笑う大天使/川原泉
104 名前:笑う大天使 0 投稿日:04/08/31 17:46 ID:???
過去ログPart7の>196でリクがあった「笑う大天使」書いてみます。

ごく簡潔バージョン。

お嬢様学校に通う猫かぶり3人娘が、何の因果か怪力を身につけ名門女子校の生徒を狙った誘拐グループを退治し、被害者を救出。
その後その不思議な力は消えてしまった。  <完>


次から、だらだら長文バージョン。

105 名前:笑う大天使 1 投稿日:04/08/31 17:49 ID:???
幼稚園から短大まで一貫した教育システムを誇るカトリック系の名門女子校、聖ミカエル学園。
これはその学舎の中で、お嬢様になりそこなった3人の娘さんたちの物語である。


まずは司城史緒さん。
彼女は母と2人、貧しいアパートで生活していたが、その母の死により生活が一変することに。
実は史緒は旧伯爵家という名家のお嬢様だったのだ。

上流社会で育った父と、ごく一般的な家庭に生まれた母。
2人は周囲の反対を押し切って結婚したわけだが、姑は当然ことあるごとに嫁いびり。
夫がいる間は何とか耐えていた母であったが、その夫が事故で他界した後、10歳になる息子を取り上げられ姑に家を追い出されてしまった。
そのとき2人目の子供を身篭っていた彼女は、たった1人で娘を産み育てることに。
この娘が史緒である。

一方、史緒の兄にあたる残された息子は、同じ頃亡くなった祖母の「もう1人孫がいるはず」という臨終の言葉により妹の存在を知り、彼女達の居所をやっと探し当てたが、時すでに遅し。
母は亡くなり、葬式が終わったところに17歳になった妹だけが残されていたのだった。

ともかく兄・一臣に引き取られた史緒。
せっかく憧れの有名進学校・松葉ヶ丘高校へ通っていたのに、兄の意向でお嬢様学校の聖ミカエル学園に転入するハメに。


お次は斎木和音さん。
一代で事業を興し成功させた父と旧華族出身の母を持つ、彼女は完璧なお嬢様……になっていてもいいはずだった。
しかし、ラジオの深夜放送を聞いて寝坊するわ、それを起こしにきた養育係の若月俊介氏と朝っぱらからぞんざいな口調で口喧嘩するわと、やたら元気な野生児のような娘に成長。

ここの夫婦は完全に冷え切ってた関係。
父は外に愛人3人を持ち、それを妻子に隠しも悪びれもしない不遜な男。
母はそんな夫の所業を黙殺し、家事も育児も放棄して自分の趣味に生きる女。
そんな両親が何故結婚したのか謎に思うことはあっても、和音はマイペースに生きている。

やはり聖ミカエルに通う彼女は、幼稚園からの立派な猫かぶりキャリアの持ち主。
学園内では、その長身とスポーツ万能ということでオスカル様と呼ばれ、下級生のアイドル的存在であった。

106 名前:笑う大天使 2 投稿日:04/08/31 17:55 ID:???
もう1人は更科柚子さん。
平凡な両親のもと、やはり平凡な兄とともに平々凡々に育った彼女。
ところが、親の営む食堂「かぼちゃ亭」が外食産業ブームの波に乗り、気がついたときには一代レストラングループ「パンプキン・チェーン」の会長令嬢。
中学までは普通の公立校に通っていたが、引越しした家から近いということで高校からはミカエルに。
しかし、何も知らずに素直に登校してみたらば、そこは桜子様やら百合枝様やらが集う超お嬢様学校だったのだ。
しかも、幼少時、怒られるときに「異人さんにつれてってもらうよ」などと親に脅されていた彼女は、そのトラウマで外国人が大の苦手。
シスターたちを始め、神父や教師と外国人が大勢いるミカエル学園は彼女にとって非常に怖い場所でもあった。
ともかく、否応なしに柚子の猫かぶり学園生活はスタート。
小柄で頭のいい彼女は、知恵と幸福の小人コロボックルに例えられ、上級生のお気に入りに。



そして、聖ミカエル学園高等部2年に転入してきた史緒はクラスメートとして和音と柚子に出会う。
この時点では、それぞれが猫かぶりであることを本人以外は誰も知らない。

転入早々、学年一の成績を誇る柚子がわからなかった問題をあっさり解いてみせたり、体育の時間の短距離走で校内一俊足の和音と同タイムを出したりと、注目を浴びる史緒。
そして、指導者的存在を求めていた2年生のお嬢様方は「史緒様こそあたくしたちのニューリーダー!」「ラオウ様より強いケンシロウ様です」とおおいに盛り上がるのだった。

そんな中、空虚な瞳で空を見上げる史緒。
まわりのお嬢様方は、そんな姿を見てニヒルだストイックだと囁きあうが、それどころではない。
史緒は切実な問題を抱えていたのだ。
実は彼女、目がうつろになるほど腹がへっていたのである。

107 名前:笑う大天使 3 投稿日:04/08/31 17:57 ID:???
もともと母子家庭の貧乏暮らし。
そんな史緒が、お抱えシェフがいるような上流家庭や、貴公子然とした上品な兄に、簡単に慣れようはずがない。
一臣殿下の前で失礼なことをしたらと考えると、食事も喉をとおらない始末。
学校では猫をかぶり家でも猫を脱げず、若いのにストレスがいっぱいの生活。
兄・一臣はそんな妹に歩み寄りを試みるが、史緒は反射的に逃げの体制に入ってしまう。

