吸血†聖女キリエ/杉村麦太
265 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2005/07/20(水) 01:39:21 ID:???
「吸血†聖女キリエ」 作・杉村麦太 全二巻

19世紀半ばの荒野を舞台に、ガンシューティングで戦う吸血鬼のお話。
巻数が少ないのでちょっと詳しく書きます。

甘い救いなんかどこにもなくて、それでもひたむきに救いを求めて戦い続ける主人公、キリエ。
台詞回しがカッコイイ。この作者、腐女子がニューナンブぶっ放す読み切りを最近どこかの雑誌に掲載してた。

最初に一、二話が読みきりで掲載され、好評だったので三から十三話(全十一話。企画段階では八話を予定していたらしい)、
んで、さらに好評だったので十四〜十八話を掲載したらしい。
266 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2005/07/20(水) 01:40:07 ID:???
1870年、アメリカ合衆国─西部─アリゾナ州─サンベルナルディノ。

孤児院の庭で、自警団を名乗る荒くれ者たちが一人の少年を殺そうとしていた。
少年が「狂血病」患者──「吸血鬼」だという理由で。
それを救ったのは、黒衣に身を包み、黒い日傘を差した少女だった。
少年─ロイ─が狂血病を患っていないことを証明してみせ、日傘に仕込んだ銃で荒くれ者たちを追い払う。
少女の名はキリエ。母を亡くし、生き別れの父を探すために荒野を旅していると、孤児院のシスターに語る。
シスターと子供たちに強く引き止められ、キリエは渋りながらも孤児院で一夜を過ごすこととなる。
再度荒くれ者(地上げのために孤児院が狂血病患者の巣窟だとデマを流していた)が孤児院を襲うが、
不死身の如きキリエの活躍によって返り討ちにあう。

その夜。ロイとシスターは、昼間の荒くれ者たちの死体をむさぼるキリエの姿を目の当たりにする。
血液に反応して赤く染まる瞳、十字架によって焼け付く肌。キリエは狂血病患者──吸血鬼だった。
だが、怯えながらもキリエの気高い魂を信じるシスターによってその事実は他の者に秘密にされ、
キリエは笑顔に見送られて孤児院を後にした。

一方、地上げを画策していた鉄道屋の元に防疫修道会巡回浄滅吏官(ゲヘナ・マーシャル)を
名乗る神父の一団が訪れる。彼らはキリエを探し出して殺すことを任じられていた。
鉄道屋は孤児院に住む子供たちを皆殺しにすることを依頼し、
リーダー格フランシスコ・レンブラントはそれを賄賂とともに受諾した。

267 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2005/07/20(水) 01:42:07 ID:???
銃声を聞きつけて孤児院へ戻るキリエだったがすでに遅く、シスターと子供たちは磔にされて息絶えていた。
フランシスコは「黒衣の者」の血を引くキリエと一夜を過ごした以上この処分は当然だと、キリエをなじる。
ハモニカ形短銃、十字ナイフなどの攻撃を捌き、瞬く間に四人の神父を殺すキリエ。
残るレンブラントも、シスターから貰った十字架を投げて陽光を反射させ、それを目くらましにあと一歩のところまで追い詰める。
だが皮肉にも、その浄光に焼かれてキリエは致命的な隙をさらけ出してしまう。
勝利を確信して引き金を引くレンブラント。「主は我と共にあり!!」
その弾丸はいまだ宙を舞っていた十字架に弾かれ、キリエの頬を掠めただけであった。
呆然とするレンブラントをキリエは撃ち抜く。「神様…どうして私なんかを生かされたのですか…」

「狂血病患者を救う手段は唯一つ…一つきりだ すべての始まりとなった旧大陸より来たる『黒衣の男』…その者の血を…
 この広大なる大陸のどこかにいる…奴の血だけが唯一つの救いの術」

「You never escape. Mr.CHOO CHOO!」



第一話「黒衣の少女」から第二話「防疫修道会」まで

268 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2005/07/20(水) 01:43:01 ID:???
1870年、テキサス州─米墨国境地域

