ピグマリオ/和田慎二
250 名前:マロン名無しさん 投稿日:05/01/01 14:10:41 ID:???
新春お年玉企画(笑)、「ピグマリオ」全編を一挙投稿致します。
まず最初に、1レスで全編の粗筋を投稿し
その後に続けてより詳細なストーリーを投稿します。

251 名前:2kbで分かる「ピグマリオ」の粗筋 投稿日:05/01/01 14:11:54 ID:???
有史以前の神話の時代、東の国ルーンの皇子クルトは八歳の誕生日に、死んだはずの自分の母親が
妖女メデューサに石にされていたこと、また母が善神の娘たる精霊であり、自分が精霊の血を引いていることを知る。
祖父である善神アガナードにお守りの守護像を託され、クルトはメデューサを打つべく西の果てへ向け旅立った。
彼の道連れとなったのは、幼竜レオン、酒好きの妖魔ギルガドール、そして美しき星占師の少女オリエ。
旅の途中でさまざまな人物、そして神々に出会いながら、クルトは多くの絆を結び、そして王としての器量を磨く。
その一方で、ガラティアの妹、精霊オリエや、メデューサの実兄である風来坊の妖魔アスナスのように
人間以外の種族で、クルトを通して人間の生き様に魅せられる者も現れる。
やがて厳しい戦いの中で、クルトは仲間たちとも一人また一人と別れていき
最後には、最愛のパートナーであった少女オリエとも死に別れ、ひとりで宿敵メデューサの城へ乗りこむ。
彼の戦いは世界中の知るところとなり、メデューサを倒すことを望む人間たちの間で皇子クルトの名は
国や民族を超えた旗印として輝くようになっていた。
メデューサとの最終決戦において、クルトはメデューサとガラティアが、前世ではひとりの人間であり
二つに分かれて対極の存在に転生したこと、またガラティアの血を引く自分が、神々の時代が終わるとき
新たな時代を創り出す創世王「ピグマリオ」の宿命を持つことを知る。
ピグマリオとして覚醒したクルトは、すべての神々の力を受けメデューサを圧倒するが、母の半身たる
メデューサにとどめを差すことをためらう。だがメデューサは、自分は「乗り越えるべき母」の象徴だと語り
自分を倒して王の証を立てよと宣言。クルトはその言葉に従い、メデューサを倒した。
数奇な偶然に助けられ、母ガラティアの命を取り戻したクルトは、最後に大地の女神の助力を得て
黄泉の世界に入り、少女オリエを現世へと連れ戻し、彼女を伴侶として王となる。
彼の冒険は、伝説として広く語り継がれ、それが神話となり、長い時を経た現代に至っても
断片化して語り継がれている。石像の乙女に恋をした王が、女神の力で人間となった石像の乙女と結ばれる
ギリシャ神話の「ピュグマリオン伝説」もそのひとつである。

252 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:12:46 ID:???
これは遠い昔の話、語り部たちはただ天地の始まりを伝えるだけでその役目を終える頃の話
現在に伝わる神話も伝説も歪められることなく現実であった時代を生きた、一人の少年の物語…

東の国ルーンに、一人の少年がいた。国王の一人息子、王子クルト。
天真爛漫な性格と、人間離れした怪力を持ち、明るく誰からも好かれる子。ただ、母親の名も顔も知らず
生まれてこの方、母のぬくもりを知らぬことが、わずかながら彼に陰を落とすのみであった。
だが、8歳の誕生日を前にして彼は真実を知る。彼の母は、善神アガナードの娘、精霊ガラティアであり
クルトを生んで間もなく、悪神エルゾの娘、妖女メデューサによって石にされてしまっていたのだ。
誕生日の式典に現れたメデューサの使徒を返り討ちにしたクルトは、メデューサを倒して母を元に戻すことを誓い
メデューサが住むという西の果てへと旅を始めた。
旅立ったクルトの前に、彼にとっては祖父であるアガナード神が、ガラティアの妹、精霊オリエと共に現れた。
アガナードはクルトに、小さな黄金の守護像を託した。オリエはその像について
「守護像には三つの力が宿っている」と告げ、像を持ち続けることが身を守ることにつながると説明する。

アガナード紳と別れたクルトは、小船で海を進むが、何者かに襲われて像を海に落としてしまう。
漂流の果てに、クルトは近くの海岸に居を構える「入り江の一族」に助けられ、彼らの客人となった。
「入り江の一族」は、山の上に住む「山の一族」と長い間争いつづけているという。
ふとした偶然から、山の一族の族長の娘とも知己を得たクルトは、二つの部族の奇妙な誤解に気付き
やがて、二つの部族を争わせていた黒幕、メデューサの下僕たる大亀ザクマの存在を知る。
戦う力を求めたクルトは、オリエの紹介で大地の女神ユリアナに会い、彼女の持つ巨大な剣を譲り受けた。
合言葉によって、短剣にも元の巨大な剣にもなる「大地の剣」を得たクルトは、大亀ザクマを倒し
二つの部族を和解させ、ザクマが手に入れていた守護像をも奪い返す。
だが、そんなクルトを見ている者がいた。メデューサの使徒サロメと、謎の男アスナスである。

254 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:13:21 ID:???
旅を続けるクルトは、知恵あるトカゲ達の住む谷に迷い込む。彼らは、巨大な一つ目の怪物に脅かされ
酒と生贄を捧げ続けていた。この谷で、拾われ子のトカゲ、レオンと親しくなったクルトは
彼と協力して酒好きの怪物を倒す。すると呪いが解け、トカゲ達は人間に戻った。
トカゲのままなので疎外感を感じるようになったレオンは、谷を去ってクルトの旅に同行することを決める。
一方、クルトを追っていた使徒サロメは、怪物を蘇らせ、ギルガドールと名付けて自分の部下にした。

