心の家路/遠藤淑子
282 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2005/11/10(木) 23:01:35 ID:???
『心の家路』やります。
作者は遠藤淑子、初版発行は1999年2月、花とゆめコミックス。
55ページ、他に4編を収録した短編集の表題作です。

283 名前:心の家路 1[sage] 投稿日:2005/11/10(木) 23:41:49 ID:???
クラスメートで女王様のレイアンから預かったマリファナがもとで、180時間の奉仕活動を課せられたロスの女子高生、ジェシィ。
ヘルパーに出かけた彼女は、ジャーナリストを休業して自宅療養中のハル、その従兄で同居人のレックスと出会う。
穏やかで優しいハル、子供のようなレックスとジェシィは次第に打ち解けてゆく。
ある日、罪を被ってくれたお詫びにとレイアンの誕生会に招かれたジェシィは、マリファナを勧められる。
そこへ警官が現れ、逃げ出したジェシィは、仕事帰りのレックスに拾われる。
髪に移ったマリファナの香りに怒るレックス。
本当は吸っていないジェシィだが素直になれず喧嘩になってしまい、彼女はヘルパーをさぼる。
3日が過ぎ、学校へハルがやってくる。
「ヘルパーなら代わりに誰か行ったでしょ?」
「ボランティアやヘルパーなら沢山いる。でも、君の代わりはいないから」
そんなハルの言葉に、素直に心情を吐露するジェシィ。
「私…薬に興味があるのでも、レイアンとなかよくしたかったわけでもない。
孤立するのが怖かったの。無人島で一人なのは怖くないけど、集団の中で孤独でいるって事がたまらない」
「ジェシィ、皆、孤独は怖いんだ。自分の気持ちをわかってくれる人なんかいないんじゃないかと思いながら、でも、愛されたいと思ってる」
ジェシィはハルから、レックスの両親が麻薬中毒者に殺された事を知らされる。
「私、レックスに謝らなきゃ…」
言いかけると、ハルが頭を抱えてうずくまってしまう。
続く

284 名前:心の家路 2[sage] 投稿日:2005/11/11(金) 00:12:54 ID:???
ジェシィはハルを病院へ運び、レックスがやってくる。
ただならぬ様子に、何かを察知するジェシィ。
「レックス、ハルは死んじゃうの?」
「人間、誰だっていつかは死ぬさ」
「そのいつかが、ハルは決まってるの?」
「…今年いっぱいなんだ…」
ハルは入院を嫌って自宅に戻り、ジェシィは再びヘルパーとして通う。
青い顔で「驚かせてごめん」と謝るハルに「バカよ…お人好しすぎるわ」とジェシィは泣く。
ハルの残された時間を楽しい事で埋めてあげたい、とジェシィは感謝祭のパーティーを企画する。
準備に追われる中、レイアンがヘロイン所持で学校を去る。
ジェシィの濡れ衣は晴れたが、彼女はこれからもボランティアを続けたいと思う。
感謝祭。
パーティーは盛況の内に幕を閉じ、皆が帰った後、ハルはジェシィに礼を言う。
「今日はとても楽しかった。ありがとう」
「私、後片付けしなきゃ…」
「ジェシィ。人生は旅をしているのと似ているよ。
迷ったり、誰かと一緒だったり、別れがあったり。
それぞれ目的地は違うけど、終われば家に帰る。
家路を辿りながら、旅の事を思い出す。家族の事、友達、恋人、ジェシィの事、それから、今年の感謝祭。
楽しい思い出を思い出しながら帰るんだ。だから、心配しなくても大丈夫だよ」
「うん…きっと、私の事も思い出してね」
「もちろん。ジェシィが僕を思い出した時は、僕も君の事を思っているよ」
ソファで眠っていたレックスも、じっとハルの言葉を聞いていた。
そして、クリスマスの直前、ハルは旅を終えた。
彼は別の旅へと向かった。
それは家路を辿るような、穏やかな旅になるだろう…

終わり