PALMシリーズ/伸たまき獸木野生
499 名前:マロン名無しさん 投稿日:04/11/07 04:44:10 ID:???
未解決のPALMシリーズ、やります。
かなり長いので、ゆっくりになると思います。

伸たまき(2000年に獸木野生に改名)
新書館ウィングスに1984年4月より掲載
コミックス26巻、文庫9巻まで発売中
現在、同誌にてシリーズ最新作『午後の光』掲載中

【シリーズ作品名】
ナッシング・ハート
あるはずのない海
スタンダード・デイタイム
星の歴史―殺人衝動―
オールスター☆プロジェクト
愛でなく

'70〜'80年代のアメリカ、LAを舞台にしたハードボイルドのような、そうでないようなストーリー。

500 名前:PALM人物紹介 1 投稿日:04/11/07 06:05:04 ID:???
少しややこしいのですが『ナッシング・ハート』は主人公であるジェームスの子供時代の話の為、名前がマイケルとなっています。
●ジェームス・ブライアン=マイケル・V・ネガット
NYの一大シンジケート・ネガット一家の跡取り息子。
4歳の頃に国家的シンクタンクであるサウスワース研究所の特別研修生となった天才。
11歳で誘拐され、紆余曲折を経てジェームス・ブライアンと改名。
●アーサー・ネガット
マイケルの養父でシンジケートのボス。
元々は姉の子供であるマイケルを養子にしたが、子供らしからぬ頭脳を持つマイケルを良く思っていない。
●イライザ・ネガット
マイケルの実母。マイケル出産時に死亡。
●ロナルド・エリー
LAシンジケートのボス。
立場的にはネガットの傘下であるが、No.1を狙っており、マイケルの頭脳に興味を持つ。
●マヌエル&マリア・パデュラ
ネガット家の住み込み使用人夫妻。マリアはマイケルの乳母も兼ね、実の息子のように可愛がっている。
メキシコからの移民で、普段の会話はスペイン語。
●イライ
パデュラ夫妻の息子。当時6歳。マイケルを兄のように慕っている。
●スタン・マティック
マイケル誘拐犯。アーサーに父を殺され、恨んでいる。
●カーロス&グエン
スタンの誘拐犯仲間。
●ウェイン・レイランダー
FBI捜査官。
●スコット・ルース
NY市警の刑事。
●スタイケン博士
サウスワース研究所でのマイケルの恩師。

583 名前:PALM ナッシング・ハート 1 投稿日:04/11/14 16:04:58 ID:???
 1971年、ニューヨーク、冬。
 研究所をさぼったマイケルは見ず知らずの大人について居酒屋に入り、ダーツに興じる。
 腕はかなりのもので、細身のナイフを的の中央に当て、大人達からオレンジをせしめると、ヒッチハイクで家へ帰っていった。
 アメリカ全土に名を知られるギャングのボスで、マイケルの養父・アーサーは、郊外の広い屋敷に住んでいる。
 今日は配下のロスの組織のボス・エリーが来ているようだ。
 帰宅したマイケルは乳母のマリアに研究所をさぼった言い訳をし、弟分のイライにオレンジをやる。
 マイケルが庭でイライと遊んでいると、用事を終えて屋敷を出ようとしたエリーが話しかけてくる。
 4歳で国家の戦略研究所にスカウトされたマイケルは、ネガットの息子という事も手伝って、ちょっとした有名人なのだ。
 アーサーは子供が子供らしくないのは嫌いだと、マイケルをあまり好きではない。
 しかしエリーは、これからの組織は力だけでは駄目だと、マイケルの頭脳に興味を持っているのだ。
 夜。明日は研究所が休みだから一日遊ぶと約束したマイケルは、イライを寝かしつけ、マリアとひと時を過ごす。
 マイケルは繰り返し見る夢の話をする。
 夢の中でマイケルが階段を降りて行くと、いつも黒髪に小麦色の肌、青い瞳の、面識の無い少年が立っている。
 マリアは「きっとその子とは未来に出会うんだよ」とマイケルを寝かしつける。
 翌日。マリアが見守る中、イライと遊んでいたマイケルは、馬に乗りたいと言うイライをおぶって、庭から続く木立を駆け回る。
 木立を抜けた所に、ライフルを構えた3人組の男達と車が見えた。
 「随分待ったぜ。そのガキを降ろせ」
「アーサー・ネガットの子を誘拐しようなんて、正気とは思えないな」
「そうだな…多分、俺はイカれてるんだろうよ」
 マイケルはイライを降ろし、彼をマリアの元に戻らせる。
 泣きながら走ってきたイライを抱き、マリアが現場に駆け付けた時、マイケルを乗せた車は発進しようとしていた。
 「あんた達、うちの子をどうする気だい!」
 マリアの剣幕に焦った男の一人が、ライフルの引金を引いた。
 マリアは抱いていたイライごと撃ち抜かれ、絶命する。
 マイケルの目の前で――。
続く

584 名前:PALM ナッシング・ハート 2 投稿日:04/11/14 16:54:49 ID:???
 誘拐犯達のアジト。食事にと缶スープを持ってきた主犯格の男はスタン・マティックと名乗る。
 素直にスープを口に運ぶマイケルにスタンは少し驚く。
 「お前、なかなかホネがあるじゃねぇか。人が殺されるのを見たのは初めてだろ?
その後すぐ物が食えるたぁな。
ありゃ使用人の親子だな」
「ぼくの母と弟だ」
「乳母だったのか…俺も親父を殺されたんだぜ。お前の親父によ」
 スタンから身代金に100万ドルを請求するつもりだと聞いたマイケルは「アーサーにとって、僕はその10分の1の値打ちもない」と言う。
 スタンはアーサーに復讐がしたいだけで、どの道マイケルは殺すつもりだから、身代金の額は下げてもいいと凄む。
 ネガット家には市警のスコットとFBIのレイランダーが訪れ、逆探知などの装置を取り付ける。
 スタンは脅迫電話にマイケルを出し、喋らせる。
 普段から会話のないアーサーにどう喋ればいいのか判らず、マイケルは「こんにちわ」と挨拶をする。
 アーサーは一般の親らしく心配をし、色々とマイケルを気遣うが、挨拶を聞いたレイランダーは妙なよそよそしさを感じ、二人の関係に疑問を持つ。
 アジトではスタンが買出しに行き、誘拐一味のカーロスとグエンがマイケルを見張っていた。
 カーロスはカッとなりやすく、マリア達を撃ったのもこの男だ。
 「気にくわねえガキだな。やな目つきだぜ」
 彼は酒に酔い、マイケルに絡む。
 「天才のお坊っちゃん、研究所では何をお勉強なすってたんですかい?」
 グエンが止めるのも聞かず、カーロスは絡み続け、マイケルにナイフを握らせる。
 「こんなもの持つなぁ初めてだろ?貸してやるぜ、チビさん。
さあ、そいつで逃げてみな」
 一瞬だった。ダーツの的に刺さるかのように、ナイフはカーロスの喉に見事に命中した。
 グエンが壁にかけた上着の銃を構えるより早く、マイケルはカーロスの喉からナイフを抜き、グエンの眉間めがけて投げつけた。
 グエンの銃弾は天井に向けて虚しく発射され、彼はそのまま燃え盛る暖炉に頭を突っ込んだ。
 ちょうど買い出しから戻ったスタンは玄関で銃声を聞き、出てきたマイケルを銃の撃轍で殴り、気絶させる。
 部屋に戻ったスタンは、その惨状に愕然とし、そのままアジトを焼いて移動する。
続く

585 名前:PALM ナッシング・ハート 3 投稿日:04/11/14 18:20:49 ID:???
 気絶中に場所を移されたマイケルは一度目覚めるが、打ち所が悪かったのか、再び意識を失う。
 朦朧とする意識の中、過去の様々な出来事が去来する。
 研究所のスタイケン博士はマイケルが器用貧乏だと微笑み、遣う人間によって善にも悪にも成り得る、と言った。
 だから、無害な男に力を貸してやれ、と。
 誰かが泣いている。マリアだ。
 イライが生まれる前、彼女の初めての子供を肺炎で亡くした夜、マリアはマイケルを抱き締めながら泣いていた。
 愛は何度でも生まれ、それは何ものにも傷つけられない。大切な人を失くしても、世の中を呪ってはいけない、と。
 Nothing hurt…やがてその涙はマリアとイライの死に重なり、マイケル自身の頬を濡らす。
 そして、いつもの夢。未来に会うかもしれない子供。
 『僕は生き延びるだろう。そしてあの子に会い、悪意のない人々に会い、誰かとまた家族になる。
その時は…もう二度と彼等を失ったりしない。僕は家族を守ってみせる。
どんな事があっても、絶対に…』

 一方アーサーは、マイケルと年格好の似た浮浪児を殺し、その死体を乗せた車を爆破させる。
 黒焦げの遺体にすがり、落胆するアーサー。
 遺体は歯科医のカルテからマイケルと断定されるが、それを聞いたマリアの夫・マヌエルは、思わず「うそっぱちだ」と呟く。
 「マイケルは歯医者へなんぞ一度も行った事ないのに」
 その一言を聞き咎めたレイランダーは、マヌエルから情報を引き出す。
 彼が睨んだとおり、アーサーはマイケルを嫌っており、公式の場でだけ仲の良い親子として振る舞っていた。
 「旦那さんはどさくさに紛れてあの子を殺そうと決めなすったんだ。
あの子はまだ生きてるかも知れねぇが、やけくそになった犯人に殺されちまうか、旦那さんの殺し屋がこっそり捜し出して殺しちまうでしょう。
だけど、旦那さんがどう思おうと、あの子は本当は普通の子供なんです。やさしい、いい子なんです。
FBIの旦那、どうかあの子を助けてやって下さいまし…」
 翌日の朝刊にはマイケルの焼死体発見の見出しが踊る。
 「驚いたな。あまり好かれてないのは知ってたが、ここまでやるとは」
 困惑したスタンに事情を聞かれたマイケルは、冷静にこれからの計画を説明する。

587 名前:PALM ナッシング・ハート 4 投稿日:04/11/14 19:08:49 ID:???
 マイケルはスタンにアーサーとの冷えきった関係を話し、発見されるのは時間の問題だから、今すぐニューヨークを離れよう、と言う。
 「殺す気なんだ、あんた共々」
 やけになったスタンはマイケルのこめかみに銃を当てるが、マイケルは瞬きもしない。
 「それこそアーサーの思うツボだ。
僕を殺したところで一文にもならないぞ。あんたは無一文でネガットから逃げ回る事になる」
 マイケルは自分を欲しがっているエリーに話を持ちかけるよう、スタンを説得する。
 「連中ときたら、隙さえあれば相手の喉に喰らいつく事ばかり考えてるのさ。
僕はアーサーに一矢報いてやりたい、と言ってやるつもりだ。
大丈夫、間違っても彼はタレこんだりしないさ」

 何ものも隠す事の出来ない見通しの良い荒野。
 スタンから連絡を受けたエリーと部下が二人、マイケルの受け渡しに現れる。
 身代金は20万ドル。マイケルはスタンに細かく指示を出し、エリー達が隠し持っていた武器を捨てさせ、安全に金を手に入れる。
 「何故俺を助ける?」とのスタンの問いに、マイケルは「ここであんたを殺したら陰険だから」と答える。
 「お前、ほんとにエリーんとこのもんになって、親父にしっぺ返しくわすのか?」
 「まさか。すぐ逃げ出すよ」
 「簡単にはいかねぇぜ」
 「そうだろうな。だが、どんな川もみんな海に続いてる。ひとつ残らず」
 マイケルを置いて車を発進させたスタンは「末恐ろしいガキだ」と呟くのだった。

 後日。レイランダーの捜査は上層部からストップがかかり、彼は秘密裏に単独捜査を開始する。
 マイケルはネガットの名を捨て、エリーの右腕であるジェームス・ブライアンの名を継いだ。
 すぐに逃げると言ったマイケルが実際にエリーから逃れるまでには5年の月日を用した。
 マイケルは街中で警官に発砲し、少年刑務所に入る事で、組織を逃れたのだった。
 そして、更に5年の時を経て21歳になった時、彼は「家族」と出会う事となる。

PALM『あるはずのない海』へ続く

586 名前:マロン名無しさん 投稿日:04/11/14 18:58:34 ID:???
これは絵柄は何系?少女漫画?