使徒サロメは先回りをして、セレネの都に入った。いささか愚鈍な王を、賢明な二人の王女が支える国。
だが都に忍び込んだサロメは、姉王女を殺してその顔の皮をはぎ、姉王女に成りすますと
密かにエルゾ紳を崇めていた悪徳大臣を抱きこみ、国を牛耳り始める。
何も知らず都に入ったクルトは、大地の剣と守護像を奪われ、奴隷の身に落とされる。
奴隷としての荒んだ環境で、今まで知らずにいた人間の醜い面を見せ付けられたクルトは、次第に弱り
その怪力を失っていった。
弱らされたクルトは、クルトの最期を見届けに来たメデューサとその使徒達の前に引き出されたが
人間を憎み、絶望するよう仕向けるサロメの言葉に乗せられることなく
「憎むべきは、欲望をそそのかすおまえたちだ」と一喝。脇で見ていたアスナスは、その言葉に王者の器を見る。
業を煮やしたサロメは、石像と化したクルトの母をこの場に呼び寄せ、それを打ち砕くさまを見せ付けるが
これは逆効果。怒りで本来の力を取り戻したクルトは戒めを破って暴れ出し、油断したサロメは
姉の敵討ちを誓ってクルトに協力していた妹王女と相打ちになり死す。
大地の剣を取り返したレオンと、彼が酒で味方につけたギルガドールの助力を得たクルトは
メデューサに剣を突き付けるも、メデューサは影だけを残して去ってしまう。
消え行くメデューサの影に、クルトは必ず復讐を果たすことを誓うのだった。

255 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:13:52 ID:???
旅の途中、森の奥に住む三人の魔女に、サロメが壊した石像が単なる幻に過ぎず
本物の母ガラティアの石像の無事な姿を見せられたクルトは、旅を続ける意欲を取り戻す。
このとき、クルトの後を付けていたアスナスもガラティアの姿を見た。これが、後で大きな意味を持つことになる。

次の国で、クルトは一人の少女と知り合った。精霊オリエと同じ名を持つ、占師の少女「水晶の姫」オリエ。
西の方角に、自分の運命にかかわる人物がいるとの神託を得て、西へ向かう途中だという。
母親に猫かわいがりされ、同世代の友人がいない彼女に、クルトは親しく語りかけるようになる。
だが、クルトとオリエの前に新たな敵が現れる。死してなお渦巻く執念を認められ、使徒ドルバロームの手により
妖魔として生まれ変わったリザードマン、ゲオルグ三兄弟。
オリエを人質に取ろうとするゲオルグを、辛うじて倒すクルトだが、骨だけになってなお動くゲオルグ長兄は
頭蓋骨だけとなってくるとの守護像を奪い取り、自分の故郷である北の国へと逃げていく。
クルトがオリエと別れ、ゲオルグを追って北へ去った直後、「運命の人」の星が北に動くのに気付いたオリエは
彼こそが自分の「運命の人」だったと気付くが、そのときにはふたりはもう遠く離れていた…。

故郷であるリザードマンの国へたどり着いたゲオルグの首は、国王のイシダリを殺して王に成りすまし
周辺諸国への侵攻を開始する。
一方、ゲオルグを追ってきたクルトは、ザドスの国に入る。この国は、代々の神官が
聖なる笛で、岩の巨人兵ゴレムを操ることによって侵略を退けていた。
だが、その秘密を知るイシダリ王国の妖術師オズによって、神官の少女ル・ルージュはさらわれ
クルトは、ル・ルージュを救い、守護象を取り返すためにイシダリ王国へ向かう。

256 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:14:24 ID:???
王に成りすましたゲオルグは、妖術師オズにル・ルージュを操らせ、巨人兵で他国を攻める作戦を立てる。
イシダリ王国に乗り込んだクルトも、大地の剣すら効かない巨人兵によって捕えられてしまう。
闘技場に引き出され、怪物の餌にされそうになっていたクルトの元に、レオンが駆けつけた。
自分がトカゲではなく、竜の幼生であることを知ったレオンは、炎を吹いて怪物を倒しクルトを救う。
思わぬ反撃に怯えたゲオルグは、降伏を勧めるオズを殺し、自らクルトをだまし討ちにしようとするが失敗。
守護象を取り返されてしまう。しかし、オズの策によって毒を受けていたクルトは、ここで倒れてしまった。
一方、成り行きを見守っていたアスナスは、ル・ルージュから笛を奪い、巨人兵のコントロールを得る。
クルトを北へ行かせたくない様子の彼は、巨人兵でイシダリ王国を取り囲み、クルトを殺そうとするが
そこへドルバロームをはじめとするメデューサの使徒たちが現れ、クルトをしとめる手柄を巡って争い始めた。
その最中、雲が渦巻き地響きが起きる。守護像が、悪紳エルゾの領域であるこの地に反応して
三つの力のひとつを発揮し始めたのだ。
アスナスや使徒たちは逃げ出すが、ゲオルグに力を注いでいたドルバロームだけは、守護像の力に
抗う余力が無く、その力の本流に呑みこまれて死ぬ。
その一方で、クルトの元にあらわれた精霊のごとき影が、クルトを癒し、北へと送り出していた。
エルゾの領域であるこの地で、精霊が力を振るえるはずは無いのだが…。

イシダリ王国を呑みこんだ光が消えた後、人々がそこに見たのは、ただ凍りついた湖と荒野のみ。
かつてそこにあったはずの王国は、その痕跡まで消え失せていた。
辛うじて助かったル・ルージュは、ザドスの災いをその身に退きうけて戦ってくれたクルトの無事を
ただただ祈るばかりであった。

257 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:15:02 ID:???
イシダリ王国からさらに北に飛ばされ、吹雪渦巻く「死の山」にたどり着いたクルトは
山の王、大猪のゼオと戦い、これを倒す。ゼオは亡くなる前に
「わしの右の牙を、北の荒地の“糸つむぐおばば”に届けてくれ」と言い残し、クルトはそれを引受けた。
この山で、クルトは精霊オリエと再会する。イシダリ王国でクルトを助けたのも彼女だった。
彼女はクルトを支えるために、大地の女神ユリアナの試練を受け、中立なる「白い力」を得ていたのである。
北の荒地に入ったクルトは、メデューサの使徒の妨害を受けながらも“糸つむぐおばば”の元に着いた。
ゼオの信頼を得たクルトをおばばは歓待するが、彼女の正体はなんと、メデューサの元乳母であった。
驚くクルトの前に、メデューサがおばばに会うため姿を現す。おばばはクルトを庇って隠そうとするが
母の仇を目の前にして、クルトは怒りのあまりメデューサの前に飛び出した。
だが、本気になったメデューサの力は圧倒的だった。地を覆い尽くすほど巨大な蛇の姿となったメデューサに
クルトは大地の剣を振り下ろすが、大地の剣は堅いうろこに阻まれて折れてしまう。
戦うすべを失い、殺されるのを待つばかりのクルトを庇ったのは意外にも“糸つむぐおばば”であった。
おばばの必死の嘆願を受け、メデューサはクルトを見逃してその場を立ち去る。
入れ替わりに現れたのはアスナス。おばばが子供に甘い事を知っている彼は、口封じにおばばを斬り
おばばはクルトに「おまえの額にある“星”を大切にしなさい」と言い残し息を引き取った。
さらに、おばばは死ぬ間際に一つの幻を見せた。虹の掛かる美しい谷にたたずむ一人の美女と
「ピグマリオ」という謎の言葉。力を使いすぎて消耗した精霊オリエと別れ、クルトは西への旅を再開する。

