モジャ公/藤子・F・不二雄
625 名前:モジャ公[sage] 投稿日:2005/11/12(土) 12:46:40 ID:???
世の中に対してどこか居心地の悪さを感じている少年、天野空夫は
毛玉のような宇宙人モジャラとポンコツロボットのドンモに見込まれ、おんぼろロケットで宇宙に家出する。

「地球人はこわいよ」
三人組が最初にたどり着いたのは、メルル星という宇宙では標準的な(地球よりは遥かに進んでいる)星。
宇宙食の食べ方も、移動用パイプウェイの使い方も知らない空夫はあたふたした挙句
パイプウェイの無賃利用で留置場に送られてしまう。ところが、出身を問われて「地球人」と答えたとたん
留置場の凶悪犯たちが青ざめて逃げ出した。宇宙人の間では、地球は野蛮で危険な星と見られているのだ。
さらに空夫は、宇宙人たちが解けずに困っている計算(コンピュータが浸透しているので、自力では足し算もできない)
をすらすら解いてのけ、仲間たちからも一目置かれるようになる。

「うまそうな三人」
次に三人組が訪れたのは、危険地帯に指定されているカミカミ星。
肝試しのつもりで上陸するが、カミカミ星人たちは気のいい人ばかり。しかしなぜか「日が暮れる前に帰れ」と言う。
夜に危険があるなら、自分たちもいっしょに戦おうとあえて帰らずに残る三人だが
実は危険の正体はカミカミ星人そのもの。彼らは月の光を浴びると狼人間と化し、人肉を好むようになるのだ。
カミカミ星人は「注文の多い料理店」よろしく、何も知らない三人がみずから料理になるよう仕向けるが失敗。
人肉嗜好以外は妙に理性的なカミカミ星人と三人組のこっけいな争いが続く。
そのとき、運良く月食が起きてカミカミ星人は元に戻った。三人は、その隙に慌ててこの星を離れる。

626 名前:モジャ公[sage] 投稿日:2005/11/12(土) 12:48:08 ID:???
「さらば411ボル」
相も変わらずポンコツロケットで旅行中の三人。すぐそばを通り抜けた最新型ロケットに煽られ吹っ飛ばされる。
燃料が不足し始めて、慌てて寄航したのは人工惑星のコスカラ星。周りにはほかに補給の利く星がないため
コスカラ星人は旅人の足元を見てずるがしこく儲けようとする奴ばかり。
先ほど煽ってきた最新型ロケットを見つけ、ロケットの主に文句を言ってたかろうとする三人だが
ロケットの持ち主は金持ちで美人のお嬢様。モジャラも空夫もデレデレするばかりで文句を切り出せない。
空夫が有り金はたいて女の子に飲み物をおごっている間に、モジャラとドンモは詐欺にあって有り金巻き上げられ
スッカラカンになった三人は燃料を補給することもできずにコスカラ星を逃げ出す羽目になった。

「恐竜の星」
燃料切れで漂流していた三人のロケットは、近くの惑星の引力に引かれて墜落する。
救命ボートで不時着したのは、妙に現実味の無い静かなジャングル。「怪獣でも何でもいいから出てきてくれ」
と思わず叫ぶと、とたんに巨大な恐竜が現れ、逃げ遅れたドンモを血しぶきまき散らしながら食べてしまう。
「これはギャグ漫画じゃなかったか?」「作者はおかしいんだ!少しでも人気を取ろうと思って!」
と勝手なことを言いながら逃げ出す空夫とモジャラの前には、なぜか女の子や弁当の売り子が現れる。
相手を幻だと思ってとんちんかんなやり取りをするうち、恐竜が追いかけてきてモジャラと空夫を食べてしまった。
それを見ていた女の子は、光線銃を取り出して恐竜を撃ち、一撃で倒してしまう。
一方、恐竜の腹に入った三人は恐竜がロボットだと気付く。三人が不時着したのはこの星の遊技場だったのだ。

627 名前:モジャ公[sage] 投稿日:2005/11/12(土) 12:49:03 ID:???
「アステロイド・ラリー」
恐竜ゲーム場で、コスカラ星で会った女の子と再会した三人は、彼女が宇宙的大富豪モナシス家の娘、モナだと知る。
彼女に引かれるように、三人は彼女が泊まっている最高級ホテルに部屋を取ることにした。
だが、このホテルの宿泊費はとてつもなく高いため、宿泊費代わりにバイトをするくらいではとても追いつかない。
もし支払い能力がないとわかれば、星流しの刑にされて死ぬよりつらい重労働をさせられるという。
なんとか逃げ出す方法を考えて思いついたのが、近くこの星で開催されるアステロイド・ラリー。
宇宙船レースに参加するふりをして、コースを離れ逃げ出そうというわけだ。
だが、いざレースが始まると、逃げようとしてコースを離れた三人の船を見た他の選手たちは、その動きを
画期的な新戦術だと深読みして、三人の船を追いかけ始めた。
皆が自分を追ってくるのを見て、彼らが宿泊費踏み倒しを邪魔するホテル側の刺客と勘違いする三人。
あわてて小惑星帯に突っ込んだ三人の船は小惑星に激突するが、暴走してそのまままっすぐ飛行。
星を盾にするかたちで小惑星帯を突っ切り、1位でゴールイン。高額の賞金を手にした。

