一番湯のカナタ/椎名高志
310 :一番湯のカナタ 1 :04/05/08 03:52 ID:???
 頼りにならないスケベ親父の変わりに傾きかけた銭湯『星乃湯』を
学校もまともにいかずに一人でやりくりする高校生の星野涼。
ある日湯船が突然爆発し、クーデーターにより亡命してきたナ・リタ星の王族が現れた。
異星人の王子カナタ・王女ユウリ・タコじいの三人組は身を隠すため星乃湯に住み着いた。
何度も間抜けなエイリアンが星乃湯に攻め込んでくるが、カナタの宇宙船でもあり武器でもある
星龍刀で返り討ちにする。星龍刀はただの武器ではなく心をもった生物。
王家の男子は星龍刀と共に生まれ育つ。生体メカとして改造され、様々は装置はついているが
ベースは元のままだ。いまだ未知な部分の多い星龍刀は、常に持ち主を見守っている。
そして人類のためにならない者にはけして力を貸さない。だが、一度認めれば封印された力を解放し、
あらゆる危機から持ち主を守るという。その星龍刀の声が聞こえなくなった。
カナタと涼はロケットで直接星龍刀の本体である宇宙船へ向かう。
 宇宙船の中にはCGで作られた星龍刀の精神体、「セイリュート」が居た。
セイリュートはカナタが王になるための試練を与える。カナタは王族に現れる能力のひとつ、
他人の生体エネルギーを我が物として放出する力『千手王羅』を発動してみせた。
 次の、そして最後の試練は『地球を守る事』だとセイリュートは言う。
古より伝わる王族の試練、任意の星の秩序と平和を守り、王の徳を示すという
『ガードロイヤル』だ。この試練はポイント制で、100万ポイントクリアしなければいけない。
 100万ポイント稼ぐのは容易な事ではない。どうにか一気にポイントを稼げないだろうか…
そんな時宇宙海賊・ブラッドが地球へ来た。海賊は金のためなら生きた人間でも略奪し、
場合によっては証拠隠滅のため惑星そのものを破壊する事もある。倒せば高ポイントだ。
だがブラッドは上司と仲違いし上司を殺し、その場を逃げた。撃退というより敵の自滅なうえ、
実行犯が逃げてしまったのだから、ポイントは低かった。
(今回の処置、ただ撃退するよりあとではるかに高いポイントになるだろう。『ガードロイヤル』には
隠しポイントがいくつかあるのだ。カナタ様の合格、予想より早くなりそうだ)セイリュートは笑む。

311 :一番湯のカナタ 2 :04/05/08 03:53 ID:???
 お前は高校生だ。色んな楽しい事に夢中になっていい年頃なのに、星乃湯をカセにする事はない。
涼の父は珍しく真面目な顔でそう言う。店を売れば借金も返せるし、涼も自由になれる。
10年前、地上げ屋からヤクザまがいの男たちが来て、店を脅し買おうとした。
その時涼達を助けてくれた人が幼い涼にはヒーローのように見えた。涼はその人と約束した。
その人がいつかまた店にやってくるまで、店は絶対に閉めないと。涼はそう言う。
 宇宙船が壊れたため地球に足止め状態になっているブラッドは、宇宙船にあった非常食を食べていた。
その匂いを嗅ぎ付け、ドイルという男が現れた。ドイルはブラッドと同じく異星人で、現地食中毒になっており
牛乳を大量に飲んでは酔っていたが、懐かしい味だとブラッドに非常食をわけってもらった。
宇宙船の救難信号が聞こえた。方言がキツくてわかりづらいが、とにかく近くに宇宙船が落ちてくるらしい。
宇宙船を奪おうとブラッドは、ドイルが止めるのも聞かず現場へ向かった。
「ありゃあ、救難信号じゃねえぜ。明らかに『近づくな』って警告だ。」ドイルは一人つぶやく。
 ブラッドは落ちてきた宇宙船を発見する。持ち主の異星人の体が小さいため、宇宙船自体かなりの小型で
ブラッドには乗れそうもない。そこへ騒ぎを聞きつけたセイリュートがやって来る。
ナ・リタ王族専用超高性能船…そうだ、これを手に入れれば良かったんだ!意思のあるセイリュートにゴマをすろうと、
「生存者の救出を急ぎたい。協力を要請する」と言うセイリュートにブラッドは協力した。

