レヴァリアース/夜麻みゆき
292 名前:レヴァリアース[sage] 投稿日:04/06/01 18:40 ID:???
世界を支配しようとしていた邪神竜ディアボロスは、わずか7歳の少年に倒される。
しかしその10年後にディアボロスは復活、少年はディアボロスに殺されてしまった。

その仇を討とうと、旅に出たウリック。
一週間前、魔物に襲われていたアドビス国の王子、シオンを助けた。
シオンは恩を返す為に、ウリックの旅の手伝いをすると言う。
しかし実際は手伝いどころか、わがままな身の振りにウリックは逆に迷惑していた。

川端での食事の準備が済んだ時、二人はノヅチという魔物に襲われる。
シオンは「俺様の出る幕じゃない」と言い、魔物の撃退はウリック一人で行うことに。
ウリックはシオンに怒りを覚え、油断してノヅチの毒を受ける。
テリアカ(毒消し草)は無く、ウリックはそのまま気絶してしまった。

シオンに背負われていたウリックは目を覚ました。
右腕は応急手当され、ノヅチの群れはシオンに倒されたのだと知る。
近くの町で宿を取り、個室でウリックはロケットペンダントを取りだした。
中には、ウリックと青年の写真が入っている。
「兄さん…きっと敵は討つ…」ウリックは泣きながら、写真の兄に呟いた。

シオンは夢を見ていた。幼い頃のシオン。ザードと言う青年と話している。
もし自分が帰って来なかったら、村はずれの森で一緒に暮らしている子供を守ってくれと、ザードは頼む。
シオンは約束した。「命にかえても守る」
ザードが向かう先にはディアボロスの影があった。シオンはザードを止めようと手を伸ばし、夢から覚めた。

朝、ウリックは買い物を済ませ、シオンの泊まっていた個室を開ける。
ベッドやタンス、花瓶までひっくり返して捜すが、シオンは部屋に居なかった。
城に帰ったのだろうと、ウリックは一人で町を歩く。息を切らせていたシオンを見付けた。
シオンはウリックが買い物に行っていたとは知らず、必死に捜していたのだと言う。
我がままで勝手だけど多分良い奴だと、シオンに対する考えが少しだけ変わったウリックだった。

293 名前:レヴァリアース[sage] 投稿日:04/06/01 18:41 ID:???
町の近くにあるシング・サの森。そこで怪しげな光を見たと、少年は訴えていた。
その森で光を見たのは、六人目。
悪いことが起こる前触れだと少年は言うが、町のオヤジはデマを言うなと少年に乱暴する。
ウリックとシオンはオヤジを退かせ、少年の母親に「光」について問いかけた。

一週間ほど前から、シング・サの森で怪しげな光が目撃されていた。
今のところ害はないようだが、町の近くで魔物が住み着くようになってしまったと言う。
魔物が出現した理由は光にあるのかも知れない。
旅の修行僧が光の正体をつきとめる為に森に向かい、未だ帰ってこない。
少年の家でスープをご馳走になり、その礼にと二人は光の正体をつきとめることになった。

二人はシング・サの森で噂の光を見付け、その光を追いかける。
その先で、空腹で倒れていた女性を発見した。
食べ物を貰い元気になった女性、セリア。彼女が町の話に出ていた旅の修行僧だった。

セリアは二年前、魔物に食べられそうになったところをザードに助けられた。
村人達はザードの為に宴を開いたが、ザードはそのまま去ってしまった。
「皆…分かっていない」ザードの言葉の意味を知りたくて、旅をしているという。
ザードは死んだと言われているが、きっと生きている。セリアはそう信じていた。

光のことをすっかり忘れていたウリックは、三人で光を追おうと言い出す。
しかしシオンはそれを断固拒否。
シオンは大の女嫌いで、チャラチャラしていて鬱陶しいと女性をけなす。
それに腹を立てたウリックは、シオンを食料袋で殴り、セリアと二人で森の奥へ行ってしまった。

294 名前:レヴァリアース[sage] 投稿日:04/06/01 18:43 ID:???
ウリックは「人間」と友達になったのはシオンが初めてだった。
旅の手伝いをしてくれると聞いて嬉しかったのに、実際は邪魔をされてばかりだと愚痴を零す。
セリアは「そんな我がままな人と別れて正解よ」と言うが、ウリックはその言葉に反論する。
笑うセリア。ウリックは話をはぐらかそうと、光を探し始めた。

二人は本来この大陸に生息していないはずの魔物、イピリアの奇襲を受ける。
だが、謎の水魔術によりイピリアの首が刎ねられた。
イピリアの墓を作るウリック。ウリックは魔物を殺さずに、気絶させているだけだった。
魔物を殺さないのは兄からの受け売りで、この世に本当に悪い子は居ないとウリックは言う。
「でも、悪いコトをしている魔物は倒しているのネ」とセリア。
「兄さんが生きてるもの殺すわけナイよ、それは何かの間違いだよ」ウリックは笑う。
ザードは何万という魔物を殺した勇者だと伝わっている。ザードという人物に、セリアは疑問を感じだした。

その時、森に「助けて」という声が響く。アムピスバイナという猛毒を持つ魔物が襲ってきた。
アムピスバイナは、本来別大陸に生息する魔物。居るはずのない魔物にセリアは困惑する。
ウリックは、アムピスバイナの注意を引きつけている間に逃げて、とセリアに言う。
一人でアムピスバイナを倒そうとするウリック。そこにシオンが颯爽と登場。
シオンは水魔術を唱え、アムピスバイナを一撃で倒してしまった。

シオンがウィザードだったとは知らなかったウリック。先程のイピリアもシオンが倒したものだった。
ついでに逃げようとしていた光を捕まえたシオンは、その光を懐から取り出す。
光の正体は小さな妖精の少女、レムだった。

295 名前:レヴァリアース[sage] 投稿日:04/06/01 18:43 ID:???
レムが昔住んでいた地域は、天候がおかしくなり住めなくなっていた。
妖精達は住みやすい土地、シング・サの森に移動。魔物も同じく、住みやすい土地に移動したと言う。
光と同時期に魔物が生息し始めたのは、その所為だった。
天候がおかしくなったのはディアボロスの所為なのか、どこに行けば会えるのかとウリックはレムに問い質 す。
そんな事言われても分からない、と泣き出すレム。
しかしウリックがザードの弟だと知れば、レムは周りに隠れていた妖精達と共に歓喜した。

妖精の女王は昔ザードの世話になっていた。ウリックはディアボロスの居場所を女王に問う。
ディアボロスは別の次元にいて、兄の歩んだ道を行けば会えるだろうと女王は言う。
女王は旅の手伝いにとレムを指名。新たな旅の仲間が増えた。