588 名前:マロン名無しさん 投稿日:04/11/14 19:14:32 ID:???
>586
最近はわりと少女漫画っぽい絵になりつつありますが
3作目あたりまではアメコミみたいな感じで、線が太い、かなり特徴的な絵です。
モノローグの多さは少女漫画っぽいんですが、内容はハードです。

590 名前:PALM 人物紹介 2 投稿日:04/11/14 22:59:15 ID:???
●カーター・オーガス
近親者3人を一度に亡くした経験があり、他人と深く関わる事に臆病な男。
日系三世。両親(主に母親)と不仲で、叔父のレイフの養子となる。
心臓の専門医であったが、ある事がきっかけで自暴自棄になり、「自分が最も向いていない」探偵の免許を取得。
医者を辞めて2年、何となく暮らしている。
●シン・ギャラガー
何で生計を立てているのか不明なカーターのはとこ。
些細なイザコザをオーガス家に持ち込んでは迷惑がられている。
ちょこっとだけ暗黒街に顔が利く。
●ジョン・ミハリク
カーターのエール大時代の同級生で、友人。弁護士。
●バーンスタイン博士
カーターの叔父・レイフの友人。神経症の専門医。現在はイギリス在住。
●アンジェラ・バーンスタイン
針ネズミと噂される毒舌で、皆に恐れられる無敵の女の子。
博士の娘。アメリカの高校に通い、寮に入っているが馴染めず、一人暮らしをしたいと思っている。
●アンドルー・グラスゴー(通称アンディ)
父親の仕事の関係でケニアに暮らす、カーターの遠い親戚。
簡単な読み書き程度はOKだが、教育を受けていない。
●ビアトリス・フォレスト
とてつもない美人で、カーターの愛人。建設会社の社長夫人。
●ウィリアム・トムソン(通称ビリー)
ジェームスに発砲された巡査。5年後、私服警官として再登場。
●ジャネット・カーマイケル
元看護婦で、カーターの元恋人。
●ヒース・K・ワイエス
研究所時代のジェームスの幼馴染み。現在はコンピュータ会社勤務。
●グレッグ・フォーサイス
ジェームスと同時期に少年刑務所に入っていた黒人のオカマ。
つばの広い帽子にフリルのブラウスがトレードマーク。

615 名前:PALM 胸の太鼓 1 投稿日:04/11/18 04:02:15 ID:???
[書き人注]
『あるはずのない海』の前に、アンディの話が入ります。
 100Pの短編なのですが、伏線だらけなので、少し長くなります。

『胸の太鼓』
 アメリカ人のサミエルと、黒人(国籍不明)で踊り子だったモナ。
 二人はケニアの野生蛇毒研究所に暮らし、そこでアンディが生まれた。
 何となくサミエルとウマが合わないアンディは、いつも研究所で飼われているライオン=ジェイクと遊び、母に懐いていた。
 ある日、新しく送られてきた蛇の荷が崩れ、コブラが逃げ出す。
 モナは不幸にもそのコブラに首の後ろを咬まれ、血清も間に合わず死んでしまう。
 アメリカで葬儀が行われ、アンディはモナの棺から離れず、列席したカーターが心配になる程に、じっと彼女の死顔を眺めていた。

 ケニアに帰るとアンディは口をきかなくなり、ジェイクに寄り添ってばかりいた。
 三ヶ月が経ち、業を煮やしたサミエルは、アンディとジェイクを引き離そうとする。
 怒ったアンディはジェイクと共に家出し、ジャングルで暮らす。
 サミエルはアンディ達を捜したが見付からず、何年かが過ぎた…

 ジャングル近くのオロキルク族の村。
 国に才を見い出され、ヨーロッパの大学に通う娘・オクヨルンは、長老の死を前に、村に呼び戻される。
 長老はオクヨルンに「夫にしたい男に渡せ」と戦士の腕輪を託す。
 死に様を他人に晒したくないと村を出た長老を捜しにジャングルに出たオクヨルンは、森の奥で長老の遺体を発見。
 遺体の腕は胸の前で合わされ、上には一輪の花が置かれていた。
 村にはそんな習慣が無い為、キリスト教を知る何者かの存在を思うオクヨルン。
 そこへ花を持ったアンディが現れる。
 村へ帰ったオクヨルンは、アンディが「青い目の幽霊」と呼ばれれている事を知る。
 村人はジェイクが村の子供を殺したので、近く山狩りを行う予定であると言う。
 アンディやジェイクがその様な悪ではないと感じたオクヨルンは、長老の遺体発見場所でアンディ達を捜し、彼等を庇おうとする。
 彼等の隠れ家である岩屋に案内されたオクヨルンは、アンディがそこで木の女性像を彫っているのを見る。
 像の手は胸の前で握り合わされていた。
続く

616 名前:PALM 胸の太鼓 2 投稿日:04/11/18 05:08:31 ID:???
 アンディは突然オクヨルンを押し倒すと、彼女の胸に耳を当て、続いて木彫の像の胸に耳を当てる。
 「それは木の像なんだから、胸の太鼓は鳴ってないぞ」
 アンディが喋らない為、一切は不明だが、その落胆した様子に、像のモデル(モナ)が故人であると察したオクヨルンは、不思議に胸を打たれるのだった…

 様子のおかしいオクヨルンを尾行していた村の若者に隠れ家を突き止められたアンディは、ジェイクを庇って投げ槍で肩を射たれる。
 それが一刻を争う怪我であった為、管理局から研究所に連絡が入り、サミエルはアンディとの再会を果たす。
 すぐにはアンディを動かせない為、オクヨルンの案内で村にテントを張り、サミエル達は夜を過ごす。
 アンディは怪我による熱に浮かされ、夢を見る。
 母の棺が運ばれてゆく。幼い自分は泣き叫ぶ。
 棺に伸ばした手の先にはジェイクの姿。沢山の銃がジェイクを狙っている。
 助けに行こうとするが、自分の右足の膝下が切断されていて、走れない。
 銃弾が一斉に発射され、ジェイクを貫く。
 血まみれのジェイクは白っぽい金髪の、黒い服を着た男の姿になる。
 絶命したであろう男を抱き起こす手。長い黒髪―――
 現実のアンディは悲鳴をあげ、傍に詰めていたサミエルにすがって泣きじゃくる。
 サミエルは久しぶりに我が子を抱き締め、何か重い宿命を感じる。
「アンディ、いったいお前は、何を背負っているんだ……?」

 2年後。アンディは研究所に戻り、サミエルを手伝っていた。
 相変わらずジェイクにはベッタリだが、父子関係はまずまずだ。
 しかし病気を抱えながら満足な治療も受けず、アンディを捜し続けたサミエルには死期が近付いていた。
 そんな中、オクヨルンが訪ねてくる。
 彼女はアンディに戦士の腕輪を渡し、自分が戻ってくる4年後に妻にしてくれ、と申し込む。
 しかしアンディに「ジェイクと一緒に居なきゃいけないから」と断られ、友達として付き合おう、と別れるのだった。
 サミエルはジェイクの遠くない死を思い、アンディの行く末を一人、ベッドで思う。
「哀惜と手を取り合って、そして出て来い、アンディ…その、閉ざされた世界から。
みんな、お前を待っているぞ…!」

『あるはずのない海』へ続く

622 名前:PALM書き人 投稿日:04/11/19 23:58:39 ID:???
・PALMシリーズ、現在の連載は『午前の光』
・人物紹介 1のイライの年齢は「当時4歳」
です。
35 名前:Palm あるはずのない海 1 投稿日:04/12/03 03:00:22 ID:???
1976年7月3日、L.A.
巡査のビリーは同僚とパトロール中、前方の車中で、少年が老人を撃ち、逃亡するのを目撃し、少年を追う。
少年は袋小路にビリーを誘い込むと、ビリーの腰から拳銃を取り、ビリーに当たらないよう、発砲する。
唖然としていると、少年はビリーの懐から手錠を取り、自らの手に填める。
少年はジェームス、車中の老人はエリー一家のボス、ロナルドであった。

5年後、1981年・ケニア。
アンディの父、サミーとライオンのジェイクには死期が訪れようとしていた。
サミーはこの後に及んでもジェイクに付きっきりのアンディを枕元に呼び、涙ながらにアメリカ行きを言い渡す。
「アメリカへ行って教育を受けろ。
そして誰でもいい!人間と付き合うんだ、わかるな、人間だ!
けだものじゃない…」

同じく1981年のL.A.では、愛人ビアトリスと朝を迎えたカーターの元に、はとこのシンが訪ねてくる。
シンは自分のアパートでは飼えなくなった「なんとかハウンド」のケントを厄介払いにやってきたのだった。
シンは失恋で荒んだ生活を送るカーターを心配しているふうを装いながら、強引に犬を置いていってしまう。

同日、昼。
不本意ながらもドッグフードを買い、友人の弁護士、ジョンと会ったカーター。
ジョンは医者を辞めてからフラフラしているカーターを心配し、本格的に探偵をやるよう、助手を雇う事を提案する。
「もう潮時だろう、カーター?今みたいな生活は為にならんぞ」
ジョンは渋るカーターを引っ張って、刑務所のジェームスを訪ねる。
ジェームスは少刑時代、エール大に特別入学し、大学院過程までを4年で卒業。
その頭脳を惜しむ教授連中がジェームス救済に動きだし、同じくエール大出身のジョンに相談を持ちかけたのである。

36 名前:Palm あるはずのない海 2 投稿日:04/12/03 03:43:18 ID:???
「探偵助手など雑用係だぞ。天才児に電話番をやらせるのか?」
「彼は君にとても興味を持ってるよ。君達はとても対照的だからな。君もきっと、彼を気に入るよ。
それに君は、荒っぽい連中を相手にする様な事には慣れてないだろ?彼はその点、頼れるぞ」

二人が刑務所に着いた時、ジェームスはムショ仲間のボアズ達に宇宙についての講義中だった。
ジェームスは彼等に、地球が人間を生み出す環境に敵した奇跡の星であると教え、仲間達は熱心に話に聞き入る。
人類が誕生して35億年。
「それを一年に置き換え、1月1日に生命が生まれたとすると、人類が地上に現れたのは…」
「12月31日の夕方だ」
カーターは講義に割って入り、ダーウィンの進化論など、高度な問答を交す。
ジェームスとカーターの顔には、互いに好敵手に出会った様な笑みが浮かんでいた。
ジェームスとカーター、ジョンは三人で個室に入り、話をする。
カーターはジェームスの様な優秀な人間ならば、他に色々と「引き」はあるだろうと思ったが、予想に反して2社から話があるだけだという。
実はジェームスには神経症の疑いがあり、毎年、発作と思われる何らかの身体的障害が現れるのだった。
そんな人間の面倒は見きれないと思ったカーターは、ジェームスを欲しがっている他の2社が、どちらも国家レベルの兵器を手掛ける巨大企業である事を知り、助手の話を断る。
「私は治療費まで面倒は見ない。君は二つの内、どちらかへ行くべきだ。
仕事の内容も手当ても、私の所の比じゃない」
「カーター、仕事の大小はどうでもいいし、大金は必要無いんだ。それに治療も。俺は病気じゃない」
「……ジェームス、気持ちはよくわかる。
誰でも神経症だなんて診断されたら、いい気はしないさ。
だが、それを認めるとこから治療が始まるんだ。お大事に」
こうして、二人の道は離れてしまったかに見えた。

37 名前:Palm あるはずのない海 3 投稿日:04/12/03 04:24:45 ID:???
その夜。
バカンスを娘のアンジェラと過ごす為に来米した神経系の専門医、バーンスタイン博士がカーターを訪ねてくる。
ジェームスが気になるカーターは博士に色々と尋ねてみるが、どうも神経症の症状ではない様な印象を受ける。

翌朝にはジョンがやってきて、分厚い封筒にいっぱいのジェームスの資料をカーターに押し付けて帰って行った。
カーターはそれを処分しようとするが、何となく出来ず、資料に目を通す。
アメリカに住む者なら誰でも知っているであろう、ジェームスの経歴。
誘拐犯からエリーに引き渡されたジェームスは幹部教育を拒否し、度々脱走を試みる。
約5年間、彼はテキサスの農場に監禁されていた。
15歳の時、エリーに連れて来られたロスで警官に発砲し、少刑に「逃げ込む」事に成功。

資料に当時の警官の名を見付けたカーターは警察署を訪ね、今は昇級して刑事となったビリー・トムソンと面談。
ビリーは「あいつは悪党になる為に生まれてきた様な奴だ」と言う。
「考えてもみろよ。
悪党の家に生まれて、悪党に監禁されて、悪党の共和国みたいな刑務所に逃げ込んだんだ。
生まれてこの方、悪党とばかり付き合ってきたのに、今更まともになれるか?」
「別に好きで悪党と付き合っていたわけじゃなかろう」
「じゃあ言っちまうがな。ここだけの話だが、奴は人を殺してる」
「まさか――」
ビリーは証明はできないと前置きして続ける。
「テキサスの農場に閉じ込められてた奴がロスの町中にいた。
それに、俺が見た時、エリーは耳を撃たれてた。どうして銃なんか持てたんだ?
あのな、あの日、マリブの浜にエリーんとこのチンピラの射殺体があがったんだ。
大方、裏切って消されたんだな。
俺の推理はこうだ。ブライアンは5年の間に何回も脱走しようとして捕まった。
それで、やり方を変えなきゃ駄目だと感づいたんだな。
奴は突然、組織に忠誠を誓った。その証にチンピラを始末したんだ」
「…彼が殺さなくとも誰かが殺した男だろう?彼の立場なら、私でもそうしたかもしれん」
「俺だってさ。でも、そのすぐ後で、奴みたいに涼しい顔はしてらんないよ。
だから血は争えない、と言ってるのさ」


46 名前:Palm あるはずのない海 4 投稿日:04/12/05 01:54:25 ID:???
続いてカーターは、ジェームスのサウスワース時代の友人であるワイエスに会う。
ワイエスはジェームスより7歳上で、研究所では普通の子供と同じように、様々な悪戯をして遊んだという。
ワイエスに「ジェームスを雇うのか」と聞かれたカーターは「彼がどういう人間か、よくわからない」と言う。
それに対するワイエスの答えは「それじゃ、奴を雇うんだな。
それでどういう人間かわかったら、後で俺にも教えてくれよ」
というもので、カーターは益々混乱する。
ビリーは悪党だと言い、ワイエスは普通のガキだと言う…

ジェームスが出所して何週間か経った頃。
ジョンの誘いで大学の同窓パーティーに出たカーターは、ジェームスと再会する。
彼は既に大企業であるファブリ・エレクトリックに就職していたが、
未だにカーターと働きたいと思っている様で、気は変わったかと聞いてくる。

