モンスター・コレクション 魔獣使いの少女/原作:安田均 漫画:伊藤勢
179 名前:モンスター・コレクション 1/4[sage] 投稿日:2005/04/09(土) 22:25:32 ID:???
登場人物
 カッシェ・アルバデル
  本編主人公。召喚術士としての稀有な才能を持つが、召喚対象との共感能力が高すぎるため
  召喚対象の苦痛や断末魔をも共有してしまうという弱点を持つ。

 コルボ
  暗兵(注:作者の造語。いわゆる『忍びの者』である)くずれの盗賊少年。戦闘能力は高い。
  本来、名前は持っておらず「コルボ」というのも「鴉」から適当に取った偽名。

 ナスターシャ
  通称「ナス」。召喚術士「蝕」に召喚獣として使役されていたラミア(蛇女)。
  カッシェに命を救われ、彼女の支配下に入ることになる。好物は人間の血液。

 シン・メーン・アルティエン
  カッシェの後を追って来た、リザードマンの剣客。通称「遊び人のシンさん」。二刀流を操る風変わりな男。

 デュラン・ド・ブランシー
  「千の水路を持つ都市」ウォーレスの領主。教皇庁への謀反をもくろむ。

 「蝕(エレクリプス)」
  ブランシー卿に与する仮面の召喚術士。堕天使「アンヘル」を使い魔として所有する。

180 名前:モンスター・コレクション 2/4[sage] 投稿日:2005/04/09(土) 22:26:22 ID:???
物語の舞台は、土・水・火・風・聖・魔の6元素から成るとされる「六門世界」。
この世界最大の都市、聖都サザンの大学で、召喚術学部の宝物庫が荒らされる事件が発生した。
盗まれたのは「知識の守護神」と呼ばれる小像。伝説によれば、禁断の魔導書「真宰辞書」入手の鍵と言われる品。
事件を公にしたくない学部長ロビン・プロフェシーは、召喚術に精通した学生に事件を解決させようと考えるが
優秀な上級生が軒並み動けない状態にあったため、消去法で学部の問題児、カッシェ・アルバデルにお鉢が回る。
破天荒な攻撃がかえって相手の調子を乱し、首尾よく盗賊を捕らえたまではよかったが
すでに小像は引き渡された後。しかも、口封じのために敵の召喚獣が、カッシェと盗賊の少年を襲う。
敵の攻撃を退けたカッシェと、盗賊の少年コルボ、そしてカッシェによって敵の支配を解かれた召喚獣
ラミアのナスターシャは、小像を持つ敵を追って、「千の水路を持つ都市」ウォーレンに向かう。

ウォーレンの街に着いた一行は、事前に得ていた「領主が反乱のための力を蓄えている」との情報に従い
コルボを先頭に立てて領主の館への潜入捜査を行う。すぐ小像を取り戻したが、それは罠だった。
領主ブランシー卿の正体は、本物の領主の影武者たる暗兵。
本物を廃して入れ替わった彼の意思により、反乱計画は着々と進んでいたのだ。
逃げるカッシェとコルボの前に、敵の召喚術士「蝕」の放った堕天使アンヘルが立ちはだかる。
魔力「黒の炎」で二人を金縛りにして捕らえようとするアンヘルだが、突如現れたリザードマンの剣客
シン・メーンに阻まれる。とりあえずシンは味方と判断してこの場を任せたカッシェたちだが
逃げる二人を追って敵の新たな召喚獣、巨大悪魔「這いずるもの」が出現。カッシェは愛用のグリフォンで迎え撃つも
「這いずるもの」に敗れ食い殺されたグリフォンの断末魔に共感し、失神してしまう。
だが、「這いずるもの」に挑んだコルボとナスターシャの援護によって、辛くも立ち直ったカッシェは
大蜥蜴バジリスクを召喚。ついに「這いずるもの」を屠る。
だが、勝利を確信した瞬間、追いついてきたアンヘルがカッシェの肩を剣で貫き、カッシェを打ち倒す。
最後の力で、テレポートの魔法を発動させてコルボとナスを小像ごと逃がし、カッシェは敵の手に落ちた。