町に戻り、セリアは光の正体は妖精だと告げる。町に害は無いと知れば、住人は安心した。
セリアはこの町から南に行くと言う。
行く当てのないウリックに、ザードがよく訪れた国、アドビスへ行くと良いと教えた。
「あなた女の子でしょ」セリアはウリックに小さく耳打ちをする。
必死に隠そうとするウリックだが、内緒にしておいて欲しいとセリアに頼んだ。
「どんな困難があっても、辛くても、あなたには仲間がいるんだから」
セリアと別れ、三人はアドビスへ向かう。



296 名前:レヴァリアース[sage] 投稿日:04/06/01 18:45 ID:???
人物紹介
ウリック…体術を得意とする男装の少女。兄であるザードの敵討ちをするため旅をしている。
シオン…法力の国アドビスの王子。魔法使いでわがままで女嫌い。
レム…妖精の少女。女王の命で一緒に旅をすることに。

月が二つある世界オッツ・キィムが舞台。夜麻作品はこの世界で統一されてます。
独特なファンタジーだけど用語とか説明するの('A`)マンドクセ

314 名前:レヴァリアース[sage] 投稿日:04/06/02 09:56 ID:???
少年は純白の鳥を連れていた。手の甲には宝石の様なものが埋め込まれている。
神と精霊と妖精から祝福を受けた聖なる剣。それを使い、たった独りの少年はディアボロスを倒した。
魔物に囚われたオディス国の姫を救いだし、少年――ザードは英雄になった。

ウリックはシオンに対して疑問を抱いていた。身なりは貴族だが、本当に王子なのか。
シオンの事を全然知らないし、シオンはウリックの事も知らないはずだ。
互いの事を知らず、よく今まで一緒に旅をしていられた、と悩みながら料理をするウリック。
その時、何かの気配を感じたが、ウリックは気にも留めていなかった。

ウリックの料理に対し厳しい点数(200点満点中30点)を与えるシオン。悲しみに暮れるウリック。
その時、地面から魔物が現れる。ウリックは一発蹴りを入れて、魔物を地面に埋めた。
先程の気配はこの魔物なのかな、とウリックは考える。
レムはウリックの強さに感激する。ザードに続く第二の英雄が生まれると期待していた。
「私達もディアボロスを倒して――」言いかけるレム。
その言葉をウリックは否定した。「兄さんはディアボロスを殺してない!!」

ザードは過去にディアボロスと話し合い、魔物と人との永遠の平和を誓っていた。
魔物も人も理解し合い生きていくのが本当の平和だと、幼い頃にウリックは聞かされていた。
ディアボロスは復活したと言われているが、実は殺されていなかっただけなのかもしれない。
ザードは10年前にディアボロスを殺していない。なのにディアボロスはザードを裏切った。
ウリックは泣きながら許さない、と言う。レムはザードを大バカだと罵った。
「ザードの敵一緒にとるゾ、絶対に。だからもう泣くな」シオンも涙を流しながら、ウリックを慰める。
シオンが何者でも構わない。微笑むウリック。

突然、シオンは何者かが潜んでいる、と声を潜めて呟いた。
その場から遠ざかろうと二人は走る。ウリックの足下目掛け、手裏剣が飛んできた。
先程からの視線は、数人の忍達だった。ウリックは忍に捕らえられ、気絶する。


315 名前:レヴァリアース[sage] 投稿日:04/06/02 09:57 ID:???
ウリックは夢を見ていた。数年前、いつ旅から戻ってくるかも分からないザードを待っている。
木造の家の扉が開かれ、ウリックは兄が帰ってきたと顔を上げた。
「おらー!シオン様のお帰りじゃい!」何故か扉を蹴り開けてきたのはシオンだった。

ウリックは目を覚ました。同時に、忍にシオンが捕らえられた事を思い出す。
寝ていた所は高貴なベッドの上。見覚えのない部屋に、ウリックは混乱する。
レムは目が覚めたウリックに、ここはアドビス城だと告げる。

その時、夢と同じく扉を蹴り開けるシオン。服装は王族の着る正装だった。
襲ってきた忍達は、シオンを城に連れ戻す為に王に命じられていた。手荒な方法だったと、ウリックに無礼を詫びる。
シオンが本当に王子だった事に驚くウリック。
アドビスにはザードやディアボロスの情報があるかもしれない。
シオンはウリックに、アドビスの城下町を案内してやると言った。

シオンに町を案内され、ザードの事を聞いて回る二人。
ハギス神の神官が、二年ほど前に魔物に襲われ、ザードに助けて貰ったことを知る。
女臭い店が我慢出来ないと、シオンはハギスの神殿にウリックを連れていった。
(レムが平気なのは、小さくてよく見えないからという理由)

ハギスの神官、ティクス。ウリックはザードの事をティクスに聞き出した。
ティクスはザードに助けてもらったが、ザードがどこへ向かったのかは分からないと言う。
ティクスの弟のルドは、ザードのように魔物を倒せるくらい強くなりたいという夢を持っていた。
「兄さんは魔物を殺さない人なのに、何故皆…」ウリックは思う。
ザードに関して知りたいのなら、打って付けの場所があると、ティクスは案内を申し出た。
シオンはその場所を知っているらしいが、その様子が尋常ではなかった。

アドビスは聖職者が多い町。王家も代々優れた法力を持つ、聖なる国。
シオンは確か魔力を操るウィザードのはずだと、ウリックはシオンに尋ねようとした。
丁度その時、ティクスの案内でザードを知ることが出来る場所に辿り着く。
そこは神殿だった。建てられたザードの像、信仰する人々。
ザードを神と讃えた神殿に、ウリックは呆然とするだけだった。


316 名前:レヴァリアース[sage] 投稿日:04/06/02 09:58 ID:???
兄であるザードを神にされ、ショックで倒れかけるウリック。
ティクスはハギスの法衣を脱いでいた。他の神の前では失礼にあたるとのこと。
二人はザードを崇めた神殿の神官に会う。その神官は10年前にザードに会ったことがあると言う。
町に攻めてきた何十もの魔物を倒した、白い鳥を連れた少年。それがザードだった。
高いテンションで神官は言う。「ザードは北に向かった」と。

情報を集める為、ウリックは神殿にいる信者と話すが、まともな情報は得られないままだった。
ウリックはティクスに、皆は何を祈っているのか尋ねる。
「私達に魔物を倒す力はありません。こんな私達にできるコトは、ザード様の勝利を祈るコトです」ティクスは言う。
ウリックはザードの像を見上げた。大勢の人に兄が尊敬され、嬉しいような寂しいような、複雑な気持ちを持つ。
「やさしい兄さん。でも、本当は兄さん魔物を殺してたの?」

その時、神殿内に数人のハギス神官が訪れた。
ザードは悪魔だ、そう叫ぶ女、レイヤー。ティクスはレイヤーを姉と呼んだ。
ウリックは神官を呼び、ティクスはレイヤーを止めに入る。「またあいつらか」と神官は呟いた。

神殿の中央で言い争いを始める姉妹。神官が口論に加わるが、状況は悪化する一方だった。
痺れをきらせたシオンは変装を解き、争いを止める。
神官達は脅えるようにざわめき、レイヤーはティクスを連れて去っていった。
聞きたいことがあると、レイヤーを追いかけるウリック。
「何故ザードは悪魔かって?理由は簡単だ、ヤツは強すぎる」広場のベンチに座っていたレイヤーは言う。

二年前、レイヤー達は旅の途中で魔物に襲われ、ザードに助けられた。
戦う気力を失った魔物に剣を振るい、死んだ魔物に剣を突き立てるザード。
そこまでする必要はないのにと、その光景に脅えるレイヤー。
「……俺は殺してない」魔物の血で汚れたザードは呟いた。


357 名前:レヴァリアース 投稿日:04/06/03 16:04 ID:???