山賊まがいの革命軍にキャラバンを襲撃され、キリエを含む8人の旅人は砦跡に立て篭もった。
その中の一人、パットという少年が狂血病に罹患していることが発覚し(ついでにキリエも狂血病だとばれる)、
皆殺気立つが、整銃技師ラーマリアの説得によってその場は事なきを得る。
一度は凶暴化したパットも、キリエの眼光によって症状が沈静化した。
ラーマリアの提案によって、山賊を撃退するための罠を砦に張り巡らす。

山賊のの目的は「サンプルNO.7」と呼ばれる子供の確保であった。
それを山賊に依頼したのはノッポの神父、防疫修道会マルチェロ・モディリアーニー。
立て篭もった者の中にキリエがいることを知ったマルチェロは、NO.7の確保と同時にキリエを殺すため、全軍攻撃を指示する。

狂血病患者となったパットを庇い続けて旅をする母親の姿に、キリエは自分の母の面影を見る。
周囲と距離を置こうとするキリエとなんとか交流を持とうとするラーマリア。
ラーマリアの持つ浄銀弾は吸血鬼を殺せるが、だからこそこうして対等に話せるのだと、ラーマリアは語る。
友達にはなれないかも知れないが、怯えたり憎んだりを続けるよりはマシだと。

269 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2005/07/20(水) 01:44:26 ID:???
山賊軍の総攻撃が始まったが、キリエとラーマリアの活躍により全滅する。
最後にキリエの前に現れたのはマルチェロ。彼はソリアより来たと言う。
狂血病解明のためには多くのサンプルが必要であること、故意に狂血病患者を村に放ち、
パットを「サンプルNo.7」にしたとマルチェロは得意げに語る。
折りたたみ式の伸縮連装銃をその長身で操るマルチェロに、打つ手を見出せないキリエ。
接近戦に持ち込むが、山賊との戦闘でキリエは衰弱しきっていた。
罠に誘い込もうとしているのだと看破したマルチェロは、キリエを罠からの安全地帯に逃げ込ませない。
だが、キリエはかまわず罠を発動させる。尖った杭がキリエを襲い、だが、杭は小柄なキリエの頭上を通過して、
延長線上に立つマルチェロの胸を貫いた。「ノッポは損だね」
「黒衣の者」の子、キリエをソリアは決して逃さない、と言い残し、マルチェロは息絶える。

全てが終わった後、キリエはパット母子をどこかへ逃がしてくれるようにとラーマリアに懇願する。
だが、戦闘の血に当てられて狂血病の発作を起こしていたパットは、自らの手で母親を殺し、その血を啜っていた。
一発こっきりの浄銀弾でパットを撃つラーマリア。キリエはラーマリアの胸に顔をうずめて嘆く。

「もしかしたら…誰も知らないどこかで母子二人でなんて──
 ほんの少しでも思うんじゃなかった……」


第三話「サンプルNO.7」から第五話「モディリアーニー」まで

271 名前:吸血†聖女キリエ[sage] 投稿日:2005/07/20(水) 03:10:08 ID:???
フォートスミス西50km─ネイティブアメリカン居留地(現オクラホマ州)

黒衣の者が防疫修道会の手によって捕縛された。
鋼とベトンで固められ、アンティオキアの聖十字に封じられ、護送馬車へ運び込まれる。
その周囲には、合衆国陸軍一大隊の屍が広がっていた。

10日後、ニューメキシコ準州

西へ向かうキリエと、同じく西へ向かうとキリエにまとわりつくラーラマリア。
日差しに倒れたキリエを抱えて途方にくれるラーラマリアは、地図に載っていない村を発見する。
異常なまでに厳重な警備に追われた二人を匿ったのは、絵描きの狂血病患者、エミリオだった。
この村は狂血病の療養所だと説明するエミリオ。そこに療養所の所長が現れる。
狂血病患者の発作を制御する力を持つキリエに興味を示した所長は、キリエを捕獲する。
十字架に磔にされて強い陽光に晒されるキリエ。
三日後に黒衣の者を護送する馬車がここに立ち寄ると知らされたキリエは、
激しく興奮して「あいつを殺す!」と喚き出す。

