妖しのセレス/渡瀬悠宇
317 :妖しのセレス 1 :04/05/08 05:28 ID:???
「貴方はこの先、暗黒の星に支配を受けることになります。見えるのは血と怒りと哀しみ。
この世の全ての均衡の崩れ。16の星と月が巡った日、宿命の時はやってくる。
それを光と闇いずれかにするかは貴方が本来持つ強大な生命の力次第」もうすぐ16歳になる
御影妖(みかげ・あや)は占い師にそう予言される。双子の兄・明(あき)も同じく16になる。
妖は引ったくりを捕まえようとして歩道橋から落ちる。その瞬間、見た事のない光景と
不思議な紋様が頭に浮かぶ。妖は地面に落ちる時、一瞬だけ宙に浮き怪我をしないですんだが、
すぐに車が迫ってきた。それをサングラスの男が助けてくれた。不思議な感じの格好良い男に
もう一度会いたいなと思いながら、妖は明と共に食卓に着く。両親は明日の誕生日には真っ直ぐ家に帰れ、
お祖父ちゃんの家で誕生パーティーをするという。毎年そんな事しないのに何故…?
不思議に思いながらも翌日祖父宅へ行くと、何故か親戚が全員集まっている。それに皆喪服のような黒服を着ている。
すると、昨日妖を助けた男が箱を持ってきた。祖父はそれをプレゼントだと言う。中を開くと、
人の手が入っていた。妖の頭の中に、昨日落ちた時と同じように映像が走る。
そして妖の服が裂け、染めた髪は一瞬黒く染まり、風もないのに浮き上がった。
隣に座る明は体中から血を流している。明が死んでしまう!妖は叫んで祖父に助けを求める。
「明は死にやせん。今のでわかった。この子は御影の一族を支える大事な子だ。死なせるわけにはいかん。
明から離れなさい、妖。死ぬのはお前だ」泣き出す妖の両親を親戚達は部屋から連れ出す。
呆然とする妖を親戚達は押さえつけ、首を締める。「ごめんね妖ちゃん。御影の家に生まれてきたのが悪かったんだよ」
息が苦しい、このままでは死んでしまう。妖の精神に呼応するように、窓ガラスが割れた。
 気がつくと妖は松の木の上にいた。幼い頃明と共に上った木だ。妖の体には血がついていた。
サングラスの男は妖を追いかけ木に登り、突然妖にキスをした。驚いた妖の悲鳴に親戚達が集まる。
そこへ現れた、鉄箸を持った少年は鉄箸で親戚達を倒し、妖を抱えて走った。行く先には、着物を着た女がいた。
「安心しい、私らは味方や。残念やけど あんたの身内…御影家はあんたを必ず殺すで。あんたは『天女』やさかい」

318 :妖しのセレス 2 :04/05/08 05:30 ID:???
 女の名は梧納涼(あおぎり・すずみ)少年の名は雄飛(ゆうひ)。納涼は、妖が天女の子孫だという。
昔、水浴びする天女を見初めた男が天女の羽衣を隠し、天に帰れなくなった天女は男と結ばれ子供を産んだ。
だがそれはあくまでも伝承でしかない。妖はあり得ないと否定するが、
自らも天女の血を引くという納涼は手も触れずに扇を浮かべて見せた。
天女の子孫は稀に超能力を持つのだ。そして妖も…もしそれが事実だったとしたら、
双子である明にも何かあるのかもしれない。祖父の言っている事も気になる。
自分を匿ってくれた納涼の家から抜け出し、妖は祖父宅へ向かう。
自分の居た場所には血のシミが無数にあった。そこにはサングラスの男がいた。男は十夜と名乗った。
祖父と父と従兄の各臣(かがみ)も現れた。
彼らは話す。御影家には昔天女の力を持つ娘がいた。その娘は16になった時御影家を滅ぼそうとした。
血筋を守るためにその娘を殺し、それから生まれてくる女は16になったら力を持っているかどうか試すようになったのだ。
そして、明は御影家のためになる力を持って生まれたのだ。
まだ信じ切れていない妖は嘘だ!と泣き叫ぶ。それにかまわず親戚たちは銃を妖に向けた。
父はそれをかばい、倒れた。怒りと悲しみで妖に眠る力が目覚めようとする。
「いけない…お前は普通の子なんだ…妖…明を救って…」
父はそう言い残し死んだ。妖の力は爆発し、部屋が音を立て壊れていく。
妖が抜け出した事に気づき駆けつけた納涼達は妖を落ち着かせ、梧家へ連れて行った。
 明は目を覚ました。傍らには母が居る。「妖にはもう一生会えないわ。もう、元の生活には戻れないの」母はうつむき、言った。
母は各臣から、妖が力を使い夫を殺したと嘘の出来事を聞いた。

320 :妖しのセレス 3 :04/05/08 05:39 ID:???
 妖は埼玉の川越にある学校へ雄飛と共に通う事になった。そこには天女伝説がある。妖はそこで十夜に会う。
十夜は、自分は記憶喪失だと言う。覚えているのは『御影』『十夜』の単語だけ。御影家にその記憶を引き出してやると
言われ、雇われたのだ。十夜はボロボロになった小さな箱を渡す。その箱の中にはピアスが入っていた。
誕生日に明が妖に渡そうと買った物だ。妖はそれを耳につけた。妖は家から血が流れ出す幻覚を見る。
気になって家に帰ると、そこには以前と変わらぬ母がいた。いつものように和やかに話す中、
母は突然包丁を持ち「何でお父さんを殺したの?」と訊ね、妖を斬りつけた。雄飛は妖を追いかけて来た。
そこには十夜がおり、十夜はドアをナイフで壊し進入した。家の中には、妖の姿をした黒髪の女が宙に浮いていた。
「妖は眠りました。私は下界へ降りし者。名はセレス」黒髪の美しい女は言った。

 まとめ
御影妖(みかげ・あや)
天女の血を引く。力は未知数。

御影明(みかげ・あき)
妖の双子の兄。同じく天女の血を引く。体に現れた傷から、明が御影家を支える重要人物になると言われた。

十夜
記憶喪失者。『御影』『十夜』という言葉しか記憶に残っていない。
かなりの美形で、強い。

梧納雄飛(あおぎり・ゆうひ)
納涼の血縁。鉄箸で戦う。料理が上手い。

梧納涼(あおぎり・すずみ)
関西の天女の血を引く。サイコキネシスなどの力を持つ。

・天女は御影家を滅ぼそうとしている。
・御影家の者は天女の力を持つものを殺そうとしている。
・天女の血を引くものは不思議な力を持つ。

322 :妖しのセレス 4 :04/05/08 07:23 ID:???
「別の者ではありません。『妖』は私。初めからね…ただ『妖』としての意識が強かっただけ。
『私』をここまで出せるのは御影の代々の娘でこの肉体が初めて…」セレスは笑みながら言い、
御影の手のものである十夜を力で攻撃する。雄飛はセレスに口付けをして止める。セレスは妖へと戻った。
母は精神的ショックが原因で昏睡状態に陥った。妖はセレスになっている間の記憶はない。
セレスは母や十夜にまで攻撃したという。セレスは明までも狙っているのか…?
 梧家で、妖と雄飛は襖越しに話す。梧家は日本舞踊家元梧家の分家で、雄飛の死んだ兄がつくった物だという。
納涼は兄の嫁で、彼女は元々関西の流派で兄とも付き合いが長く、兄は結婚してすぐに死んだ。
 御影家で軟禁状態だった明はこっそりと抜け出し、十夜の協力を得て梧家へ来た。妖は喜び、二人は一緒に眠った。
夜に明の体を誰かが撫でる。「その全身の傷…お前は私を辱めた男…!羽衣を返しなさい!」セレスは明の首を締める。
十夜がそれを助けるが、セレスの怒りは収まらない。「私が天から降り立った時、その男は…御影は私から
羽衣を盗み取った。その為に天へ戻れなくなった私を…その男は強引に…そう、その傷。それは私がこの力でつけたもの!」
明はわけがわからず動揺する。興奮するセレスを妖に戻すため、雄飛はセレスにキスをした。
 明は迎えにきた各臣に連れて行かれ、妖は十夜のマンションへ連れて行かれた。自分が知らない間に
何者かに変わり、人を襲う…恐怖で震える妖を十夜は抱きしめる。妖は敵という関係にある十夜に惹かれ、
十夜の首筋にキスマークをつける。十夜も妖の首にキスマークをつけた。
 朝、十夜は各臣に呼ばれ各臣の会社へ向かった。妖は迎えにきた雄飛を連れ後を追う。
妖が中へ入った途端電子ドアは閉まり、雄飛と妖は分かれた。が、おばけのQちゃんと顔がそっくりな、
梧家の使用人が現れた途端に何故かドアが開いた。妖が会社の中を歩き回ると、各臣がいた。
天女を殺したがっているのは祖父だ、僕は天女に興味を持っている。各臣はそう言い、どういう状況に置かれると
天女が現れるのかを試したいと、妖を押し倒した。妖は怯えながらも、セレスに自分の意識を乗っ取らせてたまるかと堪えた。