「君、ファブリより私の所の方がいいのか?」
「ああ。あそこでミサイルの量産なんかしても、面白いわけがなかろう。
それに、あんたの方がファブリより俺を必要としてるからな」
カーターはそれを否定するが、ジェームスは「俺に興味があるから色々と調べたんだ」と、自信たっぷりに言う。
「何で私が君を必要とせにゃならんのだ!?」
「孤独だからだろ」
カーターは言葉に詰まり、苦い物を飲むように、カクテルを口に運ぶ。そして――
「明日、ファブリに辞表を出してきたまえ」と言った。

その足で二人はオーガス邸へ。
オーガス邸はカーターが叔父・レイフの死後受け継いだ、広くて美しい屋敷であったが、
カーターが医者を辞めてからの厭世的な生活で、荒れ放題になっていた。
居間に案内されたジェームスは、枯れたままの観葉植物の鉢や、薄汚れた床に目をやる。
「あんた、見掛けによらず無精だな」
部屋は余っているので、カーターはとりあえずジェームスと同居してみる事にする。
と言っても、先々の目処は、まるっきり立っていなかったのだが…

注:Palmはゲイ話ではありません。

48 名前:Palm あるはずのない海 5 投稿日:04/12/05 02:45:52 ID:???
幾日か過ぎて。
カーターは、ジェームスとジョン、バーンスタイン博士と
娘のアンジェラ、そのBFであるノーマンと食事の機会を持つ。
高級レストランにノータイで現れたジェームスに、アンジェラはくってかかるが、軽くかわされる。
ジェームスはいつも黒い上下で、あまり服には拘わらない。
実母の古い友人である画家(後に『星の歴史』で登場)が、
彼に一番似合うのは黒だと言うし、言われるままにしているだけだ。

皆はカーター達の新しい門出を祝い、その席で博士はアンジェラのオーガス邸への下宿を提案する。
アンジェラは高校の寮に入っているが、気が強い為か馴染めず、一人暮らしをしたがっていた。
博士は昔から、カーターとアンジェラを結婚させたがっていて、
今は流石にそれは諦めたけれど、やはり女の一人暮らしは心配であるし、
自分が信頼する男の所で暮らしてほしいと思っているのだった。
しかしアンジェラはカーターを「ややこしくて暗い中年」と思っているし、
カーターも、彼女の辛辣ではあるけれど的を射た毒舌には閉口していた。
ジェームスが同居する事で二人きりではないし、と尚も言う博士にアンジェラは怒り、
彼女お得意の毒舌でブッた切ると、下宿話はお流れとなり、散会となった。

博士達と別れた後、溜め息をつきつつ、カーターはグチる。
「アンジェラはどうしてああスピッツみたいに噛みつくのかな。疲れたよ」
「じゃれてるだけだろう。可愛らしい生き物じゃないか」
「………え?アンジェラが?」
「小さくて、か弱そうだ」
「そりゃまあ、君に比べればか弱いかもしれんが…」
どうも本心からそう言っているらしいジェームスも、カーターには理解不能なのであった…。


185 名前:Palm あるはずのない海 6 投稿日:04/12/23 05:23:13 ID:???
>>48から続き
その足でジェームスは刑務所時代から義務付けられている分析医のもとへ出向き、カーターもそれに同行する。
主治医であるディーマーはジェームスが神経症であり、その原因は義父・アーサーへの憎しみにあると決めつけてしまっていた。
実際にジェームスと接して、彼がそんなタマではないと思っていたカーターは納得出来ず、釈然とせぬまま帰宅する。

ある日、ビアトリスにパーティのエスコートを頼まれたカーターは偶然、会場でシンと会い、新しい助手に興味を持った2人は、パーティ後オーガス邸へおしかける。
家に入ると、床は綺麗に磨かれ、すっきりと片付いていた。
唖然とするカーターにジェームスは
「あんたが埃にまみれて厭世感を誇張するのは勝手だが、そういう自虐的な趣味は俺にはないぞ」
と言い、客の手前、カーターは怒る事も出来ず、彼を皆に紹介する。
まだ掃除の途中なのか、ソファには磨かれた写真立てがいくつか重ねられていた。
カーターの妹のジョイ、叔父のレイフ、そして感じの良い、優しそうな女性。
女性はジャネットという名で、カーターの元恋人だった。
今はペンシルバニアで結婚し、他人の妻になっているという…

翌日はバーンスタイン博士とアンジェラがオーガス邸を訪れ、博士は個人的興味からジェームスを嘘発見機にかける。
診断結果は、ジェームスがアーサーやエリーを憎んではおらず、とても素直で正直な人間である、と告げていた。
別室で博士と話したカーターは、ジェームスが神経症である可能性は殆んど無い、との結論に至る。
それでは何故、彼は毎年、体のどこかしらが麻痺するのか?
博士は「本人が気にしていないから、君も気にするな」とカーターに言う。
話が終わり、イギリスに帰国する博士を空港に送るカーター達。
去り際、博士はアンジェラに内緒で、彼女が来学期から退寮する手続きをした事を明かす。
早速今夜から入室出来なくなる旨を告げると、彼等が反論する間もなく、さっさとターミナルに入ってしまう。

186 名前:Palm あるはずのない海 7 投稿日:04/12/23 06:19:08 ID:???
カーターはアンジェラに、BFのノーマンの家に行ってはどうかと提案するが、彼も大学の男子寮(女人禁制)に入っているため、それは無理な事であった。
アンジェラがオーガス邸宿泊を拒んだので、せめて今夜だけでも男子寮へ忍びこむように言い、それぞれ帰途につく。
その夜。
アンジェラは発見され、男子寮の舎監に伴われてオーガス邸に連れてこられる。
ソファの端に気まずそうに座るアンジェラ。
気まずい沈黙。
アンジェラは立ち上がり「ここには居られない」と出て行こうとする。
カーターは厳しい顔をして彼女を座らせ、諭す。
「いいかね。私は君が嫌いなんだ。
それは、君がつっけんどんで、人の嫌がる事ばかり言うからだ。
君と暮らすぐらいなら、歩き回るサボテンか、ヤマアラシとでも暮らした方がまだしもだ。
だが、君のお父さんは私の大切な友人だ。そして彼は、君を愛してる。
だから私は、君に事故や事件にあったり、悪い男に引っ掛かったりしてほしくないんだ」
続いてジェームスに
「彼女は私の友人の娘だ。だから、仲良くしてくれなきゃ困る。
だが、仲良くなりすぎても困る。いいな?」
と釘を刺し、ソファの下から小型の銃を取り、アンジェラに差し出した。
「私か彼のどちらかが君の寝室に忍び込むようなら、これで撃ち殺すがいい」
「………
そんなもの要らないわ。土曜にでも荷物運んでくる。おやすみ」
と、アンジェラは奥の部屋へ引っ込んでいった。
カーターの逆らいがたい雰囲気を持った説得に聞き入ったジェームスは感心する。
「あんた、相当な弁士だな。あんな口うるさい女の子を説得するとは」
「自分でも、なんであんな事言ったのか解らんよ。
お陰でアンジェラと暮らすハメになった」
カーターは渋い顔で酒を飲む。

幾日か経ち。
ジェームスに付き添って、カーターはディーマーを訪ねる。
自分の診断を曲げたくないディーマーは、ジェームスに自白剤を使うと言い、カーターは強く反対するが、本人が了承しているからと押しきられる。
心配なカーターは診療に立ち会う。

187 名前:Palm あるはずのない海 8 投稿日:04/12/23 07:00:49 ID:???
横になったジェームスは途中で様子がおかしくなり、胸を押さえる。
質問が丁度アーサーの事だったので、ディーマーは、ジェームスが答えたくない為に変調をきたしたと思い、診療を続ける。
しかし、かつて心臓外科医だったカーターは異変が心臓発作だと気付き、診察を中断させる。
ジェームスは心停止に陥っていたが、すぐに集中治療室に運ばれ、助かる。
カーターは昔の同僚・レイモンドにジェームスの検査を頼み、彼を見舞う。
ジェームスはファブリ入社時の検診で、心臓はおろか、全身何の異常も発見されなかったと言うが、カーターは彼を入院させる。
帰宅すると、アンジェラが本格的な引っ越しを終えていた。
シンがやって来て、エリーが生前、遺産の半分を投げうって殺し屋を雇った、との情報をもたらす。

カーターはディーマーを連れてレイモンドと会う。
ジェームスに身体的疾患は無いと言うレイモンドの言葉に、ディーマーはやはり神経症の発作だと断定するが、カーターは声を荒げる。
「そんな事で心臓が止まるか!
君が今まで診た神経症の患者の中に、一人でも、自分の心臓を止めてしまう患者が居たか?」
「…いいえ」
カーターは、今度は冷静に聞く。
「ジェームス・ブライアンは神経症か?」
「……わかりません」
ディーターは頭を垂れる。
カーターは静かだが、力を込めて言う。
「出て行きたまえ。ニ度と私の助手につきまとうな」
その足でカーターは、退院するジェームスを迎えに行くが、彼の呑気な様子に呆れ、病院のソファに座り込む。
「助かったのは運が良かったからで、こんな事が続いたら、君はもたんぞ。
その上、殺し屋からも身を守らねばならんときている」
「何だって?」
「ロナルド・エリーが殺し屋を雇ってたんだよ!君を殺すために!」

307 名前:Palm あるはずのない海 9[sage] 投稿日:05/02/15 13:05:05 ID:???
帰宅した二人はシンとアンジェラを交えて殺し屋対策会議を開くが、アンジェラの
「遺産の半分を使うぐらいの腕ききなら、一発でジェームスを仕留めてくれる筈」
との一言でお開きに。時を同じくしてサミエルが死に、カーターには「アンディを頼む」と遺言状が届く。
地下室を整理していたジェームスはモナ葬儀時のアンディのモノクロ写真を見つける。
「彼の瞳は何色だ?」カーターは黒だと答えるが、ジェームスは確信を持って「青だ」と言う。
アンディこそが、ジェームスの夢の中の少年だったからだ。
アンディを迎えに空港に出向いたカーターは、彼の瞳が鮮やかなブルーである事に驚く。
空港ではシンの起こしたいざこざに巻き込まれ、ジェームスは事情聴取に残される。
夜遅く帰宅したジェームスは、既に眠っているアンディを優し気に見つめ、カーターから「瞳は青だった」と聞く。
翌朝、皆と挨拶を交したアンディは、ジェームスにライオンのジェイクの魂が入っている様に感じ、彼をジェイクと呼び、慕う。
高校への編入試験の為、ジェームスはアンディの家庭教師をこなし、同時進行でカーターの元恋人・ジャネットの行方を探す。
家出人捜索等、本来の探偵の仕事も舞い込み、大きな仕事がワイエスから持ち込まれる。
ワイエスは自分が重役を務める会社の技術者達が麻薬の売買に手を染め、
金欲しさに産業スパイをしているのではないか、との疑いを持っていた。
ワイエスが当たりをつけた経理部長のケルトナー他、技術者二人をマークする事が、カーター達の当面の仕事となった。
仕事を始め、生き生きとするカーターに、ビアトリスは「今まで私のお守をありがとう」と別れを告げる。
そんな中、ジェームスはペンシルバニア行きの切符をとり、腰の重いカーターに「本気なら、かたをつけろ」を渡す。
ペンシルバニアに向かったカーターはジャネットの夫・ランスを訪ねるが、彼女は一年前に離婚し、行方不明になっていた。
ランスから「彼女はあなたを忘れる為に結婚した事を恥じ、
私に悪いと思っている様だった」と聞いたカーターは嬉しい反面、これでまた振出しだ、と帰宅する。
ジェームスはカーターの為、看護婦だったジャネットは復帰しているかもしれない、
と周辺の病院や実家をあたるが、彼女の行方は判らなかった。

309 名前:Palm あるはずのない海 10[sage] 投稿日:05/02/15 13:56:23 ID:???
ワイエスの依頼の方は詰めの段階に入り、カーターとジェームスはケルトナーを取引現場まで尾行する。
ディーラーはジェームスの少年刑務所時代の知り合い・オカマのグレッグ。
翌日、ジェームスはグレッグが行き着けのバーに顔を出し、彼と話をする。
ジェームスはグレッグに麻薬の値の吊り上げを要求し、拒否すればFDE(連邦麻薬取締局)に通報する、と脅す。
ワイエスは「金が欲しい」とケルトナーの仲間になったふりをし、機密取引の日時を聞き出す。
グレッグが値を吊り上げた為、早急に金が必要になったケルトナーは、ライバル会社に取引を持ちかけていた。
ジェームスはバーに出向き、グレッグに礼を言う。
少刑時代からジェームスを想っていたグレッグは「言葉じゃないお礼が欲しいわ」
と言うが、そこへFDEの捜査官が現れ、グレッグが帽子に隠した麻薬を提示し、現行犯逮捕する。
「だましたわね!」「これで麻薬と縁が切れれば、俺に感謝する様になるさ」
ジェームスは「出所の時は迎えに行ってやる。俺に迫らなければ、良き友人として」とバーを出る。
ワイエスは何とか場所を室内に設定しようとするが、相手方も用心深く、広野での取引を指定してくる。
仕方無く警察官を車のトランクに潜ませ、ジェームスとカーターは離れた果樹園に車を止め、指示を待つ事になる。
助手としてアンディもジェームスについてくる。
取引の現場を抑えられた相手とケルトナーは現行犯逮捕となり、
トランシーバーでワイエスと連絡を取ったジェームス達は現場へ向かおうとする。
そこへ機関銃を構えた数人が乗った車が現れ、ジェームスとアンディに発砲。
二人は果樹園の中を現場に向かって走る。距離はゆうに4マイル。
全力疾走のわりに息一つ乱さないジェームスに、汗だくのアンディは疑問を持つ。
現場に到着し、ワイエスに呼ばれてアンディと離れたジェームスは急に息切れを起こし、ふらつく。
何事かとアンディがそばに寄ると、ジェームスは回復する。
事情聴取で警察署に場所を移した一行。
ジェームスを襲ったのは、エリーの雇った殺し屋だろうかとの話になり、
トランシーバーでの会話が傍受されたのだろう、という結論に落ち着く。
続く

