カルバニア物語/TONO
319 名前:カルバニア物語 投稿日:04/07/11 12:53 ID:???
1エピソードごとに完結するシリーズ物。ダブルヒロイン(?)のエキューとタニアよりも、彼女らを取りまく人々のゲストエピソード多し。
エキューとタニアが、後にレギュラーとなるメインキャラクターとともに活躍したエピソードを書かせて貰います。

■エキュー・タンタロット
カルバニアの公爵令嬢。男装の麗人だが必要に応じてドレスも着る。男物の服を着ているのはがさつだからと胸がなくてドレスが似合わないから(最近、女装時は胸パットを愛用)。剣や乗馬は相当の腕前。女王タニアの乳きょうだいにして親友。

■タニア・カルバニア
カルバニア王国初の女性君主。父王の早逝によって異例の戴冠を成した。名君の素養を感じさせるが、なまじDカップの美少女なだけに、飾り物のお人形めいた扱いばかりされる事がつねづね不満。早くに母親を亡くしたエキューに母性を感じさせるほど包容力のある女の子。

320 名前:カルバニア物語 投稿日:04/07/11 12:53 ID:???
<バスクの野望>

カルバニア国内。タンタロット公爵領・バスク地方。
当時、公爵家には幼い姫しかなく、適当な男子の跡取りがいない事に野心を持った領主の息子・タキオは、家柄の良いリアンダと政略結婚に踏み切る。
二人の血をひいた男子が生まれれば、次代の公爵の座を狙えると踏んだのだ。
しかし、その後カルバニアではタニアが王座に就き、女性による爵位の継承が可能になってしまった為に、次期公爵の座は一人娘のエキューのものに。
タキオの野望は水の泡となり、リアンダは息子のフランを捨てて家を出て行ってしまった。

残されたフランを託されたのは家臣のカフ。
動物を育てる名人だったが、本人もまだ年若く、まさか人間の、しかも主人の子供を育てるなど思いも寄らない。
しかし、両親に顧みられる事のない彼を哀れに思い、手塩にかけて育て上げフランもまた彼によく懐いた。

フラン12歳の時、父親のタキオは彼に、32歳のホルグ領主後家との結婚を命じる。
公爵になれないとはフランにはまったく当てが外れた。政略結婚に使えばせめてホルグの領地が手に入る…と我が子を道具同然に扱うタキオに業を煮やして、カフはフランを連れて公爵家へと駆け込む。

主君筋の公爵家から諫めて貰わない限りタキオは聞く耳を持たない、これではあまりにフランが可哀相だ、とエキューに直訴するカフ。
だが当のフランは「ホルグでもどこでも、おまえ(カフ)はいっしょにくるんだろ?」「おまえがいるかぎり、おれはかわいそうなんかじゃない」と笑顔を見せる。

けなげな主従の姿にエキューは半ば呆れながらも、しばしの公爵家滞在を許し、タキオには自分から手紙を書く事を約束するのだった。


321 名前:カルバニア物語 投稿日:04/07/11 12:55 ID:???
<バスクの息子達>

実のところタキオは、身分の高いリアンダよりも、酒場で知り合った女給のアンヌを愛していた。
フランをホルグにかたづけたら、バスク領はアンヌとの間に出来た息子のアトスに継がせようという腹づもりだった。

フランは、自分の腹違いの兄弟の存在を知っていた。
タキオが風邪をひいた折に、必死の様子でりんごの砂糖煮を見舞いにと持ってきたところに出くわしたのだ。
同じ家で暮らしながらタキオが風邪をひいた事にも気づかぬ自分より、日陰の身のアトスの方が、ずっと父の息子らしい…と感じるフラン。
だからホルグとの縁談がもちあがった時も、仕方ない、と諦めたのだ。親父があの子にバスクを譲りたいと思っても、それは仕方がない…。

カフもまた悩んでいた。フラン大事のカフにとって、アンヌとアトスの存在は許し難いものだった。
しかし、日陰の身に堪え忍ぶアンヌとアトスの健気さを目の当たりにした時から、彼らを憎む事が出来なくなってしまった。もう、誰が悪いのかわからない…。