とりあえず、一臣は史緒を自分の書斎に呼び、お互いに少しずつ歩み寄る努力をしようと提案。
さらに、「高校生ともなると理由を言いにくい買い物もあるでしょうし、月々のお小遣いを振り込んでおくから」と史緒名義で作ったカードを渡す。
史緒のことを「もーちょっとうちとけてくれたって…」と思う一臣だが、そういう自分も充分うちとけにくいタイプであることを一臣はまったく気づいていない。


転校2日目、史緒は学校に遅刻してくる。
理由は転校早々で慣れない道に迷ったからというものだが、実をいうと登校中に銀行に寄ってお金を下ろし、買い物をしてきたせいであった。
このとき史緒が買ったものが、彼女を含む3人のお嬢さんの学園生活を変えるきっかけとなる。


その日の古文の時間は担当のロレンス先生の都合により自習となっていた。
これをチャンスとばかりに休み時間の間に教室を抜け出す史緒。
そして授業時間になっても戻らない史緒を心配するクラスメートたち。
学級委員長である柚子は史緒を探しに行こうとするが、それに何人ものお嬢様方が一緒にと申し出るので、「では副委員長の和音様、ご一緒に」ということにして、ひとまずその場は納まった。
しかし2人で手分けしてひととおり探してみたものの史緒は見つからない。
残るは学園裏手の雑木林かと思い、その方向を見てみると何やら煙が……。

108 名前:笑う大天使 4 投稿日:04/08/31 18:02 ID:???
様子を見に行った2人は、そこでようやく史緒を発見。
しかし、そんなところに座り込んで彼女は一体何をやっているのか?

とりあえず声をかけてみると、振り返った史緒の口にはアジのひらきが!

思わぬ事態に驚愕する柚子と和音。
一方、完全に開き直ってしまった史緒は「貧乏暮らし貧乏育ちのわが食生活ベースは何たってアジのひらき!」と力説。
だが、もちろんお抱えシェフに「アジのひらきを焼け」というわけにもいかず、自分で焼くことにした次第だというのだ。
また、史緒のほうでも柚子と和音のお嬢様らしからぬリアクションの数々により、2人が猫かぶりである事に気づく。
そして3人は「自分がいかに庶民であるか」を証明し合う事で親近感を強め、「猫かぶりの辛さ・侘しさ」を慰め合う事で連帯感を増していったのだった。


ちょうど同時刻、学園内の一室では理事定例会が開かれていた。
滞りなく終了となったところで、理事の1人である警察庁長官から、発言を求める声が。
その発言の内容とは、西日本各地で発生している名門女子校に通う女子高生を対象とした誘拐事件についてだった。
現時点で報告のあった事件は7件。
いずれも要求や犯行声明などは出ず、犯人の目的は不明のまま。
さらに大規模な組織が介入しているフシもあり、聖ミカエル学園も警戒すべきというものだった。

109 名前:笑う大天使 5 投稿日:04/08/31 18:04 ID:???
さて、3人はその後、古文の自習課題を提出しなかった事により、ロレンス先生より呼び出しをくらう。
猫をかぶって「非は自分にある」と庇い合う3人だが、結局3人ともペナルティとして「源氏物語」のレポートを提出するよう言い渡される。
さらにロレンスは柚子に用事を言いつけた際、「焼き魚の匂いがする」と意味ありげな言葉をかけるのだった……。

ともかくレポートに取り掛かる柚子だったが、「源氏物語」は54帖、ちょうど3で割り切れると思いつき、分担して3人一緒にやろうと提案。他の2人もそれに賛同する。
そんなこんなで、この3人はいつも一緒に行動するように。

そんな状況の中やってきたのが、黒いフェラーリに乗ったラテン系の男。
教団の用事でローマへ赴く事になったジョーンズ神父の代理、エミリオ・マリーニ神父……とのことである。


その日も3人組は中庭で昼食をとりながら、レポートの話などをしていた。
そのとき、ふと1人の女の子がこちらを見ているのに史緒は気づく。
沈丁花の陰に立つ、長い髪の可愛い女の子。
1年生らしい彼女はどうやらオスカル様である和音がお目当てらしい。
そこへちょうど風か吹き、彼女のフワフワの髪の毛が沈丁花に絡まってしまった。
柚子と史緒は「可哀相だから助けてやれ」と言い、和音はしょうがないといった風情で、彼女のもとへ。
その様子を見て、柚子と史緒の2人は「あのシーン「ポーの一族」だぞっ」などと言い、少女漫画話で盛り上がるのだった。

110 名前:笑う大天使 6 投稿日:04/08/31 18:09 ID:???
その頃、ロレンス先生は昼休みを利用してマリーニ神父に学園内を案内中。
朗らかに上品に挨拶をしてくる生徒たちにマリーニ神父はいたく感心した様子。
「お気に召しましたか、わが校の雰囲気が」と問うロレンスに、『召しましたとも…ひじょ〜にね』とイタリア語で返すマリーニ神父。……怪しい。
当然ロレンス先生はイタリア語、しかも南部の方言のマリーニ神父のセリフの内容などわからない。

中庭の3人組の所へもやってきたロレンス先生とマリーニ神父。
ロレンス先生は3人と挨拶を交わし、マリーニ神父には「私のクラスの生徒なんです」と説明。
マリーニ神父は『可愛い子羊達の群れに毛色の変わったのが3匹…』とまたイタリア語で呟くのだった……。

やはり同じ時、中庭で言葉を交わしている人たちが。
柚子をかわいがっている3年生のお姉様方である。
「あたくし達のコロボックルちゃんが遠くへ行ってしまったようで寂しい」とふさぎこむ白薔薇の君と、
それを慰め励ます紫の上と桔梗の宮。