323 :妖しのセレス 5 :04/05/08 07:26 ID:???
 明は落ち込んでいた。やっとの事で会えた妹に宿敵だと襲われ、
身に覚えのない羽衣泥棒だの強姦魔だのの罪を突きつけられた。しかも父は死に、母は入院。
そこへ各臣の下で働いているというアレキサンダー・O・ハウエルというアニメとゲームが好きな
オタクの外国人が明を迎えにきて、明は十夜と共にある部屋へ連れて行かれた。
妖は挿入寸前の所まで各臣にされていた。「あくまで天女を抑える気なら、これはどうかな?」
各臣は妖を明のいる部屋に連れて行った。妖の中のセレスが怒りで現れ周りの物を破壊する。
各臣は暴れないようガスでセレスの自由を奪った。
かつて、セレスは御影に強引に妻にされその子を産んだ。
セレスは誓った。生まれ変わって自分の血を引く御影家に生まれてくる女児の…
自分と最も遺伝子が近い娘に生まれ御影家へ復讐すると。16の年に満たないとセレスの力は使えない。
だが毎回儀式と称して御影家の者はセレスの宿る娘を葬る。今度はやっと生き残れたのに、
セレスの憎む男…セレスの夫までも双子の兄として生まれてきてしまったとセレスは言う。
「今の話が本当だとしても、俺は俺だ!そんな男の記憶なんかない!」明は叫んだ。
そこへ雄飛が現れ、妖を助けに来た。セレスは雄飛を抱え、力により破壊した壁から逃げる。
各臣は何故雄飛が入れたのかと驚く。ドアにはカメラがあり、カメラは顔を識別して許可された者だけを中に入れる。
そのプログラムを担当したオタクのアレク(アレキサンダー)は、アニメのキャラクターの顔を勝手にインプットしていたのだ。
 各臣は採取した妖の血液を分析しろとアレクに渡した。「C-PROJECT 天女計画の開始ですか?」アレクは訊いた。
天女伝説は日本だけではなく、ヨーロッパ、アジア、インドネシア、ミクロネシアにまで広がっている。天女の神秘的な
力を解明するため、手始めに日本国内の天女の遺伝子をもつすべての人間を手に入れると各臣は言う。
彼女たちをCゲノマーと称す。各臣は広大な野望に燃えた。妖も手に入れる。
そのために各臣は十夜を妖に接近させようと、十夜の脳にメモリーデータ・知識や情報をインプットした。
それにより十夜は知識を得、保険医として妖の学校へ潜入した。

328 :妖しのセレス 6 :04/05/08 13:24 ID:???
 妖は学校で、女子生徒と「先生」と呼ばれた男が抱き合っている所を目撃した。
翌日、同じ学校の女子生徒…浦川が燃えてしまう幻覚を見た。
彼女は気分が悪くなったからと倒れ、妖と雄飛は浦川を保健室に運び、そこで保険医に扮した十夜に会う。
十夜は冷たく言う。「俺が用のあるのはお前じゃない、セレスだ」
もう一人の保険医が突然発火した。幻覚の中で燃えていた浦川と何か関係が…?
 気になり、妖は浦川に話し掛けるが、浦川は拒絶する。体育の授業中、浦川は倒れる。
倒れた浦川のすぐ横の木が突如燃え出した。十夜が助けたが、十人ほどの生徒が火傷をした。
もしや、自分が無意識にセレスの力を使っているの?妖は怯える。
妖は特別講師の羽山と浦川が抱き合ってるのを目撃。この前見た光景はこの二人だったのか。
妖に気づいた浦川はばらされると不安がるが、妖は自分も浦川と同じように好きな人がいる、
お互い頑張ろうと微笑んだ。浦川と妖は友人同士になった。
浦川は毎週水曜と土曜は羽山とホテルに行っているという。意外と進んでいると妖は驚く。
 女子生徒三人は廊下で手紙を拾った。その手紙には浦川と羽山は付き合っている、
水曜と土曜にはホテルに行っていると書かれていた。文の最後に妖の名前が書かれていた。
三人はホテルに入っていく二人の写真を撮り、翌日それを浦川に見せ、ばらされたくなかったら金を出せと脅迫した。
三人は妖がばらしたと言う。裏切られたと浦川は涙を流す。先生との仲が引き裂かれてしまう…!
「消えろ」そう言いながら浦川は三人を睨み付ける。すると三人の全身が燃え始めた。
「先生との時間を奪うやつなんて皆許さない。絶対に許さない。御影妖…!」
感情の高ぶった浦川の歩く所全てに火がつく。浦川は妖を探して歩き回った。
 火の中にいた妖は十夜に助けられてプールまで運ばれる。十夜は妖に言う。天女の子孫はお前だけじゃないと。
日本各地に天女の遺伝子を持つCゲノマーがいる。御影家はC計画と称してその人間を捕らえようとしている。
明は、古代に羽衣を入手した男としてその能力者を統率する指導者として選ばれた。浦川もCゲノマーだ。

329 :妖しのセレス 7 :04/05/08 13:27 ID:???
十夜は妖にキスをする。やって来た雄飛はそれを妨害した。そこへ銃を持った羽山、浦川がやって来た。
羽山は御影の手下で、Cゲノマーの浦川の力を目覚めさそうと浦川に近づき、薬を与えていたのだ。
妖の名前を騙り手紙を廊下に置いたのも羽山だ。妖から目覚めたセレスは浦川に忠告する。
「これ以上呪力を使ってはいけません。貴方は本来出る事の無い呪力を無理矢理引き出された。
これ以上呪力を使えば貴方は命を落とします」セレスは浦川をたぶらかした羽山を殺そうとする。
浦川が止めてと叫んだため、死には至らなかった。「何のために俺が近づいたんだと思ってる!役立たずが!
俺が好きなんだろ?他に誰も相手なんかしてくれないもんな。やれよ!早くあいつを!」羽山は叫ぶ。
浦川は羽山を燃やし、燃える羽山に抱きつき自らも燃えていく。
「先生…大丈夫よ。もう誰にも邪魔させない。二人だけになれる所に行こう」浦川は焼死した。
「そんな男でも最後まで共にいたかったのですね。…ならば……二人でお行きなさい。至福の喜びと共に」
セレスは妖に戻った。その日の浦川の力により、150名の死傷者が出た。雄飛の通う学校が火事になった事を
心配し、本家から雄飛の父親ともう一人の兄がやって来た。雄飛の母親は父の愛人だ。
雄飛が10歳の時に母は家を出た。本妻は雄飛を罵倒し、雄飛に親切だった長男の和馬が分家を開いた時
雄飛を分家へと誘い、しばらくして雄飛は分家へ訪れた。雄飛は本家で厄介者だった。捨てられた子供なんて
誰かの温もりを求めても無駄なんだ、雄飛は妖に自嘲する。妖はそれを聞き泣く。
一人で生きていける人なんていない、雄飛にもいつか温め合える人が出来ると妖は言う。
「じゃあ温めてくれよ」雄飛は妖を押し倒し、口付けをする。オバQ似の使用人が来たため、すぐにやめた。
330 :妖しのセレス 8 :04/05/08 13:32 ID:???
「お前の事…本気だから」雄飛はそう言う。一方、各臣達は納涼に目をつけていた。
納涼も天女の血を引くCゲノマーだ。そしてその力は強い。ガスで体の自由を失わせ、各臣の使いの
男達は納涼を連れ去ろうとするが、納涼はサイコキネシスで対抗する。「試作品を試すか」男達はそう言い、
怪しげな機械を納涼の目に多いかぶせた。それは、人に夢を見させる物だ。
納涼は夢の中で愛しい人…和馬に会う。事故で死んだはずの和馬は夢の中では確かに生きていて、
俺はここにずっといたと優しく笑いかけた。妖と雄飛が気づき、名を呼ぶがそれでも目覚めない。
セレスが目覚めて男達を殺し、納涼の機械を取り外すが、納涼は既に夢に囚われていた。
 雄飛の父は敵に攻撃された雄飛をかばい肩を怪我していた。雄飛は何故自分をかばったのかと訊く。
「親が子供を守るのは当然の事だ」父は答える。「お父さんは昔から、末のお前が一番可愛いんだよ」兄は言った。
夢に囚われている納涼は恍惚とした表情でつぶやく。「私は男の子がええわ。貴方によく似た…和馬さんはどう思う?」
和馬の葬式の時、納涼は倒れたまま半月も帰ってこなかった。納涼はあの時妊娠していたのか?
「彼女が現実に戻りたくないのは夫と子供のいる世界を、女にとって一番幸せな時を知ってしまったから。
それ以上に現実で大切な物がない限り、彼女はもう…」雄飛は納涼に呼びかける。和馬は、兄はもう死んでいるのだと。
 夢の中、納涼は和馬が死んだ時の光景を見る。ショックで腹が痛み、赤ん坊まで連れて行かれた時の事を。
その時この世に絶望した納涼は喉を切り死のうとした。そこへ男が現れ、死ぬなと止めた。
男は泣きながら言った。「だめだよ義姉さん!こんなことしたって兄貴の元へ行けない!兄貴は喜ばない!」
それは、はじめて分家へ来た時の雄飛だった。和馬の弟は自分の弟だ。自分にはこの子がいる。この子を見守らなければ。
納涼は雄飛のために、また生きようとしたのだ。そして、その記憶が納涼を現実へと連れ戻した。

331 :妖しのセレス 9 :04/05/08 15:36 ID:???
 何度も命令違反をする十夜は監禁されていた。明は十夜に会いたいと言い、各臣に連れられ十夜のいる部屋へ来た。
明は十夜の手錠を取る。突然、明は人が変わったような顔をし「妖はあんたにも誰にもやらない」と言って
手錠を十夜の腕に突き刺した。明はすぐ正気に戻り、普段と変わりない様子を見せた。
 梧家へ来間千鳥(くるま・ちどり)と名乗る小学生ぐらいの少女がやって来た。
セレスが各臣の会社から空を飛び抜け出した所を目撃した千鳥は、何も聞かず栃木に来て弟に会ってくれという。
栃木県で謎の病原菌が発見され、政府は薬を配布した。ほとんどの人に異常はなかったが、何名かの人は薬を飲んで
異変を訴え入院してるという。そのうちの一人が千鳥の弟の翔太だ。足の悪い翔太は将来パイロットになり、
空を飛ぶのが夢だ。千鳥は妖に、翔太と共に空を飛んでほしいという。断ったら空を飛んでいるセレスを撮った写真を
新聞社にばらまくという。病院内で妖は十夜に会う。妖は抱きつくが、十夜はすぐに行ってしまった。
 その晩妖達は千鳥の家へ泊まった。千鳥の住む場所にも、天女伝説があった。
その天女伝説では、天女は七人の子供を産んだといわれる。
 薬のせいで緊急入院した者は翔太を入れて男三人女四人、伝説と同じ七人だ。
そのうち二名が雄飛の前で皮膚を爛れさせ血を吐き死んだ。
 各臣の会社の一室には引き伸ばしたセレスのポスターが貼られている。
明は惹きつけられるようにそのポスターに寄り、セレスの唇に口付けをした。
明には何もわからない。気づいたらそうなっていたのだ。
「僕はなんと思わない。むしろ感心したね。流石前世で夫婦だっただけはある。そうだ、十夜の撮ってきた
マイクロフィルムをあげるよ。妖ちゃんの姿が見たいだろう?大丈夫、さっきの事は内緒にしておくよ」各臣は明にフィルムを与えた。
明は与えられた部屋でフィルムを見て、泣いた。
「妖…俺どんどんおかしくなってきたよ…」