体力の限界に来ていたキリエだったが、エミリオによって開放される。
ラーラマリアと合流し、村からの脱出を図る。悲観するエミリオに、キリエは狂血病を治す方法があることを伝える。
その時、療養所内の患者が一挙に凶暴化しはじめた。黒衣の者を載せた馬車が到着したのだ。
雄叫びを上げて馬車に襲い掛かるキリエだったが、ソリア七会士の一人「調律士ルオー」が立ちはだかる。
キリエの父親である黒衣の者とキリエの対面を阻止するため、ルオーはキリエを足止めする。

273 名前:吸血†聖女キリエ[sage] 投稿日:2005/07/20(水) 03:11:51 ID:???
「吸血鬼ノ父と人間の母との間に生まれた半分≠フ子 己の母を喰らって生き永らえた鬼女よ!」

バイオリンに仕込んだ鋼線と針によって兵士を強化して操るルオーの戦法に、キリエは苦戦を強いられる。
弾切れをおこして打つ手を無くすが、ラーラマリア製の試作オートマチック銃がエミリオの手によって渡される。
操られていた所長や兵士を殺し、ルオーを撃つ。だが、仮の姿を捨てて本体を現したルオーはエミリオを盾にとった。
エミリオごとルオーを撃つことを拒むキリエだったが、エミリオの励ましを受け、引き金を引いた。

「やっぱり明日はなかったのかい? 狂血病を治す方法はあるってキミは…そう言ったじゃないか!?
 明日はあるんだろう? キリエ!?」

「明日はあるっ あるわ!! あの血の色の向こう西の果て…ソリアに!!
 あいつがいるっ そこにいるから!!」

第六話「地図にない村」から第十話「明日」まで

274 名前:吸血†聖女キリエ[sage] 投稿日:2005/07/20(水) 04:01:59 ID:???
旅の途中、キリエとラーラマリアは脱走奴隷である黒人の少女を救う。
彼女──ルーミーはキリエの知り合いだった。だが、ルーミーはキリエに対して嫌悪を露わにする。

「5年前 ホーリーロックの町で キリエは…アイツ」は村の人達を皆殺しにしたッ 自分のお母さんまで食い殺したのよ!!」


5年前、ミズーリ州─ホーリーロック

修道女の母親と慎ましく暮らしていたキリエだったが、墓場が荒らされていることを不審に思った村人の通報により、
その存在を修道防疫会に知られてしまう。防疫会が村に来たことをキリエの母に知らせようとしたルーミーは、
キリエの「食事」を目撃してしまい、また、結果的にキリエの居場所を修道会に知らせてしまう。
キリエを庇って銃弾に倒れた母は、己の血肉をキリエ与え、ここから逃げるように言う。
キリエはルーミーの目の前で母を食い、修道会の者や村人を皆殺しにして逃走した。

275 名前:吸血†聖女キリエ[sage] 投稿日:2005/07/20(水) 04:03:04 ID:???
ルーミーとラーラマリアから離れて物思いにふけるキリエ。
その虚を衝かれ、ルーミーはソリア七会士の一人「算学のクラナッハ」によって連れ戻される。
クラナッハは奴隷を使役して、神学的に計算された吸血浄滅用の神殿城砦「昇天十字楼(カンパナリオ)」の建造に携わっていた。
ルーミーを救い出すために昇天十字楼に乗り込むキリエだったが、建物内部ではキリエの戦闘能力は大幅に削がれる。
森羅万象を計算しつくしたクラナッハの行動予測、完璧な跳弾攻撃に翻弄されるキリエ。
だが、別行動をとっていたラーラマリアが昇天十字楼を倒壊させたことにより、クラナッハの計算も瓦解する。

「地形はどんどん変わっていくのよ…もっと丁寧に計算しなきゃ 落ち着いてきっちり計算して でも急いで大急ぎで!!」

追い詰められたクラナッハはクイックドロウ勝負に持ち込む。「解は唯一つ キミの敗北だ!! Q.E.D.!!」
クラナッハが抜くよりも速く、キリエの銃撃が胸を貫いた。「落第よ、算数屋…」