再び西を目指すクルトの前に現れたのは、“銀騎士”マリウス。人間でありながら「メデューサの息子」と呼ばれる男。
まだ子供の頃、死病に苦しむ妹エルザのため、メデューサの直轄領に入り込んだ彼は
その剣技の才能をメデューサに認められ養子となった。メデューサは死んだエルザを蘇生させ、マリウスにも
自分の血を飲んで不死を得るよう勧めるが、彼は人間としての強さを極めてから血を飲むと宣言し
メデューサの側仕えとなったエルザと別れ武者修行の旅を続けているのである。

258 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:15:35 ID:???
火山のふもとにある「火の国」で、クルトはこの国の少年ユタと、その母ベルマと親しくなる。
だがこの国でくつろぐクルトの前に騎士マリウスが現れ、クルトに勝負を挑んできた。
二人が戦っているとき、突然火山が爆発し、火口から火を吐く怪物が現れてふもとの村を襲う。
ベルマはクルトを庇って死に、それを遠目に見ていたユタとマリウスは
「クルトがベルマを見殺しにして自分だけ助かった」と誤解してしまう。
ユタとマリウスがクルトを見捨て、ふたりで怪物と戦う算段を始める一方で、己の無力を痛感したクルトは
折れたままの大地の剣を修復するため、大地の女神ユリアナの元に向かう。
ユリアナから、大地の剣を鍛えた火の神ペレを紹介されたクルトは、怖い顔の割にお調子者のペレをおだて上げ
剣を修復してもらうが、そのとき「お前に問う。この世で一番美しい女は?」と尋ねられ「母さま」と即答したクルトに
ペレは「まだ子供だ。だが先が楽しみでもある」と言って笑うのだった。
修復された剣を携えたクルトは、怪物と戦うマリウスとユタに加勢。怪物を倒し、ユタの誤解を解く。
マリウスはクルトの人間性に興味を持ち、しばらくクルトと戦わずに彼を追うことにした。

火の国を去り、たどり着いた別の国でクルトは、占師の少女オリエと再会する。
幾つもの国の災いを、占いによって見抜き取り除いてきた彼女は、世界の騒乱を望むメデューサ一党から
敵視され、追われるようになっていた。
オリエのキャラバンにふたたび同行したクルトは、その途中で謎の語り部の老人に会い
メデューサの弱点について聞く。それは、メデューサの父神エルゾの凍てつく魂「エルゾの鏡」。
100片以上のかけらに分割され、強力な妖魔の体に埋め込まれて隠されているそれを集めることができれば
メデューサと戦うときに切り札となる、と語り部は言う。
同時に、語り部はオリエにも新たな占いの力を授けた。彼は、オリエがクルトの旅に同行する決心を固めていると
見抜いていたのだ。そして彼は、オリエを見て「クルトは母親に出会う」という奇妙な予知を得る。
実はこの語り部、クルトを心配して降りてきたアガナード神の化身だった。二人に助言を授けた彼は
帰り際、天界に何か変事があったことに気付く…。

259 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:16:07 ID:???
クルトを密かに監視しつづけていた謎の男アスナスの正体は、窮屈な地位を嫌って出奔した
元エルゾの後継者、メデューサの実兄である。人間界に居城を持ち放浪していた彼は
ガラティアの石像を目にして以来、その美しさに心引かれ、像の複製を作ることを思いついた。
人間の名彫刻家バッコスを拉致してきて像を彫らせるが、完成品はことごとくアスナスの気に食わない。
「これは、一度実際に精霊を見なければ」と一念発起したバッコスは、虹を継ぎ雲を削って橋を作り
天界に入り込む。そこで運良く、精霊オリエに行き会った彼はオリエの姿を目に焼き付け
その記憶を元に、アスナスを納得させるほどの見事な石像を完成させる。
このとき、バッコスは天界で、それと知らずに重要な一つの封印を解いてしまった。解かれた封印の奥から
謎の光球が幾つも飛び出す。ほとんどは精霊達に回収されるが、一つだけ回収を逃れ人間界に降りていった。

キャラバンを離れた少女オリエと共に旅を続けるクルトの元に、天界から降りてきた光球が現れ
夢を通じて、古い神殿と石像のイメージを伝えてくる。
人に話を聞き、近くの湖に沈んだ神殿の遺跡が、1年に一度浮かび上がってくると聞いたクルトは
その湖を訪れるが、そこにメデューサの使徒グルトリアが現れた。
彼の目的はクルトとオリエではなく、メデューサの勅命により、ここにある聖像を壊すこと。
出くわして戦いとなるクルトたちとグルトリアの前に、湖底から神殿が姿を現した。
クルトの前で、聖像が輝き、像に母ガラティアの姿が重なる。
ガラティアは「虹の谷を探し、そこへ行く旅の中で、お前の星を輝かせてくれる人を探しなさい」と告げた。
その直後、聖像はグルトリアに破壊され、クルトはグルトリアと戦ってこれを倒す。
死んだグルトリアの体内から、クルトは「エルゾの鏡」のかけらの幾つかを回収するが、残りのかけらは
近くで成り行きを見守っていたアスナスの手に渡る。彼もまたかけらを集める者だった。
母の残した言葉を胸に抱き、クルトは旅を続ける。

260 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:16:38 ID:???
一方、銀騎士マリウスは旅の途中、グリーンノアの国で病に倒れていた。
彼の従者、雌竜のシルヴァーナが彼を介抱しているところへ、黒衣の美女が現れる。
マリウスはその正体を見抜いた。マリウスを心配したメデューサが、お忍びで彼の元に現れたのだ。
村の納屋を借りて静養するマリウスの元に、この国の国王が訪れ、自分に仕えろと命令してきた。
強引な話だがそれには理由がある。隣りの大国との仲がこじれたため、この国は強い戦士を欲しているのだ。
マリウスに成り代わり、メデューサが王に会い、彼の困り事を解決していくが
やがて国王は、メデューサの正体を知らぬまま彼女に恋心を抱くようになる。
メデューサもそんな彼を憎からず想うが、「私の子を産んでほしい」という国王のプロポーズの言葉に
彼女は泣きながらその申し出を拒む。妖魔である彼女は、子を産むことはできないのだ。
未練を断つため、妖女の姿をあらわして国王を脅すメデューサだが、国王はそれを見てなお彼女に手を差し伸べる。
そんな国王を石に変え、打ち砕いたメデューサは、マリウスに伝言だけを残して寂しげに去っていった。

