カンタレラ/氷栗優
103 名前:カンタレラ人物紹介 投稿日:04/06/19 01:26 ID:???
著者 氷栗優
秋田プリンセス・コミックス
【チェーザレ・ボルジア】
主人公。聖職者ロドリゴの息子だが、表向きは甥として育てられる。
【ルクレツィア・ボルジア】
チェーザレを慕う彼の妹。その美しさゆえに数奇な人生を歩む。
【ホアン・ボルジア】
チェーザレの弟。父に溺愛され、高い地位を与えられるが、実は無能の人。
【ロドリゴ枢機卿】
チェーザレ達の実父。聖職者でありながら女癖が悪く、野心家。
【ローヴェレ枢機卿】
共に法王の地位を狙う、ロドリゴのライバル。
【ヴァノッツァ】
ロドリゴの愛人で、ルクレツィアとホアンの母。実子ではないチェーザレにも優しく、平等な人。
【キアロ=ミケロット】
暗殺を生業とする父・ミケロットの名前を継ぐ二代目。本名キアロ。
【ジュリア】
ロドリゴの新しい愛人。人妻。
【オルシーノ・オルシーニ】
ジュリアの夫。チェーザレとはスペイン筋の親戚に当たり、少年時代、チェーザレはオルシーニ家で過ごす。
【マルローネ】
オルシーニ家に雇われている傭兵。凄腕の剣士。
【アドリアーナ】
オルシーノの母。

異常に登場人物が多い漫画なので、機会があればまた紹介します。
チェーザレは歴史上の人物ですが、この中では史実:2創作:8って感じでしょうか…

105 名前:カンタレラ 1 投稿日:04/06/19 02:25 ID:???
1475年、ローマ。
ロドリゴ枢機卿の子供を身籠ったナキーネは、雷に打たれ、早産する。
ナキーネを見舞ったロドリゴは、彼女が落雷の瞬間
「契約は成された」と何者かの声を聞いたと告げられる。
我が子の行く末を悲観したナキーネは、赤ん坊を殺そうとするが、
子供を守る様に黒いモヤが現れ、ナキーネの館が焼け、子供だけが生き残る。
ロドリゴは子供にチェーザレと名付け、新しい愛人・ヴァノッツァに託す。
ルクレツィアとホアンが産まれ、チェーザレが少年になった頃、
ヴァノッツァとの関係が噂になり始め、ロドリゴは彼女を他家へ嫁がせる。
別れの日、ヴァノッツァと離れるのが辛いと負の感情に捕われたチェーザレの周りに、またも黒いモヤが…
しかしヴァノッツァはそれを振り払い、チェーザレにロザリオ(十字架のペンダント)を渡し、去る。
父に溺愛されるホアンは将来の為、スペイン宮廷に行き、チェーザレとルクレツィアは、オルシーニ家に預けられる。
美少年に育ったチェーザレは着いた早々ルクレツィアと離され、
妻・ジュリアをロドリゴに寝取られたオルシーノに乱暴されそうになるが、
傭兵マルローネに助けられ、彼に剣を習う事にする。
剣の腕も上達し、兄の様にマルローネを慕うチェーザレであったが
ある夜、マルローネがジュリアと関係しているのを目撃。
話を立ち聞きしたチェーザレは、マルローネがロドリゴへの刺客である事を知る。
父を守る為、ジュリアが毒入りの酒を運ぶのを邪魔するチェーザレだったが
騒ぎを聞き付けたロドリゴはジュリアを信じ、チェーザレをローマから離れたペルージアの神学校へやる事を決断する。
家を飛び出したチェーザレの前にマルローネが現れる。
暗殺に失敗し、逃げると言うマルローネに「連れて行ってくれ」とすがるチェーザレ。
優しくなだめるふりをしながら、マルローネはチェーザレに剣を突き立てる。
呆然と我が身に刺さった剣を見つめるチェーザレの周りには黒いモヤが現れ、彼の傷を癒すと、マルローネに纏わりつく。
チェーザレはマルローネを斬り、涙は心の奥で凍ったと、非情に生きる決心を固める。

115 名前:カンタレラ 2 投稿日:04/06/19 04:29 ID:???
神学校への出発の準備で忙しいチェーザレは、寂しがるルクレツィアをなだめ、
丁度通りかかったジュリアを脅す様に見つめ「ジュリアが守ってくれるよ」と言う。
マルローネとの事は誤解だと、ジュリアはチェーザレを誘惑しようとする。
その時、マルローネの遺体発見の報が届き、取り乱すジュリアに
チェーザレは「あなたはこれから僕の大切なコマだ」と言い渡す。
ペルージアへ発つチェーザレの元に、狂った父親を人質に取られた暗殺者・仮面のミケロットが差し向けられる。
(命令を下したのはロドリゴのライバル・ローヴェレである。)
ミケロットはチェーザレの馬に乗り移り、剣を突き付けるが、チェーザレも応戦。
チェーザレはミケロットにヴァノッツァと同じ、魔を払う力を感じ、不思議な気持ちになる。
馬から転げ落ちた二人は揉合い、チェーザレが勝つ。
キアロという本名を聞き出したチェーザレは仮面を預かり、取り戻しに来いとミケロットを殺さず、ペルージアに向かう。
寄宿舎に忍びこんできたキアロに魔(黒いモヤ)を見、払う力がある事を知ったチェーザレは驚き、その隙に仮面を奪い返される。
時を経て、スペインのガンディア公である腹違いの兄・ペドロ死去の報を受け、
ホアンが後を継ぐのではないかと従者タジオは言う。
タジオは無能なホアンよりチェーザレの方が公爵にふさわしいと、還俗を勧める。
一足先にローマ入りしたホアンは、ルクレツィアを連れ出し、馬を走らせる。
怖がるルクレツィアをキアロが助け、二人は出会う。
遅れて帰郷したチェーザレは父に面会を申し込むが、雨の中を長時間待たされる。
ロドリゴがチェーザレを恐れる様子を見たホアンは甘言を弄し、父の秘密を聞き出す。
ロドリゴは法王になりたいが為、悪魔と契約し、願いが叶った瞬間にチェーザレの命は尽きるという…

124 名前:カンタレラ 3 投稿日:04/06/20 00:14 ID:???
ホアンからその事を聞かされたチェーザレは、真偽を確かめようとロドリゴに会う。
「お前を呼んだ覚えは無い」と取り付くシマも無く追い返されたチェーザレは、失意のあまり廃墟から身を投げる。
一連の出来事を見ていたキアロは、自分のアジト(※)に傷ついたチェーザレを運ぶ。
チェーザレを寝かせ、キアロが部屋を出ると、黒いモヤが現れ、獣の形をとり、チェーザレにのしかかる。
ただならぬ気配にキアロが部屋へ飛込むと、寝台の横に「魔法師」と名乗る(?)男が立っていた。
魔法師はモヤを祓おうとするキアロを止め、今祓ってしまうとチェーザレは死ぬ、と言う。
チェーザレの体は魔物にとって、この世での素晴らしい依り代であり、魔物はその命を助けようとしているのだ。
しかし、魔の力によって命を繋いでも、いずれ魔の力を抑えきれなくなった時、闇に漂う異形のものとなる。
魔法師は、魔を祓う能力を持ったキアロにチェーザレの命運を託す。
このままでも死んでしまうのなら、チェーザレが魔を抑えきる可能性に賭ける、とキアロは見守る。
キアロは暗殺者でありながら、チェーザレに同情していた。
やがて、チェーザレの体にモヤが吸い込まれ、傷が塞がってゆく。
それを見届けた魔法師は蛾に変身し、「まぁせいぜい恨まれない様にする事だ。
魔物にとりこまれるよりは、彼は人間としての死を願っていたからねぇ」と言い残し、飛び去る。
何事も無かった様に眠るチェーザレを見ながらキアロは、これで良かったのだろうか、と自問自答する。

(※)狂人となったキアロの父が、キアロに暗殺の仕事をさせる為、人質として捕われている牢獄。
キアロは、チェーザレを殺す事ができれば、父親を自由にしてやると言われている。
建物は法王庁の管轄であるが、実際に掌握しているのはローヴェレ枢機卿。

