無限の住人/沙村広明
504 名前:無限の住人[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 00:42:11 ID:???
時は江戸、街から離れた一軒の茶屋に、
場所に似合わぬ傷だらけの男がいた。彼の名は万次(卍)
卍は銃で脳天を撃ち抜かれながらも、平然と賞金首を殺す。

卍の肉体は不死である。その体に巣食う『血仙蟲』が
どんな致命傷もたちどころに塞いでしまうのだ。
不死の身体で細々と賞金稼ぎを続ける日々。
「死なねぇと解ってから、剣筋も鈍る一方だ。」
かつての百人斬りである卍は、傍らの老婆に愚痴を漏らす。
卍の妹は馬糞を片手に、幼子のように無邪気に笑っていた。

万次が百人斬りを成したのは、その身体がまだ常人のものだった頃だ。
同心だった万次は悪党の上司を殺し、追っ手も斬り続けて遂には九十九人。
そして百人目に立ち塞がった男は、卍の妹の旦那であった。
目の前での惨劇に、妹の心は壊れ、卍は片目を失う。
八尾比丘尼と名乗る老婆と出合った頃には、卍の心身はズタボロだった。

だがその妹も、賞金首の報復により殺されてしまう。
相手を皆殺しにした万次は、比丘尼の前で誓いを立てる。
百人斬りの償いに、これからは千人の悪党を斬る、と。
心に決めた大儀を成し遂げた時、血仙蟲は消えるだろう、
と比丘尼は笑って頷く。


505 名前:無限の住人[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 00:44:43 ID:???
街外れの寂れた墓地に佇む少女、浅野凛。
幼い顔に似合わぬ険しい瞳で、凛は父親に仇討ちを誓う。

江戸を騒がす荒くれ者の集団:逸刀流。
逸刀流統首:天津影久の祖父と、凛の祖父:無天一流の道場主は、
かつては次期頭首を巡って鎬を削る同士だった。
だが天津の祖父は、野党の撃退に流派に無い二刀の技を使っただけで
一方的に破門の憂き目に会い、凛の祖父が道場を継ぐこととなった。
復讐に燃える天津の祖父は、邪道を正道とする流派、
逸刀流を立ち上げたのである。

彼を継いで逸刀流の統首となった影久は、
「精神修養を重視し、本質を忘れた剣術など愚の骨頂。
 大平の世であればこそ、その牙を磨くべき。」
という思想の元、力によって次々と道場を併合
そして凛が暮らしていた浅野道場の道場生たちは皆殺しの目に遭い、
父も殺され、母は乱暴者たちに辱しめられて連れ去られた。

「あいつら、皆殺しにしてやるわ。」
殺意漲る凛の誓いを、居合わせた老婆は大笑いして、彼女へと助言する。
「女、用心棒を雇え。それも最強の男をな。」

かくして巡りあった凛と万次。
誓いを立てたものの斬るべき悪党を見出せずにいた卍は、凛の依頼を断る。
凛はそれでも必死に懇願し、礼金は自分の身体で払うとまで言い出すが、
卍は小便臭いガキは二束三文にしかならんと拒否。
仕舞いには泣き出した凛に妹の面影を見たのか。
卍は仕方なく、彼女の仇討ちに付き合うのであった。

506 名前:無限の住人[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 00:47:51 ID:???
4巻までは逸刀流剣士一人一人との戦いが続きます。
本格的に話が動き出すのは5巻「加賀編」から、
現在は「不死解明編」を経て、「最終章」の真っ只中です。
ひとまず4巻までの登場人物兼ストーリー紹介。

万次(卍):
主人公?チベットの秘術・血仙蟲を身体に飼う不死の侍。
山育ちで自給自足のホームレス。シスコン。
変な武器の収集が趣味で、服の中は武器で一杯。特技は不意打ち。

浅野 凛:
今は亡き浅野道場の一人娘。
逸刀流への仇討ちのため卍を用心棒にする。
かなり弱いので色々と工夫しているが、
それが逸刀流と同じ思想だと天津に馬鹿にされる。

【逸刀流】
天津影久の父、天津三郎によって設立された
邪流を持つて刀を逸する、を目的とするならず者集団。
いずれも奇妙な武器を遣う達人ばかりでマトモな剣士は少ない。