西への旅を続けるクルトとオリエは、とある村で、怪物に生贄の乙女を差し出すところに遭遇する。
クルトは怪物退治を、オリエは生贄の身代わりになって怪物を片付ける役目を、それぞれ個人的に引受けた。
出発する二人は、それぞれの依頼人から、この村の名物「夢の実」を預けられる。これを子供が食べると
しばらくの間だけ大人になってしまうのだ。これを食べて、生贄の乙女と、それを助けにきた恋人に成りすました
オリエとクルトは、互いの正体を知らぬまま、相手の姿を見て胸が高鳴る自分に気付く。
怪物が倒され、騒ぎは終わるが、生贄の儀式の夜に出会った相手の正体を気付かぬままに
クルトとオリエの関係は微妙な変化を遂げる。

261 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:17:09 ID:???
海辺の村にたどり着いたクルトたちだが、西の海は大荒れで旅を続けることができない。
仲の悪い双子の海神、ネプチューンとポセイドンが喧嘩をすると、海が荒れるのだと聞いたクルトは
「ぼくが喧嘩を止めてやる」と持ち前の真っ直ぐさで飛び出していった。
だが、すでに海には使徒イリューズが策をめぐらしていた。クルトに成りすまして海で大暴れしたイリューズのせいで
クルトを共通の敵とみなしたネプチューンとポセイドンは、飛び込んできた本物のクルトと大喧嘩。
その戦いでクルトは、海の平和のシンボル「真珠の塔」を破壊してしまい、海底の牢獄に捕えられてしまう。
悪いのは海神の方だと意地になるクルトに代わり、少女オリエは素潜りで真珠を探し、集めはじめる。
だがそこに、真珠の塔に封印されていた海魔を解き放ったイリューズが襲いかかった。
真相を理解し、オリエに犠牲を強いた自分の過ちをクルトが理解したとき、大地の剣はふたたび彼の手に戻り
海魔もろともイリューズを吹き飛ばす。
海神たちはイリューズに止めを刺そうとしたが、そこに現れたもう一人の使徒タロスがそれを阻む。
イリューズの正体が、双子の海神の喧嘩の巻き添えで一族を殺された小魚であることをタロスは告げた。
己の喧嘩の実害を目の当たりにした双子の海神は、イリューズを殺さず見逃し、大いに反省する。
そんな海神に、クルトは妥協案を出す。それぞれが海の暖流と寒流に乗って海を見まわり
たまに顔を合わせたときだけ、海の住人に迷惑をかけない範囲で喧嘩をすればいい、と。
双子の海神はこのアイデアを受け入れた。しかも、たまにしか会わなくなったせいでかえって仲が良くなり
海流が出会う海域で顔を合わせると、仲良く宴を開くようになった。現在でも、暖流と寒流の出会う海域が
豊かな漁場になるのは、このためであるという。

さて、双子の海神の元を旅立ったクルトたちは、海神の遣わしたクジラに乗って海の旅を続けていた。
そこへ海神の使者が現れ「虹の谷を見つけた」と告げる、だが、二人の使者はそれぞれ別の「谷」を見つけたらしい。
二つの「谷」がそう離れていないらしいと知ったクルトは、とりあえずその方角へ向かうことにした。

262 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:17:40 ID:???
海神の使者に案内され、まず一方の「谷」を目指したクルトたちは、なんと精霊オリエに出会う。
彼女が一行を導いたのは、蓮の花が咲く池と、大きな虹の掛かる美しい谷。
ここは、精霊が生まれる聖地であると精霊オリエは語る。
この谷で、クルトは精霊オリエの姉、戦いの精霊マルスから「精霊オリエは、お前を愛し始めている」と打ち明けられる。
だが、クルトは自分の精霊オリエに対する感情が、恋愛感情ではないと気付いていた。
彼女の気持ちに答えることはできないクルトは、あえてこの谷を出て去っていく。
もう一方の「虹の谷」に向かうことにしたクルトたちは、その途中銀騎士マリウスと遭遇した。
アスナスから、クルトがここに来ると聞かされて待っていたと言う。
「虹の谷」に長く住む「谷のヌシ」大蟹アブアブ=アズナブールに導かれ、クルトとマリウスは
最初の谷以上に厳重に監視された不気味な谷に入った。溶岩の池に大きな虹が掛かる谷。
そしてここは、妖魔が生まれる谷だった。妖魔はここで生まれ、一度悪神エルゾの世界に連れていかれて
邪悪な心を吹きこまれるのだ。それを知ったクルトの額に、一瞬だが星のような光が浮かぶ。
クルトは、悪神の力が広まるのを止めるために地面を打ち、妖魔の谷を打ち砕くが
その途端、なぜか離れた場所にあった精霊の谷までが崩壊し始めた。
崩れ行く谷と共に、大蟹アブアブは沈んでいき、その直前クルトに「お前はメデューサの息子だ」との言葉を残す。
アブアブの最期の言葉、そして、母ガラティアや“糸紡ぐおばば”の言葉は、どのような関係を持つのか。
マリウスと別れ、オリエとレオンと西へ向かう旅に戻ったクルトは、多くの謎を抱えつつもメデューサの城を目指す。

263 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:18:11 ID:???
クルトの旅も佳境に入り始めたその頃、妖魔たちの世界で大きな動きが起き始めた。
全ての妖魔の父、悪神エルゾが、正式に後継者としてメデューサを指名したのだ。
だが、その前に片付けるべき禍根としてエルゾはクルトの名前を挙げ「実の子は手にかけられぬか」と責める。
メデューサは苦悩し、その一方で、メデューサの側近として仕えていたマリウスの妹エルザは
クルトがメデューサの実子なら、養子である自分やマリウスの立場が無くなると考え、クルトを憎むようになる。
エルゾはその一方でアスナスの元を訪れ、アスナスが「エルゾの鏡」を集めている事実を指摘。
アスナスに反逆の兆しありとして彼の魔力を取り上げ、人間に変えて追放してしまった。