310 名前:Palm あるはずのない海 11[sage] 投稿日:05/02/15 16:30:07 ID:???
幾日か過ぎて。
かねてから「一人で寝られない」と
こぼしていたアンディはジェームスの部屋にベッドを運び入れ、同じ部屋で寝る事に。
事件解決の礼に、とワイエスの会社の社長からホテルでの創立パーティに招かれたカーター達。
アンジェラはノーマンとのデート、ジェームスは殺し屋の事があるからと遠慮し、カーターとアンディが出席する。
会場で偶然ビアトリスに会ったカーターはアンディを紹介し、
彼女は「黒い肌に青い瞳って神秘的で素敵ね」と、アンディを気に入った様だった。
カーターが社長に呼ばれ、一人になったアンディはボーイから伝言を受け、ビアトリスの部屋へ。
気分が悪いと退出したビアトリスは体が透ける薄いガウン姿でアンディを迎え、誘惑する。
「こんな悲しい事やめろよ。あんた、俺のこと、好きでも何でもないじゃないか」
アンディは彼女を払い退け、泣きながら部屋を出る。
都会の毒に染まっていないアンディにそう言われると、不思議にビアトリスも胸が痛んだ。
騒がしい場所に慣れないアンディはさっさとタクシーで帰宅し、遅れてカーターも帰宅する。
ちょうどシンが碁盤を抱えてやって来て、ジェームスを誘って居間で碁をうつ。
シンは有段者で、いくら天才とはいえ、初めての碁にジェームスは苦戦する。
そこへアンディが起きてきて、ジェームスの隣で観戦する。
すると、ジェームスは頭が冴え、勝ち続けになる。
「初めてなんて嘘つきやがって!」ふてくされてシンが出ていき、
カーターはジェームスに感心するが、彼もふてくされた様に部屋に戻ってしまう。
「自分の力で勝った訳じゃないから、スネてるのさ」
アンディはそう言って、カーターに「どう思う?」と聞く。
「こないだ殺し屋から逃げてた時もそうだったろ?
タイピングだって、オフィスでやるより、部屋で俺と居る時の方が凄く早いんだ」
超常現象にうといカーターは「私にはわからん」と流そうとするが、
ジェームスが幼い頃からアンディの夢を見ていたという話をし、そう聞いたアンディは益々混乱する。
「君達の間に、何か超自然的な繋がりがあるのはわかったが、深く考えない方がいい。
どうせ答えは出ないからな。私にだって、わからない事の方が多いんだ。
君より長く生きていても、同じように、不安なんだよ」
続く

311 名前:Palm あるはずのない海 12[sage] 投稿日:05/02/15 17:07:41 ID:???
眠れなくなったカーターとアンディは広間で話しこんで夜を明かし、
アンディがシャワーを浴びている間にジェームスが起きてくる。
「繋がっている君が不安になると、アンディも不安になるんだから、しっかりしろ」
カーターにそう言われたジェームスは、シャワーを終えたアンディに
「お前がこの国で暮らしていける様になるまでは、きちんと面倒を見る」と請けあう。
一方、パーティでの一件から何となく元気が無いビアトリス。
忙しい夫の帰りを待つ、いつもの午後。
フォレスト邸には賊が侵入し、ビアトリスを拉致。
賊はオーガス邸に電話を入れ、ビアトリスとの交換条件にジェームスを呼び出す。
「旧マリナ・ホテルの8階だ。丸腰で来い。サツを連れて来たら、女は死ぬぜ」
オーガス邸にはビリーが逆探知装置をつけ、ビアトリスの夫・ハーディも駆け付ける。
ビリーは、過去の誘拐事件の例から、犯人は次々と場所を移し、ジェームスを引っ張り回すだろうと予想する。
8時が近づき、ビリーから渡された小型のマイクを付けたジェームスは家を出る。
最後になるかもしれない、と見送りに出たカーターは
「君が言った事は本当だ。私には、君が必要だ。
だが…ビアトリスを見殺しにするわけにはいかん」
「わかってるさ」二人は握手を交わし、続いてアンディ。
「行ったら殺されるんだろ?そばに居てくれるって言ったじゃないか!」
ついてゆくと言うアンディを制し、ジェームスは車に乗り込む。
「俺だって…お前や、カーターやアンジェラと、もっと一緒に暮らしていたいんだ。
何十年とはいわない、5年、3年、でなければ1年。何なら、あと一日でもいい。
ここに、とどまっていたい。だが、行かなきゃならない。
出来るだけ永く生きろ、アンディ。お前に頼みたいのはそれだけだ。
世界はお前が生まれた時始まって、死んだ時に終わるんだ。
だから、その体に熱量のある内は、生きて、闘え。
自然が、いつもお前に優しい様に、祈っているよ…」
泣き出したアンディの頬を拭い、ジェームスは車を発進させる。
続く。

312 名前:Palm あるはずのない海 13[sage] 投稿日:05/02/16 00:35:01 ID:???
しかし、そんな感動的な別れの後、拍子抜けする程あっけなく犯人は逮捕され、ビアトリスも無事に保護される。
ジョージ・クラウダーと名乗る犯人は、空の銃と小さなナイフを持っていたが、秘かにジェームスを追ってきたアンディに簡単に捕り抑えられる。
以前に殺人での逮捕歴があるが、精神鑑定でクロとなり、五年の入院生活を終えたばかりだった。
ビリーは警察の尋問室でクラウダーの取り調べを始めるが、彼は「チャールズ・マンソン(注)の指令でやった」との自供を繰り返し、てんで話にならない。
クラウダーの身柄を刑務官に渡したビリーがカーターと話をしていると、ワイエスがやってくる。
丁度その時、ビリーはカーターと共に警部に呼ばれ、ワイエスを残して部屋を出る。
刑事部屋ではジェームスとアンディが供述書にサインを終え、尋問室へ向かう。
ジェームスにはマリアやイライなど、今まで自分の為に命を落とした人々のイメージが浮かび、悪い予感に足を止める。
警部への報告を終えたカーター達もジェームスと落ち合う為、尋問室へ。
途中、警察がまだ事件を発表していない事に気付いたカーターは、ワイエスの来訪に疑問を持つ。
尋問室。
マジックミラーで仕切られたドアの向こうで、ワイエスは獲物を待っていた。
尋問室に入ったジェームスは右目を撃たれ、蹲る。
ワイエスは椅子でミラーを壊すと、不敵な笑みを浮かべる。
「そうさ。殺し屋は俺だよ、マイケル」
止めを刺そうとワイエスが銃を構え直したところにカーターが戻り、ジェームスを庇って覆い被さる。
危険だからとジェームスに殴られても、カーターは更に強く抱きしめる。
ワイエスは躊躇し、銃を持って戻ったビリーに威嚇され、逃げ出す。
それをミラー側のドアに回り込んでいたアンディが殴り、馬乗りになって捕える。
ジェームスの銃創を診たカーターは、ワイエスをビリーに委せて戻ってきたアンディを手伝わせ、応急処置を施す。
続く
(注)1969年、女優シャロン・テートを惨殺した、ヒッピーの教祖的存在。
現在投獄中。

313 名前:Palm あるはずのない海 14[sage] 投稿日:05/02/16 16:43:52 ID:???
ジェームスは緊急手術をする事になり、アンディは一緒に手術室に入ろうとするが、拒否される。
カーターは「時が来たら、私が(突入を)手伝ってやる」と手術を見守る。
―ジェームス、君までも逝ってしまうのか?―
そんな想いが、カーターの過去を呼び覚ます。
カーターの母方の祖父は日本人だった。
母は赤毛で、アメリカ人の外見をしていたが、息子のカーターに黒い瞳に黒い直毛
という日系人の特徴が顕著に表れ、その外見ゆえに彼を嫌った。
カーターの歴史は「愛しい人々との別離」の歴史である。
まず、母の精神に問題があると叔父のレイフの養子となり、
高校生になった頃、和解した両親に会いに行こうとした日、彼等は事故で亡くなった。
そして、心配してやってきたレイフは、飛行場に迎えに来た
カーターの目の前で、飛行機事故に巻き込まれ、死亡。
オーガス邸に下宿していた親友も死に、彼の飼い猫も死んだ。
親しい人々を失う事に臆病になったカーターは、やがて知り合った
ジャネットにも心を開く事が出来ず、彼女も去っていった。
ヤケになって医者を辞め、およそ自分が向いていない探偵の免許を取った。
そんな時、ジェームスに出会った。
彼は、荒れ果てた家に灯をともし…「孤独だからだろ」と言ったのだ。
―解っているくせに、君は逝ってしまうのか?
あるはずのない海に、命が生まれ…受け継がれ、育まれ…
気の遠くなるような時を経て、よくやく我々は出会ったのに。
何故、離ればなれになってしまうのだろう?
還っておいで。もう一度、戻ってきて。
ずっと、そう祈り続けてきた。失くした人々に―
いよいよジェームスは危険な状態になり、カーターは手術室にアンディを入れる。
ドアにつっかえ棒をし、無線を切り、外部に連絡が取れない状況にして、手術を続行させる。
アンディはジェームスに取り付けられた邪魔な機械を取り、彼に密着する。
一時は出血多量で脈も止まったジェームスだったが、助かり、
その代わりにアンディがぐったりしてしまい、点滴を受ける。
カーターはアンディを労い、動けない彼の為に車椅子を押してやる。
続く

314 名前:Palm あるはずのない海 15[sage] 投稿日:05/02/16 17:41:45 ID:???
ジェームスの意識が回復し、軽口も叩ける様になった頃、カーターはワイエスに面会する。
「マイケルは?」「助かったよ。右目を失ったがね」
ワイエスは安堵した様に頷く。
「何故なんだ?君が…」「さぁ…あんたにわかるかな」
ワイエスの家は、アメリカの片田舎で代々農業を営んでいた。
猩紅熱で成長が止まり、ろくな力仕事も出来ないワイエスは役立たずだった。
頭だけは良かったので、サウスワースから打診され、両親はこれ幸いと彼を厄介払いした。
血の繋がりはなくとも、マリア夫妻やイライという家族に恵まれ、
光の中で笑うマイケルは、彼の憧れであり、嫉妬の対象であった。
自分は「捨てられた子供」だったから。
「奴は選ばれ、俺は取り残される。“その感じ”は、どうやっても拭えなかった…
何故、奴はあんたを選んだんだろう?俺は、あんたの様になりたかったよ」
「彼は、君が好きだよ」
「俺も、奴が好きだったよ。信じてくれるかい?」
頷くカーターに礼を言い、ワイエスはポケットから小さなカプセルを取り出した。
危険物検査にもひっかからなかった、小さな、おそらくは速効性の毒。
「ワイエス、やめろ!誰か!彼を止めてくれ!」
カーターはガラス越しに、ワイエスが崩れ落ちるのを見た。

後日、アンディはアンジェラと同じ高校に編入が決定する。
担任のキャロルに挨拶に出かけたジェームスは、彼女にアンディのゲイ相手だと誤解されるが、
特に否定もせず「理解のある先生で、彼は幸せだ」と握手をして部屋を出る。
彼が帰宅すると、ビアトリスがやってくる。
化粧っ気の無い顔に、すっきりしたパンツスーツにタートルネックのセーターを着た彼女は、今までとは別人の様だった。
夜間の大学に通う事にしたと言う彼女も、新しい一歩を踏み出すのだ。
そして、庭に立つ影。白いワンピースに身を包んだジャネット。
「早く行ってあげて。カーターが待ちわびてるわ」
そう言って、ビアトリスはジャネットに微笑みかける。


321 名前:Palm あるはずのない海 16[sage] 投稿日:05/02/18 23:08:10 ID:???
>314からの続き
依頼人との電話中にジャネットを見たカーターは、固まってしまう。
ジェームスは電話を切り、アンディを誘って河原に出かける。
ジェームスがファブリ(兵器会社)で働いていた頃の上司と作った、本格的な打ち上げ花火をお祝いに上げようというのだ。
「カーター達が花火が見える所に居てくれればいいけど」
河原にはビリーやジョン、シン、アンジェラにノーマンなど、カーターの友人達に通りがかりの人々も集まり、ちょっとしたイベントになっていた。
一方カーターはジャネットと夜の街に出るが、嬉しさのあまり、頭が働かない様な状態だった。
「一人で何事かに耐えているあなたを見ていられなかった。
でも私達、知り合ってまだ何十年も経った訳じゃないわ。
しっくりいく様になるには、もっとたくさんの時間が必要なんだわ」
カーターはジャネットをアパートまで送り「寄っていって」と言うのを断る。
「今日は帰るよ。君に気安く触れたくないんだ。
君と別れてからの私は、相当節操なしだったからね」
「それじゃあ、再会を祝って抱きしめてくれる?私達、まだ握手もしてないわ」
カーターはジャネットを抱きしめ、涙を流す。
「帰ってきてくれて嬉しいよ…」
そっとキスを交わすと、彼女の部屋には入らず、カーターはアパートを後にする。
見上げた夜空には、美しい花火が咲いていた。
終わり『スタンダード・デイタイム』へ続く