125 名前:カンタレラ 4 投稿日:04/06/20 03:26 ID:???
チェーザレが目覚める前に、やはり人として死なせてやろうか、
とキアロは剣を取るが、躊躇してしまい、どうしても振り下ろすない。
悩んだキアロは父を連れて逃げ、暗殺稼業から足を洗おうと決意。
見張りの兵士を斬り、牢の鍵を手に入れたキアロだったが、すんでのところでローヴェレの部下・バルトロメオ(※)に発見される。
その時、鍵を開けた牢からキアロの父が飛び出し、バルトロメオに殴りかかるが、返り撃ちにされる。
父を亡くし、憂いも無くなったキアロは、バルトロメオに斬りかかる。
止めをさそうとした時、どこからか槍が飛び「その人(バルトロメオ)を殺してはいけない」と声がする。
声の主は目覚めたチェーザレ。驚いたバルトロメオはチェーザレに斬りかかる。
剣は胸元を一閃し、チェーザレの血が飛び散る。
甘く、痺れるような香りが漂い、その血を浴びたバルトロメオは意識朦朧となる。
チェーザレが瞳は金色に光り、それを見たバルトロメオは気を失う。
魔を取り込んだチェーザレの血は、毒液へと変化していた。
チェーザレはバルトロメオを殺さず、意のままに動く人形として操るつもりなのだ。
魔となった自分を殺さなかった事への償いとして、チェーザレはキアロに、最後まで付き合え、と言う。
チェーザレの傷の手当てをしながらキアロは、昔の本で見た古い秘薬『カンタレラ』の事を思い出す。
甘く、痺れる様な芳香を放つ、美しい毒。
「まさにあんたの事だな。カンタレラ…」

牢獄を脱出しキアロの父を埋葬した二人は、夕暮れの丘に立つ。
「キアロ、お前には見せてやろう。この世界の広さを。
この掌中におさめたならば…!」

(※)サンタンジェロの司令官
当時の法王はインノチェンツォ8世

126 名前:カンタレラ 人物紹介 その2 投稿日:04/06/20 06:01 ID:???
【タジオ・デラ・ヴォルペ】
チェーザレの少年時代からの忠実な従者。
その忠誠心はいささか常軌を逸しており、キアロを敵対視する様なところも…
【ジョバンニ・スフォルツァ】
ペーザロ伯。ルクレツィアの最初の夫。
ボルジア側からすると離婚を前提とした政略結婚であった為、
法王に『白い結婚』を強いられ、ルクレツィアに何もさせてもらえなかった可哀想な人w
【ホフレ・ボルジア】
実はもう一人いたロドリゴの末息子。(しかしお盛んなオヤジだ…)
【サンチャ・ダラゴーナ】
ナポリのアラゴン王の庶出の王女でホフレの結婚相手。
かなり奔放な性格で、恋多き女(ホフレがほんの子供だった為、無理もない話か…)
【ジェーム王子】
トルコ帝国の第二王子。シタール(楽器)の名手。
カリスマ性ゆえに兄バジャゼットに国を追われ、人質としてローマに滞在。
【シャルル8世】
フランス国王。腐敗した法王庁に鉄槌を下す名目でローマを侵略。

132 名前:カンタレラ 5 投稿日:04/06/20 17:25 ID:???
チェーザレが魔と融合を果たした4年後の1492年、法王インノチェンツォ8世逝去。
次期法王にはロドリゴが選出され、アレッサンドロ6世となる。
新法王の誕生に湧くローマに、大司教となったチェーザレは居た。
傍らには学友としてミケーレ・ダ・コレーリア(キアロ)が付き添っている。
法王となったロドリゴは、諸国の関係を安定させ、自らの勢力圏の拡大の為(当時のイタリアは王国や共和国が乱立する戦国時代)
ルクレツィアをペーザロ領主・ジョヴァンニと、末子ホフレをナポリ庶出の王女・サンチャと結婚させる。
ガンディア公となったホアンはロドリゴと会い、チェーザレが枢機卿となる事を知る。
野望に燃えるチェーザレを宗教者として抑え、軍事に介入出来ぬ様にするという、法王なりの配慮でもあった。
チェーザレは義弟となったジョヴァンニと会い、フランスがナポリの覇権を狙い、
(ナポリと)敵対しているミラノと手を結ぼうとしているとの情報を掴んでいる、と話す。
(ジョヴァンニのスフォルツァ家はミラノの一族であり、ナポリ派が強くなれば立場が弱くなる事は必至。
勢力を保ちたいミラノ側としては、親ナポリ派が増える前にフランスに覇権を渡してしまった方が得策。
勿論、法王庁への背信行為となるので、表立って行動は出来ない。
法王の娘婿であるジョヴァンニには凄いジレンマ。)
それを聞いて焦ったジョヴァンニはミラノ伯イル・モーロに親書を送る。
親書を携えた密使を襲ったキアロとチェーザレはその内容を確認し、フランスとミラノの癒着を確信する。
しかしそれは、イタリア全土を統一しようとするチェーザレの、大きな野望の一端に過ぎなかった…

162 名前:カンタレラ 5 投稿日:04/06/22 03:50 ID:???
枢機卿会議ではチェーザレの名が呼ばれ、議場は騒然となる。
チェーザレはまだ若く、彼が法王の庶子である事は公然の秘密であったので、
親族主義(ネポティズモ)である、と特に反意を表したのはローヴェレであったが、書類上では
チェーザレはヴァノッツァとその夫との嫡子として処理されており、法王は強引にチェーザレを枢機卿にする。
会議が終わり、偶然にローヴェレと出会ったチェーザレは、ロドリゴと自分の暗殺を指示した人間を知っていると匂わす。
報復を恐れたローヴェレはローマを離れ、郊外のオスティアへ居を移す。
法王はチェーザレに無断でローヴェレに刺客を送るが失敗。
それを知ったチェーザレは、勝手な事をするなと怒り、キアロに命じて刺客達の口封じをする。
命令とはいえ、刺客の子供をも斬ってしまったキアロは気鬱になりボルゴ宮(チェーザレの居城)に戻る。
どこからか聴こえるシタールの音色に惹かれ庭に出ると、トルコからの人質であるジェーム王子に出会う。
血で汚れたキアロを見ても何も聞かず、自らの事も語らないジェームに、キアロは心酔してゆく。
チェーザレの元には密偵のタジオから、フランス王・シャルル8世がナポリに侵攻する為、兵を集めているとの報告がもたらされる。
それと共に、ローヴェレもオスティアを出、ミラノ伯イル・モーロの元へ。
チェーザレは、ローヴェレがミラノを通してフランスと接触すると予測。
1494年。
フランスは次々にイタリア小都市国家を陥落、シャルル8世はローヴェレの進言に従い、ロドリゴに法王退位を迫る。
イル・モーロ伯の弟であるアスカーニオ枢機卿にフランス側との折衝を頼んだ法王は、チェーザレを人質に、との条件を出され、これを呑む。
フランス軍は着々と侵攻を続け、何と法王の親戚筋であるオルシーニ家の裏切りによって、ローマへ到達する。
一足先に人質となる為コロンナ砦に赴いたチェーザレを、ジュリアが待っていた。
ジュリアは自らの肉体で懐柔しようとすが、チェーザレはこれを拒否。
歪んだ愛情に捕われ、ジュリアはチェーザレを地下に幽閉する。

