きりひと讃歌/手塚治虫
276 :きりひと讃歌-1 :04/04/11 21:40 ID:???
小山内桐人(おさないきりひと)は大病院、M大付属医院の医師。
第一内科では、全身に毛が生え、生肉を好み、顔が犬のようになって
死に至る原因不明の奇病・モンモウ病の患者に悩まされていた。
師・竜ヶ浦(たつがうら)教授のウイルス感染説に対して、
小山内は風土病説を主張して、竜ヶ浦の反感を買っている。
小山内の論文を提出させたくない竜ヶ浦と、小山内の婚約者・いずみに
懸想する同僚で友人の占部(うらべ)は、小山内をモンモウ病患者の
出身地・徳島県犬神沢村の調査に向かわせた。

犬神沢村は異常に閉鎖的で、小山内は村に閉じ込められ、孤立させられる。
村の女・たづを妻に迎えたことで村の住人として認められた。
たづの父もモンモウ病にかかっており、小山内は治療を行う。
そして村に来て一ヶ月が経つころ、小山内はモンモウ病を発症した。
小山内はたづと共に調査に奔走し、モンモウ病の原因を突き止める。
それは村に流れる谷川の上流で、飲み水に混入した土だった。
村の水の摂取をやめた小山内は、モンモウ病の進行こそ止まったが
すっかり犬のような姿になっていた。
さらなる調査の為に山を下りる道すがら、たづが暴漢に殺されてしまう。
町で大学病院に連絡すると、勝手に辞表が提出され、小山内の名は
名簿から抹消されているという。行く当てをなくし自分を見失った小山内は
何者かに襲われ、船で台湾へ連れ去られた。

277 :きりひと讃歌-2 :04/04/11 21:41 ID:???
一方、占部はアフリカでモンモウ病と同じ症例を確認していた。現地教授から、
竜ヶ浦がモンモウ病に関する生体実験を行うつもりだったと聞いた占部は、
小山内が実験に利用されたのではないかと疑念を抱く。
占部はある修道院に招かれ、モンモウ病の修道尼ヘレン・フリーズに出会う。
白人女性では初めての症例だった。白人にあるまじき病気だと、修道院の
院長はヘレンを抹殺しようとする。占部はヘレンを励まして日本に連れて帰る。

小山内は台湾の大富豪・万大人の見世物として契約書にサインをさせられた。
好奇の目に晒され、「わしの前で犬になれ」と命じる万大人に食ってかかる。
小山内は混乱に乗じて、麗花の助けを得て脱走する。麗花は衣で包まれて
油に放り込まれる人間テンプラ≠フ芸人だった。異常性欲者の麗花を、
小山内は山奥の小屋で根気強く治療した。しかし小山内は高砂族に発見され
捕縛されてしまう。
その頃、万大人は愛飲している頭痛薬智恵水≠フ効果も空しく、モンモウ病を
発症していた。

日本医師会の会長選を控えた竜ヶ浦は、医学総会でモンモウ病の研究発表を
する準備を進めていた。竜ヶ浦は医学総会でヘレンを症例として公開すること
を決める。帰国した占部はモンモウ病が地下水が原因の風土病だという考え
を強め、頑なに伝染病だとする竜ヶ浦に不信感を募らせる。
万大人が台湾から運びこまれた。小山内が万大人に傷を負わせていたことが
伝染病説の裏づけになると、竜ヶ浦は言う。

278 :きりひと讃歌-3 :04/04/11 21:42 ID:???
いずみの父で竜ヶ浦の後援会長でもある吉永は、占部にいずみとの結婚を
打診する。しかしいずみは服毒自殺をはかった。かつていずみをレイプしたこ
とを思い起こし、激しく動揺した占部は病床のヘレンを抱く。
占部は頭痛薬智恵水≠ェ犬神川上流の水を使っていることを調べあげる。
一方医局では竜ヶ浦教授も知らず知らず智恵水を口にしていた。

占部の態度に傷つき、学会での公開に悩むヘレンが病院から逃げ出した。
占部はヘレンを求める心情を率直に打ち明け、公開を承知させる。医学総会では
ドイツのマンハイム教授がきっぱりと伝染病説を否定する一幕もあったが、
モンモウ病は世間に知れ渡るところとなり、竜ヶ浦の名声は一気に高まった。

高砂族に捕らえられた小山内は長老の急病に的確な診断を下したところ、
現地の医師に協力を求められ、二日がかりの手術を行う。手術は成功したが、
小山内の犬相を嫌った村人の暴走で長老は死んだ。逃げる小山内は二人の
村人を殺してしまう。

医師の手引きで、小山内と麗花は中東経由でオランダに向かう小型機に乗り
込んだ。しかし乗り合わせた日本人の勘違いからトラブルが起こり、
三人は中東の砂漠をさまようことになる。砂漠で瀕死の赤ん坊を救うことができず、
小山内は医者など無力な存在だと吼える。
無一文の三人は、麗花の人間テンプラ芸で金を集めようとするが、芸に失敗して
麗花は死んでしまった。

突然倒れた占部は精神病と診断され、医局を追放された。占部はいずみを
連れ出し乱暴する。ヘレンを奥羽大学へ連れて整形手術を依頼したきり、
占部は車に飛び込んで自殺した。ヘレンはM大には戻らず、風土病が蔓延して
いる地域で看護にあたることを決意する。