それを見つけたマリーニ神父は、『きれいな羊… 最上の子羊…』となにやら怪しげな事を考えるのだった。

そんなことなど知る由もない3人組の所へやってきたのは、同じ2年生のお嬢様。
彼女は史緒と昼食をとろうと、他の同級生たちとともに彼女を探していたという。
「今からでもお邪魔してよろしいかしら?」と問う彼女の申し出を了承する史緒たち。
他の皆を呼びに、ひとまず彼女が去ったあと、「今の人同じクラスだっけ」と問う史緒に他の2人は説明する。
彼女のフルネームは万里小路静。ニックネームは静姫。
もしかしたら皇族の血も入ってるかもしれないという本物のお姫様だとのことだ。

その晩某所、電話で怪しい会話を交わす人物が。
そう、あのエミリオ・マリーニ神父と名乗る男である。

111 名前:笑う大天使 7 投稿日:04/08/31 18:18 ID:???
一方同じ火曜日の晩。
3人は斎木家に集まり、レポートを書いていた。
ちょうど帰宅していた若月俊介氏に出会い、「やっぱしオスカルん家にはアンドレがいた〜っ」と、やはり少女漫画で盛り上がる史緒と柚子。
しかし少女漫画に縁のない和音と若月氏には、話の内容はサッパリ。
そしてその夜、勉強会の様子を小耳にはさんだアンドレは、「聞かなければよかった…」―――と激しく後悔したのだった。


次の日、水曜日の晩。
今度は司城家に集まりレポートを書く3人。
話題は書斎に数日間閉じこもって仕事して、今はご就寝中の兄ちゃん殿下のことだった。
何の仕事かは妹の史緒も知らなかったのだが、ちょうどお茶を運んできたお手伝いさんに「森江賢一」のPNで小説を書いていると知らされる。

「知ってる! 読んだ事ある! ファンなんだわたし! 軽〜いタッチの推理小説が面白くて…」と柚子。
「わりと有名な作家だぞっ。冒険物とかアクション物、スパイ小説…」と和音。
「私も以前読んだ記憶がある…。………SFだったけど…」と史緒。

それはよーするに節操のない物書きって事でないか?と顔を見合わせる3人。

ちょうどその頃ジャンルの広い人気作家・森江賢一氏こと一臣殿下が、爽やかにお目覚めになった。
そして久しぶりに妹の部屋を訪ねに行ってみると、そこには一緒に友人2人が。
柚子と和音にサインを頼まれ、その後しばらく勉強会の様子を眺めていた殿下は…、深い深いため息をおつきになったのであった。

112 名前:笑う大天使 8 投稿日:04/08/31 18:21 ID:???
さらに翌日、明日にはレポート提出期限という木曜日。
この日の晩は更科家で。
庶民的で暖かい家族に迎えられて、ほのぼのと羨ましがる史緒と和音。
柚子さんはふと気がついた。史緒さんの両親はすでになく、和音さんの両親はいてもいないのとおなじなのだ。
少し心が痛んだが、口に出しては何も言わない柚子だった。

それはともかくレポートに取り掛かる3人。
「女癖は悪いし、くっだらねえ事で悩むし泣くし」「マザコンでロリコンで不倫大好きの変態だよな」「この平安人は恋愛沙汰以外にな〜んも考えとらんぞ」と光源氏に腹を立て、言いたい放題。


そして金曜日、日本が世界に誇る王朝恋愛大河小説に関する3つのレポートが提出された。

『――結論
…だから光源氏とゆー人は、女の人の迷惑も考えずやみくもに本能のまま行動し、知的ブレーキのあまり利かない性格か或はブレーキ自体が存在しない質であり、いわゆる「歩く煩悩様」の典型的な例だと思われます。
                        (更科柚子)』

『――結論
…ゆえに光源氏とゆー人は、性的衝動の赴くまま、他を顧みる事無く自らの欲望を満足させなければ気がすまないミーイズムの人であり、このよーなタイプはさしずめ「性衝動人」と申せましょう。
                        (司城史緒)』

『――結論
…つまり光源氏とゆー人は、独りよがりの悩みで周囲の人々を不幸に巻き込むだけでなく、さらにその執着心と多情さで不幸を拡大させるとゆー得意技がパターン化された「増殖ワラジムシ」であるといえる。
                        (斎木和音)』


―――それらを読んだロレンス先生が頭を抱えたのは言うまでもない。

686 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/07/06(木) 13:24:02 ID:???
映画化記念に、笑う大天使(ミカエル)の続きを投下します。
まとめサイトに載ってる人とは別人なんでよろしくです。
似たような詳しさで書いてみましたが・・・途中まで。

映画自体は全く期待できないっすよ('・ω・

687 名前:笑う大天使(ミカエル)[sage] 投稿日:2006/07/06(木) 13:24:56 ID:???
聖堂では、マリーニ神父による宗教の授業を行っていた。
殆どの生徒は神父の話に真摯に耳を傾けているが、3人はうたたね中。

ちょうどその頃、学園の門前には「待ち伏せのダミアン」がいた。
ダミアンはドーベルマンだのポインターだのの何の血が入ってるかわからない、目つきの悪い黒い雑種犬である。
大天使(アークエンジェル、と読む)の乙女達に、悪魔の手先として恐れられている。
彼に一睨みされたら、弁当の残り物を供えないと前を通れない。
ダミアンに怖いモノは何も無い。「したい放題」「自分勝手」「やらずぶったくり」で生きている。

保健所の野犬狩りにも捕まった事の無いダミアンは、たまたま通りがかった3人の乙女達に
いつもどおり睨みつける。それだけでヤツラは貢ぐハズ・・・
だったのだが無視して通り過ぎられてしまった。もういちど睨みつける。また無視された。
それ以前に、彼女達の視界にも入っていない。
プライドを傷つけられたダミアンは1日中ふて腐れていたが、再チャレンジを誓い、立ち直った。