332 :妖しのセレス 10 :04/05/08 15:38 ID:???
 セレスは妖の気に入りのチョーカーを十夜に渡した。十夜は御影の手下であるという証の首輪をつけている。
もし妖の所に来る気ならば、その首輪をはずしてこれをつけろとセレスは言った。
夜、セレスは翔太の望みどおり、屋上から空を飛んだ。降りようとした時、
薬による患者の一人である秋山久美は天女の力に目覚めていた。
政府から配布された薬は、妖の血にある謎の物質から作られた物。
それは眠っていた天女の力を目覚ませる物なのだ。衝撃は病院中に伝わり屋上にいたセレスも、
死にはしなかったものの、かなりのダメージがあった。
翔太と千鳥の両親は事故で死んでいる。両親は翔太と千鳥をかばうような形で死んだ。
二人はその事でずっと自分を責めていた。翔太は怪我をしたセレスを見て、
自分のせいでまた人が傷ついたと嘆いた。そこへ七人のCゲノマーの一人、芳塚が現れる。
芳塚は溢れ出る力により苦しみを抱え、救いを求めて翔太に触れる。
手から発する念のようなものにより、翔太は苦しむ。
「翔太に触るな!」そう叫んだ途端、千鳥は変身した。髪は黒くなり、
背丈も伸び体も豊満な女の物へと変わった。翔太がCゲノマーだという事は、
姉である千鳥にもCゲノマーの可能性はあったのだ。
御影の者は数名のCゲノマー達を施設へ連れて行った。千鳥は妖たちがいるために無理だった。
千鳥は妖と同じく細胞レベルで変化をきたす貴重なCゲノマーだ。
そのため今後も御影家に狙われる可能性の高い千鳥は、妖達についていくという。
あんた小学生でしょ!?そう言う妖に、こう見えても高校生だと千鳥はにこやかに言う。
翔太は祖父母がいるから大丈夫だ。千鳥は妖達と共に梧家へ向かった。

333 :妖しのセレス 11 :04/05/08 15:42 ID:???
 明は妖への手紙を書いていた。早く書かなければ。
俺が俺であるうちに…セレスの夫としての記憶が徐々に戻りつつある。
自我が消えていく。完全に消えてしまう前に書かなければ…
美しい裸体を晒し水浴びをするセレス。そのセレスの腕を自分が掴む。セレスは顔を引きつらせる…
思い出したくない。明は絶叫する。十夜は言う。「ここを出て行く気はないか?」
 梧家へ十夜から電話が入る。明を連れて梧家へ行くと十夜は言う。「俺は自分の過去よりお前を選ぶ」
十夜は明を連れ、剣で周りの物を壊しながら進んでいく。
アレクは不思議がる。ボディチェックでは十夜は何も持っていなかったのに…?
C計画の為新たに設置された前衛部隊の一員・偉飛麗(ウエイ・フエイリー)が十夜に立ち向かう。
飛麗はかなりの強敵だったが、十夜は飛麗の片目を切り裂き逃げる。
二人は外へ出たが、明はまた豹変し、棒で十夜の足を刺した。
「駄目だ!俺やっぱり行けない!もう俺には自分を保つ自信がない!妹なのに
俺はあいつの中にいる『女』を見てる。だから、嫉妬してる。あんたの事好きだけど、憎んでる!」
明は十夜に手紙を渡して引き返していった。
「今度会えた時俺が俺じゃなくなっても、今の俺の事忘れないでくれよ」

 怪我の手当てをした後、十夜は自分の腕を妖に見せた。
腕からは細い棒のようなものが浮き上がり、それは
剣の形に変わり、やがて腕と分離した。その剣は脈打っている。
こんな事が出来るなんて自分は人間じゃないかもしれない。
でも妖がいれば、妖が受け止めてくれなるなら良いと十夜は言った。
妖は明の手紙を読んだ後、封筒の内側にも文字が書かれている事に気づく。
「もし俺が壊れた時はお前の手で殺してくれ。」そう書かれていた。

334 :妖しのセレス 12 :04/05/08 15:45 ID:???
 明達の祖父は病が重くなってきた。明・各臣・飛麗は見舞いに行く。祖父は明を開かずの間へと連れて行く。
全ての始まり、16の誕生日の時。その時に明が見た手の本体…御影のご神体・天女のミイラがそこにはあった。
手を見た時に出来た傷から、血が溢れ出す。この傷は天女の夫が死ぬ時天女につけられた物だという。
明は涙を流す。もう駄目だ。自分は元に戻れない。
「セレスはどこだ…俺の女だ」明の顔つきがガラリと変わる。明の人格は消えた。
明の胸元には不思議な紋様…天女の紋様が浮かび上がった。
明の体をに宿った者は、祖父の顔を素手で握りつぶした。
 一人公園へ行った十夜を妖は追いかけた。十夜は妖のために御影と戦うと言う。
二人はキスを交わす。そこへ明が現れた。何故明が?そんな疑問よりも先に喜びで妖は明に抱きつく。
すると明は妖に熱烈なキスをした。明!叫ぶ妖に明の体を持つ者…明の前世・始祖は
「アキ?この体の名前の事か?そいつは眠った。一番奥で全てを捨てて」と笑う。
怒りでセレスは目覚める。「お前は永遠に俺の妻だ!」挑戦的な言葉にセレスは怒る。
始祖は突然倒れ、飛麗達が車に乗せ連れて行った。
怒りに燃え、追いかけようとするセレスを雄飛がキスをし、妖に戻した。
 梧家へ帰り、妖は泣く。始祖は、明は眠っていると言った。それならば目覚める可能性もある。
雄飛はそう言うが妖は泣き続ける。すると、テレビからアイドルグループ『GeSANG』のメンバー珠呂(しゅろ)の声が聞こえてきた。
「俺の先祖って天女でさ、俺んち天女の羽衣あるんですよ」珠呂は笑いながら言った。

335 :妖しのセレス 13 :04/05/08 15:48 ID:???
*まとめ

始祖
セレスの羽衣を奪い、無理矢理セレスを妻にして子孫を残した。
セレスの力により体中に傷をつくり死亡(?)
死んでもセレスへの執念は消えず、自分と遺伝子の似た明の
体を乗っ取り、セレスの宿る妖を狙う。

来間千鳥(くるま・ちどり)
栃木の天女の血を引く。
妖と同じく細胞レベルでの変化をする貴重なCゲノマー。
天女名はパラス。セレスのように先祖の人格が現れたりはしない。
普段は幼児体型だが変身するとグラマーな美女になる。

アレクサンダー・O・ハウエル
通称アレク。イギリス出身。
アニメ・ゲームオタクだがIQ260の天才。
武器開発担当。

偉飛麗(ウエイ・フエイリー)
中国出身。明(始祖)の直属ボディーガード(細かな世話も)。
十夜に左目を奪われ、復讐心を抱く。

・各臣達の作った薬は妖の血に含まれる不思議な物体によって出来ている。
・その薬はCゲノマーにのみ効く。一般人には水と変わらない。
・薬に適応したCゲノマーは特殊な力に目覚め、適応できなかったら死ぬ。

357 :妖しのセレス 14 :04/05/09 03:51 ID:???
 GeSANGの司珠呂(つかさ・しゅろ)と司敬は沖縄出身で親戚同士。歌唱力・ルックス・ダンス全て良し。
特に珠呂は天才といわれている。羽衣の事を聞こうとTV局へ入った妖は、
珠呂が「芸能界をやめる」と敬に向かい叫んでいる所を目撃する。
妖は羽衣をくれと珠呂に言う。「君が俺の物になったらあげるよ」珠呂はそう言う。
 地元での沖縄ライブに行く珠呂を妖は追う。珠呂は洞窟に妖を連れ込み押し倒す。
敬はよくファンの子を食べているが、自分は初めてだという。妖は必死で抵抗する。
その拍子に珠呂の服が脱げ、かすかに隆起した胸が見えた。珠呂は女だったのだ。
珠呂の家は天女の家系。生まれた時、珠呂が泣く度に周りの物は壊れていった。
親は天女の再来だと恐れ、羽衣をつけて天に帰ってしまわないようにと珠呂を男として育てた。
男として生きるのには慣れてしまったが、アイドルとして皆を騙すのは心苦しい。
だからイライラして妖をからかった、欲しいのなら羽衣ぐらいあげてやると珠呂は言った。
 セレスになり、珠呂の家の羽衣を見るが、それは天女の紋章がついてはいるが、ただの布切れだった。
「こんな下らない布切れのせいで、俺は男でもない女でもない中途半端な人間にされちまったのかよ!」
珠呂は叫び、布を引きちぎった。妖は、珠呂の敬を見る眼差しが、恋する者のそれだという事に気づく。
宴会で酒を大量に飲み、酔っ払った妖を、敬は珠呂の秘密を守るためだといいレイプしようとする。
雄飛が助けにきたが、二人は紐でくくられ身動きを取れなくなった。
 各臣は生物化学担当のリューリクに天女のミイラを調べさせた。ミイラからは、妖の血液中にあるのと同じ、
不思議な物体があった。それは拡大すると天女の紋様と同じ形をしている。各臣はミイラから大量の薬を作り、
全国の水道に混ぜた。多少の犠牲は出るが、得る収穫も多いだろう。全国で呪力による火事・爆発・事故が相次いだ。
 今日のライブのラストで、自分が女だという事を告白したいと言う珠呂に敬はキスをする。
「俺はお前のものになってもかまわないんだ。考え直せ。俺の事、好きなんだろ?」珠呂は敬を叩いた。
ライブ中、敬は力がみなぎるようで、声は無限とも言えるほどに伸びた。千鳥はその声に呪力を感じる。
呪力で巨大なライトが観客の上に落ちる。辺りは大惨事に陥った。