レイヤーの話に反論するウリック。ウリックがザードの弟だと知り、レイヤーは驚愕する。
広場に人が集まり、いつのまにか周りにはギャラリーまで出来ていた。
五人は人目を避けるためにハギス神殿に向かう。

ザードは優しくて魔物もディアボロスも殺していないと言うウリックに、呆然とするレイヤー。
弟の前だから良い子ぶってるんだ、とレイヤーは冷たく言い放つ。
俯いて呟くウリック。「だって魔物とは友達だもん。友達は殺せない…」
森に住んでいたウリックにとって、魔物は家族のようなものだった。
ザードが旅に出ている間、ウリックは魔物と共にザードの帰りを待っていたという。
神と悪魔、天使、魔物、人など皆共存していた話は、大昔にのみ存在していた。
そんな話馬鹿げてると、レイヤーは一向に信じない。

レムはウリックに、ザードが本当にディアボロスを殺したのか問いかける。
その真実は、ディアボロスに囚われていたオディス国の王女しか知らない。
次の目的地はオディスだと意気込むウリック。しかし、王女は現在行方不明だった。
「心配しないで下さい」と手紙を書き残し王女は失踪。生きていれば15、6歳。
唯一の手がかりも、一瞬にして崩壊する。

ウリックとレイヤーは和解。
ザードの情報があまり入らなかったのは、ザードは町ではなく城を訪ねていたからだった。
息子まで借りておいて、王に会っていない事に慌てるウリック。
三人はハギス神殿を後にした。

道中、やけに楽しそうなウリック。シオンはそんなウリックが気に入らなかった。
言いたいことがあるならさっさと言え、とシオン。その言葉に、ウリックは俯く。
優しかったザードを信じて旅をしてきたのに、神だ悪魔だと他人に言われ、ウリックはザードが信じられなくなってしまった。
ザードは仕方なく魔物を殺してきた。そんな自分が嫌で、魔物を殺していないと自分自身に言い聞かせていたんじゃないか、とレムは想定する。
しかしシオンが口を挟む。「あいつのコト一番知ってるのは、弟のお前だろ!」
他人に惑わされ、兄を信じられなくなった自分が一番嫌いだったことに気が付くウリック。
三人は、アドビス城へ戻っていった。

358 名前:レヴァリアース 投稿日:04/06/03 16:05 ID:???
法力国家アドビス。
ウリックは国王への謁見に緊張していた。シオンはウリックを心配するが、ウリックは敬語で返事をする。
今更になってシオンを王子扱いするウリックに、シオンはお得意のわがままを使う。
仕方なくウリックは今まで通りにシオンと接することに。流されやすい性格に、自己嫌悪するウリックだった。

二人は国王と謁見した。
シオンは父である国王に、ウリックと旅をしたいと告げる。
しかし国王は許可をしない。どこの馬の骨とも知れぬ者と旅をさせたくはないと言う。
ザードの弟だとシオンは言うが、ウリックにはザードの弟という証拠がなかった。
ロケットペンダントの中にザードの写真がある。しかし、ペンダントに写るウリックは少女の姿。
女だとバレてしまうのを恐れ、無言になるウリック。そこでシオンは提案した。

国王の目の前で、ウリックは忍と向かい合う。
ザードと同じ血を引く者なら、その者も強い力を持っているはずだとシオンは言う。
一度負けた相手を前に、ウリックは敗北を確信していた。
ウリックは忍と互角の戦いを見せる。しかし、忍は本気を出していなかった。
忍はウリックの背後に回り、後ろから抱えて地面に叩きつけようとする。
その時、忍の手がウリックの胸に触れ、有り得ない感触(w)に忍は後頭部を強打し自爆。
ウリックは勝利した。


359 名前:レヴァリアース 投稿日:04/06/03 16:06 ID:???
国王は強さだけでは認めなかった。
ウリックに、ザードの得意料理は何だ、と質問する。
コゲコゲでスミのよーな目玉焼きだと、ウリックは申し訳なさそうに答えた。
周りの神官が笑う中、国王は天井から伸びていた紐を引く。
くす玉が割れてファンファーレが鳴り響く。「この者はまさしく勇者の弟!宴の用意を!」
ウリックはザードの弟と認められ、客人としてアドビスに招かれた。

豪華な食事が並べられ、国王と向かい合う三人。
国王はウリックに話しかけてばかりで、シオンは口も聞かなかった。
ウリックは、忍に偶然勝てたからよかったと、シオンに話す。シオンはそれを否定した。
相手の数が多くなったり飛び道具を使われると、ウリックは途端に弱くなってしまう。
シオンはウリックが忍に勝つことを想定していた。

国王に質問されっぱなしだったウリックは、自分が質問していないことを思い出す。
ウリックは国王に、ザードの事を聞きたいと質問した。
王は言う。「それならシオンに聞くがよい。ザードはシオンに会うため城へ訪ねて来てたんだ」と。

ザードがアドビスへ訪れていたのは、シオンに会う為だった。
どういう事なんだ、とウリックはシオンに問い質す。
しかし肝心のシオンは、料理が不味いと話をはぐらかした。シオンはウリックに、料理を作れと要求する。
王宮の厨房で料理するウリック。折角作った料理に、シオンは溜息を吐く。
その様子を、王は無言で眺めていた。


360 名前:レヴァリアース 投稿日:04/06/03 16:09 ID:???
夜、城の個室。ベッドに横になるウリックに、灯りを持ってきたシオン。
少し前までは森で暮らしていたのに、今は旅をして色々な人と出会って、不思議だとウリックは言う。
世の中を知らないウリックを小馬鹿にしながら、シオンは灯りを消した。

廊下を歩くシオン。かつてザードに言われた言葉を思い出す。
「シオン、あの子を守ってやってくれ…世間も何も知らない子だ」
魔物と一緒に森に閉じ込め、世の中も何も知らないヤツに育てたのはお前だと、ザードに対し怒りを露わにしていた。
シオンは足を止める。「――世の中…か…」胸中でそう呟いた。