キリエとラーラマリアはルーミーと別れ、旅を続ける。──西へ。


第十一話「再会」から」第十三話「西へ!!」まで

276 名前:吸血†聖女キリエ[sage] 投稿日:2005/07/20(水) 04:46:55 ID:???
防疫修道会本拠地ソリアは、壊滅の危機に瀕していた。
修道会の制御から逃れた「黒衣の者」が、ソリア内の狂血病患者を死兵と化して街を支配していた。
聖レジーナ大聖堂に巣を張り、いかなる者も黒衣の者に近づけない。
わずかな希望は──人の心を持つ吸血鬼、キリエ。

ソリアを目前にしたキリエとラーラマリアの前に、黒衣の者の使いがキリエを迎えに現れる。
そこに、ソリア七会士の一人「閃姫のサンタミカエラ」が割ってはいる。
100万ボルトの電撃を仕込んだ格闘術でキリエに挑むが、黒衣の者の使いによって自身が電撃を浴びてしまう。
だが、キリエはサンタミカエラを助け、使者を撃ち殺す。
それを見届けた七会士「薬読のアンナロッテ」はキリエに協力を要請する。
ソリアを襲う吸血鬼の軍勢を、黒衣の者を倒すために。

「今更キリエを利用しようなんてムシがよすぎる」と銃を構えるラーラマリアに、アンナロッテは
「利用しているのはあなたの方でしょう? 少佐」と返す。
ラーラマリアの正体は、アメリカ合衆国陸軍 第一葬兵連隊所属 ラーラマリア=クリストフォロス葬兵少佐であった。
キリエを利用する目的で近づいたこと、キリエが黒衣の者に心を飲み込まれたら殺すつもりだったことをキリエに告げる。
激昂したキリエはラーラマリアと別れ、修道会と共にソリアを目指す。


第十五話「ソリア」から第十六話「協約」まで

277 名前:吸血†聖女キリエ[sage] 投稿日:2005/07/20(水) 05:25:37 ID:???
陸路が吸血鬼によって閉ざされているため、潜水装甲艦でソリアに乗り込んだキリエ。
ソリアはすでに吸血鬼の手に落ちて、聖ベネディクト僧院が最後の拠点だった。
そこで大司教と対面したキリエは修道会が狂血病を研究するその目的を知る。
狂血病の原因と治療法を独占すれば、この大陸の支配者になれる。
その身勝手な言い分に怒るキリエだったが、それより先にサンタミカエラが大司教を殴る。
サンタミカエラの両親は狂血病患者で、浄滅されていた。

ソリア七会士「砲雷のアウレリス」の援護射撃を受け、キリエ、サンタミカエラ、アンナロッテは黒衣の者の元へ向かう。
吸血鬼となったソリア七会士「鋼腕のシャガール」「轟輪のドガ」が行く手を阻むが、
気球にのって駆けつけたラーラマリアの助けを得て先へと進む。

聖レジーナ大聖堂にて、キリエは父との対面を果たす。
狂血病の血清となりうる、黒衣の者の心臓の血を手に入れるため、キリエは黒衣の者に戦いを挑む。
黒衣の者の振るう長剣を掻い潜り、腕と脚を一本づつ犠牲にして、黒衣の者の頭部を吹き飛ばす。
だが、黒衣の者はその身に翼を生やして夜の闇に消えていった。

「神は…狂血病によって人の魂を試しておられる
 人の魂が殺戮と血の狂気の中で気高き魂を持ち続けることが出来るかどうかを試しておられるのだ
 それを見極める為に私はあの女にお前を産ませた」

黒衣の者の支配から解放された吸血鬼は朽ちてゆき、だが、血は得られなかった。
キリエは黒衣の者を追ってまた旅をするのだろうか。


「夜闇をまとう血塗られた聖女を 主よ憐れみ給え(Kyrie eleison)」
                                キリエ・エレイソン


第十六話「帰還」から第十八話「血まみれの聖女」まで