628 名前:モジャ公[sage] 投稿日:2005/11/12(土) 12:49:36 ID:???
「ナイナイ星の仇討ち」
ラリー優勝によって一躍有名人となった空夫のもとに、クエ星人ムエとなのる人物から手紙が届く。
空夫を父の敵と呼び、自分の手で仇を討つという。
ムエから逃げるため、賞金全額をはたいて即決でロケットを買った空夫たちは、逃げ回ったあげく
立ち入り禁止だというナイナイ星へ逃げ込む。だが、ムエは当然のようにナイナイ星へ追ってきた。
数々の超能力を持つムエを相手に、戦うことも逃げることもできない。
いっそ警察に捕まれば殺されずに済むと、パトロール船の前に飛び出す三人だが、パトロール船は三人を撥ね付ける。
ナイナイ星は伝染病のため隔離された星で、感染を防ぐため間もなく星ごと爆破される予定だったのだ。
父の仇が討てれば死んでもいいというムエは伝染病の話も意に介さず、ついに決闘が始まる。
どうしても自分が討たれるのが納得できない空夫にムエが突きつけたのは、なんと1000年前
ムエの父ヌエが、地球を探検中に源頼政に射殺された記録英像だった。異星人であるムエは地球人の顔が区別できず
地球人がクエ星人の20分の一の寿命しか持たないことも知らずに空夫を仇と思い込んでいたのだ。
伝染病に罹って動けなくなったムエに事情を説明して、やっと人違いに気付いたムエは大いに反省。
念力で、ナイナイ星を爆破しに来たミサイルを逸らして三人を助けてくれたのだった。

629 名前:モジャ公[sage] 投稿日:2005/11/12(土) 12:50:24 ID:???
「自殺集団」
危険な事件続きに疲れた三人は、「誰も死なない星」フェニックス星を訪れた。
特殊な放射線によって、全住民が不老不死となったフェニックス星は、生き疲れた生ける屍のような人ばかり。
この星で、オットーと名乗る詐欺師と会った三人は、彼に習って「自殺屋」に挑戦した。
自殺する振りで同情を引いて金をせびる手口だが、誰も死なない星では人が死ぬのは珍しいイベント。
オットーのプロデュースにより、三人の自殺はフェニックス星をあげての一大イベントになってしまう。
本当に自殺するつもりがあるはずもなく、なんとかして逃げ出そうと画策する三人だが
たまたま居合わせた映画監督のタコペッティ氏に逃亡を阻止されてしまう。残酷ドキュメントを専門とするタコペッティは
三人の自殺をぜひ撮影したいので、逃げられては困るとのこと。
肝心のオットーは、自殺イベントで稼いだ金を持ち逃げしてしまい、なすすべなく会場に引き出される三人。
そのとき、突然会場に爆発音や銃声が響く。タコペッティが流した新作立体映画の予告編。
「同じ星の人間同士で殺しあう不思議で野蛮な星(どうも地球のことらしい…)」の映像にフェニックス星人は大興奮。
みんな戦争見物に行ってしまい、自殺イベントはうやむやの内に打切りとなってしまった。

630 名前:モジャ公[sage] 投稿日:2005/11/12(土) 12:51:04 ID:???
「天国よいとこ」
タコペッティに命を救われた三人は、彼に連れられて危険な撮影旅行へ行くことに。
目的地はシャングリラ星。数億年前に住人が死に絶えたはずなのに、調査隊は「天国のような星だ」と言って
二度と帰ってこないという謎の星である。
途中、やはりシャングリラ製から帰ってこない兄を探す少女ミルルと出会い、共にシャングリラ星に行くことに。
いざシャングリラ星に降り立つと、廃墟の彼方には立派なシャングリラの都があり、住人が大勢生活していた。
「太陽も空気も無いはずなのに、ありえん!」と疑うタコペッティとは裏腹に、空夫たちはシャングリラを楽しむ。
この都では、なんでも念じるだけで目の前に出てくる不思議な力が働いていた。
だが、空夫たちとタコペッティは、やがて別々の観点からこの天国のような都のからくりに気付く。
古代シャングリラ人は、心に直接感覚を投影することで「実際にあるように思わせる」技術を開発していた。
シャングリラ人の体はすでに死に絶え、精神だけが保存されてヴァーチャル・リアリティの世界に存在している。
調査に来た者も、このからくりに気付かぬまま肉体が死に、精神がシャングリラに取り込まれていたのだ。
からくりに気付いた空夫たちを無理やり殺し、精神体にしようとするシャングリラ人たち。だがそのとき
精神を操る機械が故障し、シャングリラの幻は消え去った。ここに取り込まれていたミルルの兄が
妹を救うために身を挺して機械を破壊したのだった。一同はあわててシャングリラ星を後にする。