旅の途中、地の底に住む小人族を助けたクルトは、彼らからメデューサの城へ向かう道について情報を得る。
メデューサ城は、強大な妖魔の三姉弟が創り出す“ゆがめられた西”によって守られており
ただ進んでも、その“ゆがめられた西”にはまって迷うばかりでメデューサ城にはたどり着けないと言うのだ。
クルトは、小人族の守護神…すなわち大地の女神ユリアナの助けを受けて西へ進むことになる。
その際、ユリアナはなぜか少女オリエだけを呼びとめ、彼女に何事かを教えた。
一方、クルトの前には火の神ペレが現れ、クルトに再び「この世で一番美しい女は?」と問うが
今回は、クルトは答えることができず戸惑う。それを見てペレは「なるほど、大地の剣を使いこなせるようになるわけだ」
と笑い、それとは別にレオンにだけ何事かをささやいた。

小人たちの助けを受けて、“ゆがめられた西”を生む迷いの霧を抜けたクルトたちが見たものは
空に浮く巨大な城塞。西を守る「キメラ三姉弟」の末弟、ギャルガ王の城であった。
姉のキメラを敬愛するギャルガは、クルトの接近を知り、姉を煩わせることなくひとりでクルトを討とうと決心する。
だが、オリエの魔法で姿を隠し、空中城塞に忍び込んだクルトは、迷いの霧を作っている呪術師の部屋にたどり着き
それと知らず呪術師を倒す。これによって迷いの霧が消え、霧の中に閉じ込められていた
メデューサ討伐を願う各国の軍隊や戦士たちが、西に向かって正しく歩み始めた。

264 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:18:41 ID:???
空中城塞に詰める妖魔軍と、迷いの霧から解き放たれた人間の戦士たちが戦い始めた。
その中で、姉のために手柄首を求めるギャルガは、単身クルトの前に立ち、クルトを倒そうとする。
クルトはそれに立ち向かうが、倒しても倒してもギャルガは影のように復活し、手応えを感じさせない。
一方的に手傷を受け、ついに倒れるかと思ったそのとき、クルトの額にふたたび星が輝き始めた。
同時に、守護像の二つ目の力が解放され、天から星が弾丸のように空中城塞に降り注ぐ。
それによってギャルガの正体も暴かれた。城塞に偽装された巨大な昆虫、それがギャルガの本体だったのだ。
最後に降り注いだ巨大な星によって、ギャルガは打ち砕かれ死亡する。
異変に気付いて、地上に降りてきた精霊オリエが見たのは、精霊像の攻撃に巻き込まれそうになったオリエとレオンを
庇って傷付いたクルトの姿と、勝利したクルトに、次の城へのヒントを与えるギャルガの亡霊だった。
ふたりのオリエはクルトを助けようとするが、クルトの傷は深い。助ける方法を模索するうちに
少女オリエは、以前食べた「夢の実」で一時的にクルトを大人にすれば、体力がついて助かるのではと提案。
精霊オリエが、レオンと共に夢の実を採りに行くが、夢の実がある村はとても遠い。
この窮地を救ったのは、意外にもクルトの様子を探っていた使徒イリューズとタロスだった。
この近くに夢の実があると知っていたイリューズは、こっそりと夢の実を少女オリエに届け
「クルトがこのまま死ねば好都合だろう」と言っていたタロスも、なんとなくそれを黙認してしまう。
夢の実によって大人の体になったクルトを、少女オリエは自分も夢の実を食べて大人になり
自分の体温でクルトの体を温め、辛うじてクルトを回復させることに成功した。
誰が助け舟を出してくれたのか知らぬまま、精霊オリエは天界に戻り
クルトとオリエは、ギャルガの遺したヒントを元に、さらなる西に向かって歩み始めた。

265 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:19:13 ID:???
その頃、人間にされたアスナスは、放浪の果てにとある村にたどり着き、リシェンヌという少女に救われる。
衰弱していたアスナスを看病し、その無理がたたって倒れてしまったリシェンヌのために
日雇いの鉱夫として働くアスナス。苦しい生活の中で、彼は今まで気付かなかった人間の側面を学んでいく。
そんな彼を救ったのは、マリウスだった。アスナスの苦境を知ったマリウスは、母を頼らぬという信条を曲げて
メデューサにアスナスを助けてくれるよう嘆願。メデューサは自ら人間界のアスナスの元を訪れ
彼の妖力を元に戻した。
ふたたび強大な妖魔となったアスナスは、リシェンヌの元に戻り、妖力で彼女の病を取り除く。
借りを返して去ろうとするアスナスに、リシェンヌは自分も一緒に連れていってほしいと申し出た。
アスナスはそれを聞き届け、リシェンヌはアスナスの城で働くことになる。

アスナスの元を去ったメデューサは、マリウスに報告するため彼を探しているうちに
偶然、ひとりで散策していたクルトと出くわしす。
クルトはメデューサの正体に気付かず、メデューサもクルトに正体を打ち明けるわけも無く
共に歩いているうちに、クルトは我知らず自分の母に対する思いをメデューサに打ち明け
メデューサも、息子が自分の手元にいない不安を口に上らせる。不倶戴天の敵同士のはずの二人は
いつしか、本物の親子のように抱きしめ合っていた。
眠ってしまったクルトを後に残し、メデューサは何事か思いついた様子で去っていく。

一夜開けて旅を再開し、ヒントにしたがって第二の城、二人目の将ネイアスの城にたどり着いたクルト。
だが、そこで彼が見たのは、城中の妖魔が石化し、沈黙している風景だった。
メデューサは、ネイアスの城の住人をことごとく石化してしまうことで、次の城へのヒントを絶ってしまったのだ。

266 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:19:43 ID:???
第二の城の城主ネイアスは、城の住人を見捨ててひとりで逃亡していた。
彼は長姉のキメラを頼るが、キメラは城を捨てたネイアスを軟弱ものと罵り、追い出した。
ネイアスはキメラを恨み、彼女が城内に封印していた怪獣ザムザを奪って逃走する。