167 名前:カンタレラ 6 投稿日:04/06/22 04:43 ID:???
1494年12月31日、フランス軍ローマ入城。
再三の申し入れにも戻らないチェーザレを案じ、タジオとキアロはコロンナ砦へ。
途中、魔法師が現れ、二人を案内する。
コロンナ砦の地下では、チェーザレが鎖に繋がれていた。
再三の説得にも頷かないチェーザレにジュリアは、ある情報を口にする。
「いい事を教えましょうか。さっき荒くれのフランス兵の一団がヴァノッツァ様のお屋敷に向かったそうよ。
今すぐにでもお母様の元へ行きたいでしょう?だったら言う通りにして」
怒りのあまり、魔力が発動しそうになるが、そこへキアロ達がやって来る。
助け出されたチェーザレは、キアロに頼み、ヴァノッツァの屋敷へと急ぐ。
途中、二人を乗せた馬が疲れ、キアロは焦るチェーザレだけを馬で行かせ、後を追う。
焼き打ちされた屋敷とフランス兵達に組み敷かれるヴァノッツァを見たチェーザレは逆上し、魔力が発動。
黒煙が立ち上り、兵士達の体は一瞬にしてバラバラになる。
強烈な魔力の解放に、闇に取り込まれそうになるチェーザレ。
ヴァノッツァは胸に傷を負いながらもチェーザレに這い近づき、彼を抱きしめる。
「意識を闇に渡しては駄目。苦しくても耐えなさい。あなたは十分に強いのだから…
大きくなったわね。私の手では、もう足りないくらい…
だから―――これが、私があなたにしてあげられる最後の抱擁かも…」
チェーザレを取り巻く黒煙が消え、彼は正気に戻る。
そこへ辿り着いたキアロの光りを感じ、ヴァノッツァはチェーザレの腕の中で、微笑みながら息を引きとる。
「そう、あなた…あなたなのね。私の代わりに、あなたがこの子を見届けてくれるのね…
ああ、神様、感謝いたします―――」 乱れたヴァノッツァのドレスを美しく整え、チェーザレ達は燃える屋敷を後にした。

189 名前:カンタレラ 7 投稿日:04/06/27 16:20 ID:???
ヴァノッツァの遺体をボルゴ宮へ持ち帰ったチェーザレは、彼女を故郷へ埋葬してやりたいと考えていたが、その矢先に遺体は紛失。
魔法師はキアロに、チェーザレを守る為に命をかけ、抜け殻となった彼女の体を魔が乗っ取ってしまったのだろう、と言う。
その事実を知れば、張りつめたチェーザレの精神は壊れてしまう、とキアロは口止する。
一方、ローマに駐留するシャルル8世は、十字軍遠征を認める事、法王の退位を求める宗教裁判を開く事、
更にナポリの覇権を要求し、法王の居るサンタンジェロに36基もの砲口を向けていた。
焦って逃げようとする法王にチェーザレは、自分を特使としてシャルルの元へ送ってくれるよう、頼む。
チェーザレはシャルルと会見し、ローヴェレが元々は親ナポリ派であり、裏切る可能性がある事、
フランスが本当にナポリが欲しいのであれば、法王についた方が得策である、と説く。
シャルルはチェーザレとジェーム王子を人質として同行させる事を条件に法王庁と協定を結び、ローマから軍を撤退させる。
チェーザレの甘言に乗せられたシャルルは、当初の要求を何一つ通す事無く、ナポリへと向かう。
進軍途中、フランスを恐れたナポリ王アルフォンソの自主的な退位の知らせを聞いたシャルルは、ローヴェレ枢機卿領ヴェレトリの屋敷に滞在し、祝宴を設ける。
チェーザレ救出の為、屋敷に忍び込んだキアロは、ジェーム王子を見付け、彼も一緒に助ける事にする。
午前2時にチェーザレと来てくれと言うキアロに、王子は複雑な表情を見せる。
宴席を抜け、脱出の準備にかかったチェーザレは、ジェームに呼び止められる。
時間を過ぎても現れないチェーザレ達が心配になり、屋敷へ向かったキアロは、ジェームの足元に眠らされているチェーザレを発見。
ジェームはチェーザレの首に剣を突きつけ、キアロを牽制する。
フランス王は私の価値を十字軍遠征に見い出している。だから、ここに居る方が私は安全なのだよ。
チェーザレが人質となっている限り、ローマは手が出せない。
法王はトルコの兄から私の暗殺を依頼されている、という噂も聞く。
万が一、多額の賞金に目がくらんだりしないとも限らないだろう?
我が身が一番可愛いからね…

190 名前:カンタレラ 8 投稿日:04/06/27 17:21 ID:???
腐りきった人だ、あなたは…!
俺はあなたがチェーザレに手を下す前に確実にあなたの息の根を止めるでしょう。だから―――
だから…?
その時、チェーザレがジェームの腕を取る。
そう、それこそがあなたの真の望み。だが、そんな事にキアロを巻き込まないでもらいたい
魔となったチェーザレには薬は効かず、彼は眠ったふりをしていたのだ。
自殺をするのはプライドが許さない。だが、死への憧憬は募るばかり。
あなたの瞳を見れば分かる。もはや、それしか望んでいないのでしょう?
私がそれを与えてあげましょうか…?
チェーザレはジェームから取りあげた剣で自分の腕を切る。
この血はあなたを何の苦しみも無い世界へ誘う秘薬。なまじの毒よりもっと効く。
あなたにとって死が甘美なものであるなら、その陶酔を胸に逝くか…王子よ
ジェームは感激に身を震わせる。
ああ…君だったのか、私が待ち望んでいた、死の天使。
私はこの身が禍の種になるのはもう飽きた。けれど…
私は、それでも、兄を愛していたのだよ…心の底から…
チェーザレの傷に口付けし、ジェームは息絶える。
屋敷を脱出したチェーザレとキアロは、途中、馬を止める。
チェーザレは薄く氷の張った湖に入り、身を清める。
驚いて止めるキアロの腕を振り払いうチェーザレ。
魔物の匂いが消えないんだ…胸がムカつく。
いくら清めても、私の内から血の腐った匂いが湧き上がる。
私が奪った多くの人の命…それを考えるだけで、この身が火照る。
怒りなのか、悲しみなのか…それとも…快感、なのか
涙を流すチェーザレを見て、キアロも湖に入り、その肩を掴む。
あんただけじゃねぇんだよ、血に汚れてんのは!
あの時だって、あんたが動かなきゃ俺が殺してた。
それでも、俺達は生きてかなきゃならないんだ…!
何の…ために…?
それを…見極めるためだろう―――多分

191 名前:カンタレラ 9 投稿日:04/06/27 22:32 ID:???
戦場となる恐れのあるローマを離れ、夫の故郷ペーザロに避難していたルクレツィアは、チェーザレがフランス軍より脱出したとの報をうけ、胸を撫で下ろす。
フランス軍の捜索を避け、密かにローマに戻ったチェーザレは法王と会う。
チェーザレは、シャルルがナポリに到達しても王位を承認しない様に
(法王が認めなければ即位できない)と頼み、法王庁を中心とした神聖同盟を組織する事を進言する。
この機を利用せずにおかれましょうか。これは、イタリアを法王庁の名の元に統一するきっかけとなりましょう。
何卒、諸国にお呼びかけを、猊下
労せずしてイタリアを統一する為にチェーザレはフランスをたきつけ、この時を待っていたのだった。
チェーザレは自らもキアロとタジオを伴って、各地の有力諸公の説得にあたった。
少し遅れて、法王はシャルルの追跡から逃れる様に、先にチェーザレが根回しした各国を訪問し、次々と同盟を結んでいった。
チェーザレと共にペルージアのバリオーニ家に滞在する法王は、ペーザロへ使いをやり、ルクレツィアを呼び寄せる。
チェーザレに兄以上の思慕を抱くルクレツィアは、再会を喜ぶ。
夕食の席に神聖同盟軍がフランス軍を破り、シャルル8世はフランスへ逃亡したとの急使が到着。
法王は喜ぶが、チェーザレが浮かない顔をしているのを見たキアロは、夕食後、彼の部屋を訪ねる。
何が勝利だ!シャルルはアルプスを越えたというじゃないか!
大方、フランス軍の携えた財宝を略奪するのに夢中で、まんまと逃げられたというのが真相だろう。
何の為に諸国を回り、布石を打ったのか…
これだけフランス軍にひっかき回されても、まだ己の利のみに目を奪われているとは!!
だが、悔しいが今の私の力ではこれが限界だ。枢機卿が戦の先陣を切るわけにもいかぬ…
この先、いくら策を弄しても、それを実行する者が“無能”である限りな!!
19歳で枢機卿という誰もが羨む地位を得ながらも、聖職者としての野望の限界に、チェーザレは苦悩していた…