天津 影久:1巻〜登場 生存
ならず者集団である逸刀流を束ねる頭領。
ツリ目の優男だがそれ相応の実力者。
高重量の斧型武器を意のままに操る。生真面目。

黒井 鯖人:1巻登場 死亡
逸刀流の古株。浅野道場襲撃の一人。
その正体は女の首を服に縫い付ける変人で、凛にとって両親の直接の仇。
かなりの実力者だったが、卍の不意打ちにより死亡。

507 名前:無限の住人[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 00:49:37 ID:???
凶 泰斗:1巻〜登場 生存
浅野道場襲撃の一人、傍観だけしてたクールな男。
その正体は百姓出身のシスコン、妹を殺した侍を嫌悪している。
3段の仕込み刀を遣い、卍と戦って生還した数少ない一人。

閑馬 永空:2巻登場 死亡
浅野道場襲撃の一人。その正体は卍と同じ血仙蟲の飼い主。
卍と誘って逸刀流転覆を狙うが決裂。
卍にバラされて己の毒薬『血仙殺』により死亡。

乙橘 槇絵:3巻登場 生存
女性ながらに天津も畏れる逸刀流最強の剣士。
類稀な才能と古風な家柄の結果、遊女に身をやつしている
卍を叩きのめした後、己の復讐のため姿を消す。

川上 新谷:4巻登場 死亡
浅野道場襲撃の一人で、凛の母をコマした張本人。
足を洗って息子と平和に商売してたが、卍と普通に戦って死亡。

【その他】
宗理先生:1巻登場 生存
凛の知人の絵描きの先生。その正体は公儀隠密の変人。
友人の仇討よりも趣味を優先し、凛への協力は資金援助に留める。

川上 錬蔵:4巻登場 生存
川上新谷の息子。父の正体を知らず、新谷が死んだ際は
卍が死んだフリして仇討ちさせる。最近になって再登場。

508 名前:無限の住人[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 00:51:46 ID:???
【加賀編】
逸刀流は勢力を日々拡大し、遂には幕府の使者が訪れ、
剣術指南として声が掛かるようになった。
上機嫌の天津に対し、武士側に就くのが気に喰わない凶は、
逸刀流を狩る新たな襲撃者(≠卍)の存在を天津に伝え、道場を辞める。

一方、復讐を続ける卍と凛。だが多忙な天津の行方は要として知れない。
そんな折、二人の前に『無骸流』を名乗る剣士:尺良が現れる。
逸刀流と敵対している無骸流は、逸刀流の本拠に仲間を紛れこませており、
統首単独による加賀遠征の情報を掴んでいるのだという。
かくして卍と凛は無骸流に協力することに。

【無骸流について】
無骸流:僅か6人で構成された剣士の集団。
逸刀流の例に漏れずマトモな剣士は少ない。
逸刀流剣士を倒すごとに、背後の組織から報酬が支払れている。

尺良:
卍たちと接触した無害流の剣士。
その正体は、拷問,特に女を嬲り殺すのが大好きなキ○ガイ。

百淋:
無害流の紅一点。金髪、高下駄の姉御肌。
子分の真理路と一緒に騙し討ち専門。

偽一:
無骸流の筆頭剣士。冷静寡黙な禿頭。


509 名前:無限の住人[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 00:53:42 ID:???
三組に別れ、街道を見張る無骸流一同。
卍、凛、尺良の一行は、街道での不自然な騒動と、
それに紛れて離れる、顔を覆った女性を目撃する。
単独行動中での騒動に首を突っ込む卍と、女の後を追う凛と尺良。
ところが党首の変装と思っていた女は、ただの替え玉であり、
二人は逸刀流の待ち伏せを受ける。絶体絶命の状況にも関わらず、
嬉々として殺戮を楽しむ尺良は、遂には女も陵辱し始める。
その姿を見た凛は反発。尺良は平然と凛をも殺そうとするが、
間一髪で卍の妨害を受け、片腕を失いつつも逃走する。
卍への復讐を喚き散らす尺良。

結局、無骸流の3組とも全てハズレ。
スパイの存在は半ばバレており、2重の手を打たれたのだ。
目的地、加賀の心形唐流道場の場所は掴むことはできたが、
天津を追うにも、下手人の卍が穏便に関所を越える事は困難、
そして無骸流のメンバーも関所越えはご法度らしい。
思いつめた凛は、あろう事か卍に黙って一人で加賀へと向かってしまう。