322 名前:スタンダード・デイタイム あらすじ[sage] 投稿日:05/02/18 23:19:13 ID:???
Side AとSide Bの二本立て。
Side A
出所したグレッグの恋人が爆殺され、彼から依頼を受けたジェームス達は犯人探しをする事に。
パーム探偵編という趣きのお話。

Side B
高校に入ったものの、友達も作らず、早退を繰り返すアンディ。
そんな彼にクラブ活動への参加や友人を作ろうとジェームス達が奮闘(?)する話。
パーム日常編。

323 名前:スタンダード・デイタイム Side A 1[sage] 投稿日:05/02/19 01:15:19 ID:???
【新着キャラ】
●ティナ・モーガン グレッグの恋人=レックスの姪。6歳。
幼少時の悲惨な体験で、声を出せない「全緘黙症」という病気に。
●サラ・モリソン 障害児が通う私立学校の校長。
厳格ではあるが、根は優しい女性。
●マイク・シャーロット ビリーの上司の警部。
私立探偵が嫌いで、ジェームス達を良く思っていない。
●ウィラード・バーウィック 何かと黒い噂の絶えない
悪徳建設会社「リカー・マンダー」の社長。
【本編】
オーガス探偵事務所の仕事は軌道に乗っている、とは言えない状況にあった。
しかし、ワイエスがエリーから受け取った金を生前に口座に振り込んでいた為、すぐには破綻しない。
そんなものに頼っていては駄目だ、とやる気を出したカーターは看板を注文し、本格的に探偵業を始動する。
そんなある日。
FDEから麻薬中毒者の更正施設へ入っていたグレッグが出所。
約束通り花束を抱えて施設に迎えに行ったジェームスに、グレッグは大感激する。
オーガス邸への招待を受けたグレッグは「恋人が待ってるから」と断り、ジェームスにアパートまで送ってもらう。
帰宅したジェームスにグレッグから「部屋が爆破された」との電話が入り、彼はカーターと共に再びアパートへ向かう。
グレッグの恋人であるレックスはルポライターで、何かヤバい事件を追っていたという。
シャーロット警部の指揮の元、ビリーら数名の刑事が現場検証をする中、
到着した二人は警部に嫌味を言われ、彼が私立探偵をけ嫌いしているのを知る。
事情聴取を終え、住む所が無くなったグレッグは、暫くオーガス邸に滞在する事になり、
彼等は爆殺されたレックスが面倒を見ていた彼の姪=ティナを迎えに行く。
幼少時に母が男と失踪し、歯科医だった父を目の前で強盗に殺されたティナは、ショックで声が出なくなっていた。


326 名前:スタンダード・デイタイム Side A 2[sage] 投稿日:05/02/20 21:10:23 ID:???
養護学校(日本のものとは少し違いますが、便宜上)に出向いた一行は校長のサラと会う。
ジェームスを見たサラは、彼がティナの父親を殺した強盗と外見が似ている為、自分が面倒を見る、と言う。
ジェームスに脅えるティナにグレッグも諦め、一時的に彼女をサラに預ける事にする。
翌日の朝食の席で、グレッグから依頼を受けたジェームス達は、レックス爆殺犯人を探す事になる。
ジェームスはグレッグの着替えを取りに行く名目でアパートに入り、ビリーから手榴弾が使用された事、
隣人から「爆発の直前、フランス訛りのクリーニング屋が来ていた」との情報を入手。
カーターはレックスのオフィスに出向き、彼が生前、
悪徳ゼネコンとして名高いリカー・マンダー社の汚職事件を追っていた事を知る。
あちらから行動を起こしてくれる様、目立つ様に社長のバーウィックの尾行を開始するカーター達。
リカー・マンダーから悪質な地上げに遇った被害者からも話を聞き、
暴力団まがいの会社であると確信を深めるカーターだったが、
ジェームスは「フランス訛り・手榴弾・建築会社」という響きに釈然としないものを感じる。
そんな折、養護学校が火事になり、ティナの面倒を見られなくなったサラから連絡が入る。
火事はいたる所に時限発火装置が仕掛けられた、計画的な放火であった。
学校の一部を住居としていたサラは、住む所が無いのは勿論だが、
経営難による保険金目当てに彼女自身が放火したのではないか、と疑われていた。
報せを受けたカーターはグレッグと二人でティナを引き取りに出かける。
オーガス邸にやってきたティナはやはりジェームスを怖がるが、
アンディに懐き、ジェームスはなるべく彼女に姿を見せない様心がける。
一方バーウィックは、用心棒のトレイシーに、カーター達を脅す様に命じていた。



327 名前:スタンダード・デイタイム Side A 3[sage] 投稿日:05/02/20 23:47:36 ID:???
オーガス邸ではジャネット帰還祝いにと食事会が催される。
ティナが眠った夜遅く、銃を構えたトレイシーが乱入してくる。
ジェームスは彼を捕え、様子見にカーターとリカー・マンダー社へ向かう。
バーウィックと面談した二人は、予想外に人懐こい彼に、殺しまではやらない様な印象を受ける。
帰宅した二人はキッチンで酒を飲みながら話し合う。
ジェームスは、殺し屋の本当の狙いはティナの方ではないか、と言う。
学校に行っていなければ、レックスの部屋にはティナが居たかもしれないのだ。
そして原因は、彼女の父親が殺された強盗事件にあるのではないか、と。
レックスの関係を省き、ティナのみに絞って見てみると
「フランス訛り(=外国人)・時限発火装置(=プロ犯罪者)・手榴弾」となる。
この響きには国際テロでも絡んでいるのではないか…
怖がられてばかりもいられない、とティナと話したジェームスは、強盗事件でのティナの記憶違いを指摘する。
事件では、彼女の歯の治療の為に休日の診療所で強盗に遇った事になっていたが、
実際は、自宅に強盗が押し入り、三人で診療所に行ったのだった。
そして、歯科医だった父親を脅し、ティナの歯に何かを隠した。
おそらくはマイクロフィルム…爆破犯人が欲しがっているものは、それなのだ。
そう推理したジェームスとカーターは警察署に出向き、当時の記録を調べる事にする。
ビリーのつてで記録を閲覧すると、犯人は髪と瞳の色が同じなだけの、ジェームスとは似ても似つかない初老の男だった。
ジョセフ・マードックという犯人は札付きの元警官で、先週の水曜日に獄中死していた。
警察関係の経歴としては最後にFBIの特捜班に回され、テログループへの潜入を任されていた。
グループのリーダーは、ゾラと名乗るフランス人。
判明したのは名前と国籍のみで、人相等は不明。
マードックの死因は囚人達による集団リンチとなっていたが、実はテロリストによる
リンチを装った拷問で、その際にティナの事を吐いたと考えれば、全てが合致する。
マイクロフィルムはゾラの顔や経歴を記したもので、
マードックはそれをテログループへのユスリのネタにする為に隠匿したのだ…

382 名前:スタンダード・デイタイム SideA 4[sage] 投稿日:05/03/03 02:11:57 ID:???
ジェームスは危険な立場であるティナを迎えに行こうと駐車場に向かう。
そこへ脅えたグレッグとティナ、アンディがやってくる。
「警察署なら安全だわ」とグレッグが言った矢先、ライフルを乱射しながらゾラが襲ってくる。
ジェームスはアンディにティナを託し、ゾラと対決し勝利。
しかしゾラの仲間が外に待機しており、アンディ達は追い詰められる。
仲間の男女二人組の男がアンディに狙いを定めた時、ティナの声が復活し、彼等の位置を把握したジェームスは男を倒す。
女は反対側から回り込んだカーターが倒し、皆はティナに駆け寄る。
「また怖い思いをさせてしまったな」と謝るカーターに、ティナは
「違うの」と涙を流し、ジェームスに抱きつくのだった。
ゾラは逮捕され、平和になったオーガス邸。
グレッグは別れが苦手だとティナに会わずに邸を去る。
ティナはサラに引き取られる事になり、ジェームス達との別れを惜しむ。
そんなティナに「またおいで」と、ジェームスは電話番号を書いたプレートペンダントをかけてあげる。
「安心したよ。君でも女性に電話番号を教えるんだな」
カーターは笑い、和やかな朝のひとときになった。
終わり

415 名前:スタンダード・デイタイム SideB 1[sage] 投稿日:05/03/05 14:31:31 ID:???
【新着キャラ】
●ラウル・ポインター
アンジェラとアンディの級友。アメフトの花形選手で、高校のアイドル。
●ボギー・ベン
ラウルの親友。短気なラウルのなだめ役になる事が多い。
●シド・キャロル
アンディ達のクラス担任の女教師。
ゲイ疑惑の解けたジェームスに片想い中だが、オクテで言い出せない。
後の『愛でなく』では準主役に。
【本編】
18歳のアンディは高3クラスに編入したが馴染めず、孤高の人になっていた。
本人はたいして気にしていない様子だが、彼のそんな態度が益々垣根を高くし、クラスの中には彼に反感を持つ者も。
その筆頭が人気者のラウルで、彼は事ある毎にアンディにつっかかる。
アンディは我関せずといった風で、彼を無視する様な態度をとり、二人の関係は悪化していった。
元凶は、アメフトに誘ったラウルにアンディが「ボール遊びなんてバカバカしい」と答えた事だった。
この時アンディには悪気があった訳ではなく、アメフトが理解出来なかっただけなのだが…
実は面倒見の良いアンジェラは、級友達とアンディの板挟みになり、キリキリ舞い。
オーガス邸の雰囲気も悪くなってゆく。
時はクリスマス・シーズン。
アンディの事でシドに呼び出されたカーターは帰宅時にシンの知り合いのヤクザな借金取りに絡まれる。
「親戚だからといって、シンの借金を払ってやる義務はない」とヤクザを追い返すカーター。
そこへ弁護士のジョンが訪ねてきて、シンが酒場で暴れて拘留中だと言う。
仕方無く警察署に出向いたカーターはビリーに「ジェームスを引き取りに来たのか?」と聞かれ、我が身の不運を嘆く。
全く、次から次へと問題が起こるものである。
アンディに関しては、このままではいけないと思ったカーターは、アンディを学校生活に慣れさせる為、クラブ活動や行事に参加させる。
アフリカで像を彫っていたアンディは彫刻クラブに入り、才能を発揮する。
続く

416 名前:スタンダード・デイタイム SideB 2[sage] 投稿日:05/03/05 15:36:58 ID:???
※書き忘れ
カーターがシンを引き取りに行った時、ジェームスは探偵の仕事中に行き過ぎた調査をして拘留中だった※

ラウルの親友=ボギー・ベンは、二人を仲良くさせようと助言する。
ラウルも折れて、アンディと話をしようと学食へ。
「色々と悪かったな」と謝るラウルに「最初にボール遊びなんて言って悪かった」とアンディも謝る。
しかし、そんな子供じみた理由でスネていたと図星を指された様に感じたラウルは怒ってしまい、益々頑に。
一方、借金取りのしつこさにうんざりしたカーターは、結局シンの借金=2000ドルを肩代わりする事に。
そんな中、高校のクリスマス・パーティに参加したアンディとアンジェラ。
アンジェラは「ナンパでもしなさいよ」と、アンディに暇そうな女の子に声をかけさせる。
アンディ達の高校は私立だが、女の子は公立校から紛れ込んだ少しガラの悪い子だった。
その子を連れて会場の外に出たアンディは、女の子の彼氏を含む公立校の不良達に因縁をつけられる。
そこへアンディと話をつけようとラウルがやって来る。
女の子は不良達と行くのを嫌がり、彼女を庇うアンディと不良達は喧嘩になってしまう。
卑怯な事が嫌いなラウルはアンディに加勢し、大乱闘に。
そこへアンディを迎えに来たカーターが仲裁に入り「ここでは迷惑だし、家の庭を提供するよ」と彼等を引き連れてオーガス邸へ。
玄関に出迎えたジェームスとシンを見た不良達は二人の迫力に気押され、大人しくなる。
ジェームスはラウルの怪我を治療し、カーターは加勢の礼を言う。
彼等からアンディの出自を聞いたラウルは、アンディが普段から大ボケなのだと納得し、今までの事を謝る。
不良達を帰した後。
自分に加勢してくれた事でラウルに懐いたアンディは彼を自宅まで送っていき、二人は何となく友人に。
シンは嫌味に大量の25セント玉で2000ドルを運んで来て、オーガス邸の玄関に小銭の詰まった箱をいくつも置いてゆく。
カーターが途方に暮れていると、オクヨルン(アンディのアフリカ時代の知り合い)が訪ねて来る。
アンディの不在で帰って行く、彼女の美しい後ろ姿を見送りながら、カーターは「クリスマスの妖精の様だ」と思うのだった。
『星の歴史』へ続く。

417 名前:星の歴史―殺人衝動― あらすじ[sage] 投稿日:05/03/05 16:12:10 ID:???
【新着キャラ】
●ボアズ・ウルマン
ジェームスの刑務所時代の仲間。黒人。
音楽の才能がある。
●エティアス・サロニー
宝石のブローカー助手。
仕事中に交通事故を起こし、ボアズと同じ日に刑務所へ。
ジェームスに異常な執着を見せる。
●ゲイリー・キャプライス(通称:ティット)
ジェームスと同室の元プロレスラー。
身長2メートル以上の迫力満点の黒人だが、気は優しい。
●ハーバート・ハスキンス(通称:ハーヴ)
ジェームスの実母イライザの友人で著名な画家。
今でもイライザを愛していて、ジェームスとも仲が良い。
●アビー・ウルマン
ボアズの姉。街娼。
【あらすじ】
ボアズ、サロニーとジェームスの出会いから出所までの交流。
(一部『あるはずのない海』とリンク)
その後『スタンダード〜』以降に繋がり、出所したボアズはジェームスと再会。
サロニーは殺人鬼となって、ジェームスを執拗に付け狙う。
カーターとボアズを傷つけられたジェームスは、彼等を守る為、サロニーと対決する。