194 名前:カンタレラ 10 投稿日:04/06/28 00:24 ID:???
同じ夜、庭に出ようとしたルクレツィアは、偶然にバリオーニとその実妹が睦み合っているのを目撃。
ルクレツィアは嫌悪感を抱くが、それこそが自分がチェーザレに望んでいる事だと思い至り、その想いに苦しむ。
フランス軍撤退を受け、一行はペルージアからローマへ凱旋し、法王は南部に住むホフレ(法王の末子)とその妻・サンチャを呼び寄せる。
ローマの酒場では、未だ指一本触れさせぬ妻に腹を立てたジョヴァンニ(ルクレツィアの夫)が酔って、
ボルジア家は皆が近親相姦だと騒ぎ、人々の間で噂が面白おかしく広がっていた。
噂を聞きつけたチェーザレは、神聖同盟が成った今、ジョヴァンニにはもう利用価値が無い、と切り捨てる決意をする。
裏では、同盟をより強固なものとする為、反対する地方豪族達の排除にキアロが動いていた。
同盟軍は法王庁の元、教会軍と名を変え、着々と整備されてゆく。
法王は次男のホアンを教会軍総司令官に任命し、ローヴェレと組みする最大の反対勢力・オルシーニ家の討伐に向かわせる。
チェーザレの命を受けたタジオに総帥を暗殺され、主力を欠いたオルシーニ軍との戦いは楽勝かと思われた。
しかしホアンの軍事能力は極めて低く、副将を捕えられた挙げ句、かすり傷程度で逃げ出す始末。
逆に城壁まで迫られた法王は討伐を諦め、法王占領下の城をオルシーニに買い戻させ、講和を結ぶ。
あまりの歯痒さに我慢が効かなくなったチェーザレは闇に捕われそうになるが、キアロに救われる。
一方、ジョヴァンニは…
法王を侮辱する噂を流したとして殺されるかもしれない、と逃亡を図る。
法王からジョヴァンニとの(近い将来の)離婚を告げられ、
自分が政略結婚の駒である事を自覚させられたルクレツィアは、思い余ってチェーザレに気持ちを打ち明ける。
あなたが行けと言うなら、どこへでも嫁ぐ。何人の男にこの身を委せてもいい。だから、一度だけ―――
お前を大切に思っているよ。愛してる…妹として、ね
チェーザレが去り、泣き崩れるルクレツィアを、ジョヴァンニが拉致。
法王から、離婚の理由がジョヴァンニの性的不能者であり、白い(肉体関係が無い)結婚である、
と提示された彼は腹を立て、一矢でも報いようとルクレツィアを強姦しようとする。


252 名前:カンタレラ 11 投稿日:04/07/04 04:25 ID:???
チェーザレの命令でジョヴァンニを見張っていたキアロに助けられたルクレツィアは、
暫くはチェーザレに会いたくないとサン・シストのドミニコ修道院で暮らすことにする。
(キアロが暗殺者ミケロットだと気付いたジョヴァンニは逃亡)
法王はスペインの名将コルドバを副将として招き入れ、ローヴェレ領・オスティア討伐をホアンに命じ、これを攻略。
戦勝に湧くパレードの中、チェーザレが礼拝堂で物思いに沈んでいると、キアロが現れる。
ルクレツィアの行方を聞かれたキアロは、彼女の気持ちを察してやれと言うが、
チェーザレは「あれには、まだまだ役に立ってもらわねばね」と薄く笑う。
怒ったキアロはチェーザレと喧嘩になり、礼拝堂を出て行く。
落ち込むチェーザレの前にヴァノッツァの姿を借りた魔物が現れ、「お前の事など誰も愛さない」と闇の世界へと誘う。
何とかその手を振りほどいたチェーザレだったが、温もりを求める気持ちを止められず、偶然来合わせたサンチャ(末弟の妻)と関係を結んでしまう。
サンチャはすっかりチェーザレの虜となるが、彼はその後も冷たい態度を崩さない。
何とかチェーザレの気を惹きたいサンチャは、親族の食事会で会ったホアンを誘惑する。
ホアンはサンチャの肉体に溺れてゆくが、やがてサンチャとチェーザレの関係を知り、逆上。
その足でチェーザレに斬りかかるが、キアロに止められたホアンは策を巡らせ、反法王派の濡れ衣でキアロを投獄する。
タジオと共に救出に向かったチェーザレは、拷問で痛めつけられたキアロを見て魔力が発動。
意識朦朧のキアロはそれを止められず、チェーザレはヴァノッツァの顔をした大きな鳥に連れ去られてしまう。
タジオは傷付いたキアロを自分の家へ運び、手当てを施す。
目覚めたキアロはタジオから、チェーザレがヴァノッツァの屋敷に滞在していると聞く。
焼け落ちた筈のヴァノッツァの屋敷は今も美しく健在で、タジオ達以外は誰も、屋敷が襲撃された事や、彼女が死んだ事を知らない、という。
「だが、たとえあの方が魔に魅入られていようとも、私の忠誠は変わらぬよ」
タジオは、キアロに説明を求める。

254 名前:カンタレラ 12 投稿日:04/07/04 14:12 ID:???
一通り説明を終えたキアロは、チェーザレを助ける為、タジオと共にヴァノッツァ邸へ。
金色に輝く瞳に濃い影を纏うチェーザレに出会ったキアロは「人である内に俺が殺してやる」と剣を向ける。
その時、巨大な翼を持ったヴァノッツァが現れ、チェーザレを守る様に翼に包みこみ、消えてしまう。
一連の出来事を見ていたタジオは、その凶々しいまでの美しさに魅せられ、チェーザレが覇王として君臨する為には魔の力が必要なのではないか、と考え始める。
一方ホアンは、キアロ投獄の報復を恐れ、サンチャへの執着も手伝って、チェーザレ暗殺を画策する。
幼い頃から優秀な兄への劣等感に悩んでいたホアンは、もうチェーザレを殺す事しか考えられなくなっていた。
一人で屋敷を出たチェーザレをホアンに雇われた刺客達が襲撃するが、逆に返り討ちにされる。
様子を見に来たホアンの前にチェーザレが現れ、ホアンは謝るふりをしながら、油断したチェーザレに斬りつける。
そこへタジオ達が駆け付け、ホアンは逃亡。
後を追おうとするタジオを「この血を浴びては遠くへは行けぬ」とチェーザレは止める。
その言葉通り、膝を折るホアンに、ゆっくりと近づくチェーザレ。
「苦しいか、ホアン。すぐ楽にしてやるよ」
更にチェーザレの血を飲まされ、苦し気なホアンはチェーザレの服を掴む。
「別の…生き方ができたんだろうか…お前なんかに…囚われる事無く…そしたら…僕は、こんなじゃなく…もっと…」
泣きながら言うホアンに、チェーザレは無表情のまま、剣を振り下ろす。
キアロは、チェーザレがすっかり魔となってしまったと思い、剣をとるが、その瞳に涙を見、思いとどまる。
「今更、兄弟の情など無い。私達の間にあるのは、憎しみだけだった。
憎しみによって結ばれた絆…それがホアンと私なのだ」
言いながらチェーザレは、見開いたままのホアンの瞼を優しく閉じてやる。
「――あんた、魔に支配されたんじゃないのか…?」
「この身を支配できるものは、私自身でしか有り得ない。
これは、私の意志。魔物は目的の為に利用しただけだ」
暫く一人になりたいとキアロ達から離れ、チェーザレは一人、涙に暮れる。

