し、CMの放送を止めさせようとするが、裕貴はそれを阻止。
「そんなに未婚の母だとバレんのが嫌か!」と言う裕貴を、加織は引っ叩く。
裕貴はそのまま家を飛び出した。

裕貴の向かった先は、先日話があった家鋪の家だった。
家出同然に飛び出してきたことはすぐにバレたが、結局そのまま滞在することに。
家鋪の家には古い将棋の本を置いてある部屋があり、裕貴はそこに入り浸るようになった。
それを見た家鋪は、めぼしい本は自分が実家に持っていったので、それも貸そうかと言い出す。
喜ぶ裕貴は家鋪とともに、彼の実家へ。
その道中、具合を悪くしている女性を見かけ、家鋪は彼女を実家へと伴う。
女性は家族に連絡し迎えに来てもらうことになったが、現れたのは以前将棋会館に乗り込んできた若葉だった。
また、その後ろには芳賀の姿もあった。
裕貴がその場にいるのを見て、芳賀は無意識のうちにその名を呟く。

帰宅後、若葉は芳賀に、家鋪の家であったのは入江裕貴かと尋ねる。
そうだと返し、姉のほうこそ入江裕貴を知っているのかと聞き返す芳賀。
若葉は答える。
「入江裕貴はお父さんが愛人に産ませた子じゃない」
芳賀は、自分が裕貴のこと知ったのは最近のことで、しかも確証はなかったと話す。
それに対して、「覚えてないの?」と驚く若葉。
何のことか分からない芳賀は、自分が何を覚えていないのかと問う。
若葉は、覚えていないならいい、とにかく母の前では入江裕貴の名を出すな、と言って話を打ち切った。

その晩、芳賀たちの母親が手首を切るという事態が発生。
それを発見した芳賀は流れ出る血を見て思い出す。
「俺は小学生のとき入江裕貴を殺しに行ったんだ」

210 名前:少年☆周波数 9 投稿日:04/09/16 23:38:35 ID:???
事件の記憶を取り戻した芳賀。
母が病気になったのは裕貴のせいだと思った小学生の芳賀は、裕貴の頭を石で殴りつけ殺そうとした。
若葉のほうも、裕貴のことを芳賀に教えたのは自分であり、どんなやつか見に行こうと誘ったのも自分だということで、責任を感じたと言う。
だが、今の芳賀には、昔のような裕貴への憎悪のはない。
異母弟がいたのはショックだが、どちらかといえば話してみたいと言う芳賀に、若葉は反発。
事件のこともあり、関わらないほうがいいと弟に告げる。

裕貴のほうは、遅れてやってきた山根を交えて、家鋪宅での生活を楽しんでいた。
そこへ広告代理店からまたも連絡が。
クライアントであるミヤコ酒造が、裕貴に5年契約をしたいと言ってきたのだ。
それについての話を終えて戻ってくると、家鋪宅には加織が来ていた。
あの言い争い以来、初めて顔をあわせる入江母子は膠着状態に。
だが、ちょうど関口が顔を出してきたので、加織は大歓喜。(加織は大の関口ファン)
ひとまず気まずい雰囲気は吹き飛んだ。

そこへ芳賀が母親が世話になったことで家鋪に礼をしに来た。
また、裕貴のほうへも礼を言い、学園祭でのことについて謝罪してきた。
その様子を見ていた加織は、相手が『芳賀史隆』だと知ると、突然裕貴に帰ろうと言い出す。
加織は裕貴に大事な話をしなければならないというのだ。

211 名前:少年☆周波数 10 投稿日:04/09/16 23:39:26 ID:???
自宅に帰った加織は、裕貴が小学生のときにできた額の傷は、芳賀史隆がやったのだと話す。
逆行で犯人の顔が見えなかった裕貴は、通り魔にやられたものと思っていたが、祖母がその直後の様子を見ていたらしい。
自分が芳賀に怪我を負わされた理由がわからない裕貴に、「裕貴は何もしていない」「今だって何するかわかんないから近づいちゃだめ」と叫ぶ加織。
裕貴は、自分も芳賀が苦手だから近づかないと告げる。
また、芳賀の話し方が苦手なのはその事件があったせいか、芳賀の父が苦手なのも話し方が芳賀に似ているせいだろうか、とも話す。
加織は、裕貴が芳賀だけでなく、その父・芳賀建彦にも会っていたことを知り愕然とする。