そのころ、ネイアスの城で立ち往生していたクルトは、以前に小人から貰った魔法の指輪で、この地方の小人族を呼び
隠された抜け道から、第三の城へ向かう道に入る。
その途中、クルトに一つの別れが訪れる。キメラ城へ向かう街道の途中に、竜族の住む“竜の谷”があり
レオンが、その谷から流出した竜王の卵であったことが判明したのだ。
クルトと別れがたいレオンをあえて振りきり、クルトは彼を竜の谷に残して旅を続ける。
友のためとはいえ、辛い別れを経験し落ちこむクルトを、卑劣なるネイアスの罠が待ち構えていた。
街道筋の村人に、怪獣ザムザの生んだ卵を寄生させ、怪物化してクルトを奇襲させるネイアス。
ザムザをけしかけ、クルトの苦戦を高みの見物と目論むネイアスだが、オリエはネイアスの存在に気付き
ネイアスに一騎討ちを挑んだ。相手を見下していたネイアスは、オリエの渾身の一撃で致命傷を負う。
だが死ぬ間際、苦し紛れのネイアスの一撃が、オリエに致死の猛毒を打ち込んだ。
毒を打ち消せる薬は、第三の城キメラ城に住むキメラが持っていると告げ、ネイアスは消える。
毒が回って死ぬ前に、キメラ城を落とし薬を手に入れなければならない。駆け付けた精霊オリエの力によって
一時的に少女オリエは封印されるが、猶予は1日だけ。翌日の夜明けまでに薬を手に入れねば少女オリエは死ぬ。
あまりに無謀な戦いに、クルトは挑まねばならなくなった。

267 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:20:13 ID:???
メデューサ城を守る最後の城、キメラ城に挑むクルト。今や唯一残った旅の友、ギルガドールと共に
クルトはキメラ城に乗りこんで大暴れするが、迷宮化された城に苦戦する。
そこに現れたのは、ネイアスの指揮を失って暴走する怪獣ザムザだった。元々キメラ城生まれのザムザは
帰巣本能にまかせて、迷宮を食い破りキメラ城の本丸に向かう。それに気付いたキメラはザムザを殺すが
一足違いで、キメラ城の本丸は暴かれ、クルトはそこに突撃した。
城の危機を知って、キメラは本来の姿、人面獣身のスフィンクスの姿になってクルトに挑む。
戦いの中、ギルガドールは力尽きて倒れ、クルトも追い詰められる。そのとき、地平の彼方から
幾つもの巨大な人影が近付いてきた。守護像の最後の力が呼び出した「アガナードの黄金兵」の軍勢である。
思いがけぬ援軍と、オリエを救わねばならぬ決心に後押しされ、ついにクルトはキメラを倒した。
死ぬ間際、亡霊となったキメラは乞われるままにクルトに「薬」を手渡す。
だが、その「薬」の正体は、メデューサの黒い血であった。口にすれば、いかなる生き物も
妖魔としての新たな命を得て蘇るという、闇に生きる者たち垂涎の至宝。それがネイアスの毒の唯一の治療法。
もちろん、これを使うということは、人間としてのオリエが死に、メデューサの下僕たる妖魔になることを意味する。
ここに至って、クルトは自分が少女オリエを誰より愛していることに気付き、たとえ妖魔になっても生きていてほしいと
黒い血を飲むように嘆願する。しかし、オリエはそれを拒んだ。
彼女は、女神ユリアナから告げられていた。このままクルトと旅を続ければ、間もなく自分は死ぬという運命を。
その上で彼女はこの道を選び、クルトを愛する人間の少女のままで死ぬことを決めたのだ。
彼女の決断をクルトもついに受け入れる。オリエは息を引き取り、クルトは黒い血を使うことなく捨てた。
偶然、その場に居合わせることになった銀騎士マリウスは、かつてメデューサが妹エルザを蘇生させたことを
思い出し、その真相をメデューサとエルザに直接問うべく、これまでの信念を曲げてメデューサ城を目指した。
そして、クルトも歩み始める。旅の友を全て失い、ただ一人メデューサ城へと。

268 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:20:42 ID:???
キメラ城に残されていた門を通じ、ついにクルトはメデューサ城にたどり着いた。
自分と同じくメデューサを倒しに来たという魔法使いの少年、ジャジャと行き会った彼は、共に城へと乗りこむ。
そのころ、魔界も人間界も大きな変化が起きていた。メデューサ城の奥では
メデューサがついに悪神の座を受け継ぐべく、瞑想の儀式に入り、一方人間界では
メデューサ城を守る“ゆがめられた西”がすべて砕かれたことで、各国がメデューサ討伐に立ち上がる。
使徒を含めた妖魔たちが人間の軍勢に相対するが、その人間たちに、ついに決起した竜族や
火の神ペレ、海神ポセイドンとネプチューンなど、クルトを知る神を皮切りとして全ての神々が力を貸し始める。
今や、人間界全てが妖魔と戦うべく集い、その中で、メデューサと戦いつづけてきた少年クルトの名は
高く掲げられ「皇子クルトの元に集え」という言葉が、国や民族を超えた旗印として叫ばれていた。

人間たちと戦うため、使徒のほとんどが出向いて閑散となったメデューサ城でクルトを迎え撃ったのは
鎧に身を固めたエルザ。メデューサの実子と呼ばれるクルトに敵愾心を燃やす彼女は
クルトの前で巨大な妖魔の姿に変身した。やはり彼女も、黒い血によって妖魔と化していたのだ。
その変身を見てしまったマリウスは、ショックで逃げるようにメデューサ城を去り、エルザも妖魔の姿を
兄に見られたことを恥じて戦いを止め、逃げ出してしまう。
続いてクルトの前に立ったのは、もはや後が無いイリューズとタロスの二人。
タロスは捨て身でクルトを抑え込み、自分もろともクルトを殺せとイリューズに告げるが、イリューズは
それをためらってしまい、ジャジャの魔術に討たれた。そしてタロスも、クルトの剣に倒れる。
もはや自分たちが助からぬことを知り、タロスはクルトに、メデューサの所在を教えた。
イリューズが死に、その正体である小さな魚に戻ると。それを見届けるのを待っていたように
タロスも死ぬ。後に残ったのは一匹のカブトガニ。小さな美しい魚に恋焦がれ、彼女のために
力を欲したタロスの、それが正体であった。

269 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:21:13 ID:???
その頃、苦悩するマリウスはいつしか天界に迷い込み、アガナード神の前に引き出される。
妹を元に戻す方法は無いかとマリウスは問うが、仮に妖魔から人間に戻しても、死を打ち消すことはできず
本来の死者が残るのみと告げられる。ただ、来世でも兄妹として生まれ変われるよう取り計らうという
アガナードの約定を慰めとして、今一度エルザと話し合うため、マリウスはメデューサ城に引き返す。
その際、精霊オリエはマリウスと共に、クルトのいるメデューサ城へ向かうことを欲した。
精霊が人間を愛することは禁忌、クルトの母ガラティアは例外中の例外。それを知った上で
オリエははっきりと、自分がクルトを愛していると告白する。他の精霊たちもオリエを応援し始めた。
もはや、世界の動きはここ天界をも揺るがしているとアガナードは気付き、オリエの出陣を黙認する。