358 :妖しのセレス 15 :04/05/09 03:54 ID:???
 珠呂と敬はオバQ似の使用人の車に乗り、千鳥からCゲノマーの事、
御影家の陰謀を聞く。自分でも聞きほれるような、天女の声。
今まで周りからGeSANGは珠呂の声で持っている、
珠呂の声は特別だと言われ続けた。それは珠呂がそういう天女の力を持っていたからだ。
自分にない力を…薬によって自分はその力を得たんだ。敬は喜ぶ。
現れた各臣の手下たちは敬を連れて行こうとするが、敬は血を吐き出す。
一時的に力は使えたが、不適合者だったのだ。
死んだ敬を抱きしめ、珠呂は泣きながら歌う。
悲しみと怒りで珠呂の呪力は最大まで開放された。
このままでは心と共に自分の体まで引き裂いてしまう。
 十夜に助けられた妖はセレスに替り、雄飛を連れ珠呂の元へ行く。
天女へと変化をとげ、強い風圧を放ちながら歌う珠呂。
呪力をぶつけるが効果はない。セレスには救えない。むしろこれは、妖の方が…
セレスは妖に戻る。聞く者の心さえも痛ませる声・呪力をまともに受けながら妖は近づき、珠呂を抱きしめる。
「愛してたんだよね、敬を愛してたんだよね珠呂!いいんだよ!もう自分にも誰にも嘘つかなくて…!
女の子なのに男だって嘘ついて、一番辛かったの敬に対してだよね!!苦しかったよね…でももうウソつかなくていいんだよ!!」
妖の声に珠呂は元に戻る。
「敬…芸能界入ってからお前どんどん変わってって…傍にいるのに遠くなって…もっと早くに言えば良かった。
そしたら声も届いたのに。愛してる。敬…俺の声聞こえるか?愛してるよ…ずっと」

359 :妖しのセレス 16 :04/05/09 03:57 ID:???
 三日で、薬により800人以上の犠牲者が出た。また、薬に適合したCゲノマーも集められ始めた。
敬のように適合・覚醒をした後に拒否反応を起こす場合も有るが……
各臣はC計画に関わる者たちを始祖に紹介した。武器開発担当のアレク、Cゲノマー養育担当のグラディス・スミソン、
始祖の直属ボディーガードの飛麗、生物化学担当でアレクの補佐もするリューリク・レーベジエフ。
午後からは邪魔なものを消すための暗殺者、アッサム・バクティが来るという。C計画の一員であった
十夜は各臣の元を去った。その十夜は、ホテルの鏡の前にいた。飛麗によってつけられた傷…
骨折に銃弾、本来なら一ヶ月はかかるはずなのにもう治ってきている。何故だ…?
妖は十夜の部屋へ泣きながら飛び込む。ついさっき敬の葬式へ言っていたのだ。
薬は自分の血でつくられている。敬が死んだのは自分のせいだ。責められても仕方のない事なのに、
珠呂は自分を責めたりしなかった。それが余計に辛い。そう言って妖は十夜に抱きつく。
千鳥が妖を迎えに来た。十夜は敵の存在に気付き、妖達の元を離れる。敵から逃げる中、
沖縄の海が見えた。十夜は海に既視感を覚える。逃げ回っていると、子供が現れた。
この騒ぎに怯えているのか震えている。敵の攻撃から守るために子供を抱きかかえると、
子供は十夜の腹を刺した。「俺はアッサム・バクティ。一思いに殺せた。デモ偉にユズル」子供は暗殺者だった。
飛麗が御影からの電話に応答している間、アッサムは十夜の体を弄んだ。十夜は薬で全身が麻痺している。
そのはずなのに、十夜は起き上がり油断していたアッサムを拷問をした。妖達が来、飛麗はアッサムを連れ逃げた。
「どうして殺したの!?あんなに沢山の人!そりゃあたしもセレスになった時人を殺したけど…あんな子供まで…!」
妖は十夜を叩いた。「あの人じゃダメだ。あの人とじゃ妖ちゃん幸せになれないよ」千鳥は言った。
 梧家へ帰り、妖は夢を見ていた。夢の中には唸る白い犬がいて、その犬は徐々に制服を来た
少女へと姿を変える。そして少女は妖に飛び掛り……そこで目が覚めた。
妖は夢の内容を涼納に言い、夢に出てきた制服を絵に書く。
涼納の話では宮城県の天女伝説に白犬が出て来るそうだ。

360 :妖しのセレス 17 :04/05/09 04:00 ID:???
 その昔、ある者が津ノ宮に浮かぶ竹島へ行くと、十数人の天女が舞い踊っていた。
その者に気付いた天女はすぐに飛び去ったが、一人の天女は白い犬に護られ残っていた。
連れ帰ったものの、病にふした天女は息絶え、後を追うように白犬も死んだ。
 妖・雄飛・千鳥は夢の中に出てきた制服のある高校へ転入した。
その高校は女子高だが、梧家の権力で雄飛も女装して転入できた。
広部真矢という真面目そうな子が妖の隣の席になった。
真矢は守という彼氏がいて、守からもらった犬にマモルと名づけているのだという。
犬繋がりで妖は白犬を飼っている人はいるかと聞く。
すると周りの皆は途端に口を噤んだ。真矢によれば、
一昨日に同じクラス委員の子が白犬に腕を食いちぎられたのだという。
もう四人目で、うち二人は意識不明。
目撃者の話では白犬はフっと姿を消したという。
放課後、真矢の友人の尾崎が白犬に肩を噛まれた。
妖も襲われそうになるが、雄飛が助けてくれた。雄飛は涼納が力をこめた、
天女の紋様の入ったリストバンドをつけていたため大事に至らなかった。
 真矢は天女塚で祈っていた。「お願い…天女様。彼をもう一度私の所へ…」家に帰ると、真矢宛に手紙が届いていた。
 白犬に首を噛まれ入院していた加藤が亡くなった。
クラスメート達は真矢が休んでいて良かったと言う。真矢は委員長で誰にでも優しく面倒見がいい。
体の弱い加藤は真矢に頼っていて、二人は仲が良かったのだという。
昨日噛み付かれた尾崎は真矢の友達。死んだ加藤は真矢を頼っていた。真矢と同じクラス委員の子も襲われた。
もしかして皆真矢と関わりがある?

361 :妖しのセレス 18 :04/05/09 04:05 ID:???
 妖は気になり、真矢の家へ向かう。真矢の部屋へ入ろうとすると、怒声が聞こえた。
「寄るなって言ってるでしょ!何よその目!!また殴られたいの?
あんたも守と一緒よ!あたしの気持ち何にもわかってないくせに!」
いつもは優しい真矢が、隅で怯えるようにうずくまるマモルに向かい、眉をつりあげ物を投げつけていた。
妖に気付いた真矢はばれたのかと怯えながら言う。白犬の天女伝説は二通りある。
そちらの伝説では天女は子孫を残していて、もしかしたらそれは自分なのかもしれないと。
もしかしたらCゲノマー!?真矢は自分が犬を虐待している事を知った妖に殺意を抱く。
真矢の体の中から巨大な白い犬が現れる。妖は腕を噛み付かれ、ショックでセレスになる。
「この犬は霊ではない、貴方の呪力です。胸の奥底に抑えられていた心が人を襲わせます。
犬を操作しているのは貴方。何がそうさせている?自ら気付かねばこれからも誰かが…」
あたしは知らない!そう叫びながら真矢は走り逃げていく。白犬に襲われた人たちに自分は些細な不満が有った。
ベタベタと触ってくる数学教師、おしゃべりな友人…妖は、守を奪った子と同じ、東京の子だ。
守に捨てられた苦しみを、自分はマモルを虐待する事で晴らしていた。白犬に食われるべきは自分だ。
セレスを襲っていた白犬は真矢を殺しにいった。セレスは真矢の元彼氏・守の結婚を知らせる手紙を発見する。
 白犬は真矢を襲おうと走ってくる。牙をむく白犬に、マモルが対抗する。自分を虐待していた者を
何故かばうんだ。止めろと真矢は叫ぶがマモルは止めない。「マモルは貴方の負の心と戦っているのよ。
マモルは貴方を愛しているのね。例え貴方が変わっても」セレスは言う。「戻れ!あたしの中にもどれ!」
真矢の叫びに白犬は真矢の中へと吸い込まれていった。しかしその時にはマモルの周りはもう血の海になっていた。
死んだマモルを抱きしめながら真矢は泣く。「バカだよあんた……守みたいに放っとけばいいのに…」
守は東京に行ったままそちらで好きな人が出来て、真矢の事を忘れて結婚した。それなのにマモルは…
「マモルに…さよならをなさい」セレスは泣く真矢に言った。