凛の失踪に気が気ではない卍。百淋の提案により、
偽の手紙で逸刀流を加賀に向かわせ、通行手形を奪う作戦に出る。
ところがやって来た逸刀流は3人組みだった。
不死の卍もさすがに3人相手ではスタミナが持たず、
全員サツガイするが、立つ事もままならないほどボロボロにされてしまう。
更に手形は返り血に染まり…
そんな踏んだり蹴ったりの卍と百淋の前を通りがかったのは、
懐かしの宗理先生であった。

510 名前:無限の住人[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 00:56:50 ID:???
一方、意気揚々と旅を楽しむ凛だったが、周囲からの妙な視線に気付く。
尺良の戦いが目撃され、凛も通り魔としてお尋ね者にされてしまったのだ。
ところが凛は意地を張って卍の元には戻らず、加賀への旅を続ける。
とある裏技を使い、凛は見事に役人を欺いて関所を突破するが、
続く道中で騙されて文無しになってしまう。

不死人といえど、斬られたまま時間が経てば付きも悪くなる。
宗理先生の屋敷で療養することになった寝たきり卍。
なんと著名人である宗理の人徳により、手形はいとも簡単に手に入る。
卍は拍子抜けしつつも、度々見舞いに訪れる百淋と宗理が
顔見知りだと知り、公儀隠密である宗理を問い詰める。
無骸流の背後にいる組織とは、幕府ではないのか、と。
宗理は顔をしかめつつも、百淋は知人だった武家の妻であり、
亭主殺しで死罪に伏せられた人間だと話す。
無骸流とは、幕府が逸刀流に対抗するために死罪人を集めた組織だった。

療養中、卍はこれまた懐かしの凶と再会する。
凶は逸刀流を辞めた後、馴染みの妹に似た芸奴が殺されたことを知り、
仇討ちに奔走中、勘を頼りに宗理に付き纏っているらしい。
完治した卍は、尺良避けのために凶を同行させることに。

大手を振って加賀へと向うシスコン二人は、
卍を待ち構えていた尺良の襲撃を受ける。
斬られた片腕の骨を削り上げ、武器にまで磨き揚げていたキチ○イの尺良。
凶は復讐相手である尺良との激戦の末、谷底へと突き落とすのであった。
復讐を遂げた怪我人を置きざりにして先を急ぐ卍。

511 名前:無限の住人[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 01:02:53 ID:???
一方、加賀の心形唐流道場を訪れた天津は、
併合に反発する道場生からの手荒い歓迎を受ける。
彼らの心を知ってか知らずか、道場主・伊羽研水は道場併合を快く受け入れ
その条件として、天津に彼の養女・密女との祝言を提案するのであった。
強い男に嫁がせてくれ、という実父:先代師範からの願いらしい。
天津は逸刀流拡大のため、槇絵を多少気にしつつも了承する。
密女も天津を受け入れ、祝言は無事に終わるかと思われた。
ところが式の最中、突然の来訪者を対応した研水の顔は蒼白となり…

密女との祝言、初夜を終え、江戸へと帰還する天津は、
その出先でボロボロの女を助ける。女は凛だった。
凛は江戸-加賀でも最大の難所、白山を根性で乗り越えていたのである。
だが天津にケンカを売るだけの力は残っていなかった。
呆気にとられる天津。そのとき、二人を覆面姿の剣士たちが取り囲む。
問答無用の剣士数名を、露払いに皆殺す天津。
刺客は天津にとって見覚えのある、心形唐流の道場生だった。
道場に引き返す天津を、訳も分からず追いかける凛。

道場では、天津の進入と同時に研水が切腹していた。
天津に刺客を差向けたのは公儀の命令であり、
希少な薬によって生き長らえている密女の為だった懺悔する研水。
研水の選択を剣士として恥だと叱責しつつも、天津は彼を介錯する。
一部始終を見ていた密女は、天津を責めることも悔やむこともせず、
彼の妻として毅然と天津を送り出し、研水と道を共にするのであった。

ようやく公儀が逸刀流の敵だと知り、先を急ぐ天津。
剣術指南役への抜擢を前に、江戸の道場で公儀の人間との酒宴が行われた筈である。
そして天津の仲間と見做された凛も、半死半生で越えた道を休む間もなく戻ることになる。