255 名前:カンタレラ 13 投稿日:04/07/04 18:58 ID:???
なかなか戻らないチェーザレをキアロが探しに行き、タジオはその場に残る。
来合わせたホアンの馬丁に血まみれのホアンを目撃されたタジオは後を追う。
キアロはうめき声をあげるチェーザレを見付け近づくが、来るなと止められる。
チェーザレの背中が盛り上がり、とがった翼が現れる。
「いったいどうしたんだ、あんたのこの姿は…」
「魔に打ち勝つ為に、あえてこの身に同化させた」
「何でそんな危険な事を!」
「私の内部で魔を封じ込め、コントロールしている限り、私は私でいられる」
「無茶苦茶だ!人間が常にそんなに強い精神力を保つなんて、不可能だ」
「たかが…道端の邪魔な石ころを排除した…それだけの事なのに、私の精神は、なぜ悲鳴をあげるのだろう…
だけど…こんなもの、すぐに抑え込んでやるさ。
私を支配できるのは私自身だけだ。
屈服するくらいなら、いっそ滅びた方がましだ!」
そう言ってチェーザレは、自分で翼を引き千切る。
キアロは崩れ落ちるチェーザレを抱き止め、涙する。
穏やかなキアロの気を感じ、安らいだチェーザレは気を失う。
その体を抱き上げ、タジオの所へ戻ろうとしたキアロの前に、憎しみに満ちた形相のホアンが現れる。
「チェ…エ…ザレェェ…!」最後の力で斬りかかるホアン。
キアロはホアンに止めを刺すが、チェーザレを庇った為、自らも深手を負う。
チェーザレをタジオに託したキアロは、ホアンの遺体をテベレ河に流す。
自分の傷を追求されれば、チェーザレが疑われてしまうと思ったキアロは、傷付いた体で馬を走らせる。
――あいつの運命は、今動きだしたところだ。俺が足手まといになるわけにはいかねぇ。
あいつは俺に、世界を見せてやる、と言った。見せてもらおうじゃねーか。
その為なら、俺は命だって賭けるぜ!――
あても無く走ったキアロは、ルクレツィアが暮らすドミニコ修道院に辿り着く。
しかし、朦朧とした頭でそうと解るわけもなく、キアロは意識を失う。

372 名前:カンタレラ 14 投稿日:04/07/17 02:36 ID:???
一方、チェーザレを連れて戻ったタジオは、この件を知る従者達を全て抹殺。
眠るチェーザレの傷に口付けしようとすると、チェーザレが目を覚ます。
「死ぬぞ。私の血は毒でできているからな。ホアンを見ただろう?」
「それならば、私はとうに貴方という毒に侵されています。
貴方という、甘美なる毒。私の命は、生も死も全て貴方だけの為にある!」
「ふふ…私に命を捧げる、か。地獄に落ちるぞ?」
「かまいません。私の神は貴方だけなのですから…」
法王庁では、予定されていた会議にも姿を見せないホアンの捜索が開始される。
翌朝、テベレ川の下流からホアンの刺殺体が発見され、法王は犯人の捜索隊を組織するが、その調査は突然に打ち切られる。
法王の前にはヴァノッツァの姿をした魔物が現れ、「全てお忘れなさい」と暗示をかけていたのだった。
やがて、長く王が不在であったナポリに前王の息子、フェデリゴが即位。
その載冠式に法王の名代として出席する事になったチェーザレは、雷鳴轟く中、ナポリへと発つ。
出発前、タジオを前にチェーザレは、問わず語りに話をする。
「こんな日だったのだそうだ、私が生まれおちたのは…だからかな、私には憤りの様な、この雷鳴が心地良い。
皮肉なものだ。父は神の代理人の地位を得る為に、神にあだなす者を自らの手で造りあげたのだから。
私の存在理由が天から祝福されたものでないのならば、私はいったい何なのだろう?
神という概念からすれば、この世に存在してはならない禁忌か…?
ならばその時、母と共に雷で刺し貫けば良かったものを…」
様子がおかしいチェーザレを気遣い、キアロはすぐに戻ってくるだろうから心配は無い、と慰めるタジオだったが、耐えきれず激昂する。
「そうやって…あの男は、いつも貴方のお心を乱すのですね。ナポリへ発つ、この大事の時でさえ…
貴方の意識の半分はあの男の影を追っている。まるで…まるで…!」
そう言ってチェーザレの腕を掴んだタジオは、その感触にハッとする。
チェーザレの手は変色し、無数の血管が浮き出しており、魔物の様な手になっていた。
「キアロがいない今、少しでも弱味を見せると、奴らはこうして身の内から這い上がってくるのさ。
自分でも驚いたよ、こんなにもキアロに依存していたとは、ね」

373 名前:カンタレラ 15 投稿日:04/07/17 03:29 ID:???
「そのお体ではナポリ行きは無理なのでは?」
「この先、何かある度にキアロに槌りつけと言うのか?
お前はそんな脆弱な魂の持ち主を覇者と仰ぐつもりなのか!?」
そう言い放つチェーザレの腕は、既に美しく戻っていた。
「ご自分を試すおつもりなのですね。その言葉、ご自身に問うておられる様に聞こえます…」
――人をも魔をも神をも凌く、全てに超越する存在…
絶対的な力の持ち主こそが、私の求める真の王。
その代償として貴方がその身を魔に委ねたとしても、私はそれを良しとするだろう――
一方キアロは、深刻な状態にあったが、ルクレツィアの献身的な看病で一命をとり止める。
目覚めたキアロは、ルクレツィアに迷惑をかける訳にはいかない、と傷付いた体で立ち去ろうとするが止められ、仕方なくホアン殺しの犯人である事を告白する。
だがルクレツィアは「何度も助けてもらったから」と譲らず、それからも腹心の侍女・パンタシーリアと共にキアロの世話をする。
幾日か過ぎて、「あんた、聖母みたいだな」と言うキアロに、ルクレツィアは心情を吐露する。
「私は聖母なんかじゃないわ。だって…私の心は汚れているもの。
あなたがホアンを殺したと告白した時、私はさほどとり乱さなかったでしょう?
ある意味、あなた以上の罪を…私はホアンの死によって思い知らされていたから…
ホアンの葬儀の時…本当に久しぶりに、その人の姿を見たの…
忘れようとして、想いを固く封印したはずの、最愛の人。
その人が通り過ぎる一陣のそよ風だけで、私の胸は高鳴り、切なく躍る…
傍らには、ホアンが冷たくなって横たわっているというのに…
私は自分が恐ろしい。こんな…こんな…
だから、神は罰をお与えになったんだわ。
その人とは一生結ばれる事は無い。
けれど、生きている限り、こうやってずっと、この想いに支配され続ける…
だって、その人は私の…!」
「もういい。自分を追い込むのはやめろ」
ルクレツィアはキアロの腕の中で泣きじゃくり、救いを求めるかのように呟く。
「助けて…」
二人はキスを交わす。
キアロは、チェーザレへの裏切りと知りながらも愛しさを抑えきれず、ルクレツィアと結ばれるのだった。

377 名前:カンタレラ 16 投稿日:04/07/18 00:16 ID:???
「後悔しているのか?」
「私は、私の認めた人以外、触れさせたりしないわ。
後悔しているとしたら貴方の方でしょ、キアロ。
貴方は優しいから、私に同情して…」
「ばか、同情だけでこんな事できっかよ…」
二人はつかの間の蜜月を過ごすが、法王がルクレツィアの様子見に差し向けたペドロという男に関係を知られてしまう。
ルクレツィアを守りたいパンタシーリアは、ひとまずキアロに身を隠す様に言い、二人は一端離れる。
ペドロは、何かにつけルクレツィアの前に現れ、いやらしい視線を投げかける。
ある日、ルクレツィアとジョヴァンニとの正式な離婚証明書を持って来たペドロは、キアロの事を法王庁に報告するもしないも自分次第だと言い残し、去る。
「今日はこの報告に来ただけだ。俺も忙しい身なんでな。
またすぐ来るぜ…すぐに、な…」

ナポリで載冠式を執り行ったチェーザレは、式典後の食事会でサンチャの弟・アルフォンソと出会う。
ナポリとの更なる結び付きを求めるチェーザレは、彼をルクレツィアの次期花婿にと思い、話をする。
「僕には心を捧げた人がいるのです。貴方の妹君を愛してあげられないかもしれませんよ」
「心は関係ない。これは政治…国と国との駆け引きだ。
ルクレツィアも私の妹。それは分かってくれるだろう…」
その夜、魔物化する腕の痛みにチェーザレは悶絶。
ついには自分で腕を切り落とそうとするが、タジオに止められ、後ろ手に縛られる。
苦しむチェーザレを見ながら、タジオは自分の気持ちを確かめていた。
――せめて、貴方の戦いを、目を伏せる事なく見ていよう。それが私に出来る唯一の事なのだから…
お前は知る事はあるまい、キアロ。
堕天しようとする天使の、惨たらしいまでの美しさを。
決して、お前には理解できまい。
この方にとっての“光”がお前である限り、私は“闇”を見つめるしかないのだから――
翌朝。
見事な精神力で回復したチェーザレは、新王誕生のパレードに随行し、隣に控えるタジオに呟く。
「このパレードが法王特使としての、いや、枢機卿の任務としての最後になるかもしれんな。
時は満ちようとしている。私は、自分の信じる道を行くだけだ。
たとえそれが、絶望と殺戮で血塗られていようとも…」
「どこまでも、お供いたします。地獄の果てまでも」