400 :妖しのセレス 19 :04/05/10 14:54 ID:???
 妖は十夜に呼び出された。そこには傷だらけの十夜がいた。
「誰も殺したりしない。一人も傷つけていない」前に妖は、人を殺した十夜を責めた。
誰も傷つけずに逃げ回ったため十夜は重症を… 妖は自分のせいだと泣く。
傷だらけの十夜をホテルに連れて行き手当てをした。
十夜は傷だらけなのもかまわず妖をベッドに誘う。
「もう抑えられない」二人は初めてベッドの中で一夜を過ごす。
無くしたと思っていたチョーカーは十夜が持っていた。セレスが渡したという。
翌日二人は街を歩いていた。旅行パンフレットを見た十夜は、
静岡の美保に既視感を覚えるという。記憶が戻りかけている?妖は喜ぶ。
その夜妖は梧家へ戻り、珠呂にその事を言う。珠呂は苦い顔をする。
記憶が戻るという事は十夜に過去が出来るという事。
最悪、十夜には恋人が居たかもしれない。もっと最悪な場合、
記憶を失う前の状態に脳が戻り、今の妖と恋人関係になった十夜の記憶が消えてしまうかもしれない。
 それでも過去を知りたいと、妖・雄飛・珠呂は美保へ転校する。
妖は美保の松原の海で、自分と瓜二つの顔をした少女に出会う。
妖の転校した学校にいたその少女は、佐原美緒里という名だ。
幼馴染の恋人がいたのだが、一年ほど前から失踪しているという。
妖と十夜は美保の松原へ行く。そこで十夜は酷い頭の痛みと共に、微かに過去の記憶を思い出す。
そこへ美緒里がやって来た。「…十夜!」美緒里は十夜を知っているようだ。
――美緒里の恋人は一年前から失踪している。
もしかして、美緒里の消えた恋人は十夜!?十夜は美緒里に向かいふらふらと道路を飛び出し、
車に轢かれそうになる。その拍子に十夜が首につけている、前にセレスが渡したチョーカーが千切れ落ちる。
大丈夫?話し掛ける妖に十夜は「美緒里…?」と話し掛ける。自分は美緒里じゃない、妖だと言うが、
「あや…誰…?」十夜は不思議そうに訊ねてくる。事故のショックで十夜の過去の記憶が戻り、
記憶を失ってからの全ての思い出が消えたのだ。千切れたチョーカーを残し、十夜は美緒里に連れて行かれた。

401 :妖しのセレス 20 :04/05/10 14:59 ID:???
 妖は美緒里の家へ十夜の見舞いに行く。過去の記憶を、
美緒里への愛を思い出した十夜は、自分の苗字は瑞貴だという。
冷たい、憂いを秘めた表情をしていた十夜は別人になったかのようににこやかな笑みを見せた。
 静岡の梧家の別荘に帰った妖は自棄酒を飲み暴れる。
暴れるうちに長い髪がスッパリと切れてしまう。十夜は以前言っていた。
「綺麗な髪だ。長いのは好きだ」十夜の好きな長い髪が…
妖は十夜が今まで自分にささやいてくれた様々な愛の言葉を思い出し、泣き出した。
雄飛は十夜に会いに行く。十夜は雄飛の存在も忘れている。
「こればっかりは仕方ないよな。あんたは元のあんたに戻っただけだから。
だけど、これだけは言っとく。妖を奪るぞ!」雄飛は走り去っていった。
 翌日、妖は髪を短く切ってきた。平気なようにを装う妖に向かい雄飛は、
十夜と深い関係になっていようとかまわない、付き合ってくれというが、
十夜とこうなったからといって雄飛の元へほいほい行くようなズルい女にはなりたくないと妖は断った。
 記憶を失っている間に世話になっていたのなら礼をしたいと十夜は妖に会いに来る。
これは昔自分があげた物だと妖はチョーカーを渡す。
十夜はまるで体が求めるかのように、衝動的に妖に抱きついた。
抱きついた事に、すまないと謝る十夜に、妖はさようならと別れを告げる。
別荘へ帰り、妖は雄飛に、十夜に別れを告げたと言った。妖の記憶から十夜は消えない。
早く忘れたい。妖は十夜を忘れさせて、抱いてと雄飛に言う。雄飛は抱こうとするが
「やっぱり今のお前は抱けない。お前の事が好きだから」と言い、部屋を出た。
ズルい女になりたくないと言いながら、自分は十夜を忘れるために
雄飛を踏み台にしようとした…妖は自己嫌悪で泣いた。

402 :妖しのセレス 21 :04/05/10 15:02 ID:???
 翌日十夜と美緒里は三保の松原を歩いていた。
そこへ現れた各臣の手下は十夜を各臣の会社へ連れて行く。
「一年前死んだ祖父が、お前の力を役立てるのは、天女の家系でも最強で、
今後唯一の親戚になる御影家だけだと言いました。お前はこの瑞貴家と御影家の
両方の天女の血を引く特別な子だからと」十夜は各臣にそう言う。
各臣が調べた所、確かに御影の遠縁の娘が瑞貴家に嫁いでいた。
各臣は十夜に言う。我々の見解では天女は地球外高等生命体だと。
天女は天の娘だと言われる。天とは宇宙ではないか?
宇宙から来た未知の生物の子孫が、未知の力を持っていても不思議ではない…
味方になれば金が入り、生活は保障される。美緒里とも幸せに暮らせる。十夜は各臣の下についた。
 十夜の事、それ以上に自分への嫌悪で妖は体の奥深いところで眠り、
かわりにセレスが表へ出てきた。雄飛がキスをしても妖は出てこなかった。
妖よりも俺の方が汚い、途中でやめたとはいえ俺は妖の傷に付け込み
妖に迫ったと雄飛は泣く。貴方は悪くない大切な事は別にあるとセレスは慰めた。
 美緒里は十夜の見慣れぬチョーカーを発見する。
妖から貰ったとは言い辛い。前から持っていた物だと十夜は嘘をつく。
「あ、そっか。見覚えある!一年ぶりに見たから忘れてた」
あの時もらったのに見覚えがある…?十夜は美緒里に対し疑問を抱く。
 十夜は各臣の命令によりセレスを捕らえようとするが、断片的に浮かぶ妖の記憶がそれを拒む。
「さっさと殺りなさいよ!あたし大っ嫌いなの!その女が!」
突然現れた美緒里はそう言い、セレスへと姿を変えた。

まとめや補足。
・細胞レベルで変化するCゲノマーは、自分の先祖の天女の姿に替わる。
・妖のように先祖の人格までもが現れる事は滅多にない。
・Cゲノマーの力は先祖の天女の力と同じ。声、雷、火、具現化、力は様々。


406 :妖しのセレス 22 :04/05/10 17:29 ID:???
 変身した美緒里はセレスを攻撃する。セレスは逃げる。
 一人残された十夜の前に現れた始祖は「瑞貴十夜という人間は存在しない。全て各臣の造り事だ」と言った。
人を殺すなと言う妖の為に数ヶ月前、十夜は反撃もせず全身に傷を負い、意識を失った。
その間に各臣は偽の記憶を…十夜が各臣に従う為の都合のよい人格を植え付けた。
「何千年以上も前からセレスは俺の女だ。手を出すな」始祖は十夜の頭を握りつぶそうとする。
「妖ー!」十夜は叫ぶ。その声に眠っていた妖は目覚める。目の前にはセレスの姿をした美緒里がいた。
妖と同じく美緒里はセレスの姿を持つ。何故だ?「覚醒したCゲノマーは先祖の天女と同じ姿になって、
同じ呪力を持つんでしょ?あたしがセレスになって当然よ。あんたの従妹だもん」妖は驚く。
美緒里の母は父の佐原と駆け落ちし、父はすぐに死んだが、母子二人で仲良く過ごしていた。
去年の9月23日…妖の誕生日までは。生活に苦しくなっていた母は馬鹿馬鹿しいと思いながらも
祖父から金をもらうために機嫌をとろうと御影の儀式に出た。そこで覚醒した妖の無差別な力により
内臓破裂で死んだ。それ以降儀式は無くなったが、御影が薬をばらまいた頃に美緒里は力に目覚め、
各臣に母の死の原因を聞き、妖へ復讐を誓った。妖が何人かの親戚を殺した事は事実だ。
だが、あの時に呪力を発動させなければ妖が殺されていた。傷だらけになりながら妖は逃げる。
追い詰められた妖を十夜が救う。いつしか十夜に本当の愛を抱くようになっていた美緒里は悲しみ、
妖と十夜を置いて空高くまで飛んでいった。「お母さん、あたし妖に『復讐』するからね」美緒里は
地上で自分を見下ろす十夜に微笑みかけた後、呪力を解き元の姿に戻った。
セレスの浮遊力が無くなった美緒里は地面に向かい逆さまに落ちていき―――
美緒里の死体を見ようとする妖を、その場にやってきた雄飛は止めた。
死ぬ事で妖の心を引き裂き、復讐を果たしたのか…

407 :妖しのセレス 23 :04/05/10 17:40 ID:???
 梧の分家に戻り、ショックで引き篭もり、何一つ口にしないようになった妖を雄飛は心配する。
妖に気づかれないように十夜は梧家へやって来た。
まだ妖との思い出は断片的にしか思い出せない。
忘れるなんていう一番残酷な事をしている自分が許せない、会う顔がないという。
「忘れてへんやないの。妖への気持ちは…一番大事な物は変わってへん…」納涼は笑んだ。
 妖が目覚めると、扉の外に十夜の剣が置かれていた。
十夜の腕から出る剣…十夜の一部。それは微かに脈打っていた。
十夜は傍にいてくれる。いつかまた会いにきてくれる。
妖は希望を抱き、雄飛の作ったご飯を食べ、笑顔を見せた。
妖は十夜の剣を胸元に挟み持ち運んだ。
 十夜が瑞貴家だと思わされていたのは美緒里の家で、
本当の天女の血を引く瑞貴家は二つ隣の町にあるという。
妖達は静岡に戻り、三保の松原にいた瑞貴家の祖母に会う。祖母は羽衣の話をする。
 昔、ある男が酔った勢いで瑞貴家の家宝の羽衣を身につけた。家の者が気づいた時には、
男は手足が妙な方向に折れ、皮膚が爛れた不気味な生き物に変わっていたという。
天罰だと皆恐れ、男の体と同化したまま羽衣は焼かれ、三保の松原のどこかに埋められた。
また、三保と並び、丹後にも天女の伝説がある。天女は和奈佐という老夫婦の養女になる。
呪力により天女は里を豊かにするが後に老夫婦に追い出される。羽衣は既に下界に穢れて
天には帰れず、泣く泣く辿り着いた村で天女はようやく心静かになりそこに社が建てられた。
 洪水が起こり、当時の社も村も現在は無い。そこは現在学校になっている。
妖と雄飛はその学校に転入した。敬を失ったが、歌う事に未練のある珠呂は芸能界へ、
千鳥は翔太と祖父母の待つ家へ一時的に帰った。
校舎は増改築中で、遺跡が幾つか出てきていて、地下から妙なうめき声がするという噂があった。