※注 Palm連載前に発表されたダイジェスト版『お豆の半分』という短編とリンクしていますので、
書き人が適当に二つを合わせて書きます。ご了承下さい。

444 名前:PALM 星の歴史―殺人衝動― 1[sage] 投稿日:05/03/08 03:15:09 ID:???
※何人か紹介忘れてました。
●バリー・フロスト
FBI捜査官。バイタリティー溢れる国粋主義者。
●ビクター・サーリング
CIA捜査官。
●トニー・スキャフィーノ
スキャフィーノ・ファミリーの跡取り息子。ちょっと頼りない。
【本編】
「お前はクズだ」黒人スラム生まれのボアズはそう言われて育った。
物心ついた時から母親と姉は娼婦で、父親はアル中のヒモだった。
そんな彼の唯一の宝物はハモニカだった。音楽が好きだった。
だが、そのハモニカも父が勝手に質に入れてしまった。
質屋のウィンドウに飾られたハモニカを眺め、子供である事の無力さを噛みしめた。
ガラスを割って、ハモニカを盗んだ。そうして、ボアズは堕ちていった。
マフィアのスキャフィーノ・ファミリーに出入りし、
銃や麻薬の売買に手を染め、10歳を幾つか過ぎて、人を撃ち殺した。
それが元で少年刑務所に入ったボアズは、年を重ねて成人刑務所に移される。
同房のカービーに「ボスに挨拶してきな」と言われたボアズは、向かいの房の大柄な黒人に声をかける。
「あんたがボスか?」「いや、俺は副官のティット。ボスはこいつだ。」
ティットの向こうにはジェームスが寝そべっていた。
「やあ」旧知の友人にする様に、ジェームスは挨拶する。
「シロ(白人)じゃねぇか!俺はシロが大嫌いなんだ。俺は誰の指図も受けないからな!」
ボアズはそう言って身構えるが、ジェームスは読んでいた本を閉じて寝返りをうち、ティットもそれに倣う。
一人熱くなったボアズは拍子抜けして自房に戻る。
翌日。ジェームスの取り巻きにも参加せず、一人で過ごすボアズに、同じく新入りのサロニーが話しかけてくる。
彼はカタギの宝石のセールスマンで、交通事故で人を牽いてしまい、入所した。
犯罪者達の輪には入っていけないし、ボスは怖いと言うサロニー。
「彼はジェームス・ブライアンだ」
ボアズも名前だけは知っていたが「関係ねぇよ」と一蹴する。
「あんた、俺にボディガードでも頼もうってのか?だったらお角違いだぜ。俺はシロとは組まねぇんだ」

445 名前:PALM 星の歴史―殺人衝動― 2[sage] 投稿日:05/03/08 04:02:32 ID:???
そんな事があった翌朝。
サロニーは一人でシャワー室に籠り、自分で顔を壁に打ちつけ痣を作る。
ジェームスには転んだと言い、サロニーは労働を免除される。
その日は所内の工房で仕事をする予定だったが、ボアズは初日の言葉通りジェームスの指図を無視する。
「なぁ、少刑のルールはここでも通じるのか?」
それはボスを倒した者が新しいボスになるというものだ。
「通じるが…仕事をしないならサロニーを頼む」
またしてもサロニーと二人になったボアズ。
サロニーは「さっきの事、本気なら協力するよ」と話しかけてくる。
「実はこの痣は、あの黒人の副官にやられたんだ」
サロニーは仕返しがしたいと、ジェームスを倒すのに加勢すると言う。
「その気があるなら、午後から工房に行こう」

午後。一通り作業を終え、囚人達は散っていった。
ボアズとサロニーは残り、打ち合わせ通りに行動を起こす。
ボアズは粉砕機に手を巻き込まれた芝居をし、ジェームスを呼ぶ。
ジェームスは最後まで残っていた囚人にティットを呼びに走らせ、工房には三人だけになる。
ボアズを気遣うジェームスの後頭部をサロニーがスパナで殴る。
「覚悟しろ、ブライアン。貴様はもう俺のものだ」
別人の様になったサロニーはスパナを振り上げる。
「話が違うぞサロニー!そんなもので殴ったら殺しちまう!」
焦って止めるボアズをも殴り、サロニーはジェームスと向き合う。
と、ジェームスは急に力が抜けた様に膝を折る。例の神経症的な発作が表れたのだ。
サロニーがジェームスに馬乗りになり、スパナを振り下ろそうとした瞬間にティットが戻ってくる。
サロニーは捕り押さえられ、笑みを浮かべる。
「失礼したな、ブライアン。お前は上玉だよ。いつもこんな男だと思わんでくれ。俺は本当は、恐ろしく気が長いんだ」
狂った様に笑いながら、サロニーは連行されていった。

521 名前:PALM 星の歴史―殺人衝動― 3[sage] 投稿日:05/03/13 07:36:09 ID:???
>445の続き
所長のキルバーンはサロニーの前歴を調べるが、特に不審な点は無かった。
結局サロニーは回復次第、精神病棟から出所という事になりそうだった。
ボアズはジェームスが「サロニーを止めようとした」と庇った為、特に罰を受ける事もなかった。
それからもボアズは、仕事はするが行事には参加しないスタンスであった。
そんな中、ティットの妻の減刑嘆願運動が実り、彼の出所が決まった。
たくさんの仲間に祝福され、ティットは出所。
それを見たボアズは自分の出所後を思い描く。
家へ帰っても相変わらず母親は娼婦で、父親は飲んだくれているだろう。
そうして、自分はまた同じ事を繰り返してしまうだろう…
数日後。
務所仲間達はボアズの周りに集まり、新しい副官にならないかと提案してくる。
「なんで俺なんだよ?奴とは全然仲良くないぜ」
「それがいいんだよ。裏表が無いって事だし、ジェームスにきつい事も言える人間が適任だ」
「…俺はシロとは組まねぇ」ボアズは未だに頑だった。
面会日。
ジェームスには実母の友人=ハーヴが、ボアズには姉のアビーが、それぞれ訪ねて来る。
アビーとはあまり交流が無かった為、不審に思うボアズ。
しかし彼女は機嫌良さそうに喋りまくる。
「あんた、ここを出ても家に戻ろうなんて思うんじゃないよ。
親子ったって、あそこまで腐ってちゃ手がつけらんないよ。あたしんとこへおいで」
アビーはいずれ娼婦から足抜けしてカフェをやるのだという。
驚いて目を丸くするボアズに差入れのギターと詩集を置いて、彼女は帰って行く。
一方ジェームスはハーヴと話し、母=イライザの事を色々と聞く。(ここらは『午前の光』で詳しく)
房に戻ったボアズはギターの置き場に困り、仕方なく今は一人のジェームスの房に置かせてもらう事に。
ジェームスはギターを聴きたがり、ボアズはずっと忘れていた音楽を思い出す。
それが縁で、なし崩しにジェームスと同房になり、副官となってしまうボアズ。
次の面会日にはまたアビーがハモニカやカセットデッキを持ってやって来る。

552 名前:PALM 星の歴史―殺人衝動― 4[sage] 投稿日:05/03/19 00:56:56 ID:???
>521の続き
店の設計図を広げ、嬉しそうに夢を語るアビー。
彼女は以前ボアズに渡した詩集の中の『星の歴史』という詩に勇気づけられたのだという。
ボアズはあまり読み書きが出来ない為、房に戻ってジェームスに詩を読んでもらう。
『凡庸な人間など存在しない
ひとつひとつが常に非凡で独特で
それに似ている星はない』
ロシア人が書いたと思われる、短い一篇だった。
ボアズに感想を聞かれたジェームスは「確かにみんなクセがある」と言う。
「これを書いた奴はアメリカ人じゃない。ハーレムを知らないんだ。
生まれてから死ぬまで有色人種で、金も無けりゃ、儲ける方法も教われねぇ。
こいつの国には、そんな奴が居ねえんだ。だから、つまらねえ奴が居ねぇなんて、おめでたい事が言えるんだ。
あんたに感想聞くなんて、俺がバカだった。あんたはシロだからな」
ボアズがそう言うのを聞いたジェームスは「生まれは変え様がない」と怒ってしまう。
「こっちは手を広げて待ってるのに、お前はいつまでもそんな態度なんだな」
そう言ってベッドで背を向けてしまったジェームスの機嫌を取ろうとするボアズ。
「俺が悪かった、機嫌直せよ。
もう少ししたら、も一度あの詩を読んでくれよ」
ボアズはジェームスの隣に座る。
「お前はいい奴だよ、ジェームス。
お前は肩書きが肩書きだから、色々言われんのは仕方ねぇけどよ。
お前は本当は、いい奴だよ…」
それからのボアズは熱心にジェームスに読み書きを習い、図書室に入り浸る。
そんな中、エリー暗殺の報が届き、狂言脱走で刑期を伸ばす必要が無くなったジェームスの出所が近づく。
弁護士のジョンはジェームスの就職先を決める為、度々刑務所に足を運ぶ。
ジョンは彼にカーターを紹介し、二人は意気投合するが、神経症の絡みで拒否されてしまう。
その夜、ジェームスはボアズに「きっとあの男(カーター)の所に行く事になる」と告げる。
翌日、ボアズが一人でいる時にジョンが訪ねてきて、ジェームスの事を色々と聞いてくる。
続く

553 名前:PALM 星の歴史―殺人衝動― 5[sage] 投稿日:05/03/19 01:42:28 ID:???
ジェームスがここを暴力で支配しているのかと聞くジョンに、笑いながらボアズは答える。
「奴は拳はぶん回さねぇよ…あいつは面白い奴よ。クソまじめなんだ。
あいつは、当たり前にやってんだ。あいつなりにさ。
あいつは、みんなとも俺ともうまくやっていきてぇんだよ。
…俺は、クズだったしよ…周りの奴らにも、ずっとそう言われ続けてたしよ…
だけど奴は変な奴で、飛び込んできた奴とは、みんなとうまくやりたがるんだよ。
最初に会った時――奴は俺に“やぁ”って言った。普通の感じでさ。
俺みたいなクズにさ!」
声をあげて笑っていたボアズは、やがて泣き出してしまう。
「すまねぇ弁護士さん、勘弁してくれよ…
あいつは、凄い奴よ。みんながあいつを待ってる。
だけど俺には…俺には、奴しかいねぇんだよ」
ジョンは優しくボアズの肩を抱く。
「彼が本当に君が言った様な男なら、けっして君を忘れたりしないさ。
君の刑期も長い事はない。ここを出たら、真っ先に訪ねていってごらん。
きっと、喜んで迎えてくれる筈だ」
そして現在。
出所したボアズは、夜遅く、オーガス邸にやってきた。
折しもクリスマスのパーティで、親しい人々が集っていた。
久しぶりにボアズと会ったジェームスは彼を抱きしめる。
ボアズは音楽がやりたいと、今はウェイターをしながらナイトクラブでバンドをやっているのだという。
その日はつもる話で夜が更けていった。
そして、もう一人。
ワイエスのジェームス暗殺失敗を受け、サロニーも動き出していた。
サロニーはネガットの幹部に自分を売り込み、ジェームスを殺した際の報酬を約束させる。
時は過ぎ、ボアズの店で開かれた大晦日のオールナイトパーティに招かれたジェームス達。
音楽の渦の中、サロニーが現れ、ジェームスに耳打ちする。
「世間は狭いな。警戒するなよ、ブライアン。
俺はお前の仲間だ。じきそれが解る。何もかも捨てて、俺の所に来たくなる…
何もかも捨ててな…もう、後戻りは出来ない…」
続く

555 名前:PALM 星の歴史―殺人衝動― 6[sage] 投稿日:05/03/19 02:44:25 ID:???
ただならぬ気配を感じたカーターは何事かと聞くが、ジェームスは昔の仲間だ、と答えるだけだった。
一方、このパーティで音楽に興味を持ったアンディはボアズにギターを習い始め、非凡な才能を見せる。
バンドのメンバー達も舞台映えしそうなアンディを気に入り、
彼をボーカルにしてニューヨークで開かれるコンテストに出場する事に。
アンディと長時間離れたジェームスの作業能力は著しく落ち、彼は呼ばれる様にニューヨークへ発つ。
アンディも調子が悪くなり、コンテストをすっぽかして空港に向かう。
ジェームスが乗った飛行機はハイジャックされるが、アンディ会いたさに、ジェームスはさくっと犯人を倒す。
ニューヨークに到着したジェームスは空港でアンディを見つけ、駆け寄って抱きしめる。
この一連の派手な行動は大々的に報道される。
ロスに戻ったジェームスはハイジャック犯の仲間と名乗る組織に狙われる。
彼等は「お前が奴から取り上げたブツを渡せ」と要求してくるが、ジェームスには何の事か解らない。
ブツは国家機密で、ジェームスを囮にソ連(PALMの舞台は80年代)の大物スパイを捕まえようと、FBIが嘘の情報を流したのだった。
結局この件にソ連は絡んでおらず、ケチなヤクザ一味を挙げただけだった。
この時のFBIの捜査官がフロストで、彼とは長い付き合いになる。
時は少し前、ジェームスがロスに戻った頃。
サロニーはジェームスを追い詰める為、行動を起こしていた。
彼は昔ボアズが出入りしていたスキャフィーノ・ファミリーに入り込む。
ボスの息子であるトニーに取り入り、彼に殺人をさせたサロニーは、その現場に前もってボアズを呼び出しておいたのだった。
今はカタギのボアズは、殺人の目撃者としてトニーに追われる事になる。
サロニーはトニーに内緒でボアズを捕え、人里離れた別荘に監禁する。
そしてトニーには「オーガスって探偵の所によく出入りしていた」との情報を流し、
探偵がボアズを匿っているに違いないと、カーターを捕えてボアズの居場所を吐かせよう、と提案する。
続く