さて、公爵家には「子供を返せ」とタキオから矢の催促。しかも二人を預かると手紙を送ったのはエキューなのに、タキオからの手紙は父・タンタロット公爵宛にしか届かない。
女なんか相手にしていられない、と未だ次期公爵としてエキューを認めないタキオの態度に、エキューは怒りを募らせる。


322 名前:カルバニア物語 投稿日:04/07/11 12:56 ID:???
カフと公爵家を誘拐罪で女王に訴えるとまで言ってきたタキオにエキューは爆発し、二人を連れてバスクに乗り込む。すぐに拘束されるカフ。
だが彼の罪を問う前に自分の話を聞いて欲しいと、カフの父・ハルがアトスを伴って現れる。バスク領をその子に与えるというのなら、我ら家臣は卑しい酒場の女給の子に仕えねばならぬのか、というハルの言葉に、カフを取り押さえていた家臣たちも思わず手を放してしまう。

その様子を見て面白そうに笑うエキュー。「あなたのさしがねか!」と怒りを向けるタキオ。
エキューは家柄だの由緒だのに振り回されるのはいずれも私の流儀ではない、と暗にタキオを揶揄する。「だって私は、女だてらに公爵になるのでね」

言うだけ言ってエキューが帰ってしまうと、アトスがわっと泣き出した。こんなところに出てきて父さんを困らせてごめんなさい、バスクの領主になんてなりません、だからみんな父さんを困らせないで…泣く兄に引きずられるように、フランもまたカフを責めないでと泣き出す。
少年達の泣き顔に「良く似ておいでで…」と呟くハル。
タキオはけなげな幼い兄弟の姿に、家柄や爵位にばかり振り回されていた我が身を自嘲する。


323 名前:カルバニア物語 投稿日:04/07/11 12:58 ID:???
アンヌとアトスは正式に屋敷に迎え入れられた。
ハルは心にもない茶番だったとは言え、二人に無礼な口を聞いたと自粛して、カフとともに自ら牢に入った。
獄内でお菓子をボリボリ食べながら気楽に通販生活を楽しむ二人に泣きついて出所してくれと頼むタキオ。
公爵家でカフとフランが紹介したバスク名物のりんご雑貨がいつの間にか話題となり、国中から注文が殺到して目の回る忙しさなのだという。
「フランかアトスに手伝わせなさい」
「連日兄弟で遊び呆けて何の役にも立たない! 人前でわあわあ泣くし、てんで子供で、恥ずかしくて外に出せない! …ホルグにもどこにもな!」

エキューにアトスを「兄」と嬉しそうに紹介するフラン。良かったねと笑う彼女にフランは尋ねる。
「エキュー、公爵になるの?」
「うん、なるよ。なって黙らせるのさ。女だから公爵になれないとか、身分が卑しいから領主になれないとか、言ってる奴ら」
馬上の公爵令嬢に憧れた様に目を瞠るフラン。

やがてエキューの元に、リアンダとの正式な離婚とアンヌとの再婚に関して公爵家から教会への口添えを依頼するタキオからの手紙が、正式に彼女に当てて届けられた。

おわり

326 名前:カルバニア物語 投稿日:04/07/11 14:25 ID:???
<ダゴル長官の憂鬱>

女王のスケジュールについて話し合う重臣会議でエキューは「その頃女王陛下はメンス(生理)ですからスケジュールは月末に回して下さい」とハキハキ言い切って、並み居る男達を赤面させる。
前々から男勝りな彼女が目障りで仕方のないダゴル長官は、「小娘の分際で出しゃばりだ」とエキューに意見する。即座に言いかえすエキュー。

「私もはっきり言おう。あんたは無能だ。小娘には小娘の都合ってもんがある。メンスになったこともないくせにメンスのある人間のスケジュールを決めようとするな」
メンスメンスと若い娘が大声で言うな、女がメンスの話をしなくてどうする、あんたみたいなおやじがおやじばっかりでメンスの話をするのかと怒鳴り合う二人。