512 名前:無限の住人[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 01:08:40 ID:???
道中、天津は第二の目的、乙橘槇絵の住処を訪れる。
父への復讐の為、逸刀流への誘いを断った槇絵だったが、
結局変わりはてた彼を殺せず、右手を糸で縫いつけて封じていた。
天津は槇絵を叱咤して右手の封を解き、立ち去る。

逃避行を続ける二人だったが、突如天津が倒れてしまう。
本作最強武器うんこソードによる掠り傷が元で、
破傷風を罹っており、かなり無理を続けていたのだ。
絶大なチャンスにも関わらず、病気の彼よりも弱い凛。
いつになく弱弱しい姿の天津は、道場襲撃について詫びるが、却って凛は大激怒する。
色々あって親睦を深めた二人は強力して追っ手を退けていくものの、
多勢に無勢でとうとう追い詰められてしまう。
この窮地にようやく卍が追いついた。
卍は天津が居る事も知らずに、凛を見て一派との敵対を宣言。
さらに凶、槇絵の参戦によって混戦となる。

【斗いの状況 兼 人物の力関係】
卍…山育ちなんで二人相手に楽勝。
凶…病み上がりだから一人相手に辛勝。
槇絵…怪我人でブランク持ちなのに十数人相手を瞬殺、
   オマケに返り血すら浴びず。
天津…槇絵がボロボロにした筆頭相手にギリギリ勝利。破傷風だし。

かくして心形唐流は全滅。
槇絵と凶に抱えられて帰還する天津に、凛は卍に抱えられながら、
「幕府が敵になってご愁傷様!私はずっと見てるからな!(意訳)」
と嫌味ったらしく宣言するのであった。
【加賀編 完】

513 名前:無限の住人[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 01:14:37 ID:???
>>121
続きの「不死解明編」はまた今度。
まだ大雑把かな。リクがあれば各話の詳細書くぞ。

523 名前:無限の住人[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 22:10:57 ID:???
無限の住人。不死解明編の前に書き忘れ。

卍が加賀に発った後、無骸流のアジトが襲撃を受けて百淋が攫われてしまう。
作者の本領発揮。厳しい拷問や陵辱を受ける百淋。
偽一によって助けられるも、負傷した百淋は戦えない身体になってしまう。

524 名前:無限の住人[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 22:14:20 ID:???
【不死解明編】
江戸の道場に戻る天津。
道場内は酒宴の跡と無数の死体が放つ腐臭に満ちていた。
毒を盛られたとはいえ、集ったのは各地の道場を任された者ばかり。
その強豪を相手に是程の惨状を引き起こしたのは、たった二人の人間だという。
天津は道場を焼き払い、残った逸刀流の数名に一斉決起までの潜伏を命じる。

逸刀流の一人:偽一。道場強襲の一人であり、既に自分の罪以上の
戦績を挙げていた彼だったが、逸刀流の取締役:吐鉤群から
偽一が戦う理由が無くなったことを告げられる。
代わりに百淋を抜けさせてくれと頼む偽一に、吐はとある条件を出す。

偽一と対峙する卍。偽一は卍に、正式に無骸流に入れと命令する。
今のような非常時の為に、公儀は卍を見逃してきたのだと。
卍は当然のように反発。二人の戦いは偽一の武器が壊れたところで中断される。
最近は子守りも済んでヒマになったと、易々と無骸流入りを受け容れる卍。
だが、二人を追ってきた凛が逸刀流に誘拐されていた。
逸刀流の挑戦状を受け、卍は偽一と二人で指定場所に向かう。
凛を攫った逸刀流の剣士3人。その中には凶もいた。
卍への報復が済まないと潜伏など出来ない、が二人の主張だと凶は言う。
卍は偽一と分担して剣士を撃破。さらに偽一と幕府嫌いの凶が戦うが、
決着が付かないままで中断される。

翌日、卍は凛を待たせて吐の元へ参ずる。
だが吐は卍の不死を確認しただけで、卍にさせる仕事は無いと言い放つ。
そして外には得物を手にした無数の侍が待ち受けており…
「さて客人、これからが本当の持成しだ。」

525 名前:無限の住人[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 22:19:32 ID:???
誤字多いなぁ、↑は間違い。