631 名前:モジャ公[sage] 投稿日:2005/11/12(土) 12:53:13 ID:???
「地球最後の日」
惑星ポンコンのスラムで、詐欺師オットーに再会した三人。捕まえようとするが逆に罠に掛けられて
ロケットに押し込まれた三人は、なぜか地球にたどり着く。
久しぶりの故郷を満喫する空夫だが、その頃モジャラとドンモは、地球に向かうどくろ型の大流星を発見した。
地球の危機を報せようとする三人だが、誰もまともに話を聞いてくれない。
どくろ星のことを予言していた新興宗教があるというので行ってみると、その教祖は地球人に化けたオットーだった。
真意を問われ「地球人を騙してもうけて逃げるつもり」と言い切るオットーに、疑心暗鬼に陥った三人は
もっと複雑な企みがあるのかもしれないと、オットーを監視し続けることにする。
やがてどくろ星が地球からも見えるようになると、オットー率いる「ノア教」は一躍有名になり、救いを求めて
莫大なお布施が入るようになった。モジャラは金庫番として、自分の口の中にお布施を換金した宝石を貯める。
やがてどくろ星と地球が衝突する日になると、オットーは金も持たずひとりでこっそり地球を離れる。
三人が後をつけると、オットーはどくろ星の上で宇宙マフィアの使いと落ち合った。
実は全てオットーの仕込んだ詐欺。どくろ星の正体は巨人星で買ったゴムのおもちゃだった。
三人が自分の言葉を信じないことも計算に入れ、オットーは彼らが金を持ったまま、自発的についてくるよう仕向けたのだ。
「最初から嘘は言っていない」と開き直るオットーに、思わずモジャラが「この正直者め!」とどなると
その拍子に口の中に貯めていた宝石が飛び出し、すべて流星となって地球の大気の中で燃え尽きてしまった。
当ての外れたオットーは逃げ出し、三人も今さら地球に戻ることもできず、逃げるように再び宇宙へ発つ。

632 名前:モジャ公[sage] 投稿日:2005/11/12(土) 12:54:31 ID:???
「不死身のダンボコ」
路銀が尽きた三人が職安で手に入れた仕事は、珍獣「ダンボコ」を狩りに行く星成金モクベエの案内人。
「ダンボコを知っているか」と問われて、三人があやふやででたらめな答えを返すと
なぜかモクベエは良く分っているなとばかりに喜ぶ。ダンボコはその「ダンボコ」という鳴き声以外
姿も大きさも特定できない謎の生き物なのだ。
件の惑星に降り立ち、ダンボコ狩りを始める一行だが、それぞれが「ダンボコ」と鳴いていた全く別の動物を
仕留めてきた。だがそのうち、ドンモが「ダンボコー!」と叫んで仲間たちに襲い掛かり
他のメンバーも「ダンボコ」と叫び始める。ひとりモジャラだけが無事に逃げ出した。
逃げた果てにモジャラが見たのは、巨大な食肉花と、その前に集まり「ダンボコ」と鳴く様々な動物。
種を動物に寄生させて、餌を集めさせた果てにその動物をも喰らう寄生植物、それがダンボコの正体だった。
操った動物たちに守られているダンボコの花に近づくことは難しかったが、モジャラは一計を案じ
自分も寄生されたふりをしてダンボコに接近、至近距離からの光線銃による攻撃でダンボコを倒す。

633 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2005/11/12(土) 12:57:11 ID:???
解説
「モジャ公」藤子・F・不二雄 昭和44年〜45年
地球人の少年、一頭身の宇宙生物、ポンコツロボットの三人組が宇宙を冒険するというコンセプトながら
「少年漫画でこんなの描いていいの?」と突っ込みたくなるネタの数々ゆえに「裏21エモン」などと呼ばれたりもする。
事実、本作のエピソードの幾つかは、平成3年のTVアニメ版21エモンに流用されている。
平成7年にはモジャ公自体がアニメ化されたものの、ストレートな子供向けアニメに改定され
原作のブラックユーモアは影を潜めている。

なお、連載当初は「不死身のダンボコ」が最終エピソードだったが
単行本では「地球最後の日」を最後に持ってきて締めのエピソードとする改定がなされている。
特に、平成元年に出版された愛蔵版以降は「地球最後の日」のラストシーンが加筆され
「三人の前に、地球見物に来たモナ・モナシスが現れて、三人の冒険心を肯定。
 気力を取り戻した三人は、ふたたび未知なる宇宙への冒険航海に乗り出す」という前向きなラストになっている。