557 名前:PALM 星の歴史―殺人衝動― 7[sage] 投稿日:05/03/19 03:50:31 ID:???
この頃が丁度ジェームス達が組織に追われている時期で、彼等は安全の為、ホテル住まいをしていた。
ハイジャック事件が片付き、自宅に戻った一行はアビーからボアズが行方不明であると聞き、捜索を開始。
翌日、自宅前でボアズからの手紙(サロニーに脅されて書いた?)を受け取ったカーターとジェームスは、指定された場所に向かう。
人気の無い倉庫街に着いたジェームスはカーターを車に残し、歩く。
そこへサロニーとトニーが現れ、カーターを拉致する。
サロニーはカーターを盾にジェームスのナイフを取り上げ、倉庫に閉じ込める。
その際に「スキャフィーノの坊っちゃん、よろしいですよ!」とヒントを残すのも忘れなかった。
倉庫の2階から彼等の車の天井に乗り移ったジェームスは道路の桁で胸を打ち、振り落とされてしまう。
気がつくとオーガス邸だった。
アンジェラが言うには、ジェームスが自分で帰ってきたのだという。
脳震動を起こし、胸を強く打った彼には休養が必要であったが…
「カーターは?」「サロニーにとられた…」
そう言うとジェームスは上衣を着け、アンディを連れてスキャフィーノに乗り込む。
トニーの父=大スキャフィーノはジェームスの名前を聞くと
「ネガットを敵に回すつもりはない」と話し合いに応じるが、
トニーの独断による行動で、彼も何も把握していない様な状態だった。
トニーと共に姿を消した部下の住所を聞き出したジェームスは、そこで張り込む。
一方、どこかの小屋に連れ込まれたカーターは、サロニーに拷問を受ける。
サロニーはジェームスのナイフを暖炉で熱し、カーターの胸に押しつける。
「奴もまさか自分のナイフがあんたを傷つけるとは思わなかっただろうな」
続いてカーターの腕を切り落とそうとするサロニーをトニーは止める。
「お前のやり方は異常だ!その男を殺す気か!」
「こういう手合いは強情なんだ。止めろとも知らんとも言わない。
吐けば消されるのを心得てる。血を絞り出して、
頭がボウッとなったところに聞き出すのが一番なんだ」
「じゃあ薬を使う。もうたくさんだ!出ていけ!」
だがこれも、サロニーにとっては計画通りと言えた。
彼の標的はあくまでジェームスなのだ。
続く

558 名前:PALM 星の歴史―殺人衝動― 8[sage] 投稿日:05/03/19 04:54:55 ID:???
サロニーを放逐したトニーとその部下二人はカーターに麻薬を打ち、ボアズの行方を喋らせ様とする。
カーターは強い精神力で抵抗し、床に落ちていた釘を隠し、部下の一人を傷つける。
腕をざっくりと切られた部下は動揺し「破傷風になっちまう」と騒ぐ。
仕方なくトニーはもう一人の部下に薬を買いに行かせる。
外に出た部下は飼っているオウムが気になり、自宅に戻ったところをジェームスに捕えられる。
と、そこへアンジェラから連絡を受けたビリーがCIAの捜査官=サーリングを連れてやってくる。
サーリングは助手席に乗り込み、ジェームスと話をする。
サロニーは表向きは宝石商、その実CIAの局員であった。
ある時から殺しの才能を発揮し始めたサロニーは、単なる局員からCIA公認の殺し屋になった。
だが、いつの頃からか彼は暴走を始め、当局の手に負えない存在になっていったのだった。
慌てたCIAはサロニーの経歴を調べた。
ヨーロッパの名門の出である彼は幼い頃から残虐で、その事を憂えた実父に殺されかける。
しかし彼はそれを返り討ちにし、家族を皆殺しにして逃げた。
焦ったCIAは何人もの殺し屋をサロニー暗殺に差し向けるが、誰も帰ってはこなかった。
「不信を買うだけだろうから率直に言うが、今回の件で私達は君に大いに期待している。
あわよくば、サロニーを返り討ちにしてくれるのではないか、とね。
気を悪くしたかね?」
「あんたはどうだ?気分が悪くならないか?」
「だが、我々は君の味方だ。援助させてくれ」
こうしてCIAの協力のもと、カーターを救出したジェームスは
ビリーが止めるのも聞かず、無理矢理にカーターを家へ連れて帰る。
家ではジャネットが献身的にカーターを看護するが、彼はバスルームに一人で籠り、中毒をやり過ごす。
そこへサロニーから電話が入り、ジェームスはランフルース(地名)へ呼び出される。
ランフルースは砂漠で、何も隠す事が出来ない辺境だ。
「ボアズに会わせてやるぞ。一人で来い。見通しがいいからな。
何か見つけたらスイッチ一つでボアズとは永久にさよならだ。
何のスイッチかは、言わなくても解るな?」
続く

627 名前:PALM 星の歴史―殺人衝動― 9[sage] 投稿日:2005/03/24(木) 02:28:47 ID:???
>558の続き
アンディとカーターは寝ている為、アンジェラがジェームスを送り出す。
「前にもこんな事があったわね(ビアトリス誘拐時)
言っとくけど私、カーターとアンディにガタガタ言われるのは嫌ですからね。
二人が目を覚まさないうちに、ちゃんと帰ってくるのよ?」
ジェームスはアンジェラを見つめ、思いを告げる。
「俺にはあまり、ここが自分の場所だと思える所は無かった。
だが、この家は違った。ここを離れるなんて信じられない。
これが自分の招いた事なら通ってゆかねば、と思う。それはいい。
だが、あんた達と別れるのは辛い」
アンジェラはその言葉に涙する。
「そういう事は普段から言っておきなさいよ!
私、物心ついてから人前で泣いた事なんて無いのに…」
ジェームスは「口下手なんだ」と、彼女を抱きしめる。
「あんたは本当の妹みたいだった。タフで頼もしい。
一緒に居られて、いつも幸運だと思ってた」
「私もよ。でも、過去形じゃないわ。何よ、あんな変態野郎(サロニー)一人!!」
「帰って来る…他に行く所など無い。約束する」
そしてランフルースへ出かけたジェームスは警察の尾行を撒き、サロニーと対面する。
そこからはサロニーの車で長いドライブとなった。
夕刻、ジェームスはボアズが監禁されている屋敷に案内される。
「家の中に弾丸が6発置いてある。俺は銃を持たん。
日が暮れたら犬を離す。俺はこれからスキャフィーノにこの場所を知らせてやる。
お前が俺に勝ってもファミリーともう一悶着だ」
サロニーはジェームスにリボルバー銃とサンダルを渡す。
「このサンダルはボアズに。気の毒に、ちょっと靴は履けそうにないんでな…
今夜は満月だ。いい夜になるな」
同じ頃、目を覚ましたカーターはアンジェラから事情を聞き、傷付いた体をおして警察へ協力要請に向かう。
シャーロット警部とサーリングは、何かと理由をつけて協力を渋るが、カーターの迫力に圧され、頃合いを見て追跡ヘリを出す事になる。
続く

628 名前:PALM 星の歴史―殺人衝動― 10[sage] 投稿日:2005/03/24(木) 03:27:50 ID:???
屋敷に入ったジェームスは、サロニーに両足の親指を潰され弱気になったボアズを慰め、
テーブルクロスを裂いて紐を作り、サンダルを足に固定する様に言う。
そうして屋敷を探索したしたジェームスは、一角獣の置物の尖った角を折り、鋏を入手し、弾丸を装填する。
他には何かないかと更に探索した彼は屋敷の一室に入り、愕然となる。
その部屋はジェームス部屋といった趣で、壁一面に彼の写真が貼られていた。
マイケル時代の新聞記事から最近の単独隠し撮り写真、カーター達と談笑するジェームス…
サロニーはジェームスが幼い頃からその成長を待ち、並々ならぬ関心を持って(一方的に)見守っていたのだった。
夜になり、ボアズを連れて屋敷を出たジェームスは、何か武器を積んでいる筈だと睨み、サロニーの車を目指す。
途中、ボアズはサロニーが仕掛けた狩り用の罠に足を挟まれ、スピードダウン。
3匹の犬が放たれ、彼等を追う。
犬に追い付かれたジェームスは置物の角と鋏で2匹を倒し、残る1匹を手近の石で殴り殺す。
サロニーの気配を感じたジェームスは闇の中、3発の銃弾を発射する。
と、どこからかナイフが飛んできて、ジェームスの腕に命中する。
「貴重な弾を無駄遣いするなよ、お前らしくもない」
勝ち誇った様に笑いながらサロニーは姿を現し、ジェームスが投げ返したナイフをはたき落とす。
隠し持っていた鞭でジェームスを打って転ばしたサロニーは、自在に鞭を操る。
「疲れたか?ブライアン。このまま眠ってしまえ…」
鞭はジェームスの首に巻き付き、彼の意識は朦朧となる。
頭の中で、走馬灯の様に今までの出来事が浮かぶ。
「あたしの子をどうする気だい!?」そう言って撃たれたマリア。
自分が初めて殺したカーロスとグエン。
そして、新しい名前をくれた、老ジェームス・ブライアン。
彼は幾度となく逃亡を計る自分を追う中で亡くなった。
FBIを辞め、単身、自分を探してくれたレイランダー。
一度はエリーの所から連れ出してくれたが、彼も追手に頭を飛ばされた。
自分に関わった人間はことごとく死んでいった。
だが…ワイエスの銃の前に身を投げ出しながら、カーターは死ななかった。
続く

629 名前:PALM 星の歴史―殺人衝動― 11[sage] 投稿日:2005/03/24(木) 04:15:47 ID:???
――カーター…済まなかった。嵐がこんな所まで追いかけてくるなんて…
いつか時が来て、全てが変わると信じていた。
この人々に会いたかった。だが、ここへ来るべきではなかった…
カーター、逃げろ…遠くへ。俺は、追わない――
そして、アンディ。
――青い瞳と金の肌の精霊。まさかお前が本当にこの世にいるなんて…
お前を知っていた…ずっと昔から…
彫刻が上手いんだ。最近じゃギターもやってるんだ。
精霊のくせに、俗っぽいな。一体、誰に習ってるんだ?――
ボアズの顔が浮かんだ。そうだ、ボアズを――
ジェームスは意識を取り戻し、同時にボアズがサロニーに殴りかかる。
鞭が弛み、ジェームスはボアズを抱きかかえて車へと走る。
その時ジェームスは銃を落とし、サロニーはそれを拾って彼等を追う。
高台に停められた車に辿り着いたジェームスは、ボアズに自動車電話で警察に連絡させ、現在位置を指示する。
眼下にはスキャフィーノ一味の車が数台やってきていた。
ジェームスはボアズの足についたままの罠から釘を抜き、トランクを開ける。
だが、そこには時間のかかる組立て式のライフルが。
「目の付け所は良かったが、残念だったな」
サロニーは銃を構え、引金を引く。だが、弾は出なかった。
ジェームスは3発だけ装填し、残りを自分で持っていたのだ。
ポケットから銃弾を出し、遠くへ投げるジェームス。
サロニーがそれを取りに行く間にジェームスは急いでライフルを組み立てる。
サロニーが弾を拾い、構えるより一瞬早く、ジェームスは彼の腹を撃つ。
銃を取り落としたサロニーは、ジェームスを見つめ「殺せ!」と叫ぶ。
ジェームスは躊躇無くライフルを構え、正確にサロニーの眉間を撃ち抜いた。
ジェームスは冷静にサロニーの死体の懐を探り、車のキーを奪う。
一連の出来事を見ていたボアズは、何となくジェームスが正気を失っている様に感じ、恐ろしくなる。
まるで、サロニーに取り憑かれている様だった。
やがて騒ぎを聞き付け、スキャフィーノ達がやってくる。
彼等にライフルを向けるジェームスを必死に止めるボアズ。
「サロニー、ジェームスを離せ!誰か、助けてくれ!」
続く