裕貴はCMの契約の話がきていることを加織に打ち明ける。
今まで頑なにメディアへの露出を禁じていた加織だったが、今回はあっさりOK。
自分の話を聞かず、頭ごなしに「テレビに出るな」と言う母に反発を感じていただけの裕貴は、CM出演自体にそれほど執着してはいなかった。
だが、北村の「入江くんのCMもっと見たい」という言葉もあり、結局契約することに決定する。

また、裕貴は家鋪から、芳賀建彦から将棋の稽古の依頼があったことを伝えられる。

231 名前:少年☆周波数 登場人物 2 投稿日:04/09/18 20:33:13 ID:???


入江加織: 裕貴の母。芸名、松浦加織・松浦理加子。元歌手、現在ニュースキャスター。
芳賀史隆: 裕貴の異母兄。裕貴より1学年上。
芳賀建彦: 史隆の父。芸能プロダクション「芳賀企画」社長。
北村健志: 北村透の兄。「週刊文秋」記者。

232 名前:少年☆周波数 11 投稿日:04/09/18 20:34:21 ID:???
裕貴は約束があった将棋の稽古のために芳賀企画へ。
再度建彦の声を聞いた裕貴は、やはり話し方が苦手だと感じ、なるべく関わらないようにしようと考える。

その数日後、恵和に史隆がやってくる。
史隆は、幼いころ何の罪もない裕貴に怪我をさせたことを後悔し、血縁者として力になりたいと考えるようになっていた。
逃げ腰になりつつも一応会うことにした裕貴は、史隆に「友達になりたい」と言われる。
なんとか断ろうとする裕貴の困惑した様子を見て、一緒にいた山根は機転を利かせ、帰るきっかけを作ってやる。
おかげで、その場から去ることができた裕貴だが、去り際、史隆から名刺をわたされる。

学園祭の一件や、学校の正門で待ち伏せされたこともあって、山根は史隆をストーカー呼ばわり。
史隆に電話したり会ったりするようなことがあれば、自分に知らせろと言う。
それに対して、自分からは電話しないし友達にもならないと裕貴は答える。

裕貴は加織から北村透への番組出演交渉を頼まれる。
マスコミ嫌いの北村にダメもとで、TV番組のスタッフをしている知り合いが取材させてほしいと言っている、と話す裕貴。
北村の返答は、生放送であれば出てもいい、というものだった。

北村はタイトル戦を勝ち続けた。
名将戦でも圧勝した北村は、ついに棋界初の六冠王に。
残るは覇王戦防衛と王者戦挑戦の2つとなった。
このことで、あらゆるメディアが彼に注目するようになる。
また、裕貴と山根も覇王戦の予選で勝ち進んでいた。

233 名前:少年☆周波数 12 投稿日:04/09/18 20:37:18 ID:???
そして加織がキャスターを務める番組に北村が登場。
インタビューは順調に進むが、若手棋士の話題になったところで、北村が爆弾発言。
「もちろん松浦さんの息子さんの入江裕貴四段も覇王戦勝ち続けてますから」
この言葉により、裕貴が松浦理加子の隠し子だと知られ、2人はマスコミに追われることに。

テレビ局に一緒に連れてこられていた健志は、弟にこのことを記事に書けと言われる。
北村は騒動が起こることを狙って入江母子のことを暴露したのだ。

北村の思惑を知らない裕貴は、とりあえず山根の家に避難。
そこで見た雑誌により、自分の父親が芳賀建彦ではないかと噂されているのを知る。
家では一切父の話題を出さなかった母に、裕貴は確かめることができない。
代わりに史隆のほうに探りを入れようと、わたされていた名刺にあった番号に電話する。

一方、入江母子の問題が騒がれたことで、若葉は母親の精神状態を心配し、彼女のいる別荘へ向かおうとしていた。
そこへ史隆の携帯に裕貴から電話が。若葉は、史隆が裕貴に会っていたことを知り激怒。
2人は言い争いになる。

その様子を電話を通じて聞いていた裕貴は、その中で出た史隆の一言により様相が一変。
「思い出した」「怖かったからがんばって忘れたのに 芳賀建彦…」
その言葉を残して裕貴は倒れた。