688 名前:笑う大天使(ミカエル)[sage] 投稿日:2006/07/06(木) 13:25:48 ID:???
化学の時間。
メンデレーエフ・元素の周期表について習う。
授業後の化学実験室の掃除当番は例の3人だった。
化学教師に、ついでに台の上の実験用具も片付けておくようにと頼まれた。

さまざまな色の薬品が置かれている台の上・・・。
3人「…混ぜてみよう!」

こっちの赤とそっちの青を混ぜるときれいな紫になると予想 → 呪われた沼の色
今度は黄色と緑を混ぜてみよう。POPな黄緑になると予想 → 不吉な国防色に

予想は悉く覆された。
では「呪われた沼の色」と「不吉な国防色」を混ぜると?

呪われて不吉な「ムナサワギの悪魔色」…から一気にナゾの気体が溢れ出した。
気体を吸い込み、息ができなくなる3人。自業自得ですな。
バッタリと倒れこんで数分?数時間?? なんとなく目覚めた。
全員 特に異常は見当たらないので、先生に見つかる前に帰ることにした。
下校時にダミアンに再会したが、3人はやっぱり気づいていない。

689 名前:笑う大天使(ミカエル)[sage] 投稿日:2006/07/06(木) 13:26:20 ID:???
一人で帰る柚子は偶然、担任のロレンス先生に逢う。
道草を指摘され言い訳しようとした矢先、工事中のクレーンから鉄骨が落ちてきた。
「危ない!」と咄嗟に手を出したら、見事ナイスキャッチ♪

斎木家の庭で、和音母と俊介氏が会話している。
和音母は1本の大木を抜いて、代わりに楓でも植えるように俊介に命じていた。
母の去った後に帰宅したばかりの和音が来た。
「いーじゃん、木の1本や2本植え替えてやれよ」と気軽に触った木を
いとも軽々と抜いてしまった乙女が一人・・・。

模様替えをしていた司城家。
帰宅した史緒は、男2人がやっとの思いで移動したブロンズ像の重さを試しに持ち上げてみた。
いとも軽々と持ち上げてしまった乙女が一人・・・。


――その奇怪な出来事が、関係者全員を史緒さんちに集合させた。
ゆーまでもなく あの化学室での実験が3人を、世にも恐ろしい怪力少女にしてしまったのである。

史緒「これも一種の超能力だ。超人ロックだ!」
和音「んでは私はウルトラマンになろう」
柚子「10万馬力の鉄腕アトムもいいなぁ」

などと現実逃避を狙う当事者に説教する兄・教育係・担任。
ガミガミ怒られて、泣きながら「えぇじゃないか」を踊り続けた。
結局病院にも行かず、事実はうやむやにされた。

690 名前:笑う大天使(ミカエル)[sage] 投稿日:2006/07/06(木) 13:27:26 ID:???
朝、静姫はダミアンに出会った。
登校中にダミアンに出会うと不幸である。手付かずの弁当を差し出さねばならないから。
差し出そうとしたその瞬間、静姫は史緒に声を掛けられた。
で、なんとなく弁当を貢ぐことなく通り過ぎることが出来た静姫は感謝した。
史緒は相変わらずダミアンの存在に気づいていない。

これがきっかけで、友達になる史緒と静姫。
本物の清らかなお嬢様に史緒は内心で脱帽する。


一応「大天使の乙女達」な怪力3人娘は、怪力がバレないように
ひときわ強力な猫をかぶって学園内で生活していた。
それが乙女ゴコロとゆーものさ。

昼ごはんを外で食べていたら、1年生の集団が和音=オスカル様にお菓子を貢ぎに来た。
「オスカル様親衛隊」の活動が再び盛り上がっていたのだった。

親衛隊が去った後も遠くから見守るだけで、プレゼントをナカナカ差し出す勇気の持てない1年生。
様子を見かねて神父が、歯の浮くような台詞で勇気付ける。

「オスカル様親衛隊」を3年生のお姉様方も見倣い、来週のお茶会には柚子=コロボックルちゃんだけでなく
他の2人も誘ってみようということで元気になった。

神父に勇気付けられた1年生は、その勢いで和音にイチゴタルトを進呈する。
ありがたく受け取る和音。何気ににじりよる柚子と史緒。
その日はこの1年生=沈丁花娘と一緒に会話を楽しんだ。


様々な生徒を見守るマリーニ神父。
目をつけた選り抜きの1年生・2年生・3年生の羊達が揃って傍にいる
毛色の変わった3匹は一体何なんだ? と訝しんでいた。

691 名前:笑う大天使(ミカエル)[sage] 投稿日:2006/07/06(木) 13:28:28 ID:???
TVニュースでは、西日本各地で起こっているお嬢様高校生連続誘拐事件について報道している。
それを受けて聖ミカエル学園の学園長と理事長が、お茶を飲みながら対策を考える。
が、特にこれといった事もできず、父兄に警戒するよう通達を出す程度。
家族の心配をヨソに、パワフル超人軍団の3人はお気楽な放課後を過ごしている。
何か食ったり喋ったり、走り回ったり寝っ転がったり、力自慢をしたり・・・
そんで先生に見つかって叱られたりする。のんき者の3人。

聖書の時間。
マリーニ神父が十戒について語る。――が真面目に聞いてない3人の生徒。
学校裏の雑木林で弁当を食べながら、その授業内容について雑談していると、3年生がやってきた。
今度の土曜日に開くお茶会に「史緒ちゃん」と「和音ちゃん」も誘いに来たのだった
(事前に招待状は受け取っていたようだが、本人達は忘れていた模様)。