378 名前:カンタレラ 17 投稿日:04/07/18 03:41 ID:???
法王はずっとホアンの棺を置いた部屋で悲しみに暮れていた。
そばにはヴァノッツァ(魔)が付き添っていたが、ある日法王は「もうよい、去れ」と呟く。
「私にはわかっていた。お前はヴァノッツァではない。
思い出したくなかったのだ…ホアンの死を…最愛の息子がもうこの世にいないという事を…
現実に向き合わねばな。これも私が作り出した現実なのだから…」
法王はナポリから帰ったチェーザレに新たな所領を与える事を決め、自室に呼ぶ。
「ホアン亡き後、お前がボルジア家の唯一の希望だ」
「…貴方からその様な言葉を聞くとは思ってもおりませんでした」
疲れた様に、諦めた様に、法王は言う。
「わしも言いたくはなかったさ。どうせ…わしの全てを握っているのはお前だ。
好きにするがよい。わざわざ魔物で操らずとも、わしはお前のいいように動こう」
「後悔…しておいでか?」
「今更…言っても、せんない事。もう…私の愛したホアンは戻らぬ…」
法王と別れ、自室に戻ったチェーザレは複雑な感情に悩み、腕が痛みだす。
その時、キアロが忍んでくるが、逆光を背にしていた為、チェーザレにはそれが誰なのか判らない。
のたうつチェーザレは痛みがひいてゆくのを感じ、心地良さに意識を失う。
異変を聞いて駆け付けたタジオは、安心しきった様にキアロに抱かれて眠るチェーザレの姿を見て激昂し、剣を抜く。
「出てゆけ。今更お前に、この方に触れる資格は無い。
なぜ…なぜお前でなきゃならない!?
この方をいつも見つめてきたのは、この私だ!私なのだ!」
タジオの感情を理解出来ぬまま、キアロも応戦するが、下働きの者が「賊だ!」と衛兵を呼んだ為、逃亡。
その時、タジオの剣が仮面をかすめ、落ちる。
騒がしさに目覚めたチェーザレは「不思議な光が私を満たし、痛みを癒してくれた。あれはまるで…」
と言いかけるが、タジオは「夢です」と相手にしない。
ふと視線を落としたチェーザレは仮面を見付け、タジオを睨むと、慌てて外に出る。
だが、キアロは既に逃げ去った後であった…

383 名前:マロン名無しさん 投稿日:04/07/18 17:56 ID:???
カンタレラ乙
一応聞くけどチェーザレもキアロもタジオも男だよね…?

388 名前:カンタレラ書き 投稿日:04/07/18 23:36 ID:???
>>383
そうです(汗)
描かれ方は、タジオは「行き過ぎた忠義者」って感じなんですが
チェーザレのキアロへの想いはちょっと801チックと言うか…ゴニョゴニョ
チェーザレは普段は感情を抑えているので、キアロは素の感情をぶつけられる相手である、という事なんじゃないかな〜と。

389 名前:カンタレラ 人物紹介 その3 投稿日:04/07/19 00:18 ID:???
【パンタシーリア】
ルクレツィアの侍女。政略結婚に利用されるルクレツィアの立場に同情しており、幸せになってほしいと願っている。
【ペドロ・カルデロン】
イル・ペロット(オウム)と呼ばれる法王の侍従。ゆすり屋。
【アルフォンソ・ダラゴーナ】
ルクレツィアの二番目の夫。スペインのアラゴン王家の血を引くナポリ王子で、サンチャの実弟。
表向きはヘラヘラしているがナイフ投げの達人で、一筋縄ではいかない性格。
【エンリケ】
アルフォンソの侍従。
【フェデリゴ一世】
新ナポリ王。サンチャとアルフォンソの叔父にあたる。

書き忘れていましたが、2004年7月現在、8巻まで刊行中(以下続巻)です。
17で7巻の始めあたりです。

391 名前:カンタレラ 18 投稿日:04/07/19 11:40 ID:???
修道院ではペドロが偽の伝言でパンタシーリアを呼び出し、敷地の外れの小屋で一人になったルクレツィアに関係を迫る。
そこへキアロが現れ、ルクレツィアは救われるが、法王の使いであるペドロを殺せば問題になる、とキアロは剣を引く。
ペドロは本堂に戻り、偶然にも再婚準備の為にルクレツィアを連れ戻しに来ていたチェーザレと出会う。
ペドロから密告を受け、チェーザレは信じられない想いで小屋へ向かう。
小屋が近づくにつれ、キアロの気を感じたチェーザレは、ルクレツィアと友の不義を確信しつつ、扉を開ける。
「ここで何をしている?」
驚く二人にチェーザレは、ルクレツィアの再婚を告げ、今すぐにローマへ戻る様に、と侍女にルクレツィアを連れ出させる。
キアロと二人になったチェーザレは、彼に説明を求める。
「私は混乱している。何故お前がここにいるんだ?」
「あの後…追手から逃れようとここに逃げ込んだんだ。
深手を負って朦朧としてて…ここがルクレツィアの居る修道院とは判らなかった」
「深手…?」
「ああ…あん時、あんた気を失ってたんだっけな。ホアンの奴、最後の力で襲いかかってきたのさ。
…そうだ、言っておかなきゃ。ホアンの息の根を止めたのは俺だ。
だから、あんたは奴の死に何の呵責も感じる必要は無い」
「ははは…こんな時までお前はお前らしいな。
良心の呵責?そんなもの、生まれた時から持ち合わせてはいないさ。気遣いは無用だ」
「そうか…」ホッとした様子のキアロに、チェーザレは苛立つ様な嬉しい様な、複雑な気持ちになる。
「続けろ」「あん時は、マジでヤバいと思ったぜ。だけど、ルクレツィアが一生懸命看病してくれて…」
「あれは、天使の様な娘だからな…それで、ほだされたのか」
「あの娘はあんたを想って泣いてたんだ。あんただって知ってた筈だ。あの娘はあんたを――
俺は、あの娘の心が少しでも楽になれば、と思った。言い訳はしない。あんたが俺を罰するというなら、受けるよ…」
「愛して…いるのか?」
「……愛している」
一瞬の沈黙の後、チェーザレは口を開く。
「お前の優しさは、時として最大の凶器だな」
「…?」「同情で抱いたのだ、お前は。ルクレツィアを!」
「違う!」「言い切れるのか!?」
キアロは言葉に詰まる。