312 :一番湯のカナタ 3 :04/05/08 03:54 ID:???
 幼馴染のサヤカの頭部に小さな人間のようなものが生え出ている所を涼は見る。異星人がサヤカの体を乗っ取っている?
その生き物はサヤカの体を使い、恐ろしい力で涼を攻撃した。
 カナタやユウリも駆けつけ、小型エイリアンは救出された。怪我をしているが何とか生きている。
セイリュートが涼と、人間とは思えない動きをするサヤカを見つける。それを聞き救出されたエイリアンは言う。
「ヤツが一匹逃げたんだ!この船…アイツらに襲われて…エイリューン星の超生物…アニーザキス!」
エイリアンの腹が蠢き、裂け、中から無数の小さな人型エイリアンが飛び出した。
「セイリュート!死体ごとこの一帯を焼き払え!」ブラッドが叫ぶ。アニーザキスのせいで星ごと滅亡した所も沢山あるのだ。
 サヤカの体を傷つけるわけにもいかず、涼はアニーザキスとうまく戦えない。そこに牛乳に酔いながらドイルが現れる。
ドイルは右手から光を放ち、それをサヤカの体に押し付ける。サヤカはアニーザキスごと倒れた。
その攻撃の仕方は、十年前に涼を助けてくれた人の物と同じだった。
 アニーザキスとサヤカが眠っているうちに攻撃するが、眠りながらもアニーザキスはバリアをはる。バリアを超えるほどの
攻撃をすればサヤカの体も無事ではいられないだろう。アニーザキスを追い出すために、サヤカを熱い風呂の中に入れ、
涼を水風呂の中に入れ、二人の頭をチューブで繋いだ。暑くて苦しくなったアニーザキスは涼の頭へ行くはずだ。
その一瞬を狙い仕留めれば…しかしカナタもブラッドもしくじってしまう。アニーザキスが涼の頭へ入ろうとした瞬間、
ドイルはエーテル振動波でアニーザキスを攻撃した。タコじいは「あの男、プレアデス騎士団か!?」と叫ぶ。
エーテル振動波はあらゆる物質・バリアーを透過して、目標に打撃を与える、ほぼ無敵の超能力。
悪用を避けるため能力者は厳しい管理の元宇宙の平和と正義のためだけに活動を行う。その集団はプレアデス騎士団と呼ばれる。
 幼い頃ドイルに救われた事により、涼はずっとドイルのようになりたいと思っていた。だが、プレアデス騎士団はもう無いという。
権力欲しさに裏切り者が出て、仲間割れになり、身内の大半が死んだ。ナ・リタ星のクーデーターの時
防衛バリアーは何者かによってことごとく破られた。プレアデス騎士団の裏切り者がクデーターの中にいたのだ。

313 :一番湯のカナタ 4 :04/05/08 03:55 ID:???
 カナタの婚約者のワネットが、カナタを追ってやってきた。ワネットは王妃になる事だけが望みでカナタに興味はない。
ワネットの配下のクローン忍者を倒した強い涼にワネットは恋をする。涼も好きだが王妃の地位も捨てがたい。
早くカナタに王になって欲しいからとワネットはガードロイヤルに協力する。
 ドイルは、増殖本能を抑制する薬をアニーザキスに打った。生物の本能や欲求を押さえる事は出来ない。
その証拠にプレアデス騎士団は互いに争って解散し、ドイルは牛乳を放す事ができない。ドイルも闘争本能や
依存欲求に負けたのだ。一思いに私を殺せとアニーザキスは言う。
「俺が牛乳と縁を切って見せたらお前も考え直すか?」ドイルは断乳し、部屋に電子ロックをかけ閉じこもった。
ほとんど半狂乱の状態になったドイルに耐えかねアニーザキスは涼たちを呼ぶ。
「生物である以上、いくら理性を抑えようとしても限界はある。そこまで耐えたのだから誰もお前を笑ったりはしない。
滅びる事などアニーザキスは気にしない。こんな事は無意味だ。飲め」半狂乱になりながらもドイルはそれを断る。
異星の物質に依存症になればその離脱症状は通常の薬物よりはるかに激しい。しかしここでやめるわけにはいかない。
そんなドイルを見て、人間とは面白いものだとアニーザキスは思った。