柚子「で? お茶会には行くの?」
史緒「上級生のお誘いをムゲに断って いらぬ反感を買いたくは無いが…ちょっと考えさせてくれ」
和音「ありっ!?私の招待状が… おかしいな、聖書に挟んでいたはずなのに… 無い…」
2人「あとで聖堂に探しに行ってみれば?」


692 名前:笑う大天使(ミカエル)[sage] 投稿日:2006/07/06(木) 13:29:35 ID:???
聖堂で、マリーニ神父は和音の招待状を拾った。
その時偶然居合わせたシスター・ルネに、お茶に誘われる(って、職員室だけどね)。
咄嗟に招待状を隠すマリーニ。中身の要点「土曜日 午後2時 ハナマル公園」を確認すると
招待状を元のところへ戻し、職員室へ向かった。

入れ替わりに聖堂へ入ってきた主役3人。すぐに和音の招待状を見つけた。
すぐには立ち去らず、史緒が教壇へと2人を誘う。
史緒「おーい(中略)マリーニ神父の聖書おもしれーぞ」
  「横文字だぞっ でもさっぱり読めねーの」
などと勝手に見ていると、パラパラと紙片が落ちた。
拾ってよく見ると、全て女の子の写真だった。
紫の上、桔梗の宮、白薔薇の君、静姫、沈丁花娘………
裏には横文字で住所・氏名・電話番号・生年月日・学年・地図・趣味など書いてある。

――んにゃ…ちょっと待て。これしきのことで人を変態呼ばわりしては失礼だ。
きっと神父様には何か深〜〜い訳がおありなのだ。
モーセの律法にもあったではないか「汝 その隣人について偽証する無かれ」

動揺した矢先、マリーニが戻ってきた。3人は壇の下に隠れた。
マリーニは大事な聖書を取りに戻ってきたのだ。
3人は彼の様子を覗き見する。
真剣に写真の枚数を確認。大切そうに再び聖書に挟む・宝物のように抱きしめた。
そして嬉しそうに頬ずりした。

3人の目は皿のようになった。
汝、その隣人について偽証する無かれ……うんにゃ マリーニは…うんにゃ!
それが3人の神父に対する最初の疑惑であった。

693 名前:笑う大天使(ミカエル)[sage] 投稿日:2006/07/06(木) 13:30:30 ID:???
皿のような目のまま、3人揃って下校。
獲物を狙っていたダミアンも、その顔に驚いて道をあける。

柚子 → 面倒なことに巻き込まれたくないと思っている
史緒 → 厄介な奴と関わり合いたくないと思っている
和音 → 煩わしい問題はなるべく避けて通りたいと思っている

3人は聖書の教えを自分勝手に解釈して「何も無かったことにしよう」という結論に達した。

694 名前:笑う大天使(ミカエル)[sage] 投稿日:2006/07/06(木) 13:32:32 ID:???
某日・深夜。
ユダ(マリーニ神父)は自室で寛ぎながら仲間に電話連絡。一度に5人のお嬢様を狙う予定。
すべては土曜日に…


土曜日・前夜。
和音は俊介に、お茶会に来ていく服をどうするか相談する。
が、お茶会当日は外祖父の命日に当たり、和音に両親の代理として出席するように伝える。


土曜日・早朝
一臣もこの日はさわやかに起床。史緒と共に朝食をとる。
今朝に限って、史緒は唐突に考え込んでしまった。
この超人的パワー、隠そうとしてばかりいて どうして役立てようと思わなかったのだろう、と。


土曜日・放課後(連載当時の1987年は学校も会社も、週休2日制じゃないのが普通でした)
史緒は廊下掃除のやり直しを命じられる。
意地になった史緒は命じたシスターを見返すべく、一人で懸命に廊下磨きに励む。
「今こそこの怪力を生かすとき!」と思ったのだ。
この時点で予定に狂いが生じ、結局お茶会は柚子だけが参加することとなった

695 名前:笑う大天使(ミカエル)[sage] 投稿日:2006/07/06(木) 13:33:35 ID:???
法事に出席している和音・廊下磨きに精を出す史緒・お茶会に出た柚子。
それぞれが用件を終わらせて帰る夕方…空模様が怪しくなってきた。

お茶会もお開きという事で、帰り支度をする3年生+柚子。
柚子が1人でゴミをゴミ箱に捨てに行き、元の場所へ戻ると3年生はいなくなっていた。
―――置いてけぼりにされた?

雨が降ってきたので走って帰る和音は沈丁花娘とすれ違う。
沈丁花娘が気を利かせて、家から傘を持ってくるという。
待っていると沈丁花娘の悲鳴が聞こえた。現場には片方の靴だけが落ちていた。

雨の中を走って下校する史緒と静姫。
横を走る車に史緒だけが水を掛けられた。静姫からハンカチを借りる。
そのままうっかり別れたのだが、借りっぱなしに気づいて戻った瞬間に視界に入ったのは
静姫が外国人2人に無理矢理 車に載せられた現場だった。


土曜日・7時前。
柚子の家に白薔薇の君の母親から電話が来る。
その場にいた3年生全員がまだ帰宅していないことを知る。


夜、ユダの下に電話連絡が入る。
「首尾よく誘拐に成功したが、2人が見られたかもしれない。しかしどの程度かはわからない。
 誘拐した娘はその時「フミオサマ」と叫んでいた。」と。