492 名前:カンタレラ 19 投稿日:04/08/01 02:47 ID:???
チェーザレは「なぜお前なのだ」と涙を見せるが、すぐに拭うとキアロに背を向ける。
チェーザレは「ローマを去れ。二度と私の前に姿を見せるな」と言い残し、小屋を後にする。
しかし、その姿を見送っていたのはキアロだけではなく、密談は全てペドロに聞かれてしまっていた。
ルクレツィアを連れてローマに戻ったチェーザレは、再婚まで彼女をサンタンジェロに置く。
居室こそ離れの一室であるが、これは事実上の軟禁であった。
キアロを想って泣き暮らすルクレツィアを見舞い、なじられたチェーザレは寂し気に笑う。
「私を憎んだって構わない。そうされるだけの事はしているからね…地獄に落ちるのは、私だけでいい…」
チェーザレはキアロの事を法王には報告せず、胸の内に収める。
その一方で、ホアン殺しの件で強請ってきたペドロには容赦無く動く。
思わぬ金蔓に浮かれるペドロは、突然に公金横領の濡れ衣を着せられ、サンタンジェロ地下牢に投獄される。
唯一の窓も漆喰で固められ、泣き叫ぶペドロの前に魔物が現れ、手を貸す。
復讐に燃えるペドロは、チェーザレの愛する者の命を奪おうとルクレツィアの部屋へ急ぐ。
同じ頃キアロも、ローマを去る前に一目ルクレツィアに会いたいと、サンタンジェロへ忍び込む。
パンタシーリアの案内で部屋へ急いだキアロは、ペドロがルクレツィアを殺そうとしている場面に出くわす。
剣を抜くキアロだったが、魔物の力を借りたペドロの動きは素早く、後ろを取られてしまう。
その時、無我夢中で剣を握ったルクレツィアがペドロに突進する。
不意をつかれ、怯んだペドロをキアロは斬り、我に返って恐慌するルクレツィアを優しく抱き締める。
騒ぎになる前に立ち去ろうとするキアロにルクレツィアは、一緒に連れて行ってほしい、とすがる。
キアロは躊躇するが、彼女のいじらしさに心を動かされ、駆け落ちを決意する。
成りゆきを見守っていたパンタシーリアは笑顔で二人を送り出す。
「さ、早く。ここは私が何とかしますから。
幸せにおなりなさい、姫様。そうでないと許しませんよ。キアロ、姫様を頼みましたよ…」
走り去る二人を見送るパンタシーリアの背中を、ペドロの剣が刺し貫く。

493 名前:カンタレラ 20 投稿日:04/08/01 04:15 ID:???
その頃、ペドロの逃亡を知ったタジオは衛兵達を率い、探索を開始。
物陰に潜んで彼等の話を立ち聞きしたキアロとルクレツィアは、パンタシーリアの死を知る。
キアロは戻ろうとするルクレツィアをなだめ、かつて父と暮らした要塞を後にする。
折しも、嵐になろうとしていた…
タジオ達は傷を負ってさまようペドロを捕え、ルクレツィアの居場所を吐かせるべく、拷問にかける。
「自白するのに必要な器官さえあればいい。あとは全て削ぎ落としてでもな」
自白したペドロの口や鼻から黒いモヤが立ち昇り、彼は干からびてしまう。
タジオは、部屋で待つチェーザレに報告する。
「まるで役割を終えた物が壊れる様に、告白した途端に絶命しました」
「何か含むところのある言い方だな」
「これを――貴方にお伝えするのがいいのかどうか、私は迷っておりました。
けれど、貴方は聡いお方。すぐにも真実を知る事になるだろう…と、あえて私の口から申し上げます」
「ルクレツィアの身に何か…?」
「ルクレツィア様は、おそらくご無事です。ヴァチカン一の剣の使い手に守られておりますから」
その時、雷鳴が轟き、サンタンジェロの天使像を砕く。
まるで、チェーザレが受けた衝撃を表した様に。
「…いかがいたしますか?」
「すぐに追手をかけろ。必ず見つけだしてルクレツィアを連れ戻すのだ。
もし…キアロが抵抗したならば……殺せ!!」
「はっ…」敬礼をしてタジオが去り、チェーザレは崩れ落ちる。
――天使は、私のもとから飛び去った―――

法王庁では会議が開かれ、フランス王シャルルの不穏な動きが報告されていた。
チェーザレは、フランスと拮抗する軍事力を持つスペインとの繋がりを強めるべき、と進言。
その為には、アラゴン王家に連なるナポリと更に多くの姻籍関係を結ぶ事が必要であり、ルクレツィアの保護が急務であった。
そんな雑事をこなしながらも、チェーザレの中で魔の力は増大しつつあった。
彼の前には馬を走らせる二人の恋人達の姿が幾度となく映し出され、その度に彼は、身を切る様な孤独感に襲われるのだった。
「何故こんなものを見せるのだ!」その声に、ヴァノッツァ(魔)が答える。
「それは貴方の心の痛み。全て手放して私に委ねれば、貴方は楽になれる…チェーザレ、もう逃げないで…」

122 名前:カンタレラ 21 投稿日:04/09/01 04:12 ID:???
続いてヴァノッツァ(魔)はフランスに居るシャルルを映し出し、魔力で殺してしまう。
「貴方が心を手放せば、この強大な力は貴方のものになる」
失意のチェーザレは魔の手にその身を委ねる。

一方、港町チヴィタベッキアに辿り着いたキアロ達。
慣れない長旅で発熱したルクレツィアを宿に寝かし、手持ちが少なくなったキアロは剣の勝ち抜き戦で金を稼ぐ。
それを偶然に見物していたアルフォンソはキアロの剣の腕に惚れ込み、用心棒として雇おうとするが、「この剣を捧げた主は既にいる」と断られる。
キアロ達と同じ宿に泊まっていたアルフォンソは諦めきれず、再度口説くが、ルクレツィアが心配なキアロは部屋へ戻る。
そこへ追手を率いたタジオが現れ、事情を察したアルフォンソは、キアロに協力を申し出る。
キアロはひとまずルクレツィアをアルフォンソに託し、馬で逃亡。
タジオは走り去るキアロに「反逆者め!」と叫び、弓矢を射かける。
矢は右肩を射抜くが、キアロはそのまま逃走する。
アルフォンソは衣装箱にルクレツィアを隠し、タジオを遣り過ごすが、その時の会話で二人は互いの身分を知る。
(タジオとアルフォンソは面識が有るが、アル×ルクレは無かった)
タジオ達が去った後、ルクレツィアと対したアルフォンソは、「自分にも心に決めた人が居る」と話す。
お互いの為に形だけの結婚をした後、自分の城でキアロと暮らせばいい、とのアルフォンソの案に「これ以上、自分を偽る事は出来ない」と言うルクレツィア。
暫く一人で考える時間を、とアルフォンソは部屋を出るが、ルクレツィアは熱の体をおしてキアロを探しに出てしまう。
暴漢に襲われそうになりながらも、なんとかキアロと会えた(何で…?)ルクレツィア。
二人は暫く廃墟に身を潜めるが、雨が続き、ルクレツィアの熱も下がらず、キアロの矢傷も癒えない。
そうこうする内にタジオと追手の兵士達に発見され、二人はローマへと連れ戻されてしまう。

124 名前:カンタレラ 22 投稿日:04/09/01 23:47 ID:???
従者エンリケと共に様子を見ていたアルフォンソはローマに行き、密かに二人の行方を追う。
ローマでは徹底的に隠蔽工作が為されており、ルクレツィアの失踪さえ知られてはいなかった。
アルフォンソはチェーザレとの会見を決意する。

その頃フランスでは、シャルルの急死をうけ、オルレアン公ルイ(シャルルの従兄弟、ルイ12世)が即位。
これによりフランスとイタリアの関係は、転機を迎えようとしていた。

サンタンジェロでは、日々、キアロがタジオからの拷問を受けていた。
ある日、牢でうたた寝をしていたキアロは、子供時代のチェーザレの幻を見る。
子供チェーザレは「私はチェーザレの深層意識だ」と告げ、彼自身が押し込めてしまった、真実の気持ちのみを語る者だ、と言う。
「チェーザレはお前に生きていてほしいと願っている」
子供チェーザレは「私を一人にしないで」とキアロにすがる。
キアロは今更ながらチェーザレの脆さに気付き、自分の罪の重さに心を痛める。
同じ頃、公務中のチェーザレは、溢れる涙を止められずにいた…

アルフォンソはタジオ同席の元、チェーザレと会見し、ルクレツィアの事情に目を瞑る代わりに、キアロを引き渡してほしいと申し入れる。
「僕は、彼が欲しいんです。
彼の剣の腕はかなりのものです。殺されたり、一生牢に繋がれるのは、あまりに惜しい」
それを聞いたチェーザレは、キアロの正体が暗殺者ミケロットであると明かし、裏の事情を知り過ぎたキアロを解放する事は出来ない、と断る。
アルフォンソが去り、面倒が起きぬ内にキアロを始末すると言うタジオに、チェーザレは命じる。
「そう簡単に楽にしてやる必要はない。自らの犯した罪を、その身をもって思い知らせてやれ。
たとえ死にたいと願ったとしても…絶対に、止めを差してはならぬぞ」