怒りのおさまらないエキューは新兵相手の訓練で大暴れ。「もっとマシなのはいないのか、男のくせに!」
その様子を影から見ていたダゴル長官は、以前に酒場でエキューを見たときの事を思い出す。酔漢が暴れ、長官が警備兵を呼びに行っている間に、エキューはその全員を叩きのめしていた。
「あのヒゲ男(長官)は警備兵を呼んだだけよ、男のくせに…」酒場の女達のひそひそ声が耳に残る。

そもそもダゴル家はゴツい外見に似合わず争いを好まないおだやかな性分。長男のロプスに至っては、男だてらに宮廷のドレスデザイナーだ。
虫の居所が悪い父親に「いいレースだろう」と喜んで見せたロプスは「男のくせにみっともない」と怒鳴られる。

「エキューさまとメンスメンスと怒鳴り合っていたらしいですからね」ご機嫌が悪いんですねとお針子のフランシーヌが慰める。若い娘の口からメンスという言葉が出て赤面するロプス。
「あらだって、女が話さなきゃこればっかりはわからない事でしょ。少し恥ずかしいけど、でも一緒に仕事をしていく上では必要な話だと思うんです」
「私もこの仕事が好きで、誇りをもってやってるけど、よく『男のくせに』と言われる」
ロプスは続ける。「良くないよな。日常の中でつい使ってしまうけど、人を縛る言葉だ。『女のくせに…』とか『男のくせに…』とか」

つづく

327 名前:カルバニア物語 投稿日:04/07/11 14:33 ID:???
酒場で偶然相席になる長官とエキュー。長官が頼んだのは甘い果実酒で、エキューの注文はホルモンに豚足…。
「こんなのはおかしいんだ! 変なんだ! あの時だって自分が残ってあんたが警備兵を呼びに行くべきだったんだ!」葛藤する長官。「でも、本当は、あんたやうちの息子の様な生き方が羨ましいよ…」

思わず心情を吐露した彼に、エキューも赤面のうちに告白する。自分は逆にケンカが大好きで、本当の武人なら腕試しをしたがるなんてアホなのについやってしまう。警備兵を呼んだあんたの処置の方が正しかったんだ。「弱い証拠さ。恥ずかしいから、忘れてくれ」

男らしく、女らしく、という以前に、自分らしく生きようとするエキューの姿勢を、長官は納得し…「良いレースだな、ロプス」…無骨な髭面で似合わぬ可憐なレースを見つめて息子達を青ざめさせた。

おわり。

短編さえ2書込になってしまう自分に欝。
後々ひっぱるエピソードではありませんが非常に作者らしい話なので。

■ロプス・ダゴル
エキューの友人。胸のない彼女の為にいつも苦心惨憺して美しいシルエットのドレスを作ってくれる。

■フラン・バスク
バスク領の領主の息子。エキューとは姉弟同然に仲良しだが、本人は「やっぱりアトスとバスク領を争いたくないから、円満解決の為に公爵令嬢と結婚したい」と結構本気。

■カフ・スタン・ストーク
「動物を育てる名人」として有名なバスクの家臣。フランの育ての親的存在。何につけ有能なので、タンタロット公爵がひそかに自家に引き込みたいと狙っている。

■タキオ・バスク
ヒゲのバスク領主。エキューとは何かにつけそりが合わないが、公爵はエキューが爵位を継いだ後の強力な後ろ盾として期待している。


417 名前:カルバニア物語 投稿日:04/07/25 15:39 ID:???
<クロスチアの恋文>

若くて可愛い女王タニアはカルバニアをはじめとする近隣諸国の若者の憧れの的。
王宮を訪れた彼らがそっと庭やあずまやにしのばせた恋文が、今日もタニアの元に
届けられる。
カタブツのダゴル長官は渋い顔だが、女官のテレーズは
「自分への恋文で異国の言葉に親しむなんて素敵ですわ」と笑顔でとりなす。

ところがある日、タニアの手に渡ったクロスチア語の恋文は
タニアとの熱い夜の思い出を赤裸々に綴ったポルノまがいのしろものだった。
無論タニアは身に覚えがなく、王宮では悪質な悪戯として差出人の「マーカス」なる男
を徹底的に調査することにした。