408 :妖しのセレス 24 :04/05/10 17:48 ID:???
 学校には始祖がいた。優しげな表情は始祖のものではなく明の物に思える。
「信じられないかもしれないが自分は明だ」
その言葉を信じ妖は呼ばれるまま図書館へ行く。
だが、全て始祖の演技だった。本性を現した始祖は妖を押さえつけ下着の中に手を入れる。
叫んで人を呼ぶわけにもいかない。セレスにかわって人に見つかれば大事になるし、
セレスを求めている始祖の思う壺だ。始祖が妖を愛撫する所を通りすがりの生徒が目撃するが
始祖が睨んだため逃げていく。そこへやって来た雄飛が妖を助けた。
 翌日、始祖は雄飛の腕を握りつぶした。
治る傷だが、自分のせいだと妖は落ち込む。妖は始祖を屋上に呼び出し怒る。
始祖はそれを無視し、女子生徒からプレゼントされたというブレスレットを取り出し握りつぶした。
「あいつらは雌だ。俺にとっての女はセレスだけ」始祖は屋上から雄飛の教室を見る。雄飛は窓際にいる。
「ここからこの塊をあいつに向かい投げたらどうなるか?命中したら頭蓋骨陥没だな」
始祖は握りつぶしたブレスレットの塊を手に持つ。
何でもいう事を聞くから雄飛に手を出すなと妖は泣く。梧家を出て俺の元へ来いと始祖は言った。
妖は心にも無い罵倒を雄飛に浴びせ、足手まといに用はない、もうすぐ梧家から出て行くと宣言する。
 学校で妖は孤立していた。図書館での始祖との出来事が広まり、誰とでも寝る女だと言われていた。
妖が羽衣について聞き回っている事を知った男子生徒は、羽衣の事で用があると嘘をつき妖を呼び出し、
四人がかりで妖を押さえつけ口にタオルを巻き、強姦しようとした。
影から始祖が見ている。セレスに変わるわけにはいかない。それにセレスはこの男たちを殺そうとするだろう。
泣きながら妖は耐える。すると、増築のため掘られた穴から何かが伸び、それが男子生徒を
穴の中に引きずり込んだ。男たちは恐れ、逃げ出す。ぼろぼろの格好をした妖は梧家へ帰った。
雄飛が心配するが、わざと冷たくつきはなす。
学校のみんなの視線と、「サセコ」だろという男たちの言葉を思い出し泣くが、
妖の17歳の誕生日を祝った珠呂と千鳥のプレゼントを見て笑顔を取り戻した。

431 :妖しのセレス 25 :04/05/11 15:07 ID:???
 洪水で流された社は偽りの物、本当の社は増築で掘られた穴からつながっている。
羽衣などどこにもない、早く宝捜しごっこはやめろ、
現実を見て諦めろと言い、始祖は妖を連れ地下へ降りる。
そこには昨日妖を襲った男子生徒の食いちぎられたような死体と、
泣きながら妖達を襲おうとする奇妙な化け物がいた。
「各臣の手下から奇妙な報告があった。地下の社は約700年前
死んだ天女の怒りに触れた神主の娘を封印するために造られた物ではないか、と」
己も天女になれるとでも思ったのか?始祖は笑う。
始祖は妖をかばいながら化け物と戦うが、妖は化け物に投げ飛ばされる。
そこへ雄飛が現れ妖のクッション代わりとなる。始祖は化け物の腕をちぎる。
痛みに耐えかね地上にまで聞こえる大きな叫び声を化け物は上げる。
化け物は雄飛と妖に向かい攻撃する。妖を守るためセレスが現れバリアをはる。
「可哀相に…この姿で何百年も閉じこもっていたのね。
なのに度々ここをこじ開けて入ってくる者に眠りを妨げられて。
誰にもその姿を見られたくなかったのね。判りました…今助けます。貴方に至福の喜びを…」
セレスの力により化け物は消滅した。
飛麗により意識を失ったセレスは始祖に連れて行かれる。
始祖はちぎり取った化け物の腕を飛麗に渡した。
倒れていた雄飛は、妖が突然自分に冷たい態度をとるようになったわけを知る。
 自分の部屋で、始祖は意識を失ったセレスを物にしようと組み敷いた。
そこで妖が目覚める。セレスの意思さえ押さえ込むとは妖の精神はよほど強いようだ。
ならば二度と出てこれないように辱めてやる。
「いやがればいやがるほど男はその気になるのだぞ」抵抗する妖を縛り、
兄である明の体で始祖は妖を攻め立てる。セレスは眠っているのか現れない。
「十夜!十夜!」叫ぶ妖に始祖は言う。
報告によれば十夜は崖に追い詰められたまま海に落ちた、あいつは死んだと。
十夜の剣は脈打っているのに…

432 :妖しのセレス 26 :04/05/11 15:12 ID:???
 海へ落ちた十夜は、新潟へ流れ着き変わり者の医師・黒塚に救われていた。
十夜は剣を通して妖に危機が訪れている事を知り、剣に意識を込めた。
十夜は黒塚のバイクを借り東京へ向かう。
 始祖は妖の胸の谷間に挟まれた剣を抜き取ろうとして剣に跳ね飛ばされる。
十夜の力により妖に近づけなくなり、忌々しいと言う始祖に、
各臣は十夜にやったように妖の記憶を作り変えればいいと提案。
抵抗し、妖は地下へと逃げる。地下のある部屋に黒髪の美しい女たちがいた。
「その子達は覚醒したCゲノマー。貴方の仲間よセレス」
背後から金髪の美しい女性・グラディスが現れ妖に即効性の睡眠薬を注射した。
眠る妖はアレクのもとへ連れて行かれる。アレクは各臣に偽の記憶を植え付けるのは反対だという。
しかし各臣の命令に反するわけには行かない。アレクは始祖―かつて明であった者を見て心を痛めた。
装置の中に入れられた妖は眠りながらも装置を破壊する。
アッサムに妨害され逆にアッサムの飛行機を奪い駆けつけた十夜は妖の元へくる。
装置が壊れた事により十夜は記憶を取り戻した。
アレクは十夜に人質にされたふりをして十夜を助ける。
「アレクの頭脳を失うわけにはいかない」各臣は黙って見る事しかできない。
「無事目覚めたら妖さんに、スミマセンと僕の代わりに言って下さい」アレクは去って行った。
十夜は目覚めた妖を抱きしめた。梧家へ帰った妖は、皆に迷惑をかけないために、
雄飛の腕が治ったら十夜と共に出て行くと言った。
悲しみの色の残る雄飛を千鳥は慰めた。妖と十夜は梧を出た。
 各臣は病院へ行く。長い事精神を患っている各臣の母は沢山の人形を見つめ独り言を言う。
各臣は古い写真を取り出して見る。写真には何十年も前に、ある娘に宿ったセレスが映っていた。
本家の古い書庫でこれを見つけたのは小学生の頃。
祖父が子供の頃にも、妖と同じように16歳の娘がセレスの姿にかわり、そして撃ち殺された。
その写真を見て天女とはどんな者かと幼い各臣は何度も想像した。
気高い女、怒りの女神、憂いの乙女、妖艶な娘、慈愛の母―――
C計画は天女のための物だ。彼女たちにこの世界を新しく創りなおしてもらう。
各臣の母のような女には絶対にさせない。彼女たちと共に優秀な人類を創ってみせる。

433 :妖しのセレス 27 :04/05/11 15:16 ID:???
 妖と十夜は新潟に住み着いた。十夜は黒塚の元で働き、妖はバイトを掛け持ちした。
珠呂と千鳥には梧家の護衛がつけられた。御影の者はもう何ヶ月も接触してこない。
 羽衣が見つからないなら自分で創ってしまおう。
各臣は羽衣と思われる遺跡を見つけ、Cゲノマーたちに呪力を起こさせる。
栃木で薬を撒いた時に手に入れた少女、千鳥と同じくパラスと呼ばれる天女を先祖に持つ
久美(10参照)の呪力にのみ遺跡は反応した。だが、反応は微弱な物だ。久美の力では足りない―

 黒塚は佐渡島まで患者を診に海を渡る。ついて来ていた妖と十夜は船から落ちた。
妖を抱きかかえながら海の中、十夜は自分の体が光っている事に気づく。
気づくと十夜は妖と共に、船に乗った黒塚よりも先に佐渡島についていた。
十夜は自分の手の平に水かきのような物がついている事に気づく。
これは何だ?見つめているうちに水かきはきえ、元の手に戻った。
二人は海辺を歩く。妖は貝殻を拾い、綺麗だと十夜に見せた。
十夜はその光景に既視感を覚える。過去の記憶が断片的に頭に走る。
年老いた男が「お前はたった十日で…十の夜、お前の名前は十夜にしよう」と呟く姿、
幼女が拾った貝殻を自分に渡す所…その幼女は幼い時の妖だ。
それはどこかの島での出来事のような気がする。
小さい頃にどこか島に行った事があるかと訊く十夜に「八丈島の御影の別荘になら」と妖は言う。
二人は八丈島に行く。全てを思い出した十夜はその場に倒れる。また、妖も当時の出来事を思い出した。