696 名前:笑う大天使(ミカエル)[sage] 投稿日:2006/07/06(木) 13:34:16 ID:???
日曜日・早朝。雨はあがっていた。
浮かれ気味のダミアンが覗いた聖ミカエル学園内部は物々しい雰囲気に包まれていた。
いつもは弁当娘が戯れているのに、今日は警察やらなにやら・・・その中に例の3人がいた。
ダミアンは3人の宿敵を前にはりきって、門をよじ登り学園内に侵入した。
隠れるように藪の中にいたダミアンの横にはマリーニ神父もいた。


理事長室。
学長・副学長・理事長・警察庁長官が待っている中に3人が呼ばれた。
「長」が付く人だらけの中に、なぜかロレンス先生がいた。
実は彼は学園創立者の曾孫で理事長も兼任していたのだった。
そして3人の証言が始まる。

初めて侵入に成功したダミアンは理事長室の前まで到達した。
そこには先客がいた。マリーニが古典的な方法で盗聴していたのだ。

3人の証言を付き合わせると、犯人は周到に用意していたであろう事が想像できた。
被害者の行動パターンや趣味を知っていないとできない犯罪…
お茶会のことは当人達しか知らないはずだが、和音が聖堂に招待状を落としていた…
史緒は視力が良く、2人組の外国人の姿をハッキリ見ていた。
「外国人といってもいろいろですが・・・イタリア人です!」
「常識では計り知れないハデな色柄の衣服を着用するに及ぶという行為…
 それ自体が何よりも自らイタリア人である事を雄弁に物語っています」
史緒さんの「直感」は普通「偏見」と呼ばれている。が、たまには当たることもある。

697 名前:笑う大天使(ミカエル)[sage] 投稿日:2006/07/06(木) 13:36:33 ID:???
証言を終えた3人を家族が迎えた。
お昼前でお腹をすかせた2人に、史緒は買ってきた麦チョコを1袋ずつ配ろうとする。
車の中に置いてあるので3人で取りに行った。
無事に1袋ずつ受け取り、封を開けたところでシスターに遭遇。
慌てて麦チョコを隠し、猫をかぶる。

シスター「こんな時こそ聖書を読んで、気持ちを落ち着けましょう…」

聖書… マリーニの聖書…  最も怪しい人物に気がついた。

急いで理事長室に引き返そうとする3人に銃を突きつけたのは、そのマリーニ神父だった。


556 名前:笑う大天使[sage] 投稿日:2007/10/29(月) 18:14:39 ID:???
今までの方々ではありませんが続き補完
 「やっぱしお前が犯人の一味だったんだな!」
マリーニの耳には盗みぎきした時に使ったコップのあとが付いていた。
マリーニは銃をつきつけ三人組を車に押し込む。
しかしその時麦チョコの袋が1つ車のドアに引っかかったのには気付かなかった。
 
 一方その頃、ロレンスはイタリアのジョーンズ神父と電話中、ジョーンズの
話すマリーニ神父の容姿を聞き、やっとマリーニが偽者に摩り替わっていることに気がついた。
三人組の保護者陣のもとには偽マリーニが落としたコップから招待状についていたのと同じ
指紋が採取されたとの報が。保護者陣は三人組の姿が見えないことに気付く。
 
駐車場に来た保護者陣は、偽マリーニの車が見当たらず、麦チョコが点々とばら撒かれて
いることに気付く。麦チョコを拾い食いすることで偶然にもマリーニを追跡することになった
ダミアン、ダミアンの後を追うパトカー。
 一方誘拐されているにもかかわらず偽マリーニこと「ユダ」の車にケチをつけたり車を勝手にいじったり
麦チョコ食ったりと三人組はやりたいほーだい。しかもユダの所属する人身売買組織が12人の少女を誘拐した
事を知り、「超人的パワーを役に立てる時」とニンマリ。
 組織闇の十二使徒(12使徒の名を持つメンバーで構成)の待つ倉庫に来た三人組は
監禁されるが、そこにはビン底メガネに釈迦黒子の真マリーニがいた。12人の
娘達は絶滅危惧種「ヤマトナデシコ」として海外に売りに出されるのだという。



557 名前:笑う大天使2[sage] 投稿日:2007/10/29(月) 18:36:22 ID:???
 壁を超人パワーであっさり破壊した三人組は、ヘルメットと手ぬぐいで変装し
オリに閉じ込められ泣く泣く神に祈っていた沈丁花や白薔薇らを救出、マリーニと共に警察を呼びにいかせる。
 そこにユダが登場「一歩でも動いてみろ、銃の引き金も動くぞ」「撃てよ、撃ってみろよ、さあ撃てば?」
銃は史緒の怪力により一秒でスクラップにされた。「おまえら何者だ!?」
「貴様らなんかに名乗る名前はない!」といいつつヘルメットと手ぬぐいを取ったら何にもならんがな。
 「よく聞け闇の十二使徒、貴様等の命はあと一分」三人組は十二使徒を鎖で縛り、天井から吊り下げ、残りの人質の
場所を吐かせようとする。

「吐かぬなら吐くまで待とうホトトギス」和音はロープを持っていた。
「吐かぬなら吐かせてみしょうホトトギス」柚子は火の付いたロウソクを。
「吐かぬなら殺してしまえホトトギス」史緒は鎖を。
「女王さまとお呼び」「女神様とお呼び」「オスカル様とお呼び」
「「「もんくがあるならベルサイユへいらっしゃい」」」
・・・十二使徒は脆かった。

 警察が白薔薇たちの通報をうけているころ、3人組は無断拝借した手漕ぎ舟で組織の
本拠地であるベレニーチェ・レジーナ号に向かっていた。警察が港についた時見たものは
船体に大穴をあけて沈みかけているレジーナ号と、無事に救出された人質全員と、
倉庫の片隅で制服姿で眠る3人組の姿だった。

