ライン/小手川ゆあ
231 名前:ライン[sage] 投稿日:2005/07/19(火) 14:52:15 ID:???
 チーコはいまどきの遊び好きな女子高生。登校時、チーコは駅のホームでケータイを
拾う。帰りに届けようとそのまま持ってきてしまったのが不幸の始まりだった。

 体育が終わった更衣室でそのケータイが鳴る。出てみると知らない男の声。
「3時50分に駅ビルで人が死ぬ」
それだけ言うと電話は切れてしまった。

 帰り道、駅まで来てからやっぱり気持ち悪いから今日中に交番に届けよう、と
思った矢先、ケータイが鳴った。
「チーコちゃん。小鳥みたいな名前。早く屋上に行ったほうがいいよ」
なんだお前? と問い詰めるといきなり空から人が降ってきた。

「お前が殺したの?」
「違うよ。ぼくは未来が見えるだけ。ケーサツに言っちゃダメだよ
 ぼくはただ未来を予知して君に教えるだけ。ぼくはぼくが見た未来を
 君に変えて欲しいんだ。次は15分後、シブヤの山手線のホームだよ。」

チーコは目の前にいたクラスメイトってだけで特に仲もよくないバンドー(女)に
思わずつきあってくれない? と声をかけた。


232 名前:ライン[sage] 投稿日:2005/07/19(火) 14:53:16 ID:???
二人は山手線に乗った。チーコはわけがわからずパニくっている。
バンドーは冷静だ。そして電車がものすごい勢いで止まる。
「当電車は人身事故のため緊急停車いたしました…。」
間に合わなかった。

二人はシブヤで降りた。一息つくまもなくケータイがなる。
「次はセンター街だよ」
「ざけんなテメェなんなんだよ! お前が殺してるんだろ!? 行くかバカ!」
切ってもすぐ鳴る。戸惑うチーコ。
「出なよ」バンドーが冷静に言い放つ。バンドーこえー、とチーコは思うのであった。

「君に危害を加えたりしない。今晩限りだからつきあってよ。
 次はセンター街、カラオケの入ってるビルの屋上10分後。がんばってね」

「次はどこだって?」
「なに…笑ってやがる… くそっ! どいつもこいつも頭おかしいって!」
そう叫ぶより前に体はダッシュしていた。

 センター街にカラオケ屋なんて山ほどある。とりあえず目星をつけて、店員を
振り切って屋上へ上がる。しかしそこは屋上へは入れなかった。ふと見ると正面の
ビルに人影。その影は手を振ると落ちていった。

233 名前:ライン[sage] 投稿日:2005/07/19(火) 14:54:14 ID:???
「残念そっちのビルじゃなかったんだ」
「あいつ…飛び降りたよ…」
「そうだよ、みんな自殺なんだ。君は選ばれたんだ。”最後の希望”として彼らに。
 次は15分後原宿駅。急いで!」

原宿駅が見えてきた。「あんなたくさん人がいるところで…?」
歩道橋の上に、線路に飛び込もうとしている影が見えた。
「誰か止めろっ!」チーコは叫ぶが誰も止めようとしない。影はそのまま
線路へ向かっていった。
だからなんでそんな簡単に死んじゃえるわけ?
歩道橋にいた人々は死体を見て言いたいことを言っている。
「あんたら近くにいたのになんで止めなかった!」
何コイツ? ヤベェやつ? 人々は散っていく。

 チーコはこの状況を面白がってるバンドーにケータイを渡して仲間の
溜まり場へ行く。
 そこでバンドーってチーコのこと好きなんじゃね? 疑惑発覚。
そういえば電車が急停止したときも、原宿行くときにコケそうになった
時もかばってくれたなぁ…。

こんなたくさん楽しいことあるのになんで自殺?
あのラインを越える人と越えない人の違いってなんだろ?
バンドー、あんたはあっち側にいるの?
いろんな思いが錯綜するチーコ。

チーコは再びバンドーのもとへ戻る。
「ヘンタイとは遊ばないんじゃないの?」
「バカのほうが楽しいって教えてあげたいんだよ」

234 名前:ライン[sage] 投稿日:2005/07/19(火) 14:54:54 ID:???
そしてケータイが鳴る。
「次は代官山。陸橋が見えるビル30分後」

「おっしゃ走ってやる!」

チーコの身体能力にビビるバンドー。
「何でずっと運動ダメなフリしてた?」
「笑わすネタに決まってんだろー みんなで楽しいのが一番なんだよ!」

二人は初めて間に合った。説教かましまくり。
彼らはケータイサイトでこの計画を知って乗っただけで仕掛け人が”タスク”と
名乗ること以外は何も知らないという。
「あんたはあたしに命預けたんだ! これからはなんでも言うこときけよ!
今日からシャテーだ!」
「は、はい」
そしてまだ10人くらいいると聞きゲンナリする。
「次は南青山の骨董通り。クラブがあるビル。後25分ね」

なんでこんなにムキになってんのか
死にたいやつは勝手に死ねばいい
と思う
けど
「なんで止めなかった!」
そんな言葉が自分から出た
本心だった
あたしは無視しない
あたしは止める

今度も助けることができた。
「次は原宿15分後…」
「オーケイ 意地でも死なせねぇ」

235 名前:ライン[sage] 投稿日:2005/07/19(火) 14:56:07 ID:???
 そこへ警官が現れる。事情は話せない。答えはひとつ。
四人(チーコ、バンドー+助けた二人)は警官を振り切って原宿へ向かう。

日常にぽっかり空いた暗い穴にムリヤリ引きずり込まれ感じだ
ここから出ないと
ここにはなにもない
考えてはいけない
答えなんてみつからない
ただ何も考えないで走るんだ

もうすぐ目的地、というところで再び警官に阻まれる。
通りをはさんだ向こうで自分の体に火を付ける人がいた。
チーコはダッシュで消しにかかる。警官もかけつけて消化活動。
その隙に4人は逃げ出すことに成功した。

そっからどこをどう走ったか覚えていない
死ぬほどノドが渇いて
死ぬほどハラが立って

一人ひっぱたき
二人ひっぱたき

一人増え 二人増え

夜が明けた。ビルの屋上で全員を助け出した。ケータイが鳴る。


236 名前:ライン[sage] 投稿日:2005/07/19(火) 14:56:42 ID:???
「お疲れ様チーコ。終了だよ。君はすごい」
「タスク、あんたはどこにいる?」
「くすくす。教えないよ」
「居場所わかんなきゃ止めにいけねぇじゃねぇかよー」
「ありがとう。気持ちだけもらっておく」
そしてケータイは切れ二度と鳴ることはなかった。

「大バカだ チクショウ」
「これだけ人数集めて死ぬことしか考えないなんてバカだお前ら」


「とりあえず−寝っぞ」
「賛成」

その頃、一人の少年が身投げしていた。

チーコ、バンドー&シャテーたちは屋上にいるところを警察に保護され警察で
説教をくらった。
でも必死な大人たちをみてちょっと安心した。
いつもの場所に帰ってこれたなぁって

人はつながっていたいんだ
共通の敵を作ったり
共通の目的を持ったりして
敵を作るのは子供のやり方だ


237 名前:ライン[sage] 投稿日:2005/07/19(火) 14:57:18 ID:???
「ねぇ、長野さん すげぇ変な連中の集まりがあるんだけど行かない?」
「あ、バンドーも行くよな?」
「!?」
「それってどんな集まりなの?」
「すっげぇ変なんだぜ なんせ
  全員筋肉痛」
「ぷっ」
「なんだよバンドー」
「別に」