 千鳥が祖父母にお茶を持っていくと、祖父母は頭から血を出し死んでいた。
梧の護衛も殺されていた。激しい感情により千鳥は天女の姿にかわり呪力を使うが、
天女の力から身を守る『シールド』を身に付けた各臣の手下たちには通じない。
どうしたの?そう言いながら翔太がやって来る。傍らにはアッサムがいて、
アッサムは翔太の首筋に針を突き立てている。
「言う事を聞いてください。あの子まで手にかけたくありません」
千鳥と翔太は御影の者たちに連れて行かれた。

434 :妖しのセレス 28 :04/05/11 15:23 ID:???
 妖は幼い頃、八丈島で十夜に会った。
その時の十夜は今と変わらぬ姿をしていた…何故?
全てを思い出した十夜は語る。
昔、八丈島に滞在していた老人は、淡く光る粘膜のような物に包まれた赤ん坊を発見する。
次の日、赤ん坊は二歳位の幼児へと姿をかえる。
翌日には更に成長し、またその翌日には成長し、十日目には成人した男にかわり、目を開いた。それが十夜だ。
世捨て人である老人は、不思議な存在である十夜を恐れず、十夜に知識を与え、育てた。
島から出る事だけは固く禁じたが。ある日十夜は幼女―幼い妖に会う。十夜は言いようのない感情を抱く。
妖の渡した貝殻を手に、七年間妖の思い出を胸に生きる十夜。老人はやがて体を悪くして死んだ。
老人が最期にくれた金と妖のくれた貝殻を持ち、御影と名乗った妖を探しに十夜は東京へ来た。
そこで事故にあい記憶を失い―自分は普通の人間では無い、その言葉に妖はそれでも良いと言った。
突然現れたセレスは、今まで羽衣を探す姿を見守っていたが、後七ヶ月以内に羽衣を探せなければ
御影家を滅ぼす、妖の兄の明も殺すと宣言する。何故七ヶ月…?

 八丈島から帰り東京の梧家へ行く。御影の者からディスクが届いているという。それを見る。
そこには始祖が映る。始祖は、天女の姿をした顔に殴られたような痣を持つ千鳥を引きずり出す。後ろには泣く翔太がいる。
「この姉弟が可哀相だと思わないか?Cゲノマーが何をされるか知っているか?」始祖は千鳥をいたぶり笑う。
「妖ちゃん!来ちゃ駄目!せっかっく十夜さんと幸せになれたのに!」
千鳥を助けたければ来いと始祖は言う。そこでビデオは終わった。
つい先日まで千鳥は元気な顔を見せていたのに…
もう何ヶ月も御影は接触してこなかったので、梧家の護衛も油断していたのだ。
十夜は妖に嘘をつき、雄飛と梧家の護衛達とともに始祖の元へ向かう。
 妖は雄飛の作ってくれた雑炊を食べようとして、吐き出す。妖は妊娠していた。
セレスの言った、七ヶ月という期間――七ヶ月で子供が生まれるという事!?
 人質にとられた翔太のため、千鳥は遺跡に呪力をこめる。すると、遺跡は形を変えた。
呪力を出し切り疲労を見せる千鳥を、各臣の部下達は
「大事な手術がありますので」と言い、無理矢理連れて行った。

435 :妖しのセレス 29 :04/05/11 15:25 ID:???
 手術室から出てきた、麻酔のかけられている千鳥を雄飛は背負う。
各臣の部下に襲われるが、梧家の護衛が犠牲になり難を逃れた。
千鳥は目覚めて雄飛に笑顔を見せるが、雄飛を狙ったアッサムの弾に重傷を負う。
「雄飛クン、知らなかったでしょ。千鳥ねえ、雄飛クンの事ずっと……」
そこまで言った所で千鳥は死んだ。雄飛の背中で千鳥は少しずつ冷たくなって行った。
十夜は飛麗を脅して翔太の所まで連れて行かせる。翔太は始祖に押さえつけられていた。
始祖は翔太を帰し、その代わりに十夜は捕らえられた。
始祖と飛麗に打たれ続け、十夜は死んだ。
十夜が死んだショックの為か、明の人格が目覚めその場に倒れた。
 雄飛は待ち合わせていた場所に、千鳥の亡骸を抱え行く。十夜はそこにはいなかった。
そして梧家の護衛達はたった一人になっていた。そこへ、泣きながら翔太がやって来た。
 十夜の死体を各臣の部下は解剖するという。アレクは十夜の死体を車で運ぶ。
せめて妖の元へ連れて行けないのなら、十夜が執着していた海へ――
 十夜は恐らく死んだ。それを聞きショックで妖は倒れる。
「あたしのようにならんで良かったわ」納涼はほっとする。赤ちゃんは無事だ。
それでも悲しみが消えたわけではなく、妖は泣く。千鳥の葬式で、皆が泣く中、妖は実感を持てなかった。
 各臣は愛してもいない婚約者とのセックスの後テレビを見る。
母が幼児を虐待死させたというニュースが流れている。
昔、母が「御影の名に恥じないよう優秀になれ」と言っては自分を酷く殴った事を思い出し、
各臣は幼い頃母に殴られてはそうしたように、体を縮ませ頭を抱えた。
 決着をつけようと、妖は単身各臣の元へ向かう。そこで妖は顕微鏡を見せられる。
中には卵子がある。選ばれた男と掛け合わせるために千鳥から無理矢理摘出した物だという。
妖は憤るが、各臣は鼻で笑い、十夜の形見…血だらけのチョーカーを渡す。
悲しみで平静を失った妖の代わりにセレスが現れた。

442 :妖しのセレス 30 :04/05/11 19:41 ID:???
 変身したとはいえ妊婦。セレスは倒れる。目覚めるとセレスの目の前にグラディスがいた。
Cゲノマーの暮らしている地下にセレスも連れられたのだ。
手には十夜のチョーカーがあった。広間へ行くと、幼女から大人の女まで、
Cゲノマーが何十人もいた。彼女達は皆美しい。
こんな所に閉じ込められて何故貴方達は笑っていられる?そう聞くセレスに彼女たちは笑う。
私は閉じ込められているんじゃない、保護されているのだ。選ばれた男と子孫をつくるのが役目だと。
セレスは眉を寄せる。セレスは廊下でグラディスの首をチョーカーで締め、羽衣の実験室へ連れて行かせた。
 問題を起こすからと拘束されていた始祖は人を殺して逃げる。アレクは各臣に泣く。
「初めに覚悟を決めたはずだ。我々の計画を遂行するためには悪魔にならねばならないと」
「僕は悪魔にも…神にもなれマセン!!僕はただの人間だカラ!!あなたも同じ人間じゃないんデシか!?」

 逃げた始祖はセレスを捕らえ、羽衣のある部屋に行こうとするが、シールドがはられている為、力を使っても入れない。
「そういえば俺に無理矢理妻にされたと言ったそうだな。
よくもそんな嘘が言えたものだ!自ら俺の妻になったではないか!
お前は俺を確かに――!」「私がお前を愛していたとでも言いたいのか?自惚れの強い事」セレスは笑う。
「私はただ男の種が欲しかっただけ。男共は人目で我々を最高の女だと欲する。
無理もない。この姿は餌なのだから。男というのは全く愚かで短絡な存在よ…
悪いが、お前は私の何人目かの男に過ぎん。十夜…あれは良い男だった。お前などよりずっと」
悪役顔になって嘲笑うセレスに怒る始祖。セレスをかばったグラディスの体を始祖の拳が貫通する。
いくら始祖を象徴として利用してるとはいえ、優先すべきは天女の命。
止めにきた男たちに始祖は肩を撃たれ、明に戻り倒れる。
各臣達はグラディスを治療しようとするが、すぐに息絶えた。
 体の奥深くで、妖はセレスに先程の事を訊ねる。
セレスは何も言わない。やがて、セレスの過去の出来事が見えてきた。

443 :妖しのセレス 31 :04/05/11 19:46 ID:???
 セレスは水浴びをしていた。そこへ鮫がやって来て、
現れた男・ミカギ――御影の先祖の男は鮫からセレスを救う。
ミカギはマナと呼ばれる物を拾い、セレスに渡す。
妖にはそれは光を放つものしか見えず、何かはわからない。
マナはセレスの命であり分身。マナに触れられる者は選ばれた者のみと言う。
セレスはミカギの部族に神の娘と呼ばれ歓迎された。
ミカギは美しい花々を毎日セレスに送る。それは求婚の儀式でもある。
一ヵ月後、二人は結ばれた。ミカギはマナに似せた手作りの耳飾を渡した。
男を種としか思っていなかったセレスが、初めて愛しいと思った男、ミカギ。
二人は子供をつくり幸せな日々をすごす。ある日二人は遠出をし、
そこで他の部族に襲われる。セレスが助け窮地を免れたがミカギは助けてやれなかった自分を責める。
「心優しい貴方が二度と傷つけられぬよう、貴方を護るように、私の呪力を少しだけあげましょう」
飛ぼう思えば宙に浮き、憎いと思えばその者を消し去る事もできる最強の力。
呪力が与えた事が全ての苦しみの始まりになるとは…。

力を与えてしばらく。ミカギは血まみれで帰ってきた。
この前自分を襲った者を殺したのだという。その日からミカギは変わった。
ただ力を誇示するためだけに他の部族を襲い、いつしか巨大な部族の長になった。
他の男の目には触れさせないとミカギはセレスに外に出る事を禁じた。セレスは泣き暮らした。
三人目の子を生むため別宅へ移った隙にミカギはマナを隠した。ミカギは返してくれない。
マナを失った事により弱りきったセレスを、幼い娘が逃げようと手を引く。追いかけてきたミカギは娘を殺す。
「我が子であろうとお前を奪うやつは許さん」
心のどこかで、いつか元のミカギに戻ってくれると信じていた。
だが、その時わかった。もう二度とミカギは元には戻らないと。
セレスはミカギの全身を呪力により切り裂き殺した。