朝、城での生活も悪くないというウリック。ザードもこんな風に城でくつろいでいたのか、と考える。
そして、ウリックはシオンにザードのことを聞くのを忘れていたことに気が付いた。
大慌てでシオンを捜すウリック。城の図書室で国王と出会う。
城にいる間のシオンは、ウリックといる時のシオンと正反対の性格だと教えられた。
無口でわがままも言わない、「王子」としてのシオン。自分は息子のことが分からない最低の親だと言い、国王は図書室を後にする。
国王を追いかけようとするウリック。扉の影で城のばあやが立ち聞きしていた。

「ウリック殿は、僧侶と魔法使いの違いをご存じかの」ばあやがウリックに問う。
法力を使うのが僧侶、魔力を使うのが魔法使い。
僧侶は信仰する事により神の力を借りて、魔法使いは魔法を学び神の力を自ら操ることによって、魔法を使える。
アドビスは法力国家、法力は血筋で代々受け継がれている。シオンは法力ではなく魔力を持っていた。
もしかしたらシオンはアドビスの王子ではないのかもしれない――そんな疑惑が、ウリックの脳裏を過ぎった。


370 名前:レヴァリアース 投稿日:04/06/04 20:42 ID:???

アドビスの町外れの丘に、シオンはいた。
捜すのが大変だったとレムは文句を言うが、シオンは軽くあしらってしまう。
ウリックは先程、ばあやに言われた事を思い出す。

シオンは国王の幼い頃によく似ていたが、法力がない。
それを気にしているのか、国王はシオンに接するのに堅くなってしまい、シオンもまた国王との間に一線を引いていた。
シオンは無口で何を考えているのか分からず、国王はそんな風に育ったのは親である自分のせいだと悩んでいた。
ウリックは、自分にはわがままを言いたい放題なのに、と口に出した。
シオンはウリックに対し素直になれるのは、ウリックのことが好きだからだとばあやは言う。

好きな人にわがままを言って嫌われるのを恐れていたウリックは、シオンが変だ、と思っていた。
ウリックはばあやに言われた事を隠そうとするが、シオンに簡単にばれてしまった。
「ボク魔力も法力もないから、その力の大切さがよくわからないケド、魔力を持っててもシオンはシオンだろ」
ウリックは言うが、シオンの表情は暗かった。

その夜。明日出発するというウリックに、シオンも準備をすると言った。
次に向かう場所は決まっていない。
悩むウリックに、背後にいたばあやが声を出した。「基盤の神殿へ行ってみてはどーですかな」

言い伝えに出ていた聖石の一つ、水晶が「基盤の神殿」に治められていると言う。
水晶はすべてを知る石だと言われていた。ディアボロスの居場所が分かるし、シオンはアドビスの王子だということも証明出来る。
ただし、水晶は選ばれた者にしか答えてくれない。

神話を信じているウリックに、シオンは本当か信じ切れない、ただの作り話かもしれないと言う。
冒険心が削がれるウリック。その時、部屋の外が騒々しくなった。
廊下を走る数人の僧侶が、魔物が町に攻めてきていると言う。
ウリックは協力しようとするが、シオンは「面倒なことは嫌いだ」と他人に任せてしまう。
その言葉に怒り、ウリックは僧侶達と共に町へ赴いた。
ウリックは僧侶達とはぐれて迷子になり、その後を隠れながらシオンが追いかけていた。


371 名前:レヴァリアース 投稿日:04/06/04 20:43 ID:???
シオンが影ながら道案内をして、どうにか僧侶達と合流するウリック。
魔物達を前に、僧侶達は苦戦を虐げられていた。
オク神に仕えている神官、トリートが魔物に攻撃されそうになった時、間一髪でウリックが助けに入る。
魔物が攻めてきたのは、ディアボロスの所為かもしれない。トリートがそう呟く。
ウリックはディアボロスという言葉に過敏に反応、魔物に一撃を食らわせ昏倒させた。

僧侶はウリックの援護を行うが、ウリックは背後から魔物に攻撃されてしまう。
そこを正義の使者と名乗った、変装したシオンに助けられた。
たまたま通りかかっただけだと言うシオンに、協力を求めるウリック。
トリートは魔法使いを嫌い、魔法使いの助けは借りたくないと言った。

僧侶が魔法使いを嫌っている理由は、神聖な力を魔法使いは乱用しているからだった。
アドビスの王子が魔法使いというだけで、アドビスの未来が不安だと、ウリックに同意を求める。
散々けなされて、黙っているシオンではない。神の助けを請うだけの僧侶は大バカ集団だと罵った。
魔物を倒さねばならない状況で喧嘩をする二人。

魔物との戦いも長期戦になっている。数も多く、僧侶達は不利な状況に追いやられていた。
シオンは強大な魔法を使い、魔物を一瞬にして全滅させる。
しかし、シオンが魔法使いだと他の僧侶にバレてしまい、僧侶達は敵視する様な目でシオンを見ていた。
魔物を倒したから帰るというシオン。ウリックとレムもその後に続いた。


372 名前:レヴァリアース 投稿日:04/06/04 20:43 ID:???
アドビスの僧侶達は、魔法使いであるシオンを気に入らない。
だからシオンは自分を抑え隠して、アドビスで暮らしていた。
魔法に対する価値観が違うから、僧侶は魔法使いを嫌うのだと言う。

一方、城では国王とばあやは話をしていた。
国王に尋ねるばあや。「王子をあの少年にまかせてみては?」
ばあやが自然に振る舞うシオンを見るのは、ザードが訪れて以来だった。

ウリックは、アドビスを魔法使いを受け入れられるような国家にすればいいと言った。
長年植え付けられてきた価値観を、そんな簡単に変えられる訳がない。そう言いかけるシオン。
そこに三人を追いかけてきた子供の僧侶が、笑顔でシオンに礼を言う。
続いて、トリートも感謝を述べた。魔法使いではなくあなた個人に感謝します、と。
神にとっては法力も魔力も同じ力、そんな事で喧嘩をしていたらおかしいとウリックは言う。
「魔力持っててもシオンはシオンだよ!シオンならいー国つくれるよ!」ウリックの言葉に、シオンは当たり前だ、と笑った。


457 名前:レヴァリアース 投稿日:04/06/08 16:07 ID:???