メデューサ城に舞い戻ったマリウスは、クルトを再び襲撃しようとするエルザと向かい合う。
兄さまも黒い血を飲んで妖魔になり、この城に住めばいい、メデューサの子が妖魔なのは当然と語るエルザの言葉を
どうしても受け入れられないマリウス。業を煮やしたエルザは妖魔の姿に変わり
無理やりにでも黒い血を飲ませてやると、涙を流しながらマリウスに襲いかかった。
妖魔エルザの巨体に打ちのめされ重傷を負うマリウス。だが、最後の一合で、マリウスの渾身の剣が
エルザの胸を貫いた。エルザが倒れると、後に残ったのは子供の頃のままの小さなエルザの屍。
エルザの蘇生は、やはりまやかしでしかなかったとマリウスは慟哭する。

一方、オリエの前にはアスナスが現れ、オリエに協力を持ちかける。
アスナスは、大広間にある巨大なハープ「ゴーゴンの指輪」を示し、これがメデューサの切り札だと告げる。
このハープは黄泉のそこにまで通じ、メデューサの使徒が集めてきた負の想念を集めて醸成し
悪のエキス…メデューサの黒い血を生み出すのだ。これによってメデューサは新たな妖魔を次々生み出し
また、自分の体にも常に黒い血が注がれることで、メデューサは不死身の強大な妖魔でいられる。
そして、アスナスいわく、これを壊せる可能性があるのは精霊オリエだけなのだ。

270 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:21:44 ID:???
ここでアスナスは、善神と悪神、精霊と妖魔にまつわるある秘密を打ち明ける。
精霊と妖魔は、一対の「虹の谷」を通して、常に同じ数になるよう生まれるように調整されている。
善と悪の力がまともにぶつかり合えばとてつもない対消滅を起こすため、一方だけが勢力を増さぬよう
二柱の神アガナードとエルゾの間で密約が交わされ、勢力のバランスがとられているのだ。
だが、悪神エルゾは野心を抱き、娘メデューサを通じて「黒い血」を生み出し、虹の谷を介さず妖魔を増やし始めた。
このままメデューサが新たな悪の神となれば、悪の圧倒的優位が固定されてしまうのだ。
それを止めるため、アスナスは一つの策を授ける。中立の「白い力」を持つ精霊オリエが「ゴーゴンの指輪」に入り
黄泉の底に降りて精霊の力で「指輪」の中枢を破壊する。精霊がエルゾの領域では力を使えないと言うのは嘘だ。
善悪の激突による対消滅で爆死するのを防ぐため、無意識に力を制限してしまうだけなのだ。
己の死さえ覚悟すれば、とてつもない力でメデューサの力の源を粉砕することができる、と…。
オリエはこの策に乗った。相手は妖魔アスナスだが、彼が人間に引かれ、変化していることに気付いたから。
彼女はアスナスの手引きによって黄泉の底に降り、「ゴーゴンの指輪」の中枢たる大妖魔を道連れに爆死する。
クルトの助けになれたのだから悔いは無い、と消え行こうとする彼女の魂を、女神ユリアナの放った
一欠けらの水晶が受けとめる。それは、ユリアナが留めていた少女オリエの魂だった。
彼女たちは一つに結びつき、黄泉の底へと消えていく。

メデューサ城の最深部、メデューサが神となるための瞑想を続ける場に、エルザの屍を抱えたマリウスが現れる。
自分は人であることを誇り、人のまま死ぬ、とメデューサに討ちかかるマリウスを石に変え、砕くメデューサ。
だが、マリウスを砕きながらメデューサは泣く。母親としての彼女も決していつわりではなかった。
そしてメデューサは、エルゾ神をあえて無視して瞑想を中断し、唯一最大の懸案、クルトの存在に
自らの手で決着をつけるべく動き出す。

271 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:22:18 ID:???
最後の戦いが始まった。あえて神となる儀式を中断し、姿を現したメデューサと妖魔の軍勢に対し
クルトの元には、各国から集った人間や竜の連合軍が味方する。
そして、思いがけぬ再会。魔法使いの少年ジャジャの正体は、成竜となって人間変身の術を得たレオンであり
また、彼によって蘇生したギルガドールもレオンと共に戦列に加わる。
自らの城を砕き、味方の妖魔を巻き添えにすることもいとわず暴れるメデューサに対して
クルトは、自分とレオン、ギルガドールの3名のみで、メデューサと決闘することを申し入れた。
メデューサはこれを受け入れ、妖魔も人間も外へ吹き飛ばし、選ばれたメンバーのみの対決に入る。

そのころ、悪神エルゾの元には、アスナスが現れ勝負を挑んでいた。
悪神の後継者の器を持ちながら、他者に与えられる地位を嫌い、独自に力を蓄えていたアスナスは
計画をことごとく破られ、エルゾが動揺した隙を突いて彼の懐に潜りこんだのだ。
だが、彼の力も今1歩エルゾには及ばず、打ち倒され力尽きるアスナス。そのとき彼は、自らの腹を裂き
自分に埋め込まれていた「エルゾの鏡」のかけらを解き放つ。
飛び出したかけらは、クルトの元に集まり、鏡にも盾にも似た巨大な結晶と化した。これこそ「エルゾの鏡」。
エルゾの鏡を突き付けられたメデューサは、力を奪われ縮み始める。
彼女に無限の力を与えていた「ゴーゴンの指輪」もすでになく、メデューサは着実に追い詰められていた。

時を同じくして、神々の間にも戦慄が走る。これまでけして動かなかったアガナードの「天界」が動いたのだ。
そして、神々の間で「ピグマリオ」の名がささやかれだす。それは、新たな時代を創る「創世王」。
激動する原初の自然を治める存在だった「神々」に代わり、人間の時代の到来を告げる存在。
クルトを良く知る火の神ペレは、クルトこそピグマリオと確信し、神々を取りまとめてクルトを支援しようと考えていた。

272 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:22:48 ID:???
天界の進撃を前に、アガナードはかつて一度バッコスが開いてしまった封印を改めて解き放った。
そこから飛び出した光球は、メデューサに石にされ、肉体からはじき出されたところを保護されていた魂。
消え行く天界と心中させるわけにも行かず、アガナードはこれらの魂を解放したのだ。
だが、アガナードはその魂の中に、クルトの母ガラティアの魂がないのに気付く。以前封印が解かれたとき
捕まらずに下界に下りていった一つの光球こそガラティアの魂だったのだ。
だが全ては過ぎたこと。今はアガナードは、エルゾとの激突に全力を注ぐ。
自爆覚悟で進む天界のアガナードと精霊たち、全妖魔を盾に生き残りを図るエルゾ。
そして、ついに動いた大地の女神ユリアナ。この星(世界)の意志として、善悪の戦いを見届ける役目の彼女は
善悪両神の激突に供え、大地とその地に住む民を守るべく動いたのだ。
そして、二つの力は激突。全ては消滅し、巨大な爆発となって地を揺るがす。