病院に運ばれた裕貴。
念のために検査入院をすることになったが、裕貴はすぐに帰ろうとする。
止めようとする山根に、原因は芳賀親子の話し方が苦手なだけだから2人に近づかなければ大丈夫、と裕貴は言う。
さらに「芳賀さんのお父さんはたぶん俺の『父親』」とも。
お父さんならそんなに嫌わなくても、と山根は言うが、裕貴は嫌悪感をあらわにする。
『関係ない』『俺の子って証拠はない』
加織が裕貴を妊娠しているときに、建彦はそう言ったというのだ。

234 名前:少年☆周波数 13 投稿日:04/09/18 20:40:02 ID:???
裕貴は自分が母の胎内にいたころに聞いたことを覚えているのだという。
その中でも特に強烈に残っていたものが、この音だった。
『どうしろっていうの』『しらない』『おれのこって しょうこはない』
幼い頃はわからなかったが、成長してこの言葉の意味するところを知り、恐怖を覚えた裕貴は、自分でその記憶を封じていたのだ。

その間にもタイトル戦は進み、裕貴と山根は覇王戦で対局することが決定した。
そんなとき、山根は偶然北村兄弟の会話を聞き、北村がわざと入江母子のことを暴露したことを知る。
さらに、北村にもその話を聞いていたことがばれてしまう。
動揺した山根は、覇王戦で裕貴に敗退する。

裕貴は山根から、史隆が裕貴に会いたがっていることを聞かされる。
以前、裕貴が山根の家から電話したため、史隆は山根のほうへ何度も連絡を入れていたのだ。
芳賀親子と関わりたくない裕貴は、これを最後にと山根も同席の上で史隆に会うことにする。
しかし、史隆が少し話しただけで、裕貴は顔色を変え逃げ出してしまう。

山根は、裕貴がこれほどまで嫌悪感を抱いている人物に会わせたことを失敗したと考え、自分のほうから裕貴が史隆に会うつもりがないことを伝える。
また、自分が入江家の事情を知っていること、裕貴が現在将棋で大事な時期だということも説明する。
史隆のほうは、裕貴とは血のつながった兄だ、将棋なんてたかがゲームじゃないかと言って反発。
それに対して山根は、自分は裕貴の兄弟子として彼の将棋の妨げになるものは排除しなくてはならない、と反論する。

裕貴は、一戦ごとに力をつけていく。
ついには挑戦者決定戦で家鋪を下し、覇王戦に出場することになった。
祝いを述べに来た北村に、山根は問う。
あのことをいつ言うのか。対局中に話して、裕貴を動揺させるつもりか。
北村は、タイトル戦に出てくる棋士にまでなった裕貴にそんなことはしない、と返した。

235 名前:少年☆周波数 14 投稿日:04/09/18 20:49:35 ID:???
普段はスーツなどで対局に出る裕貴だが、タイトル戦には和服で出なくてはならない。
しかし最短でも四局あるというのに、裕貴が持っているのは、師から贈られた一揃いだけ。
あとは貸衣装で済ませようと考える裕貴に、加織は自分が買ってやると言い出し、2人は呉服店へ。
そこへ北村健志がやって来る。
加織は「週刊文秋」の取材を承諾し、場所をここへ指定していたのだ。
自分たちのことを真っ先に書きたてた雑誌の取材を受けることに釈然としない裕貴。
しかし、健志の質問には、北村を棋士として素直に尊敬していることを語る。
そんな裕貴の様子を見て罪悪感に駆られた健志は、生放送の一件は北村がわざとしたことだと話してしまう。

一方、史隆は「週刊文秋」で裕貴の覇王戦出場を知る。
見てみたいと思うと同時に山根の言葉を思い出した史隆は、「俺は実の兄なのに」と独り言つ。
それを聞いていた父・建彦は、史隆に語る。
妊娠した加織を一方的に捨てたこと。
そのことを酷く後悔し、今は何でもしてやりたいと思っていること。
しかし、入江側からは認知や養育費の要求が一切なく、関わりたくないと考えているらしいこと。
それを聞いた史隆は、向こうは父の考えが変わったことを知らない、一度ちゃんと父親として会ってみたくはないか、と話す。


覇王戦前夜祭。
途中で態度がおかしくなり、その場を抜け出した裕貴。
様子を見に行った山根は、裕貴が健志から北村の生放送暴露の件を聞かされたことを知る。
健志のことを「俺には口止めしておいて」と思わず口にしてしまう山根。
裕貴は山根もこの件を知っていたことにショックを受ける。