279 :きりひと讃歌-4 :04/04/11 21:42 ID:???
小山内は中東の難民居住区に居ついて、犬の先生≠ニ慕われるまでになっていた。
伝染病説で脚光を浴びる竜ヶ浦の裏切りをはっきりと知った小山内は、
必ず中東に戻ることを誓って帰郷する。
犬神沢村でたづを殺した男を捕らえ、たづの墓に参る目的を果たすと、竜ヶ浦が
自分を人体実験に使った証拠を集めはじめる。噂を聞き、報われなくとも神に
仕えて生きる道を選んだヘレンとも対面する。

竜ヶ浦の命運がかかった医師会会長選挙当日。小山内は投票会場に姿を現し、
証拠と共に竜ヶ浦の所業を暴き、風土病説の論文を提出した。竜ヶ浦は僅差で
医師会会長に選出されるが、既にその体は病魔に蝕まれていた。
小山内は、妻がいると言っていずみに別れを告げる。いずみは小山内を追って
ヘレンの教会を訪ねる。ヘレンは占部の子を妊娠していた。

モンモウ病が進む竜ヶ浦の前に小山内が現れる。ようやく第一内科でも
智恵水≠フ成分分析が行われたが、ウイルスは検出されず、原因とみられる
特殊な結晶体が発見される。時を同じくしてマンハイム教授はモンモウ病と
よく似た病気の原因を結晶体だと結論付ける発表をした。竜ヶ浦の伝染病説は
完全に否定されたが、断固として間違いを認めないまま竜ヶ浦は息を引き取った。

ヘレンはいずみの立会いで占部の子供を出産した。小山内はもう顔を隠すことも
なかった。医師の使命感を抱き、すがすがしい気持ちで船に乗りこむ。いずみも、
小山内の人生を追う決意を胸に旅立っていった。



227 :マロン名無しさん :04/01/14 23:34 ID:???
きりひと讃歌

M大医学部付属病院は世界に誇る大病院だが、隔離病棟66号室のモンモウ病患者に関してはまったくのお手上げ状態だった。
原因不明の病である「モンモウ病」は感染者が犬のような風貌になるという奇怪な病であり、病院の第一内科局長、竜ヶ浦博士はこれを伝染性病原体のしわざと断定し
この病気についての論文を次の学会で発表しようと考えていた。
だが若き医師小山内桐人はその判断に疑問を持つ。彼はこれがビールスの仕業などではなく、何か他の原因があると考えていた。
小山内の小学生時代からの友人でもある同僚の占部は、小山内の恋人いずみを手に入れるために邪魔な存在である小山内に、犬神沢村へ調査に行くことを勧める。
小山内がいずみと宿泊室にいた際に66号室の患者の容態が急変、小山内が宿泊室を飛び出した隙に占部にいずみは犯されてしまう。

後日、何も知らない小山内は66号患者についての論文を竜ヶ浦に提出。その際に竜ヶ浦から春の学会までの一ヶ月、犬神沢村へ資料を集めに行くよう言われる。
こうして小山内は一ヶ月の予定で犬神沢村へ行くことになる。


228 :きりひと讃歌2 :04/01/14 23:52 ID:???
馬車で村へ向かう小山内。途中案内人から以前ここへ来た学者が崖から突き落とされて死んだ、という話を聞く。
村長に会いにいく途中、カラスが大量にとまっている家を見かける。
村長は口先だけは歓迎しているが、目つきは迷惑千万といった感じで空き家に案内する。
「今夜ご馳走するで」と言い残し村長は出て行く。

夜九時になるが誰も来ない。変に思っていると若い娘がやってきて裸になる。
とある地方では客に生娘をご馳走として出すらしい。・・・この村もそうらしい。
誘惑に負けて娘と一夜を過ごす小山内。娘の名前は「たづ」と言い、朝になると姿を消した。
タバコ屋の親父にたづについて尋ねるが、この親父は小山内の監視役だった。
小山内に村の血が入ったことによって村に住む権利ができた、と言う。

先日のカラスの家が気になった小山内は調査に向かう。家の中には犬や鶏の死骸が散乱していて、
カラス以外にも何者かが獣肉を食べた形跡があった。
夜遅くまで家を見張る小山内。そこにたづとモンモウ病の男がやってくる。

229 :きりひと讃歌3 :04/01/15 00:03 ID:???
どうやらあの家はモンモウ病患者が隠れて肉を食らう場所だったらしい。
モンモウ病患者の男はたづの父親であり、自分はもう長くないからたづの事をよろしく頼む、と言う。

治療に必要な薬を買うため、自転車で村を降りようとする小山内だったが、つり橋でタバコ屋の親父に襲われる。
なんとかタバコ屋の親父を崖下に突き落とし、九死に一生を得る小山内。
こんな恐ろしい村からは出たいという小山内だが、たづはこの村を出るのは危険だという。
たづが言うには自分と結婚すれば誰も手を出さない、ということだが、許婚のいずみがいる小山内は
これを拒絶しようとする。だがタバコ屋の親父の死体を見つけた村人達に怪しまれ、結局たづと結婚。

しばらくたづと暮らす小山内だったが、ある日いずみから手紙が届く。だが中身はなく、封書だけ。
村長が外部からの手紙を全て握りつぶしていたのを知り、何故自分を孤立させようとするのか怒鳴り込む小山内。
ところがそのとき彼を激しい頭痛が襲った。