630 名前:PALM 星の歴史―殺人衝動― 12[sage] 投稿日:2005/03/24(木) 05:16:05 ID:???
その時、空に閃光が走り、数機のヘリが現れる。
それらにさえライフルを向けようとするジェームス。
「違う、味方だ!ジェームス、助かるんだ!」肩の力が抜け、ジェームスは正気に戻る。
ヘリからはアンディに付き添われたカーターが降り立ち、ジェームスの名を呼び、しっかりと抱きしめる――
その夜。
病院に保護されたボアズの足指は切断を免れ、アビーは彼の無事を喜ぶ。
満身創痍のジェームスは入院を嫌がり、その日の内に退院する事に。
中毒症状が残るカーターは暫く車椅子で生活する事になりそうだった。
見舞いに来たカーターにボアズは「ジェームスの過去を知りたい」と言うが、カーターはあっさりと「私も知らない」と答える。
「彼の身に実際何があとたのか、何一つ知らない。
だが、今の彼を知っている。彼と出会えたのは幸運だった」
「どんなふうに?」
「上手く言えんが、長年の病が治った様な、失くしたものが戻ってきた様な、そんな感じだ」
ボアズは納得し、サロニーと戦っていた時のジェームスの様子など、とるに足らない事だと思う。
退院の車に乗り込んだジェームスの元にはサーリングが訪れる。
彼は小さなビニール袋に入れたサロニーの灰を付添いのアンジェラに渡して去る。
証拠隠滅と言わんばかりの、早過ぎる焼却処理である。
見送りに来たボアズは「呆気無いもんだな」と呟く。
ジェームスは灰を受け取り、ボアズに聞く。
「サロニーから何を聞いた?」
監禁されていた時、ボアズは、ジェームスの公表されていない過去(誘拐事件で犯人二人を殺した事)を聞いていた。
答えを聞かずにジェームスは「それは本当だ」と告げ、自分はサロニーと大して違わないと言う。
「あんたはサロニーとは違うよ…」
「いや、そうじゃない。ただ、周りに居る人が違ったんだ。
サロニーの運命は、あの男一人のものだった。
だから愛し合う事も憎み合う事も出来ず、通る人々を食い尽したんだ。
牙と消化器しか持たぬ野獣の様に…」
言いながらジェームスは、夜空に灰を蒔く。
それを見ていたアンディは「サロニーを憎んではいないんだな?」と聞く。
「憎い人間など誰も居ない。一緒に居られない人間が居るだけだ」
続く

631 名前:PALM 星の歴史―殺人衝動― 13[sage] 投稿日:2005/03/24(木) 05:44:41 ID:???
ジェームス達を見送ったボアズは、アビーにニューヨークへ行くと告げる。
コンテストに自作の曲で参加していたボアズは、リハーサルを見たプロデューサーに誘われていたが、迷っていたのだった。
「寂しいけど、離れてたって、ダチはダチだからよ」
ボアズ旅立ちの日。
長距離バスでニューヨークへ向かうボアズをジェームス達は見送る。
ジェームスは餞別だとボアズにハモニカを手渡す。
幼い頃、ウィンドウの向こうに見ていた記憶が甦る。
「俺、あんたにハモニカの事話したか?」
「…え?」
刑務所時代にも、ボアズはハモニカの話をした事は無かった。
――失くしたものが戻ってくる――
「ジェームス、愛してるぜ!あんたとはもう、よもやま話は無しだ!」
そう言ってバスに乗り込もうとするボアズに訳が分からず、ジェームスは困惑する。
「待て、ボアズ。ハモニカの話ってのは何なんだ?」
「大したこっちゃねぇよ。今はバスが出ちまうから、続きは今度会った時に話すよ!
またな!」
そう、続きは“今度”でいいのだ。また会えると、信じているから。
終わり『オールスター・プロジェクト』へ

69 名前:PALM ALLSTAR PROJECT[sage] 投稿日:皇紀2665/04/01(金) 04:31:08 ID:???
タイトル長いので、以後 ASP と略します。
【新着キャラ】
●フロイド・アダムス シャーロット退任後の新任警部。
もの凄いお坊っちゃまだが口が悪く、自称「JB(ジェームス)のライバル。」
以降レギュラー化。
●フリス・モルダー ジェームスの務所仲間で美人のゲイ。
オカマではないので喋り方は普通。以降レギュラー化。
●エドワード・ヒューズ(通称:長老) 引退した金庫破りでジェームスの務所仲間。
●テレンス・O・ハレウット 二つ名を持つ結婚詐欺師でジェームスの(ry
又の名をエットーレ・マルティネリ。通称:伯爵。
●ダニエル・レビン スラムの元締めでアビーのボス。
●ウェード レビンの用心棒。
●ラングダン レビンに雇われている殺し屋。
【あらすじ】
カフェの開店資金を騙し取られたアビーの為、ジェームス達はレビンに吊り店(大掛りな詐欺)を仕掛ける事に。
同じ頃、サロニーとCIAの関係を知るジェームスを社会的に抹殺しようと、サーリングが動き出す。
彼はマティック(マイケル誘拐犯)を捕え、シャーロットとFBIのフロストを巻き込み、ジェームスの過去を暴こうとする。
一方、映画を使った吊り店は新任警部=フロイドの協力を得て、佳境へ。
そんな中、独自に調査を始めたフロストは、ある事実を掴み…!?
劇中劇にオールスター総出演の、大騒ぎな一編。

88 名前:PALM ASP 1[sage] 投稿日:2005/04/02(土) 05:00:54 ID:???
サロニー事件の傷も癒えたある日、出所した刑務所仲間達が挨拶にやってくる。
ティットも加わり、近く出所する長老のお祝いパーティをオーガス邸で開く事に。
ボアズの代わりにアビーがパーティに参加し、その席で彼女は娼婦を辞めると宣言。
だが、帰宅したアビーを、ここらの娼婦の元締めであるレビンの用心棒ウェードと、
今はレビンの下で働いているシンが待ち構えていた。
アビーはカフェの開店資金5万ドルで「辺鄙な砂漠の土地を買う」
という書類に無理矢理サインをさせられ、ウェードに手指を折られてしまう。
まだ人々が残るオーガス邸に戻ったアビーは「もう娼婦をやるのは嫌だ」と泣く。
ジェームスはレビンに話をつけに行こうとするが、長老がそれを止める。
「確かにあんたが行けばレビンは金を返すじゃろう。
じゃが、あんたが動けば話は何倍にも膨れるんじゃ。
そして、それを聞いたサロニーみたいな奴がやってくる。世の中バカが多い。
じゃが、そういう奴らをいつまでも相手にせにゃならん様なら、あんたもバカだぞ」
それもそうだと善後策を話し合っているところへ、刑務所で嫌われ者だった(ので招かれていない)詐欺師=伯爵が訪ねてくる。
彼は出所を機に詐欺師を辞めようと思っており、最後に大仕事をしたいという。
アビーの話を聞いた伯爵は、レビンに吊り店を仕掛けようと言い、ジェームス達もその話に乗る。
過去にレビンに酷い目に合わされた娼婦達の慰謝料も含め、目標金額は200万ドル。
うまくいけば、レビンはほぼ無一文で街を去る事になる。
ジェームスが筋立てを考え、手口は映画の投資詐欺に決まった。
「撮影の途中で中止を喰らい、レビンは金を取り戻せなくなる。
中止の危険がある事は初めから解っていた方がいい。
いちかばちかの賭けで、それでも大金を投資する価値があると思わせるような映画だ」
原作選びはなかなか難しい事である。
誰もが知っている有名作はNG、マイナーな問題作でありながら、熱烈な支持がある作品でなければならない。
アビーも交えての会議中、偶然シンがやってくる。
「よ!皆さんお揃いで!」
脳天気にハトコを訪ねてきた彼は、アビーの顔を見るなり逃げ出すが、務所あがりのお兄さん達に捕まってしまうのであった。

144 名前:PALM ASP 2[sage] 投稿日:2005/04/06(水) 01:16:26 ID:???
>88からの続き
「ついにヤクザの手伝いまでする様になったのか」と呆れ顔のカーターに
「レビン側の人間が欲しかったから丁度いい」とジェームスはシンを計画に引き込む。
翌日、読書家のフリスが半年前に出版された小説『青また青』を原作に推す。
不倫あり、同性愛あり、汚職ありで進歩的な学生に人気がある。
しかし様々な機関からクレームを受け、原作者は雲隠れし、映画化権も設定されていない、まさにうってつけの作品である。
原作が決まり、撮影は看板を取り払ったオーガス邸で行う。
カーターは原作に惚れ込み、強硬に映画化を推進する日系商社マン=サトー、
監督と脚本家が伯爵=エットーレ、シンはサトーの親戚として、レビンにそれとなく映画の話を持ち込む役である。
ビアトリスが主役の不倫人妻役=フレイア、その友人のオカマにグレッグ、
自分を王子様と思い込んでいる精神分裂青年=アンディ、その他スタッフは務所仲間。
過激な反対派から攻撃を受ける設定の為、サトーの用心棒役にティット。
吊り店の大まかな流れは、シンがレビンとサトーを会わせ、出資契約を交わす。
途中、反対派の妨害と称して機材が壊されたり、俳優が負傷したりで撮影は中断。
最後にはサトーとエットーレが反対派の殺し屋に始末され、居合わせたレビンは逃げ出す…というものだ。
殺し屋役は満場一致でジェームスに決まり、早速計画がスタートする。
シンの話を受け、ジェームスの仕組んだ原作支持の学生デモや、撮影風景を見た
レビンは賭けに乗り、架空予算300万ドルの内200万ドルの出資契約を結ぶ。
レビンは撮影見学でフレイア=ビアトリスに一目惚れし、いそいそと通ってくる。
一方で、ロス市警から転属したシャーロットとCIAのサーリングが動き出す。
彼等はFBIのフロストを誘い、ジェームスを陥れる計画を練る。
材料は誘拐犯一味二人への殺人容疑。
サーリングは秘密裏に、逃亡中だったスタン・マティックを捕え、尋問を開始。
当然、仲間を殺された恨み言を予想していたサーリング達だったが、
マティックは尋問の途中で泣き出し、ジェームスに許しを乞う。
続く

145 名前:PALM ASP 3[sage] 投稿日:2005/04/06(水) 02:25:35 ID:???
「あいつは、自分の母親と弟(マリアとイライ)だと言ったんだ。
だからあいつは、あんなに怒って…カーロスとグエンを…
あいつはネガットに嫌われてた。(復讐には)関係無かったんだ。
すまねぇ、マイケル…許してくれ…」
誘拐時、マイケルに殺すと告げていたというマティックの発言に、正当防衛を主張するフロスト。
サーリングは「証言者の矯正は我々でやる」と言い、自分の部下を残して二人を閉め出してしまう。
マティック収容が公的な施設でない事を疑問に思ったフロストは
サーリングのやり方に不信感を抱き、独自に調査を開始する。
オーガス邸。
吊り店は順調に進む。すっかりビアトリスにのぼせたレビンは詐欺を疑う事もなく、毎日上機嫌だ。
そんな中、新任の警部=フロイド・アダムスが挨拶にやってくる。
自殺したワイエス(『あるはずのない海』参照)そっくりの彼を見たジェームスは衝撃を受ける。
丁度アンディと打合せ中だった彼の驚愕は増幅され、衝撃波でも発生したのか、撮影用のライトが割れ落ちる。
降り注ぐガラスでジェームスは負傷。出直してくると踵を返したフロイドをカーターが追いかける。
「待ってくれ、君は…」「俺はワイエスとは全くの他人だ。また来るぜ」
戻ったカーターに「ワイエスのお兄さんか?」と聞くジェームス。
いつもの冷静で皮肉っぽい顔は消え、怪我もあって、冷や汗が浮かんでいる。
彼の治療と鎮静の為、麻酔を使うカーター。
またしても過去の出来事がジェームスを苦しめるのか、とカーターも落ち込む。
そんな心配をよそに、翌日目覚めたジェームスはスッキリとしていた。
彼は「ワイエスと同じ容姿を持った人間と出会えて幸せだ」と言い、カーターを困惑させる。
「ワイエスとうまくやれなかった分、彼と仲良くしたいと思う」
ジェームスは再び訪ねて来たフロイドに協力を要請し、
フロイドも「レビンの様な街のダニが一掃されるなら」と承諾する。
「だが、いつもこうだと思ってもらっちゃ困る。
お前はムシが好かん。尻尾を出せばいつでも押さえてやる。
俺が手ぐすね引いて待ってる事を忘れるなよ」
一方、単独調査を続けていたフロストは、かつてのFBIの同僚
=レイランダーの友人である犯罪研究家=ホロウィッツを訪ねる。
続く

81 名前:PALM ASP 4[sage] 投稿日:2005/07/04(月) 14:17:12 ID:???
この作品は場面転換が頻繁で、文字にすると解りにくいかと思いますので、
ある程度、グループ(ジェームス一派、フロスト、サーリング)の動きをまとめて書きます。
漫画の読者の方には多少違和感を生じるかもしれませんが、ご了承下さい。
【本編】
ホロウィッツはマイケル誘拐事件に詳しいとの理由でサロニーに慕われ、彼から逃げる為に郊外に引っ越したが、却って好都合と隠れ家代わりに利用されてしまった老人だ。
サーリングは「サロニーがCIAに入ってから殺人鬼になった」と言ったが、ホロウィッツは「サロニーは元々殺人鬼だった」と言う。
サロニーは自身の家族を皆殺しにした後、ゲリラ組織等を転々とし、殺人術を磨いた。
サーリングはその時期にサロニーと出会い、利用価値があると見て、CIAで更に彼を鍛えたのだった。
アフガン紛争やベトナム戦争等、合法的な大量殺人が許される場所にサロニーを派遣していたサーリングにとって、この件の発覚こそが、最も恐れている事態であったのだ。
ホロウィッツは事実を知りながら、組織には対抗する術も無い、と口を噤んでいた。
親友のレイランダーがジェームスの為に命を落とした事による反感もあった。
「有り余る才能を持ちながら、シンクタンクにも会社にもすぐに飽きてしまう。
ギャングの子に生まれながら、ギャングを継ぐ度胸も無い。
そんな飽きっぽい、下らんガキのために、レイランダーもサロニーも死ぬ謂われは無かろう」
だが、それを聞いたフロストは激昂する。
「俺だってあいつを野放しにしとくのはどうかと思ってるさ!
だがな、唯一、あいつが兵器産業に手を出さないところは気に入ってるんだ。
その気になりゃ、あいつは会社で手を汚さずに、いくらでもミサイルを量産できたんだ!
だが、奴はそうしなかった。あんたに嫌われる理由は無い」
続く