両神の消滅は、クルトとメデューサの決闘にも影響した。エルゾの死によってエルゾの鏡は消滅し
メデューサは力を取り戻す。エルゾの被造物である自分が消滅せずに力を誇り存在しつづけているのは
今や自分が新たな神となったからだ、と誇るメデューサ。
そして彼女は告げる。自分とガラティア、そしてクルトに繋がる因縁を。彼女とガラティアは
本来、創世王ピグマリオを生むための存在、ひとりの女性「母なる人」であった。
ピグマリオの存在が神々の時代の終わり、神々の消滅を意味すると知るエルゾによって「母なる人」が暗殺されたとき
その魂は二つの星となって降り、一方は精霊ガラティアに、もう一方は妖女メデューサに転生した。
二者はやがて出会い、自分たちの出自を知るが、精霊も妖魔も、自分で子を生むことはできない。
同じ喪失感を持つ二人は友となるはずだった。だが、ガラティアはクルトの父との恋を経て人間となり
皇子クルトを出産。それを知ったメデューサは、自分だけ母となる喜びを知ったガラティアを憎み、石に変えた。
だが、彼女はクルトを殺すことだけはできなかった。あるいは自分が生むかもしれなかった赤子を前に
彼女は、クルトを殺さず、今日この日の戦いを招いてしまったのだ。

273 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:23:22 ID:???
メデューサは、ガラティアの石像をこの場に呼び寄せる。石像を守るアガナードの加護もすでになく
石像はメデューサの手で砕かれてしまう。だがクルトは泣かない。今や彼が背負うものは個人の因縁だけでなく
全世界の希望なのだから。そのとき、今までもたびたび輝いていた彼の額の星──王の星がひときわ強く輝き
その光が世界全ての人と神々の目に届く。ピグマリオとして覚醒した彼の元に、神々の力が注がれた。
体はメデューサと比肩するほど巨大化し、その体はガラティアの守護像が変じた黄金の鎧に包まれる。
左手には、少女オリエの祈りが込められた水晶の手甲、右手には今や創世王の剣と化した大地の剣。
もはやメデューサの魔力もクルトには通じず、クルトの勝利は目前。だがクルトは「母の半身」を殺すことをためらう。
だが、そのクルトを叱咤したのは他ならぬメデューサだった。
「私を倒せ、クルト。母を慕い、母を思いやるも子の運命、しかし乗り越えねばならぬ母の存在もあると知れい!
 戦わねばお前は子供のままだ、母に呑みこまれて生きる者に王たる資格はない!
 ガラティアがお前の光の母なら、私はお前の闇の母…私の命を取って、王たる証を見せてみよ!
 この戦いの意味がわかるなら……母を倒して見せよ!!」
その言葉に奮起したクルトは、創世王の剣でメデューサを貫く。ついにメデューサは致命傷を負った。
その傷から流れ出たのは、妖魔の黒い血ではなく、人間の赤い血。それを見てクルトは気付く。
メデューサがエルゾの死後も存在しつづけたのは、彼女が神になったからではない。
グリーンノアの国王と恋をしたとき以来、彼女は限りなく妖魔から人間に近付いていたのだ。
ガラティアと違い人間との恋を拒んだ臆病さ、マリウスとエルザを我が子として愛しつつ、それを口に出せぬかたくなさ。
敗因が己のうちにあったことを認めて、メデューサは消滅する。

274 名前:ピグマリオ 投稿日:05/01/01 14:24:00 ID:???
戦いは終わった。メデューサに石にされた人々は元に戻ったが、ガラティアは石と化した肉体を砕かれ
またその魂も、ずっと以前に人間界にさまよい出て、今は寄る辺なく消滅してしまったはず。
もう母と会うことはできないのだ…落ちこむクルトの前に、やはり人に引かれることで人間として生き延びていた
アスナスが現れ、自分が所有していたガラティア像のレプリカをせめてもの形見として譲ろうと申し出る。
だがそのとき、ただの石像のはずのアスナス城の像が、ゆっくりの生身の姿に戻り始める。
彫刻師バッコスが全身全霊を込めて彫った石像は、本物の肉体に代わって魂の座となりうるほどの
完成度を有していたのだ。そしてクルトの前で、ガラティアは人間に戻り、クルトを抱きしめた。
最後に、女神ユリアナはクルトに一つの贈り物を渡す。それは、生身で黄泉に入り込む権利。
黄泉の旅路は本来なら辛いものになるはずだったが、精霊オリエの死ぬ間際の力によって
花に満たされていた静かな黄泉の世界で、クルトはすぐに少女オリエを見出す。
そしてクルトは、黄泉から連れ出したオリエと共にルーンの国に帰還した。
以後、成長して王となったクルトは、神々なき時代を導く創世王ピグマリオとして世界を導くことになった。
その傍らには、常に美しい王妃と、友なる竜がいたと伝承は伝えている。
彼らの物語は長く語り継がれ、その正確な形が忘れ去られた現代にあっても、断片的に記憶されているのだ。
石像の乙女に恋した王が、女神の力で人間になった石像の乙女と結ばれるギリシャ神話の
「ピュグマリオン伝説」もまた、その一つである……。

エピローグには、パラレルワールドとしての「もうひとつのピグマリオ」が収録されている。
アスナス、メデューサ、ガラティア、オリエの四兄妹が人間である世界。メデューサはグリーンノア王に嫁いで
二人の子をもうけ(もちろん子供の名前はマリウスとエルザだ)、ゆえになんの確執も災いもない世界。
このエピソードで、少女オリエがルーンの国出身であり、生まれたそのときからクルトのそばにいたという
裏設定が開かされている。

275 名前:マロン名無しさん 投稿日:05/01/01 14:29:38 ID:???
「ピグマリオ」以上にて完結。
原作は1978年から90年まで、「花とゆめ」誌にて中断と再開を繰り返しつつ連載されました。
白泉社からのコミックス単行本全27巻は現在絶版となり
現在はメディアファクトリーから愛蔵版全12巻として発売されています。