 誘拐事件は解決した。12人のイタリア人は逮捕された。
少女達を救出した「労務者風の三人の天使」の正体については
事の真相について知っていたり気付いていたりする人たちが全員
なぜか何も言わなかった、聞かなかったことにしたので、お宮入りした。
 本物のマリーニ神父は国に帰っていった。不思議なことはメンデレーエフの力
が消え去ったことと、白薔薇の君が事件をきっかけに柚子兄にぞっこんになってしまった
事である。ダミアンは事件解決のお祝いにケンタッキー15ピースをもらい、
人生って素晴らしいと思った。そして気がつくと、三人組は高校三年生になっていたのだった。


558 名前:笑う大天使外伝1[sage] 投稿日:2007/10/29(月) 19:22:34 ID:???
内容:
外伝については「読め!」としか言えない味わい深い名作群なので、あらすじのみ紹介。
「空色の革命」
和音は髭の手入れ中の父、斎木を脅かして、斎木はうっかり髭を全て落としてしまう。
母は髭を落とした斎木の顔にこっそり大爆笑。それが斎木家の革命の始まりだった。
 俊介は父はヤクザに殺され、母は失踪、当たり屋として自活する中学生だったが、気迫
を見込まれ、カモの「斎木」という男に拾われ、小汚い2・3歳位の娘に引き合わされる。
それが和音だった。俊介は、両親にかまってもらえない和音に7つの祝いの着物を着せたり
一日に一回は叱ったりと大事に育ててきた。
 マラソン大会に出場していた和音を、斎木の取引先の稲垣が見初める。稲垣は財界の名門の
跡取りの三十三歳。お見合い話を俊介から聞かされた和音は、あっさりOKしてしまう。
 「俊介がいいなら それなら私もいいよ〜」ついには結納まで進んだ。
しかし人妻になる和音を俊介は突き放しはじめる。
「私と一緒に嫁にいかないか?」当然断る俊介。
 しかし和音は「腹が痛くていけねーよ〜 助けてくれ〜 どこにも行きたくねーよ〜」
といいながら突然倒れる。



559 名前:笑う大天使外伝1[sage] 投稿日:2007/10/29(月) 19:24:33 ID:???
 慌てて戻ってきた両親は、自分達を責める。
 父はチンケな不動産屋だった。しかし、空色のワンピースの大名の直系子孫の令嬢
(母)に一目ぼれ。しかし彼女と結婚できるのは鳴沢家の城を管理する能力と金を持った
男だけだ。絶望した父は資産を全部逆張りに投資したが、何故かそれが大当たり。
大企業の社長になった彼は母のもとにプロポーズしにいくが、鳴沢家当主の前で
「お城を下さい そのかわりお嬢様の件はお引き受けいたします」と練習してきた
文言とお城とお嬢様を逆にした台詞を吐いてしまう。
 当主は面白がって結婚を許すが、怒った母は結婚後、父が2m以上近づくと
懐剣で自害しようとするは、すねた父は「折を見て隙を見て」和音が生れた
時「何だ、女か」といってしまうはで、夫婦関係をどんどん悪化させてしまったのだ。
 「損しましたね、20年間も」俊介の台詞で夫婦の冷戦はあっさり終結した。
 一方和音のもとには柚子たちが終結していた。
「俊介の言うとおりにしていれば間違いは無いからさ〜」
「人のせいにすんなよ、脳ミソ使わないから胃にツケが回ってきたんだぞ」

 俊介は稲垣の下に謝罪にいくが「和音と話していると、俊介の話ばかり聞かされる。
こんな事になるんじゃないかと思っていた。」と優しく言われ、返す言葉もなかった。
 リンゴをもう一個くれとゴネる病床の和音を俊介は叱る。
『今日も俊介さんに叱られてしまいました。よかった。』
 父は愛人と手を切ったらしい。空色のワンピースを着た母と鳴沢の城に仲良く出掛けていく。
『とーちゃんとかーちゃんは 一緒に行きたかったのだ・・・』

560 名前:笑う大天使外伝2[sage] 投稿日:2007/10/29(月) 19:59:12 ID:???
「オペラ座の怪人」
 柚子は商店街の福引でイギリスへの往復航空券をもらい、ロレンス先生の冬休みの帰郷にあわせて実家に滞在させてもらうことに。
ロレンスは貴族で、ノーザンプールに城のような豪邸を持っていた。和音と史緒も後を追ってイギリスへ。
 柚子が豪邸にあんぐりしていると、ドイツ人のオペラ歌手が突然出現。コートの裾をふんづけ、壷を破壊する。彼はロレンスの
親友、ラインハルト(おハルさん)だった。
 ハルは夜中に「テディベアル」を探して寝ぼけて屋敷をうろついていた。
 ノーザンプールに着いた和音らは、屋敷の近くで、歩き喋るテディベアに遭遇、仰天する。
 
 熊の名はルドルフ。ハルの父がハルにお守りに与えた熊で、歌以外に才能の無いハルが、辛いとき祈りを捧げた結果、命を持った。
ハルは父の死を乗り越え、有名歌手にスカウトされ、成功への道を歩み始める。ハルは成功はルドルフのおかげだと思っていたが、
ルドルフは、それがハルの努力や親友の支えによるものであることを知っていた。命を持っていることに気付かれたことや、ハルに
何もしてやれない無力感からルドルフは家出。オペラ座をはじめとしてヨーロッパ巡りの旅の後、事を相談すべくロレンスを頼ったのだ。
ロレンスは「君は君であって然るべき存在理由が・・・」など難しいことをいってルドルフを説得、ハルとルドルフは感動の再会を果した。
 五人と一匹は仲良く遊んだ。ドッジボール・ピクニック等々。柚子とルドルフは背の高さが近いせいか意気投合する。しかしルドルフ
やロレンスは、ハルが瘠せ、コップを落としたりと弱っているのを心配する。