国王に正式な許可を貰い、シオンは旅に同行していた。
自分には父も母も死んでしまっていないから、シオンが羨ましいと呟くウリック。
その上ザードも殺されてしまったウリックに、シオンは声をかけようとするが、女性の叫び声によって阻まれる。
魔物に襲われているのかもしれない、とレム。
叫び声の主は罠に引っかかり、木の上に宙づりされていた。

女盗賊のメラルドは、カモシカを捕らえようとして罠を仕掛けた。
だが失敗して、自分が罠にかかってしまった。メラルドを助けるウリック。
神殿に忍び込んだメラルドは、魔物の多さに退散してきた。メラルドの案内で、三人は神殿へ向かうことに。

メラルドはシオンに一目惚れし、突然シオンに抱きついた。
魔法の乱発を恐れて逃げ惑うレム。ウリックは怒りを静めてくれ、とシオンに頼む。
しかし、シオンは固まってしまっていた。シオンは女が嫌いな訳ではなく、女が苦手なだけだった。
メラルドに抱きつかれオロオロとするシオン。ウリックはシオンの手を引き、メラルドとシオンを引き離した。
突然シオンは怒りを露わにする。半径一メートル以内に女性が入ると、途端駄目になってしまうらしい。

ウリックに肩を借り、女なんて大嫌いだと言うシオン。何故かウリックは怒り、シオンの頬をつねる。
その時、メラルドは魔物に襲われた。魔法を詠唱するシオンだが、胸が痛み咳き込んでしまう。
その間にウリックが魔物を倒し、助けられたメラルドはウリックに恋をしてしまった。
神殿が近くなってきたことを知り、メラルドとはここで別れる事に。
「本当は…ずーっとついて行きたかった…」知らぬが仏、メラルドは思う。
シオンはウリックの手を引く。何の反応を示さないシオンに、ウリックは怒ってばかりだった。

458 名前:レヴァリアース 投稿日:04/06/08 16:08 ID:???
基盤の神殿に、三人は辿り着く。神殿内は魔物で溢れかえっていた。
シオンの身体は弱っていた。アドビスで魔物を全滅させた時に使った魔法が、身体をツブしてしまっている。
魔法を使うたびに、バレないように薬を飲むシオン。
レムは蜂蜜で魔法陣を描き、一、二時間の間、姿を隠せるという結界を張った。

結界の中で、ウリックはシオンに調子はどうか訪ねた。
神殿内に結界が張られているため、魔法の威力が半分に弱まっているとシオンは言う。
ウリックが聞いていたのは、シオンの身体の事だった。
最近咳き込んでいるシオンを心配するウリック。シオンは風邪をひいているだけだと誤魔化した。

天使に守られた巨大な扉があった。
扉には何かが刻まれている。シオンはそれを解読、詠唱した。
扉を守る天使が語りかける。

「汝に問う…我は世界である。我は火、我は心臓、我は自然、我は元素、我は力、我は真理なり。
 すべてのモノの流動する形と動きは世界の永続と安定を形作っている。我は汝…汝は誰だ…。」

この扉の奥に水晶があると、ウリックは意気込む。
シオンは伝説を信じてはいないが、門番の仕掛けは現代の魔法使いが作ったモノでないと確信した。


459 名前:レヴァリアース 投稿日:04/06/08 16:10 ID:???
扉を壊せば中に入れるだろうと提案するウリック。
神殿全体が魔法で強化されており、破壊出来るわけないとシオンはウリックをバカにする。
火、心臓、自然、元素、力、真理。それぞれの言葉がキーワードになっており、シオンはその共通の答えを解いた。

それらは世界にあるべきもの。
火は文明の資源、心臓は生物の中心物。自然は天地万物で成り立ち元素は万物の根元。
力はあらゆる原子力であり、真理は物事の正しき道理。
すべて世界の基本であり基礎であり、物事の土台――答えは、基盤。

「そう…我は基盤である…そして基盤なる者を待っていました。」
扉が開かれる。その先に、天使に守られた台座と水晶がある。
実感の湧かないシオンは呆けており、ウリックは台座に駆け寄った。
ウリックはディアボロスの事、ザードの事を水晶に問う。
水晶は無言のままで、手がかりをなくしたウリックは涙を流した。

「よくぞ来た、我はお前が来るのを待っていた!!シオンよ!」
杖を落とすシオン。伝説は本当だったとウリックに言うが、ウリックには水晶の声が聞こえない。
水晶に選ばれたのはシオンだった。
ウリックは自分の代わりにディアボロスの事を聞いてと頼もうとする。
だが、シオンは水晶に尋ねた。「俺様は本当にアドビスの王子なのか?」
ウリックは自分の事しか考えていなかったと、自分を恥じる。

水晶は答えた。「ならば左手で我に触れよ。さすればお前の知りたいコトがすべて分かる」と。
水晶に手を伸ばすシオン。背後には巨大な魔物が佇んでいた。

43 名前:レヴァリアース 投稿日:04/06/14 10:36 ID:???

突然後ろから襲ってくる竜のような魔物。ウリックはそれに驚き、魔物を一撃で昏倒させる
しかし、ウリックは魔物を殺さずに、気絶させる程度で戦っていた。シオンは魔法を唱えるが、吐血してしまう。
魔物の顔の傷を見て、ウリックは突然メルリンと呼ぶ。
その魔物は、昔ウリックと森で一緒に暮らしていたメルリン(命名ザード)だった。

メルリンは幻を見せるブレスを吐き出し、レムがブレスを浄化する。
シオンは再び魔法を唱えようとした。
ウリックはシオンに泣きつく。「メルリンは何年も一緒に暮らしてた友達なんだ…だから…殺せない…」
思い留まるシオン。その時、メルリンの前足にウリックが捕らえられてしまった。
ウリックはメルリンに呼びかけるが、メルリンは狂ったように暴れている。
レムに攻撃方法はなく、シオンの魔力も限界に近づいてきた。

聖石がシオンに呼びかける。「左手で我に触れよ!」
シオンは恐れていた。もし自分がアドビスの王子でなかったら。
背後でウリックの叫び声が聞こえ、シオンは反射的に水晶に触れた。
水晶はシオンの左手の甲に埋め込まれる。

44 名前:レヴァリアース 投稿日:04/06/14 10:37 ID:???
――世界の調和を保つため、お前が必要だ…世界は均衡が崩れ不安定な状態になっている。
このままでは、世界が自ら滅んでしまう。今こそ我自身が動かねばならない。そのためにお前が必要だ――

シオンの頭の中に、水晶からの太古の情報が入ってくる。
目を瞑り苦しむシオン。様々な情報の中に、メルリンに捕らわれていたウリックの姿を見た。

ウリックは床に叩きつけられた。シオンはレムさえも聞いたことのない詠唱を唱え、メルリンを一撃で倒す。
シオンはウリックが無事でよかった、と言い倒れてしまう。
メルリンを消されたことで、ウリックはシオンに殴りかかった。
「シオンは君のために体を張って助けた。少しは彼の気持ちを考えてみたらどーだ。」
三人称で語りかけるシオン。シオンの左手に水晶が埋め込まれているのに、ウリックは気が付いた。