「マーカス」の手紙が、内容は内容ながらも、字も綺麗でひたむきな印象を受ける事から
悪戯ではなく「タニア」という別の女性宛の手紙ではないかと推理するエキュー。
だが、カルバニアに「タニア」という女性は女王タニアの一人しかいない。
上位五位までの王位継承者と同じ名前を持つことは許されないのだ。
その事実を初めて知ったタニアは、自分が生まれた時に何人もの「タニア」が名前を
失った事を済まなく感じる。

カルバニアに「タニア」がいなくても、クロスチアになら「タニア」が何人もいる筈。
あの手紙は元々クロスチア語だし、クロスチア人のマーカスがタニアに宛てた手紙が
間違って女王に届けられたのでは…とエキューは考えるが、ダゴル長官は気を緩めず
女王の身辺警護の強化を主張する。
ベテランの女官も一人やめてしまうし、当分警戒が必要だというのだ。
「誰かやめるの」「テレーズが国へ帰るんです。クロスチアへ」
テレーズはクロスチア人だったのだ。大恋愛でクロスチアから嫁いできて、夫の死後も
帰らなかったが、急に国に帰って女の幸せを追求したいと言い出したのだという。
死んだ彼女の夫の名前は…まさかマーカス?!


418 名前:カルバニア物語 投稿日:04/07/25 15:41 ID:???
果たして手紙は、テレーズの大事な思い出の品だった。
「私、昔は『タニア』って名前でした」
マーカスはカルバニア人だったが、クロスチア語が達者で、いつもテレーズの事を
「綺麗なタニア」とクロスチア語で口説いていた。
「タニア様がお生まれになって、私は『テレーズ』になりましたが、主人はそれから
すぐに死んでしまったので、『タニア』と呼ばれた記憶しかありません」
愛された記憶の中、私はいつも『タニア』でした、と懐かしそうに語るにテレーズに
タニアは謝りたい気持ちになる。

だがテレーズは「タニア様がどんどんお綺麗になられて、恋文を貰うようになると
私まで嬉しかった。私が恋されているみたいで」とタニアに感謝するのだった。
「こんな気持ちになったのはタニア様のおかげ。クロスチアに戻れば
私はまた『タニア』と呼ばれるようになります。もう一度恋が出来るでしょうか」
綺麗なタニア、って、誰か言ってくれるかしら…? 
テレーズとの別れを惜しみながら、タニアは頷く。
「タニアって名前は、きっともてるのよ…」

20年もあんな手紙を大切にしていたテレーズに、ダゴル長官は
「女はいじらしい」とホロリとさせられるが、
「恋ってそんなにいいものかなあ」「美味しいものがこの世で一番」「私も」
と長官のおやつを盗み食うタニアとエキューによって
女性への幻想を打ち砕かれるのだった。

おわり

419 名前:カルバニア物語 投稿日:04/07/25 16:32 ID:???
<泣かないリアンダ>

公爵邸に遊びに来たフランが、何者かに誘拐されかかった。幸いエキューがその場に
居合わせて難を逃れたが、カフは心労のあまりすっかり睡眠不足に陥ってしまう。

だがフランは、あれが何者のさしがねだったのかうすうす感づいていた。
あやしい男達の「間違いない、よく似ておいでだ」という言葉。カフだけが話してくれた
自分を捨ててバスクを出て行った母・リアンダの手のものに違いない。
カフの思い出話の中のリアンダは、わがままで、でも何故か憎めない若い女性。
だが子供を捨てて出て行ったきりの彼女の評判はひどく悪く、実際に母に会った事もない
フランは正直、彼女を憎んでいいのかどうなのかわからないでいた。

誘拐事件は簡単に解決した。ハイゼン侯爵が自分の召使いが先走ってした事だと詫びに
来たからだ。ハイゼン侯爵はリアンダと一緒に暮らしていた。彼女とフランを会わせたい
とタキオに要請しても、返事を先延ばしにされてきた事に焦れた結果だという。