181 名前:モンスター・コレクション 3/4[sage] 投稿日:2005/04/09(土) 22:27:09 ID:???
敵に捕らえられ、気を失ったカッシェは夢を見る。「ヴェバール」と名乗る拘束された美女が助けを求める夢。
シン・メーンが彼女と同じ「夢」を見ていることには、カッシェはまだ気付かない。

目的であった小像と引き換えに、雇い主であるカッシェを失い孤立するコルボとナスターシャの元に
「蝕」からの挑戦が届く。敵が指定してきた対決場所は、内海群島の西の端「最果ての島」。
その島からさらに西、人も通わぬ「螺旋島」へと向かうコルボたちの前に立ちはだかる紅い影。
それは、螺旋島を徘徊する巨大な羽蟻、クリムゾンであった。クリムゾンをかわし螺旋島に上陸するコルボだったが
あっさり「蝕」とアンヘルに見つかり、カッシェの目の前で斬られ倒れてしまう。
コルボから小像を奪った「蝕」は、小像を鍵として扉を開き、螺旋島の地下にある遺跡へと入っていく。
そこに「真宰辞書」はいた。クリムゾンの女王蟻と一体化した、巨大な菌糸状の魔法生物。
人間の脳には収まりきらぬ膨大な知識を保持するバイオコンピュータ、それこそが真宰辞書であった。
古代帝国の英知に驚く一行に突如襲い掛かったのは、斬り殺されたはずのコルボ。
彼はクリムゾンの赤い体液を血糊にして死んだ振りをしていたのだ。無事カッシェを救い出したコルボは
ナスターシャに合図して、鍵の小像を外させる。扉が閉じたことで、警備担当の蟻たちが動き出した。
蟻の体液を体にまぶしたコルボたちは襲われず、攻撃はブランシー卿一味に集中する。
その混乱を利用して、カッシェとコルボは脱出に成功した。

思わぬカッシェたちの反撃に負傷するブランシー卿一味だが、ブランシー卿が真宰辞書に接続したことにより
蟻の群れは彼の支配下に入った。態勢を立て直した「蝕」は、アンヘルにカッシェたちの掃討を命じる。
だが、今回はカッシェも対策を講じていた。小妖精キキーモラを召喚し、その浄化の魔力でアンヘルの黒の炎を封じる。
接近戦に持ち込み、アンヘルに痛打を与えるカッシェたち。死闘の末、コルボはアンヘルの剣を奪い、斬りつける。
致命傷を負ったアンヘルは、あたかも自ら斬られることを望むがごとく剣に当たり、消滅した。
だが、強敵を倒したカッシェたちの前に新たな敵が立ちふさがる。螺旋島の島守、巨大な上位竜(ハイドラゴン)。

182 名前:モンスター・コレクション 4/4[sage] 投稿日:2005/04/09(土) 22:27:56 ID:???
竜を前に万事休すのカッシェに、合流してきたシン・メーンが語る。「お前は“彼女”の名を知ってるはずだ」と。
そしてカッシェは気付いた。この竜こそが「ヴェバール」。古代の魔術に囚われた竜。
カッシェは一か八かの勝負に出る。ヴェバールを縛る召喚術を破り、彼女を味方につけるのだ。
その精神をヴェバールの精神世界へと飛ばし、無防備となったカッシェの体を守るためにコルボたちは立ち上がる。
シン・メーンが呼び出した「リザードマン特別攻撃隊」と共に、ブランシー卿操る蟻軍団との最終決戦が始まった。

一方、ヴェバールの精神世界に入り込んだカッシェの道を、彼女を縛る呪式…すなわち真宰辞書の防衛機能が阻む。
予想外の攻撃に追い詰められるカッシェだが、もはや後戻りは出来ない。彼女は無謀を承知で
魔精霊「カース・エレメンタル」を召喚した。圧倒的な魔力が、召喚主であるカッシェを逆に侵食し始める。
だが、土壇場でカッシェは、この荒ぶる精霊の制御を成功させ、そのまま真宰辞書への反撃に移る。
「忘却」を司るカース・エレメンタルの能力により、ヴェバールを縛る呪式が消滅していく。
ついに、カッシェは呪縛を破り、ヴェバールの精神を開放することに成功した。
自由を取り戻したヴェバールは、己を縛ってきた真宰辞書への反撃を開始する。被弾し、機能停止に陥る真宰辞書。
その情報を保全しようとして、真宰辞書は全ての情報を、接続者ブランシー卿の脳へ移そうとする。
脳が焼き切れる寸前の瞬間、膨大な情報を受け入れ、世界の全てを理解するに至ったブランシー卿は
この理解に至れぬものたちをあざ笑いながら絶命する。
時を同じくして「蝕」も力尽き倒れた。彼の正体は、古代帝国の時代から生き続ける召喚術士。
カッシェと同じく、高すぎる共感能力によって、体まで魔物と同化することで現代まで生きてきた異形の男であった。
機能停止した真宰辞書と共に、「蝕」は海中へと消えていく。