シオンは、西のイビスで魔法を使えば、ディアボロスのいる異空間に行けると話し出す。
町に帰り、ディアボロスの件はその後だというシオン。
ウリックはメルリンに花を捧げて別れを告げ、シオンの後を追いかける。
シオンを恨んじゃ駄目だ、全部ディアボロスが悪いんだ、とウリックは自分に言い聞かせた。

45 名前:レヴァリアース 投稿日:04/06/14 10:38 ID:???
宿に戻る三人。神殿でメルリンを倒した後の記憶は、シオンにはなかった。
水晶から昔の知識を得ることが出来たシオン。
シオンがアドビスの王子かどうか分かるね、とウリックは笑顔を見せた。

水晶は、伝説どおり全てを知っているわけではなかった。
シオンはイビスに向かわずに、ウリックとレムに言う。「アドビスで一緒に暮らさねーか?」
レムが反論する中、ウリックは家のガラスに写る自分の姿を見て、微笑んだ。

シオンだけアドビスに戻っていいとウリックは言うが、シオンは一緒に帰ると言って聞かない。
ウリックは戦いを甘く見ている。甘い態度ではこの先の旅で必ず死ぬと、シオンは断言した。
ザードを殺して、友達だった魔物を狂わせたディアボロスを許さない。
ウリックの決意は変わらなかった。シオンはウリックを見て、もう帰るなんていわない、と言う。
「暇ツブシに最後まで付き合うか!ディアボロスを倒しに行くぞ!」


242 名前:レヴァリアース 投稿日:04/07/02 23:22 ID:???

そこは小さな村だった。その村から西へ向かえば、イビスに辿り着く。
神と悪魔の戦いの後、悪魔や魔物は異世界に封印された。
何千年も経った今、異世界の魔物がどのような状態なのかは見当も付かない。
ウリックは絶対に死なせやしない――シオンは決意する。

ウリックは村の名産、アミュレットに興味を持っていた。
その時、家から少女が飛び出してきた。「皆大っっ嫌い!!」叫びながらどこかへ走っていく少女、ラプラ。
ウリックは静止するシオンを無視して、ラプラを追いかけていってしまう。
シオンは呆れながらも笑みを浮かべ、咳き込む老人に何があったのか尋ねた。

アミュレットは、満月の日に聖水に浸して月の神に祈りを捧げ、法力を込めて完成する。
ラプラは水恐怖症で、そのためにアミュレットが仕上がらない。
清めには法力の高い女性でないとならない。
ラプラと村長の娘のネルだけしか、アミュレットを完成させられないと言う。
「ネルちゃんとくらべ、うちのラプラときたら…」その言葉に、シオンは表情を重くした。

ラプラは噴水近くの石像に腰掛けていた。
村の少年達がラプラのことを弱虫だと小馬鹿にした。ラプラを追いかけてきたウリックが庇う。
弱虫じゃない、とラプラは正面を向く。ラプラの目線は前を向いてはいるが、どこを見ているのか分からない。

243 名前:レヴァリアース 投稿日:04/07/02 23:24 ID:???
突然、少年達は幻を見て逃げ出してしまった。噴水の上からシオンが登場する。
シオンはラプラにバカにされて悔しくないのか、と言う。
小さい頃湖で溺れて、水が恐くて仕方がない、とラプラは震えた。
ウリックが励ますと、ラプラは視線を上げて頷いた。

その夜、ラプラは法服に身を包んでいた。その手にはアミュレットがある。
周りの大人はラプラの気持ちを無視されて、ラプラにプレッシャーを与えていた。
ラプラも期待に応えようとしていて、プレッシャーに耐えきれなかった。子供なんだ、とシオンは言う。

ラプラは震える指先で、聖水に指を浸す。
ウリックの瞳を見るラプラ。ラプラはアミュレットに法力を込め、儀式を成功させた。
周りの人間がラプラを祝福する。ラプラは一目散にウリックに駆け寄った。
「あんたのおかげだよっ あんたのキラキラした瞳…見たら…」

翌日、ラプラは明るさを取り戻していた。祖父と父はさすが我が娘、とラプラを自慢する。
村の人間とも打ち解けたラプラを見て、ウリックとシオン、レムはよかった、と笑うのだった。


244 名前:レヴァリアース 投稿日:04/07/02 23:25 ID:???
二つの月は満月――輝月宮(きげつきゅう)で、重なり合おうとしている。
西のイビスに訪れた三人。イビスは見渡す限りの草原だ。
シオンが月の魔力を借りて、魔法陣を描く。
二つの月が重なり合う時、月の力が最高点に達する。魔法陣によって道が開かれ、異世界に行ける。
シオンは息を呑んだ。ウリックは時間があるのだからランチタイムにしよう、と弁当を広げだす。
レムが呆れる中、三人は最終決戦前にくつろぐのだった。

年に数回しかない、輝月宮が重なる時。
タイミングよくイビスに辿り着けたことに、ウリックはシオンと声を揃えて「ボクの(俺様の)日頃の行いがいーカラ!」と言う。
草原に三つの笑い声が響いた。
レムは、初めてシオンが大声出して笑うのを見た。以前とどこか変わってない?とシオンに問いかける。

ウリックは旅の最中の出来事を思い出す。
旅をしてきて一番良かったのは、シオンと出会えたことだと微笑むウリック。
一方、シオンも旅の出来事を思い出していた。
他人の事件に一々首を突っ込み、馬鹿げた伝説を信じ、説得力もないコトを言ったウリック。それを思いだし、笑うシオン。
シオンが変わったと感じたのは、表情だった。
魔法陣の位置につく三人。ウリックはロケットペンダントを開き、兄の写真を見つめる。

輝月宮が重なった。
旅の途中、焚き火をするセリア。「あの子達どーしてるカナ」月を見上げて呟いた。
レイヤーとティクスは、弟のルドに勉強を教えている。窓の外に重なる月が見える。
アドビスの国王は、シオンの安否を心配していた。ばあやは星が昇っている事に気が付く。不吉な…と、呟いた。
イビスには、魔法陣だけが残されていた。


631 名前:レヴァリアース 投稿日:04/11/23 14:08:57 ID:???
四ヶ月ぶりくらいで、顔を出すのも恥ずかしかったりするんですが
「レヴァリアース」続き投下させていただきます


異世界は一面、霧のかかった砂漠の様な場所だった。
見たことのない生き物が徘徊する世界に、ウリックは魔法陣の外へ出ようとするが、シオンが腕を引いて静止させる。
シオンはリンゴを魔法陣の外へ放り投げた。リンゴは一瞬にして溶けてしまう。異世界の大気は猛毒だった。