タキオがフランと実の母との面会をなかなか許さなかった理由…それは、相手の申し出が
あまりにも性急だったからだ。これまで何の音沙汰もなかったリアンダがどうして
「一刻も早く会いたい」などと言い出したのか。それに、何年も一緒に暮らしているのに
どうしてリアンダがハイゼンと籍を入れないのか。それを調べてからにしたかったのだ。
しかし、そう言った翌朝、タキオはカフに「二人を会わせてやってくれ」と命じる。

カフの思い出の中のリアンダは、プライドが高くてわがままな貴婦人。
だが初めての出産に怯えて一人で泣いていた、弱くて、寂しい女性だった…。


420 名前:カルバニア物語 投稿日:04/07/25 16:33 ID:???
公爵邸ではフランは猪狩りに行きたいとはしゃいでいるが、カフは危ないからといって
許さない。「口うるさい、男ばあや!」フランの機嫌が悪いのは、猪狩りを
止められたせいだけではなかった。カフがリアンダを愛していたという噂を聞いて
リアンダを好きだったから自分を育てたのかと思うと腹が立ったからだ。
リアンダとの面会にも承諾しないフランを、エキューは猪狩りに誘う。

フランは動物が死ぬのを見たことがなかった。死にかけたペットがいるとカフは
それを連れて部屋にひきこもってしまい、安らかな死だったとだけ教えてくれるからだ。
「エキュー、あんたはいつだって全部見せてくれるね。そこが気に入ってるんだけど」
もう子供扱いはされたくない。カフの悲しみや辛さもフランは全て知りたいのだ。

猪狩りから帰ると、男ばあやは飲んだくれてべろべろになっていた。泥酔する寸前に
「リアンダは初恋の人だけれど、フランを育てたのは…よくわからない」と言ったカフに
フランは機嫌を直す。「エキュー、ハイゼン侯爵に連絡つけてくれる?」
リアンダを恨む気持ちはない。そのおかげでカフと一緒にいられたのだ。

もう立ち上がることも出来ないリアンダはベッドの上で二人を迎えた。
綺麗な子供に育ったフランにリアンダは喜び「私の手柄です」とカフも笑顔で応じた。
二人に会うのに出来るだけ元気そうに見せたかったというリアンダは、痛み止めに
打ちすぎた麻薬のせいでやがて眠ってしまい、フランはその手を握りしめていた。
帰り道、フランは馬上で涙を流す。どうして自分が泣いているのか、そしてカフが
泣かないのか、さっぱりわからなかった。
ただリアンダと二度と会えない事はわかっていた。


421 名前:カルバニア物語 投稿日:04/07/25 16:33 ID:???
病床のリアンダに呼び出されたエキュー。
「私がこんな病気になったのは、子供を捨てた罰かしら?」
「私はいつか死ぬ時に、母がいるところに行くのかと思えば心が安らぐ。
一度も抱いてくれなかった母だけれど、それで十分」
エキューの言葉に、リアンダは痛快、と微笑み、彼女に遺言を託して短い一生を終えた。

リアンダの遺産は全てカフに譲られる事になっていた。
すぐさま辞退してフランに譲渡しようとするカフだが、それは出来ない。カフ以外の
誰にも受け取る事は出来ないのだ。
リアンダがハイゼンと籍を入れなかったのは、この遺産を最後まで守りたかったから。
プライドの高い彼女が最後まで愛人の座に甘んじて守り抜いたものを、受け取ってやれと
タキオは言う。「お前がこんなもの必要ない事は十分わかってる。だけどこんな形でしか
あいつは自分の気持ちを表しようがないんだよ」

「どうして泣いているの? カフ」「あんたの母親がひどい事ばっかするからです」
いつもいつもいらないもんばっかり、人に押しつけてどっかへ行ってしまう。
いらないものばっかり。カフの不用意な言葉にびくともしないでフランは笑う。
「受け取んなよ、リアンダの遺産。それでパーッと使っちゃえよ」
あの時押しつけられた子供に涙を拭ってもらえるなんて、どうして想像できただろう…。

「ついに最後まで、私はあなたに何一つ逆らえないようですね。リアンダ…」
棺の中であどけないように眠るリアンダ。彼女の葬儀が静かにはじまった。

おわり。