 セイリュートの生命反応が弱まり、応答もない。セイリュートはあくまでも生物。死んでしまう可能性がある。
涼とブラッドは『星龍族細胞活性剤』を刺しにセイリュートの本体に向かった。
セイリュートの外装は剥離し、周りにいるブラッドも危ない状況だったが何とか注射出来た。
その注射でセイリュートは目覚め、説明する。ガードロイヤルが進むにつれセイリュートは段階的に進化する。
そのため一時休眠状態にあったのだという。ゆっくりとはいえ着々とガードロイヤルは進んでいるのだ。

314 :一番湯のカナタ 5 :04/05/08 03:55 ID:???
 目覚めると、涼はカナタぐらいの背丈になっていた。頭からは変なビームが出たり、体から刀が出たりした。
セイリュートの話によれば、クーデーターを起こした家老・カローの正規軍が攻めてきて、その時に涼は死亡、
涼の今の体は万一のために保存されていたカナタの予備ボディーだという。体があれば生き返らせる事も
可能なのだが、涼の遺体とカナタ達は敵に捕らえられているのだ。涼・ブラッド・セイリュートの三人はカナタと、
奪われた涼の遺体を取り返しに宇宙へ行く。ドイルは断乳の禁断症状がひどいため来れない。
涼は捕らえられたカナタ達を助けるが、涼の遺体はカローのいるナ・リタ星へ既に転送されていた。
カナタ体型になった涼は、エイリアンが起こしたと思われる事件のあった小学校へカナタと共に転校。
そこには天沼という、つい最近まで入院していた少女がおり、彼女は事件の直前被害者と関わっていた。
しかし天沼はウサギに餌をやったりと優しい少女で、彼女の体に不審な点はなかった。
実は、天沼が餌をやっていたウサギがエイリアンだったのだ。細胞レベルで擬態をするために
セイリュートたちも気づかなかった。聞いてみれば、天沼の体調がよくなったのはウサギに触り始めたからだという。
涼は天沼のエイリアンやカナタに関わる記憶を全て消し、その場を去った。
「俺はもうあの時代を生きたから、もう一度は無理さ」学校を背に涼は言った。

 涼はレストランでサヤカに会う。今のこの姿をどう説明すれば・・・!涼は焦るがサヤカは無反応。
おかしい。涼がサヤカを調べてみると、過剰な外部操作、記憶の消去と洗脳のやりすぎで脳に問題がある事がわかった。
今までサヤカにカナタたちの事がばれそうになるたび、カナタ達はサヤカの記憶を強制消去していた。
そのせいかと疑うが、カナタ達以外の思考操作の痕跡が残っていた。どうやらレストランの店主が関係してるようだ。
レストランの店主の正体はエイリアン。涼と正気に戻ったサヤカは店主を倒す。
全てを知ったサヤカは、レストランで働けなくなったかわりに星乃湯でアルバイトをすると言った。

315 :一番湯のカナタ 6 :04/05/08 03:57 ID:???
ガードロイヤルを進めるために大いに役立つはずだとワネットは涼に加速装置を取り付ける。
しかし涼はカナタと共に、加速しすぎて時空の流れを超えて別の宇宙へ飛んでいってしまった。
そこには銃を持ったユウリ・ワネットを押さえつけるブラット・船を運転するサヤカがいた。
パラレルワールドに来てしまったのだ。元いた世界よりも、ナ・リタ星からカナタが脱出するのが
遅れたため、カローにカナタは洗脳され、悪と化したカナタは地球人を洗脳し、地球をまるごと
温泉リゾートにし、やがてカローの軍団がまったりしにくるようにする気だ。
元の世界から来たカナタと涼は驚く。しかも、こちらの世界の涼は悪のカナタの味方についているのだという。
カローのために地球侵略なんて、同じカナタとして恥ずかしくないのか!カナタは涼や
こちらの世界のユウリと共に悪のカナタの元へと向かった。
カナタはセイリュートに抜刀しろという。悪のカナタは中止しろという。矛盾したコマンドは同時に実行できない。
二人は延々と「抜刀」「中止」を言い続ける。カナタ二人があの様子では、涼たちが決着をつけるしかない。
涼は洗脳されている涼を攻撃する。すると悪の涼の口から虫のようなものが出てくる。これが悪の涼を洗脳させていたのだ。
一方悪のカナタは下を噛んでしまい、その隙にカナタが攻撃する。悪のカナタの口からも虫のような物が出てきた。
二人の洗脳が解けたとほとんど同時に、元の世界のワネット達がセイリュートに乗りやってきた。
二人ずつのカナタ達は温泉につかってまったりとした。
<打ち切りのため ここで完>