体に薄い結界を張れば、自由に異世界を動き回れる。ただし、制限時間は二つの月が離れる頃。
それまでにディアボロスとの戦いに決着をつけなければ、先程のリンゴのように溶けてしまう。
シオンは、ウリックとレムにオッツ・キィムへの帰り方を教える。
三人揃って元の世界に帰れる保証はないからだった。

魔法陣の外に出る三人。
ウリックの精神は、異世界の環境に対して拒否反応を起こしてしまった。嘔吐し、倒れかけるウリック。
そこに、異世界の魔物達が襲いかかってきた。
失いかける意識の中で、ウリックはザードに助けを求める。目を覚ますと、そこにはシオンの姿があった。
いつも助けてくれたのは、ザードではなくシオンだったと、ウリックは気付く。

異世界の魔物は、元々オッツ・キィムにいた魔物だった。
封印された魔物は異種再生を繰り返し、異世界の環境に順応していた。
人間が安易に訪れてはいけない世界。それを知っていたから、シオンは異世界に行くことを拒んでいた。

ずっと助けてきてくれたシオンに対し、隠しごとをしてきた自分に嫌悪し、
ウリックは嫌われることを覚悟して、自分が女であると明かす。
「それがどーした」何事もなかったかの様に呟くシオン。
混乱したのはレムの方で、シオンは最初からウリックが女だと知っていたのだった。

632 名前:レヴァリアース 投稿日:04/11/23 14:11:24 ID:???
シオンがザードと会っていた件も、ウリックが女だということを前提に言わなければならないから、話をそらせてきた。
ウリックはシオンに、ザードのことを聞こうとした。途端苛つき、周りにいた魔物を一掃するシオン。
ザードのことしか口にしないから、シオンはザードに嫉妬していたのだと、レムが茶化す。

砂漠を歩く三人。シオンは自分の過去を語り始めた。
魔法を学ぶのが楽しくて仕方のなかった幼少の頃。ある日、シオンの魔力が暴走してしまった。
「知れば知るほど恐ろしくなる…なのに、僕は何故知りたいと思う…自分が…分からない…」
周りの僧侶達も国王も、シオンの考えを否定するだけだった。
「お前は、知るコトと知るために学んでいるのだな」城に訪れてきた男――ザードだけが、シオンを理解してくれた。

世間知らずのウリックを貶すが、シオンは自分も同じだと言う。
幼い頃から、城という森に閉じこもって、書物しか相手にしていなかった。
ザードがウリックを守ってやってくれと言ったのは、シオンを城から出したかったという理由もあった。

レムはウリックに、何故男の格好をしていたのか尋ねた。
もし自分が男だったら、ザードと一緒に旅ができた。
待っているだけの自分が嫌で、ウリックは名前も姿も変えて旅をしてきたという。
その理由を聞いて、レムは慰めるがシオンは呆れて果てていた。
ウリック一人が増えたところで、足手まといに他ならない、やるだけ無駄だとシオンは言う。
けれど、それがウリックの良いトコロだと、シオンは思った。

633 名前:レヴァリアース 投稿日:04/11/23 14:15:26 ID:???
突如聞こえた心臓の鼓動のような音に、レムは震える。レムの言う方角に向かう三人。
「もし兄貴の敵討って、自分のコト許せたらさ。イリアに戻れよ」そして、また旅をしようと言うシオン。

進むたびに鼓動は大きくなっていた。霧で視界が遮られている。
霧が晴れ、目の前には城の様なものが建てられていた。
明らかに何者かの手が加わっている城。ここにディアボロスがいると、確信する三人。
シオンが壁を破壊、入口を作ってそこから進入した。
月は半分離れている。

シオンはディアボロスにザードが殺されるなんて、何かがおかしいと思っていた。
レムはふと何かを見付ける。それは氷付けにされた白銀の竜、ディアボロスの骸だった。
死因は幾多にも刻まれた剣の傷で、レムはザードが倒したんだ、と口にする。
信じきれずに走り出すウリック。その後を追いかけ、ウリックの手を捕まえるシオン。
あいつなりの理由があったんだ、とシオンは言う。

いつのまにか、三人は書架が並んだ空間にいた。椅子の様なオブジェに座っていたのは赤い仮面の男。
「また人間が殺されに来たのですか?」仮面の男は言う。ザードの剣を懐から出した。
ザードを殺したのは仮面の男、イールズオーブァだった。

兄の敵が目の前にいる。ウリックは我を忘れて、イールズオーブァに飛びかかった。
ザードとウリックは似ていないから気が付かなかった、とイールズオーブァは呟く。
「うるさい!たとえ…たとえ血がつながってなくれもザード兄さんはボクの兄さんだ!」
ウリックは泣きながら、イールズオーブァに殴りかかる。

634 名前:レヴァリアース 投稿日:04/11/23 14:20:18 ID:???
幼い頃、ウリックの両親と本当の兄は、崖崩れで死んでしまった。
泣いている少女、そこに現れたザード。少女の傍には大きな岩と、下敷きになった人間が見える。
ザードは少女の頭をそっと撫でた。涙が溢れ、少女はザードに泣きついた。

ウリックの傍に、何も言わずにいてくれたザード。ウリックはイールズオーブァを睨み付ける。
「そんなものがなんだっていうのですか」イールズオーブァは冷たく言い、魔法を放った。
ウリックのロケットペンダントが切れ、イールズオーブァはそれを踏みつける。

イールズオーブァは刃向かってきた魔物を八つ裂きにし、オブジェとして飾っていた。
体中に針の様なものを刺された魔物が、血を流して恨みを呟く。
死にかけの魔物は、イールズオーブァによって掻き消された。

シオンは魔法を唱えるが、イールズオーブァは生きた鎧に守られる。
「ザード兄さんが勝てなかった相手に、ボクらが勝てるワケないじゃない」
ウリックは乾いた笑いを浮かべる。シオンはウリックの手を引き、走り出した。

戦いは命のやり取りだと知り、死というものを身近に感じた時、ウリックは戦いを恐れ、戦意を喪失してしまった。
シオンは、魔法で城の外に飛ばすから、オッツ・キィムに帰れと言う。
レムにウリックを任せ、シオンはウリックを抱きしめる。
「オッツ・キィムでまた会おう」


453 名前:レヴァリアース[sage] 投稿日:05/03/08 20:09:26 ID:???
ウリックら三人を捜すイールズオーブァ。シオンはオブジェの上に座っていた。
イールズオーブァの願いは、魔物による世界統一。
人間を野放しにしておけば、いずれ自然界のバランスは崩壊し、
近い未来に、オッツ・キィムは崩壊すると。

イールズオーブァは、シオンの力を見込んで、世界を救うために協力を持ちかけた。
シオンはそれをいやだい、と断る。
「魔物統一以外に何か方法あんだろ!たとえばっ…魔物が共生し調和のとれた世界をつくるとか…!」
昔ザードが言っていた台詞を言いながら、魔法を使うシオン。イールズオーブァは、昔のシオンに似ていた。
いつからこんな説得力のないことを言うようになったんだろうと、傷だらけでシオンは倒れる。