事件は解決した。カッシェはナスターシャと共にサザンへ帰還し、コルボはシン・メーンの元で
剣士として修行を積む道を選び、互いに分かれ去っていく。
この後、カッシェはさらなる戦いを重ね、偉大な召喚術士として成長していくが、それはまた後の物語である。

183 名前:モンスター・コレクション 余禄[sage] 投稿日:2005/04/09(土) 22:29:05 ID:???
あらすじは以上だが、蛇足を承知で、一ファンとして本作の特徴を列記させていただきたい。
まず、RPGにありがちな西欧風ファンタジーに、アジア系のテイストを混ぜている点。
メインキャラクターからして、忍者(『ニンジャ』ではないのだ。この語感が分かっていただけるか)のコルボに
和刀の剣士シン・メーンなどというキャラがいたりするし、カッシェが召喚する天使に仏像のイメージが用いられていたり
デビュー作からインド、中国、アラビア、戦国日本などをモチーフにしてきた作者の蓄積が生かされている。
次に、生理的感覚、特に「痛み」にこだわった描写。特殊な方向性の18禁誌でもないのに
ヒロインが剣で肩を貫かれて激痛のあまり失禁したり、殴られて歯を折られたりする描写があったりする。
ともすれば間接的な戦いに終始しがちな「召喚術」という題材において、あえて「痛み」を重んじる
作風を貫くあたりが作者のこだわりである。
そして、上記のようなテーマを貫きながら、ギャグもかなりの勢いがある。
腹を撃たれて死に掛けているキャラが、ボケをかまされて腹から腸をはみ出させつつずっこけたりするのである。
掲載誌がマイナーであるため知名度が低いが、アクションものが好きならぜひ一読していただきたい作品である。

…また、一見さんには分からないネタなのだが、演劇出身という経歴のせいか、伊藤勢はスター・システムを多用する。
本作に登場するシン・メーンは、リザードマンではあるがその性格や描写は
氏の過去作品「斬魔剣伝」に登場した宮本武蔵のコンバートキャラクタなのである。
(シン・メーンは宮本武蔵の正式な姓と言われる「新免」、アルティエンは武蔵の流派「二天」の中国語読みだ)
その辺よくご存知のライトノベル作家、神坂一氏は、単行本帯の推薦文句に
「シン様、前から(笑)ファンでした」とのメッセージを寄せている。

185 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2005/04/10(日) 02:21:26 ID:???
原作は小説だっけ?

186 名前:178[sage] 投稿日:2005/04/10(日) 08:44:41 ID:???

>185
原作は富士見書房から出ていたトレーディング・カードゲーム。
同じゲームの世界観を共有する形で小説も刊行されている。
本作は、(連載された時点で)最新の時代を舞台にしているため、小説版の登場人物が
「過去の英雄」として登場したりする。
カッシェが最後の戦いでカース・エレメンタルを召喚するのも、彼女が
「聖リコルの伝記」を読んでいたから、というくすぐりが仕掛けられているあたりが心憎い演出。
(リコルは安田均氏の小説における主人公。彼は物語の冒頭で、カース・エレメンタルに記憶を奪われてしまう)

187 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2005/04/10(日) 11:19:59 ID:???
 新免という男は斬魔剣伝のあれがモデルと言うより、伊藤勢が所属している劇団の先輩がモデル。
モデルは「俺は家族にならばどんな迷惑をかけてもいいと思っている」とか素面で言える凄い男らしい。