様々な地。優秀な男達。知恵を、呪力を与え、種をもらい続け――
それが私達の役目。だが私達はそれだけの為に存在しているのではないはず。
本当に求めていたのは…

8 :妖しのセレス 32 :04/05/15 13:10 ID:???
 施設内のCゲノマーは以前の半数以下に減っていた。
薬の拒絶反応が出始めているのだ。『神々の黄昏』という各臣に寄付をしている金持ち団体は、
C計画の進行が思わしくない事を知り圧力をかけてくる。
そこへ、防音の壁を越えて何者かの歌声が聞こえてくる。声の主の珠呂は妖に会わせろという。
 妖のもとへ訪れた珠呂は右手を見せる。指の付け根の皮膚が微かに爛れている。――薬の拒絶反応だ。
心配する妖に「俺は十分やりきったんだからいい」と言い、珠呂はそのままライブ会場へ向かった。
ライブの途中、ファンの前で自分は女だと告白する珠呂は、天女へと姿を変え呪力を使った。
 施設内で妖はライブの様子を見ていた。テレビを通して珠呂の呪力が伝わり、妖の呪力を制御していた腕輪が取れる。
響き渡る歌声は拘束されていた始祖のもとへも届く。珠呂の呪力により明は目覚めた。
 呪力を使った事で薬の拒絶反応は更に進む。それでも妖を救うため歌い続ける。
傍らで死んだ敬の姿が見えるような気がした。呪力を使い果たし、珠呂は死んだ。
 神々の黄昏は、もう研究は引き上げろ、全ては我々がもらうと言う。
各臣はC計画のメンバー達に解散を告げる。各臣はセレスを迎えにいき、
無数のヘリコプターのうちの一つに入れる。他のCゲノマー達も連れて行こうとするが、
「外は汚れている。醜い人間が沢山いるから。行きたくない」と彼女たちは言う。
仕方なく、妖と完成したマナと受精卵をヘリコプターに入れ、巨大な船に運ぶ。
C計画は諦めない、船が研究所の代わりだという各臣にセレスは言う。
「愚かな…話しましょうマナの事を。マナは我々の体の一部。
私たちは人間のように進化が出来なかった女のみの種。
我々がマナを生み出したのかマナが我々を生み出したのか…
体を変化させながら長い時を生き、引き換えにマナ無しでは生きられぬ体となり…
マナの無い天女はやがて死ぬ。羽衣をつけ天に還るとは、人間でなくなる事。
我々はとても弱いのです。なのに何故地球最強の生物である貴方達が…
マナを返して。御影の子よ。愚かな私の子孫たち…」
自分を見つめるセレスを、各臣はきつく抱きしめた。
そこへ、月光を背に翼を生やした十夜が舞い降りた。十夜の手にはマナが。

9 :妖しのセレス 33 :04/05/15 13:15 ID:???
 十夜は飛麗と戦う。押さえつけられた飛麗の、光を失った左目に十夜は手刀を近づける。
「今返してやる」目の大きな傷が消え、視力が戻る。「何者なんだあいつは……!」
 オバQ似の使用人のセスナに乗り雄飛もやって来た。額には天女の紋章の描かれたベルトが。
雄飛はセレスを助けようとするが、逆に各臣に銃を突きつけられた。
「セレスだけは渡すわけには行かないんだよ」やってきた十夜により救われる妖。
各臣は部下から連絡を受ける。施設に残ったCゲノマー達が自殺したのだという。
羽衣のない天女達は自らの呪力で天に帰ったのだ。
 十夜にすがりつき嬉し涙をこぼす妖と雄飛。何故マナを持っていたんだ?
「俺は始祖に頭を打ちぬかれ死んだが、すぐに生き返った。俺はマナに創られた。マナがセレスの元へ戻るために」
 五千年も昔。ミカギはマナを海に捨てた。マナは天女がいなければただの物体、やがて朽ちていく。
だが海の中で微生物を取り込んだ事で生命が宿り、自分の片割れのセレスを求め、進化し続けた。
人間としての姿を得てもマナの細胞は変化する。翼を生やし空を飛び、水かきを生やし海を泳ぎ、
剣を創りそれで戦う事も可能だ。銃により頭を撃たれても、マナの力により再生できた。
十夜が妖に惹かれたのも、マナが半身――セレスを求めたためなのかもしれない。
「…違う!俺がお前を求めたのは俺自身の心だ!惹かれあったのはお互いの心だ!」
二人は抱き合う。十夜はマナを返すというが、マナにより生まれた十夜はマナがなくなれば…

 明は何かに惹かれるように船内を歩いていた。行く先には人工的に作られたマナがあった。
マナに触れると明の体は細胞レベルで変化し、ミカギへと姿を変えた。

 妖は自分が十夜の子供を孕んでいる事を伝える。十夜は涙を流す。
「十夜と血の繋がった子供が生まれるんだよ!あたし達家族になれるんだよ、この子が繋いでくれるんだよ」二人は抱き合った。
 そこへミカギがやって来て、十夜もセレスも子供も殺すと言い、妖の胸を貫く。
雄飛が鉄箸でミカギを攻撃した。額のベルトを通して納涼の呪力がミカギを攻撃する。
「お前も力を貸してくれたんだな…」傍らに死んだ千鳥の姿が見えるような気がした。

10 :妖しのセレス 34 :04/05/15 13:20 ID:???
瀕死の妖のために十夜はマナを渡す。マナを失ったら近い未来死が訪れる。
だが、死ぬためにマナを渡すわけじゃない。不思議な力を持たない、ただの男になるだけだ。
十夜は生身でミカギに向かいボロボロになる。マナを得た事で完全な天女になり、
女神のような姿となったセレスはミカギを殺そうとする。そこへ現れた雄飛をミカギは殺そうとした。
ミカギの背中から明の上半身が生え出し、ミカギの腕を押さえつけた。
「妖…遅くなってごめん。俺はこれが精一杯だ!俺ごと早く殺してくれ!」
ミカギの皮膚がただれはじめる。人工的なマナは不完全なものだったのだ。どのみちもう助からない。
セレスはミカギを――明を呪力で殺した。元に戻った妖は明を抱きしめ泣いた。

 二人の呪力のぶつかり合いで船は沈みかけていた。
無事な受精卵は外に運び出されていた。「ここまでだな…僕も」各臣は自嘲する。
「アナタには御影インターナショナルの次期社長のイスが用意されている!
C計画がなくとも…!何故デシか?そこまでC計画にコダワルのは…」各臣は渡したい物があると言う。
それは厚い封筒で、中には御影家の過去の犯罪データが入っていた。
落ち着いたら世間に公表してくれと各臣は言う。「沈むのなら御影も一緒だ。
……僕は御影の子じゃない。母はいまの父の後妻だ。僕は別の行きずりの男との子らしい。
御影の縁じゃない母と僕に祖父は冷たかったよ。母は御影に認められるために
僕に過大な期待を押し続け、あげく心を病み…」母の事を思い泣いた日々を思い出す。
「天女の受精卵――子供たちはお前に任す。お前にならもっと別の方法で未来が…」
 各臣は死んだ明を抱く妖を見つける。
「これがてめえらのやった事の結果だ!」泣きながら雄飛は各臣を殴りつける。
そこへオバQ似の使用人がセスナに乗ってやって来る。
「迎えが来たぞ、早く行け。妖は…きっといい母親になる。その子供を護れよ、十夜」
各臣は沈み行く船の一室で、一人静かに天女の古ぼけた写真を見ていた。

11 :妖しのセレス 35 :04/05/15 13:23 ID:???
 この世ではない所で、セレスとミカギは二人きりでいた。
「ミカギ、私の声が聞こえる?」 「ああ」
「ずっとお前に聞きたかったの。私の事を愛していた?」 「…お前、判らなかったのか?」
セレスを失う事におびえ、自分さえ壊してしまうほどに、ミカギは深くセレスを愛していた。
セレスは涙を零す。
「私も…愛していた。眠りましょうミカギ。私と共に。これで眠れる。終わったのだ、やっと――」

 半年後。納涼はニュースを見ていた。
ニュースでは捜査員が御影の会社に入る様子が映っていた。アレクにより御影の犯罪が暴かれ、
警察が動きだしたのだ。雄飛の父は御影の家もこれで終わりだなと言う。
「いいえお義父さま、あの子が…妖がいます。あの子は…あの過酷な運命を乗り越えたんやから…」

 妖と十夜の暮らす八丈島に雄飛は来ていた。妖の中の子供はだいぶ大きくなっていた。
「妖ずいぶん元気になったよな!珠呂や明君の葬式の時は心配したけど。
あいつはこれから幸せになるんだ。あんたと…子供と」二人きりの雄飛と十夜は言葉を交わす。
「――俺は多分そう長くない。妖もわかってる。一年か二年かもっと先かはわからないが…もしその時が来たら…」
十夜は雄飛に向かい笑顔を見せた。
 眠っている妖を十夜が起こすと、妖は夢を見ていたという。妖の頬には零れた涙があった。
「あれ?あたし居眠りしてた?あのね、夢を見てたの。
珠呂や千鳥、浦川さんや美緒里…セレスが天女になって天に帰っていく所。
そして、二年前渡せなかった誕生日プレゼントのピアスをつけて笑ってる明。みんな、笑ってたよ…」
十夜は妖を抱きしめた。生まれてくる子供に、生まれてくるという意味、生きるという事、愛するという事、
みんなに教えてもらった大切な事を、十夜と一緒にたくさん伝えたいと妖は笑った。

12 :妖しのセレス 36 :04/05/15 13:24 ID:???


 運命(さだめ)を断ち切り
 愛は命を紡いでいく

――罪を背負いながらも

    これから生まれる
  たくさんの子供たち未来を託して――――


  我が子らに至福の喜びを。

 <完>