236 名前:少年☆周波数 15 投稿日:04/09/18 20:53:51 ID:???
また、前夜祭には芳賀親子も来ていた。
2人は家鋪と、そして、かつて建彦の将棋の師匠であった恩田に出会う。
恩田は2人が裕貴に会いにきたことを知り、家鋪に裕貴を呼ぶように頼む。
その間、芳賀親子は待合室で対局のビデオを見ていたが、史隆はそこでようやく気づく。
父のビデオで見た裕貴のことを赤い服を着ていたと思い込んでいたのは、昔の事件での血の印象と混同していたのだ。
史隆は、密かに罪悪感を覚える。

一方、恩田から頼まれた家鋪は裕貴の部屋まで来るが、山根はそれを阻止。
直接芳賀親子に断りを入れに行く。
史隆は当然、山根に反発し、2人は言い争いになる。
それを聞いた北村は、芳賀親子に今日のところは帰るようにと告げる。
初対面でいきなり話に割り込んできたことに史隆は憤るが、建彦のほうはこの言葉に従い、そのまま帰ることになった。

帰宅したあとも史隆は納得がいかず、父に不満をぶつける。
それに対して建彦は、自分が頼んだ恩田は確かに連盟理事であり地位は高いが、よほどのことでなければ北村六冠王の意見が通る、と説明。
棋界では、キャリアも年齢も関係ない。ただ将棋が強ければいい。
そして、入江裕貴はそうした世界の住人なのだ。
それを聞いた史隆は、彼にとって自分たちは必要ではないのかと涙する。

242 名前:少年☆周波数 16 投稿日:04/09/19 14:21:53 ID:???
覇王戦、第一局1日目。
北村の件と、建彦が奨励会員だったことを知って、動揺と混乱の最中にある裕貴。
ついには「もう将棋指せません」と言い残し、部屋に立てこもってしまう。
様子を見に来た山根に、裕貴は将棋が気持ち悪いと言う。
将棋するのがつらいという裕貴の言葉を聞いた山根は、北村たちにこのまま続けさせるのは無理だと告げる。

北村は、裕貴が生放送の件を知ったことを山根から聞き、自ら連れ戻しに行く。
その北村に、何故あんなことをしたのかと問い詰める裕貴。
北村の答えは「俺から覇王位を奪えたら教えてやるよ」というものだった。
その北村の態度に裕貴は激怒。対局に戻ることを決意する。

対局に戻る前、着崩れた裕貴の和服を直しながら、山根は言う。
「俺さ やっぱ芳賀さんのお父さんを入江の『父親』とは思えないよ」
『お父さん』というのは、適度な時間をかけて『自分の父親』と思えるだけの経験値をつんでおいてくれないと、というのが山根の意見だった。
それでもなお、自分が将棋を指すのは芳賀の父の血のせいではないかと恐れる裕貴。
しかし山根は、裕貴が棋士になったのは自分の功績以外の何物でもない、と語る。
「入江が将棋に興味を持つようずいぶん誘導したつもりだよ」
「棋士 入江裕貴は俺の環境作りの賜物なのに、なんで最近会ったばっかのおっさんの血筋ゆえになっちゃうんだ」
そんな山根の言葉により、これまで将棋をしてきた中での様々な出来事を思い出した裕貴は、元の調子を取り戻していく。

覇王戦、第一局2日目。
裕貴が2四歩と指したところで、北村は長考に入り、退出。
その間、対局室の外で休んでいた裕貴は、人に呼ばれて庭園でしゃがみこむ北村を見つける。
貧血を起こしたという北村を支えようとした裕貴は、その体が異様に骨ばっていることに気づく。
病気なのかと問う裕貴に、北村は六冠をとった時点で療養のため休場する予定だったと話す。
覇王戦に出てきたのは、裕貴が挑戦者として上がってきたから。
入江裕貴がタイトル戦に出てくるのを、北村は誰よりも楽しみにしていたという。
北村はそのまま気を失い、入院。
裕貴は不戦勝により覇王位を得ることになった。

243 名前:少年☆周波数 17 投稿日:04/09/19 14:24:23 ID:???
後日、裕貴と山根の2人は北村を見舞いに行く。
入院中のくせに平然と煙草を吸っている北村の側には、家鋪の姿もあった。
裕貴は容態を心配するが、北村の病名は糖尿病で、経過は良好。
来期の覇王戦予選までには復帰できるとのことだった。
「来年は挑戦者となって覇王位を奪いに行くよ」
「第一局2日目の2四歩の続きを俺は指さなきゃいけない―――!」
北村はそう語った。