【不死解明編】
江戸の道場に戻る天津。
道場内は酒宴の跡と無数の死体が放つ腐臭に満ちていた。
毒を盛られたとはいえ、集ったのは各地の道場を任された者ばかり。
その強豪を相手に是程の惨状を引き起こしたのは、たった二人の人間だという。
天津は道場を焼き払い、残った逸刀流の数名に一斉決起までの潜伏を命じる。

無骸流の一人:偽一。道場強襲の一人であり、既に自分の罪以上の
戦績を挙げていた彼だったが、逸刀流の取締役:吐鉤群から
偽一が戦う理由が無くなったことを告げられる。
代わりに百淋を抜けさせてくれと頼む偽一に、吐はとある条件を出す。

偽一と対峙する卍。偽一は卍に、正式に無骸流に入れと命令する。
今のような非常時の為に、公儀は卍を見逃してきたのだと。
卍は当然のように反発。二人の戦いは偽一の武器が壊れたところで中断される。
最近は子守りも済んでヒマになったと、易々と無骸流入りを受け容れる卍。
だが、二人を追ってきた凛が逸刀流に誘拐されていた。
逸刀流の挑戦状を受け、卍は偽一と二人で指定場所に向かう。
凛を攫った逸刀流の剣士3人。その中には凶もいた。
卍への報復が済まないと潜伏など出来ない、が二人の主張だと凶は言う。
卍は偽一と分担して剣士を撃破。さらに偽一と幕府嫌いの凶が戦うが、
決着が付かないままで中断される。

翌日、凛を待たせて吐の元へ参ずる卍。
吐は卍の不死を確認すると、卍にさせる仕事は無いと言い放つ。
そして外には得物を手にした無数の侍が待ち受けており…
「さて客人、これからが本当の持成しだ。」


526 名前:無限の住人[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 22:21:25 ID:???
卍は獄中に繋がれていた。
吐の目的は不死の肉体の研究と、その移植だったのである。
だが、麻酔中でも斬った傍から再生する卍の身体は医者の手に余り、
解剖中に手を取り込まれかかる始末。蘭学医師・綾目歩蘭人は
死罪人を使い、卍との手足の継げ代えによる人体実験を始める。
実験は一応の成果を見せ、最初の被験者は極度に衰弱しつつも、
その身体に優れた再生能力を得ていた。
しかし吐は「不死と再生能力は異なる。」と、心臓を一突きして殺してしまう。
歩蘭人はショックを受けつつも実験を続けるが、次からは失敗続き。
手足を繋げ変えてから数日で、拒絶反応を起こして死んでしまうのだ。
「御主ら医師は、カワウソなどの獣の身体を斬って医学を学ぶのだろう。
 先の無い死罪人、それと同じに思えばよい。」
「人間は…カワウソでは御座いません…」
遂に実験に耐えられなくなった歩蘭人は、吐に投獄されてしまう。

帰ってこない卍を訝しがりつつも、実家である無人の道場に戻る凛。
そこで潜伏先を探していた逸刀流剣士、吉乃瞳阿と八苑狼夷作と遭遇する。
互いの素性を知らない3人だったが、強引に一緒に住むことになった。
翌日から卍の捜索を始める凛。だが瞳阿はやたら問題を起こし、
遂には同心たちと喧嘩を始めてしまう。喧嘩はやがて斬り合いになり…
次から次へと現れる同心たちに、夷作は身を犠牲にして二人を逃がすのであった。
夷作とはぐれた途端、急に弱気になる瞳阿。
尋常でない様子に困惑する凛に、童阿は泣きながら話す。
夷作が捕まって無事で済むわけが無い。何故なら彼は切支丹なのだから。

歩蘭人の後を継いだ医者は皆ヤブばかりで、斬る方もやってられない、と
切断役の首切り浅こと山田浅右衛門や、実験の助手は愚散る。
そして歩蘭人は帰ってきた。だが投獄生活ですっかり性格が変貌しており
カワウソの頭巾を被せた大量の死罪人に、一度での四肢移植手術を始め、
死体の山を築いていくのであった。