130 名前:カンタレラ 23 投稿日:04/09/03 23:35 ID:???
一方でチェーザレは、塞ぎ込んでいるルクレツィアの話し相手として、サンチャを送りこむ。
チェーザレを巡って関係の悪化していた二人だったが、政略結婚に利用される者同士、程無くうちとける。

チェーザレと会見したアルフォンソはルクレツィアを見舞い、キアロは自分が救い出す、と言う。
そこへサンチャが現れ、姉弟の間には微妙な空気が流れる。
庭に出たサンチャはアルフォンソに結婚を止める様に言うが、彼は「結婚しても、僕の心は我が儘な姫君に繋がれたままです」とドレスに口付ける。
嫉妬している訳ではない、と怒ったサンチャを見送りながら、アルフォンソは物思いに沈む。

ある日、ルクレツィアは悪嘔(つわり)を起こし、サンチャはその事実をチェーザレに報告する。
「これで結婚話は無しね」と言うサンチャに薄く笑い「君さえ黙っていれば、誰にも判らない」とチェーザレは口付ける。
「君を、殺したくないんだ」

アルフォンソはエンリケと共にキアロを救出し、手当てを施す。
矢傷を放置したせいで、キアロは右腕を切断する事になる。
アルフォンソはナポリのスキラーチェ(イタリア南端の温暖な気候の町)へキアロを連れて行くと決め、三人はローマを去る。
キアロ逃亡の報を受けたチェーザレは微かに笑みを浮かべ、
「逃がしはしない。どこへ行こうが、お前は私に繋がれる」と呟くのだった。
続く

※これで現在発売されている8巻までです。
実際のチェーザレ・ボルジアに興味を持たれた方は
『チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷』
塩野 七生 著 新潮文庫
が一番読みやすいかと思います。
22 名前:カンタレラ[sage] 投稿日:05/01/26 08:38:10 ID:???
9巻が発売されました。

キアロの身を案じるルクレツィアに「彼は死んだ」と告げるチェーザレ。
ルクレは短剣で胸を突いて自殺しようとするが、サンチャに励まされ、思い止まる。
一方キアロは、アルフォンソと一緒には行けないと、彼等と別れる。
キアロはルクレにはもう会わないと決意を語り、アルは
片腕を失っても彼が逸材である事に変わりはない、また会える日を楽しみにしていると剣と金を渡す。
一人になったキアロはフィレンツェに辿り着き、魔法師(実はニッコロ・マキャベリ)と再会する。
ニッコロは魔法の力を封印し、政府書記官になっていた。
法王庁では反乱分子の扇動者としてサヴォナローラが処刑され、ロドリゴの権力は強められていった。
ルクレはキアロの子を産むが、その顔を見ぬ内にタジオの命を受けた兵士に拉致される。
赤ん坊を殺す様に言われていた兵士・ベルナルドが剣を振り下ろそうとした瞬間、赤子は不思議な光を放つ。
ベルナルドは神の光だと思い、赤子を殺さずに家で育てる事にする。
彼は血まみれの産ぶ着を殺害の証拠としてチェーザレに提出するが見破られ、正直に訳を話す。
それを聞いたチェーザレは気が変わったと言い、そのまま彼に赤子の育て親を頼む。
子供を失い、呆けた様になったルクレを見舞ったチェーザレは、子供が生きている事を告げ、
「私の言う事に大人しく従えば、いずれ会わせてやろう」と無理やりに口付けする。
「お前は私を愛していると言ったな?その想いは、キアロを愛してどう変化した?」
愛など偽りだ、誰も私を愛する者などいない、それならば…
とチェーザレは、全てを破壊してしまいたい衝動に駆られ、ルクレを強姦しようとする。
ルクレは羽根枕を投げつけ逃れるが、その時、チェーザレの涙を見た様な気がして、優しく彼の頭を撫でる。
「魂に傷を負っていらっしゃるの?一人で闇の中をさまよっているの?可哀想なお兄様…」
チェーザレは慈悲などいらぬと「今度私に触れたら殺す」と言って、去る。

24 名前:カンタレラ[sage] 投稿日:05/01/26 09:26:57 ID:???
フィレンツェ。
キアロはニッコロに世話してもらった酒場で働いていた。
休憩時間にキアロが秘かに剣の練習をしている森に行き、ニッコロは「あの人(チェーザレ)はもう駄目だ」と告げる。
キアロはチェーザレを人の世界に繋ぎ止める唯一の楔であった。
そして、それを失った今、魂としての救いは消滅によってしか得られない。
そう聞いたキアロは愕然とする。

法王庁。
ルクレとの結婚に先掛けて、アルにはビシェリエ公の称号が授与される。
ルクレと引き会わされたアルは初対面を装って彼女を庭に連れ出す。
ルクレの出産を知ったアルは喜び、キアロは生きている筈だと告げる。
共犯者の様に理解を深める二人を、物陰からタジオが見つめていた。
程無く盛大な二人の結婚式が行われた。
その夜。
アルは立会い人達(※)に下剤を盛り、初夜が成立した事にしようとルクレに言う。
そこへチェーザレが現れ、ルクレを追い出し、アルにキアロの行方を尋ねる。
逃亡の手助けはしたが、行方は分からないと言うアルに剣を一閃させ、今後自分に背けば殺すと告げ、チェーザレは自室へ。
タジオに「(キアロを)いつまで追うのか」と聞かれたチェーザレは、逃げるなら手足を切り落としてでも家畜のように繋ぐ、と答える。
タジオを近くに呼び、彼の忠誠を確認したチェーザレは、いつかキアロが落としていった仮面を彼に被せる。
「この月明かりでのみ、有効な名前をお前にやろう。
ミケーレ・ダ・コレーリア。夜に潜む殺人鬼、死の天使“ミケロット”」
近いの口付けを交わし、チェーザレはタジオに、還俗すると告げる。
枢機卿会議でチェーザレの還俗は承認され、彼は聖職者の証である緋の衣を脱ぎ捨てる。
ロドリゴは人知れず、「ついに…修羅は世に放たれた…か」と呟くのであった。
(10巻へ続く)

(※)当時の王候貴族の婚礼初夜の制度。コトが終わって婚姻が成されたのを確認する。

246 名前:カンタレラ[sage] 投稿日:2005/11/01(火) 00:16:01 ID:???
10巻が発売(出たのは夏なんですが…)されました。
掲載誌では現在休載中で、再開の時期は不明です。

還俗したチェーザレはフランスへ赴く。
かねてより正妃ジャンヌとの離婚を望んでいたフランス王・ルイ12世へ離婚証明書を届けるという名目であった。
(カトリックでは法王の許可無く離婚は出来ない。なので、これは特例)
ルイはその見返りにチェーザレへの協力を約束し、彼にフランス領ヴァランスの公爵位を与え、更に自身の従姉妹の姫=シャルロットと結婚させる。
チェーザレはフランス王の親戚となり、以後、多額の年金と自分の軍隊を持つ事が許される。
これによりミラノとナポリは震撼する。
チェーザレにとって、この2つの共和国はフランスへの供物とされる可能性がある。
サンチャは王子であるアルフォンソに身を隠すように言い、彼は道化師として転々とする。
一方キアロは、ニッコロの公務に護衛として付き添う事になり、フィレンツェにほど近いフォルリへと向かう。
フォルリは自ら前線で戦う女将軍=カテリーナが治める都市。
フィレンツェには傭兵部隊として金で雇われている関係であり、契約の更新と契約料の値下げ交渉がニッコロの使命であった。
そこでキアロはカテリーナに気に入られ、傭兵の一人として雇い入れられる。
チェーザレがフランスと手を結んだと知ったキアロは、やがて来る彼との戦いに悲しい宿命を感じずにはいられなかった。
新入りの傭兵達の歓迎会を一人離れ、夜空を見上げるキアロの前に、いつか見た子供の姿のチェーザレが現れる。
影が薄くなり、今にも消えそうになりながら、子供チェーザレは
「この魂が、完全に失われる前に、止めて…」と、キアロの剣で自らの胸を刺し貫くのだった。