MARS/惣領冬実
519 名前:MARS 1[sage] 投稿日:05/03/13 07:34:23 ID:???
惣領冬実(そうりょう・ふゆみ) 講談社 『MARS』 全15巻+番外編1巻
タイトル『MARS』とは、ローマ神話より「軍神・戦争の神」の意。マルスとも。

対人恐怖症を抱えて周囲から孤立してきたキラと、原因不明の記憶喪失に陥り、刹那主義に生きる零。
同じ高校に通うふたりは、偶然の出会いを経て、互いの心の傷に触れ合い、どうしようもなく惹かれ合う。
付き合い始めた彼らは、それをきっかけに、それぞれが目を背けていた辛い過去と向き合うこととなる。

零の痛みは、双子の弟を自殺で失ったこと。幼い頃から身体が弱かった弟を、必死に守っていた零。
中学時代のある日、零は、呼び出された学校の屋上で、弟がその身を投げる現場を目撃してしまう。
今なお生き続ける弟の幻は、当時の零を傷つけ、蝕み、拘束服を身に纏うほど荒れた生活を強いていた。

キラの愛を得て、弟の死を乗り越えた零に、親しげに近づく少年桐島牧生(きりしま・まきお)。
牧生は、かつての零と似た、冷えきった目で零を見つめ、羨望と侮蔑の混じった言葉を吐きかける。
「誰かを愛するあなたなんて、見たくもない」──恋人キラの危機を感じ、零は、恐怖に身を凍らせる。

牧生の冷酷で悪意に満ちた言葉に、キラは忌まわしい過去を蘇らせ、零と触れることも叶わなくなる。
キラの痛みは、継父に陵辱されたこと。恋人の封印された秘密を知った零は、一刻も早くキラを継父から
遠ざけようとするが、病弱な母を抱える家の経済状態を心配するキラは、なかなか首を縦に振らない。
しかし、零を疎ましく思い、別れを迫る継父が、再びキラの身体に触れたとき、キラは過去と決別する。
ひとり暮らしをする零の元に転がり込んだキラは、零と結婚を誓い合い、初めて身体を重ねる。

520 名前:MARS 2[sage] 投稿日:05/03/13 07:35:09 ID:???
キラは、零が、とある大企業の御曹司であると知るとともに、彼と彼の父親の間にある確執に気づく。
零たち双子は、実母の不貞の末に出来た子どもだった。その母も、本当の父も既に他界した今、
残された零たち親子の関係は、ひどく不安定なものとなっていたが、キラの継父に誘拐・監禁罪を
問われかけた零を救い、自分に安住を保障した零の父に、キラは、その不器用な愛し方を感じ取る。

キラとの生活と引き換えに、いずれ企業のトップを任される身になった零は、バイク・レーサーの夢を
諦め、父に付いて帝王学を学び始めるが、簡単にその想いを消すことは出来なかった。
サーキットに焦がれる零の熱い胸の内を知ったキラは、その滾る情熱を彼の父に伝えて懇願する。

平穏な日々。父の了承を得て、バイク・レーサーを目指すこととなった零の前に、再び、牧生が現れる。
荒れていた頃とは違う、穏やかな表情をする零を目の前にして、牧生は、ひどく失望したと冷笑する。
「同じ血の匂いがすると思ったのに……」牧生は、持っていたナイフを零の腹に突き立て、逃亡する。

零が重態だと聞かされたキラは、友人とともに病院に駆けつけ、ただ無事を祈って待ち続ける。
零は、瀕死の状態から峠を越えた後、奇跡的な回復を見せ、キラたちを安心させる。
一方、殺人未遂容疑で捕まった牧生は、今まで彼を支えてきた零の存在を自ら葬り去り、精神病院に
収容される。牧生の面会に訪れた零は、かつては牧生と同じ穴のムジナだった自身を思い、改めて
キラとの出会いに感謝する。キラと零の新しい生活は、まだ始まったばかり──。 <了>

※番外編『MARS〜名前のない馬〜』のテーマは、キラと知り合う前の零の日常と親友との出会い。