527 名前:無限の住人[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 22:25:37 ID:???
城下町には帰ってこない罪人が増えた。卍を捜す凛と瞳阿に
無骸流を辞めさせられた百淋も加わり、同じく無骸流を辞めた偽一を探す。
偽一は浮浪者と共に酒盛りしていた。病弱だった息子が死んだことで
すっかり腑抜けていたのだ。そんな偽一に百淋は突っかかる。
百「テメーなんで私を無骸から抜けさせた!折れた腕もいつか治る!(意訳)」
偽「お前はもう戦うな。もう自分だけの身体ではないのだ。(意訳)」
偽一は百淋の負傷だけでなく、彼女の妊娠も見抜いていたのである。
こんなガキ産むかよ、とやさぐれる百淋を、
子供に罪は無いから自分が育てる、と偽一は宥める。
なんだかんだでラブラブになった二人。
凛は偽一から、卍が江戸城の地下牢にいることを知る。

準備を整えた凛と瞳阿は、秘密の入口から城へと忍び込む。
不死実験による大量の死体や、作者大好きな拷問やら、
逸刀流のロイハー剣士怖畔なんかを乗り越え
二人は死罪人の牢獄へと辿り着くが、そこには実験の果てに
胴から真っ二つになった夷作が残されていた。
夷作の胸で泣き崩れる瞳阿を残し、凛は先へと進む。
途中、見回りから逃げるために洞窟を爆破したり。

不死実験が嫌になった助手たちの手引きにより、
ようやく卍の場所まで辿り着いた凛。
だが凛の洞窟爆破によって地下牢が浸水を始め、
騒ぎを聞きつけた吐や浅右衛門が二人の前に立ち塞がり、
更に瞳阿と、生き返った夷作までもが駆けつけて大混戦となる。
(瞳阿曰く、何時までも温かったんで下半身を繋げたら生き返った)

吐:卍が隠していた必殺麻酔針が眼に刺さって早々にお寝んね
浅右衛門:卍、瞳阿の協力攻撃によって倒される
弁鬼:浅右衛門の弟子。夷作と戦うが師匠が倒されて逃げる。
鵺一号:不死実験で生まれた人間兵器。不死な上に弱点の首をガード。
    4人が協力してなんとかバラバラにする。

528 名前:無限の住人[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 22:31:07 ID:???
強敵を倒したものの浸水が限界に達し、卍の腕が飛ばされてしまう。
腕を捜す中、凛は懐かしの錬蔵と、彼を従える尺良と遭遇する。
彼らも地下牢に捕らわれており、騒ぎに乗じて逃げ出したのだ。
卍の腕は彼らに奪われ、凛は仕方なく卍を抱えて逃げる。
「春までに殺すッ!春までに殺すッ!それまで愛し合ってろお前らァア!!」
崩れ行く地下牢に、尺良の下卑た笑いが響き渡る。

江戸城門では、実験助手の活躍で罪人たちは開放され、
百淋と偽一が先導していた肉親たちと、感動の再会を果たしていた。
そんな光景を遠くから眺めていた天津ら逸刀流。
「見ろ、あの人の波、あの煙を。あの全てが女二人が起こした事だそうだ。
 かつてここまで胸の好く眺めを見た事があるか?」大笑いする天津。

混乱は数日で収まった。一連の騒動で地獄を見ながらも生き延びた歩蘭人は、
不死実験の報告書を締めくくる。
 結果として、自分は一度として、彼らにまともな不死を与えられなかった。
 それは彼らが不死を必要としなかったからではないだろうか。
 卍は不死を必要としたが故に、何者かに不死を与えられたのだ。
 熱病のように実験を続ける中で、いつしか頭の隅に芽生えた疑問
 果たして、自分はこんな身体になりたいか?
 −否、断じて否。 これをもっと早く認めていたら…
報告書を燃やす歩蘭人。
「我々が与えられるのは『不死』にあらず『天命』
 それでいい…それで十分。それが医者だ。」

それから1ヶ月後、死んだ囚人たちの家々を行脚する
若き雲水の姿があった。

【不死解明編 完】

529 名前:無限の住人[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 22:42:56 ID:???
この後は最終章に続きます。

無骸流は解体され、より実践的な者による「六鬼団」
(逆から読んではいけない)が再結成される。
吐に残された時間は切腹までの一ヶ月。
それまでに打倒逸刀流を目指す六鬼団であったが、
吐の後を継いだ新番頭により、逸刀流と無血による江戸払いが決まってしまった。
六鬼団が江戸を越えることは出来ない。どうする吐?
そして隻腕になった卍と一層ベタベタしている凛の運命は?

という感じ。