倒れたシオンに、とどめを刺そうとするイールズオーブァ。
起き上がるシオンは魔法を放ち、その攻撃を受けたイールズオーブァの仮面が割れた。
シオンは空を見上げる。月は半分以上離れている。
イールズオーブァは、シオンに対して剥き出しの殺意を抱いていた。
カメのようなトロクて弱そうな顔をしてる、とシオンは挑発する。
書架を滅茶苦茶にされ、イールズオーブァは子供のように怒りを露わにした。

454 名前:レヴァリアース[sage] 投稿日:05/03/08 20:14:43 ID:???
レムの呼びかけに、ウリックは目を覚ます。そこは異世界の砂漠だった。
城へ戻ろう、とレムは言うが、ウリックは嫌だと脅えていた。一瞥して、レムは一人で城へ戻っていく。
ウリックは振り向く。砂漠には、二人分の足跡が残されていた。
ずっとこうやって旅をしてきたんだ、とウリックはシオンの足跡を見る。
先に行くレムに、ウリックは声をかけた。「ボクも…ボクも行く…!」

城の内部を走るウリック。攻撃を受けて倒れるシオンを見付けた。
切れ切れの息で、何で戻ってきたと叫ぶシオン。
当たり前だ、と言い返すレム。死ぬのは怖いがシオンを失いたくないと言うウリック。
シオンは自分の為に二人が戻ってきたのだと知り、目を見開いた。

魔力によって異形の魔物に成り果てたイールズオーヴァが、三人を見下ろす。
苦しい事や辛い事は、他の誰にも味わって欲しくない、とウリックはイールズオーブァに泣きつく。
そんな奴殺しても良いのに、とレムが叫ぶ。
「…アタ…タカイ…。な…んて…ココチヨ…イ…。いい…な…なつかし…いなぁ…」
戦意を喪失したかのように、涙を零すイールズオーヴァ。
しかし、そんな世界を作るため、障害となる人間を殺さねばならないと
イールズオーヴァは再び三人に襲いかかってきた。

455 名前:レヴァリアース[sage] 投稿日:05/03/08 20:17:56 ID:???
閃光が辺りを包む。
イールズオーブァは攻撃を繰り出す事も出来ず、シオンの魔法で破壊されていた。
殺してすまない、けど仕方がなかったんだ、とシオンは言う。笑って、ウリックに手を差し伸べた。
手を取ろうとするウリック。同時に、シオンの手から力が抜けた。身体中から血が溢れ出る。
魔法の威力が強大すぎて、体に負担がかかりすぎた為だった。
そのまま倒れ、動かないシオン。

イールズオーブァは虫の息だったが、体の破片を集め、再生し始める。
とぎれとぎれに、シオンはウリックに逃げろと言う。
ウリックは泣き叫び、書架から本を取り、手当たり次第にイールズオーブァを攻撃した。
イールズオーブァは動かない。
レムはウリックを止めようと声を掛けるが
ウリックは静止の声を無視し、イールズオーブァの骸を殴り続けていた。

レムはシオンを治療するが、シオンの怪我は完治しない。
意識を取り戻したシオンに、こんな事に巻き込んでゴメン、とウリックは謝る。
「みんな心配…してる…カナ。陛下も…してくれるカナ…親父…だもんな。…血のつながった…」
シオンは少しずつ、昔の事を話し始めた。レムは喋らないで、と言うが、ウリックがそれを制した。

456 名前:レヴァリアース[sage] 投稿日:05/03/08 20:19:24 ID:???
子供の頃のシオンは、周囲の望む王子を演じてきた。
「それで楽しいか?」男が問う。シオンは仕方がない、と言った。
男は一枚の写真を見せた。魔物と共に笑顔で写る少女――イリアの写真だった。
その男――ザードは、イリアの好きな絵本をシオンに見せる。他愛もないお伽噺だと、シオンはバカにする。
イリアはその本を見るたびに泣いているのだと、ザードは言った。

自室の机の上に突っ伏しているシオン。イリアの事を考えると、胸の下辺りが苦しくなる。
女に対する嫌悪とは違う、イリアを理解するのが恐いのか、どうして絵本一冊で泣くのか分からない。
イリアを馬鹿にすることも、けなすことも、一緒に泣く事も出来るのに、とザードは問う。
「だが君はいずれも選ばずわからないと言って怖がってる。何故だ」

シオンは、ばあやと話をしていた。
ばあやは「シオンが無理をしているように見える」と言う。
「そうさせているのはお前達だ、皆が自分を分かろうとしていない」と、シオン。
「自分の気持ちに…感情のままに…素直であってくだされ…。でなければ、いずれ分からなくなってしまいます」
ばあやは言った。

それからも、ザードは城に訪れるたびにイリアの話をしていた。
イリアに対する恐怖心が薄れ、シオンは逆に興味を惹かれたのだと話す。
「そうなんだ、そんな時に…」言いかけるシオン。
ウリックを見てから、何でもない、と目を閉じて笑う。

457 名前:レヴァリアース[sage] 投稿日:05/03/08 20:22:22 ID:???
シオンは、幼い頃にイリアと会っていた。
森の中で、足に怪我を負ったシオン見て、急に泣き出すイリア。
怪我に応急処置を施してから、イリアは笑った。
「キズこれでだいじょうぶだヨ」

久し振りにシオンが見たイリア――ウリックは、男の格好をしていた。
影からウリックを守ってやっていたが、シオンが魔物に襲われていると勘違いされて、逆に助けられる羽目になる。
ザードの頼みだからウリックを守るが、それだけではないような気分になるシオン。
「これでだいじょうぶ」他人を心配するウリックに、シオンは昔見たイリアを重ねていた。

「昔ばばの言ったことも…ザードの問いの答えもよくわからなかった…
 ケド…今ごろ…今ごろなんとなくわかったよーな気がする」

早くオッツ・キィムに帰れと言うシオンに、ウリックは一緒に残ると言う。
「いろんなことを…自分自身の目でたしかめて…いろんな生き物や いろんな人と触れ合って
 時に笑って時に泣いて…悩み 感動して 知って お前のこれからの時間を…すばらし…い…もの…に…
 …イリア…生きて…く……」
シオンの腕が床に落ちた。嗚咽を堪えずに、泣き出すウリックとレム。

――これからもすばらしい時間(とき)を――

レヴァリアース・END

458 名前:レヴァリアース[sage] 投稿日:05/03/08 20:27:23 ID:???
同作者の作品「刻の大地」は、レヴァリアースの3年後の物語です
主人公は新キャラですが、ウリックやレムがサブキャラとして登場しています
現在、刻の大地は休載中