561 名前:笑う大天使外伝2[sage] 投稿日:2007/10/29(月) 20:01:00 ID:???
別れの日、ハルは柚子に思い出の舞台衣装であるピエロの服を与えた。その後、日本でもハルの大舞台「ローエングリン」の成功は
大きく報じられた。
 柚子はイギリスの御礼にとプリンを持ってロレンスの日本のアパートに来ていた。誰か来た様だ。玄関を開けるとそこにいたのは
すっかり旅なれた様子のルドルフだった。
 彼は息を切らして言った。
 「ハル君が入院して・・・心臓の具合がよくなくって。でもすぐに良くなるってハル君がそーゆーから」
 「皆さんがお見舞いに来てくれたらもっと元気になるんじゃないかと・・・」
 突然、電話が鳴った。
 『・・へんだぞ すごく いやな予感がする やめろ その電話に出るんじゃない ロレンス! 電話を切れ・・』
 電話に出たロレンスは受話器を力なく取り落とした。
 『うそでしょう? ハル君・・・』ルドルフは大きななみだをこぼすと、汚いぬいぐるみに戻ってしまった。
 『忠実なクマ ルドルフ君も 眠ってしまったのだ 泥にまみれてボロボロになって・・・』
 「かわいそーにね・・こんなに遠くまで来たのにね・・間に合わなかったね・・」
  三人組はハルのための花代を持たせ、ロレンスを葬儀に送り出した。
  一週間後戻ってきたロレンスは食事をあまりしなくなった。柚子はロレンスのために毎日夕食を作りにいく。
 『今 心優しいオペラ歌手とその忠実なクマは 西ベルリンの墓地に一緒に眠っている・・』

562 名前:笑う大天使外伝3[sage] 投稿日:2007/10/29(月) 20:52:55 ID:???
「夢だっていいじゃない」
 兄一臣のもとで暮らし始めて一年が過ぎ、史緒はすっかり猫かぶりいらずの
関係を保っていた。
 柚子はミカエル短大英文科への進学、和音は体育大への進学が決まった。
和音の両親はすっかり和解、俊介を例の事件もあってかわが子のように扱うように。
柚子のロレンス家通いも続いている。柚子の兄は白薔薇と婚約した.
 史緒は兄の手を踏んで原稿を書けなくしてしまい、口述筆記をするはめに。
兄のファンタジー小説について語り合い、「悪女と結婚するよりは気の合う
男同士で旅立つほうが幸せだ」と結末を変えさせたりと楽しく暮らしていた。
 そんな史緒の悩みは、兄の女性関係にあった。
大好きな時代劇を見ている史緒のもとに現れ「五分で着替えてください」と兄。
いつもの兄のデートへの同伴だ。デートの相手はソープ嬢からOLまでと様々だが、
決まっているのは兄が史緒とばかり話していること、相手の女性が当然ながら史緒に
敵意を向けることだった。
 そんなある日、親戚の叔母さんが兄に見合いを持ってきた。銀行筋の令嬢、桜井敦子だ。
兄の老後を心配する史緒は、見合いを勧める。「年をとってからの孤独は厳しいぞ、わしゃ知らんぞ」
 敦子は史緒に優しかった。交際も順調にすすみ、結婚に至るかと思われたある日、敦子は史緒に、東大を蹴って
スイスに留学するように勧める。未来の兄嫁の勧めならと史緒も乗り気になってしまうが、柚子らは
敦子が史緒を家から追い出そうとしていると気付き、一臣にチクる。

563 名前:笑う大天使外伝3[sage] 投稿日:2007/10/29(月) 21:07:58 ID:???
兄は敦子の「たまには妹さん抜きでお話したいわ」というホンネを聞き、語り始める。
「僕には妹に対する負い目がある。ですから、一緒に暮らすのであれば 僕より
妹を大事にしてくれる人を望みます」 
 
 2人が始めて出合ったのは、母の葬儀の日だった。史緒は母の臨終と葬式に
一人で立会い、呆然として泣くことすらしなかった。「どんなに心細かったろう
辛かったろう」それが兄の負い目。

 盗み聞きしていた史緒もその日のことを思い返した。
月夜の道を兄の背中を見ながら歩いた。今までの生活をお互いに語り合った。
「偉かったね、史緒さん」そう言われて、だんだんだんだんほっとして、心細さとか
辛さとかだんだんだんだん消えていって、月があんまり綺麗で
『だからほんとは・・わたしは・・・泣きたかったんだよ兄ちゃん・・・』
  
 兄は妹同伴のデートで、自分よりも妹を大事にしてくれる女性をふるいにかけて
いたのだ。結局、誰も残らなかったというわけだ。
「明日さー、学校来る?」「行かなくてどうします、卒業式なのに」
「−よし!そんじゃお礼に、兄ちゃんが孤独な老人になったらば私が面倒見てあげよう!」
夢見たいな話だが それならそれでいいじゃないか 夢だっていいじゃないか

卒業式が始まった。三人の集合写真の横には、三人のその後のプロフィールが。

柚子はミカエル短大卒業後、ロレンスと結婚、6人の母として日、英両国で暮らしている。

和音は俊介と結婚し、聖ミカエル高等部の体育教師を経験後、スポーツインストラクターに。
二児の母。

そして史緒は東大卒業後、司法試験と上級国家公務員試験に合格、大蔵省に入省。
初の女性事務次官となった。そして、兄一臣とのあの日の約束を守っている。
終。