病院からの帰り道。
山根は、生放送暴露の理由を聞かなくても良かったのかと裕貴に問う。
裕貴は、不戦勝だったので勝った気がしない、いつか本当に北村透を打ち破ったと思えたときに聞かせてもらう、と答えた。
また山根は、史隆があれからも連絡を入れてきていることも伝えた。
山根は、お父さんの財産狙いたくなったら連絡してみればと茶化しつつも、史隆が一生懸命であることを知り、きっかけは何でもいいと思う、と言った。
裕貴のほうも、いつか芳賀親子と和解する気になる日が来るかもしれないと考えるようになる。

一方、2人が去ったあと、北村は家鋪に頼み事をする。
休場している間は、自分は棋界全体に目が届かない。その間、自分に代わって入江裕貴を見守ってほしい、と。
何故そこまで裕貴にこだわるのかと問う家鋪に、北村は答える。
たくさんのタイトルを若いうちから自分にくれた将棋界にお返しがしたい。
そのために速効的に棋界が活性化する要素を与えたかった。
それに選ばれたのが、CMに起用されるほどの容姿と、10代でタイトルを狙える格を持つ棋士、入江裕貴だった。
しかし北村には棋界のことだけを考えるあまり、裕貴の人格を無視してしまうような危険性がある。
北村は裕貴の個人情報を生放送で流したことを後悔しており、これからは身を挺してでも守るつもりだと家鋪に語った。


そうして波乱を含んだタイトル戦は終了し、すべては日常に戻っていった。
それからしばらく後、裕貴は家鋪から一本の電話を受け取る。
それは北村透死去の報だった。

244 名前:少年☆周波数 18 投稿日:04/09/19 14:34:43 ID:???
北村の死因は胃癌。
糖尿病の治療に気をとられて発見が遅れたこと。
対局後には毎回体重が激減するので、今回も特に注意していなかったこと。
レントゲンには胃の腫瘍部分が写らなかったこと。
それら様々な要因が重なっての不幸だった。

北村の死を目の当たりにして裕貴は呆然とする。
その様子を心配する家鋪に、「こんなの嘘でしょ 来年の覇王戦でもう一度―――」と呟く裕貴。
「僕が2四歩と指したら 北村先生が7三歩成って…」
それを聞いた家鋪は驚き、どういうことかと裕貴に問う。
裕貴は答える。北村は覇王戦で倒れる寸前、こう言ったのだ。
『7三歩成』
『次の対局はここから始めよう』
ずっとあの時から考えている、と話し続ける裕貴。
家鋪は慌ててその口をふさぎ、このことは誰にも話してはいけないと言う。
そばで聞いていた山根にも口止めし、家鋪は語る。

その一手は北村さんが入江君に伝えただけで盤上の駒は動いていない
その手は入江君だけのものだよ
入江君だけに封じられた封じ手だよ
北村先生が入江君に遺した最期の棋譜――――


「北村先生の最期の棋譜か…
 そんなすごいもの貰ってしまったら
 僕はこれから将棋のこと以外考えられなくなってしまう」


245 名前:少年☆周波数 19 投稿日:04/09/19 14:35:54 ID:???

北村透永世名人は棋界史上初の六冠ほか、数々の記録を残し24歳で夭折した。

直接 北村透永世名人から覇王位を継いだ入江裕貴は、その後連続十五期覇王位を防衛し続け、他棋戦も数々タイトルホルダーとなり活躍する。
彼はその華麗な容姿も相俟って、特に覇王戦に強い棋士として世間に名を馳せることになる。


<完>

246 名前:少年☆周波数 追記 投稿日:04/09/19 14:37:56 ID:???
本編の他、番外短編2編あり。

「少年☆周波数 ― 預言者の階段 ―」
   北村透四段、初の公式タイトル戦出場の話。
   視点はプロになったばかりの17歳の家鋪四段。
   これ1本でも独立した物語として読むことができる。

「少年☆周波数 ― 残香の軌跡 ―」
   北村透の死から半年後の裕貴の様子。北村の長兄・雅人視点。
   こちらは完全な番外編。
   

この2編は、それぞれ別のコミックスに収録されています。