漂流教室/楳図かずお
37 :マロン名無しさん :03/12/22 23:04 ID:???
漂流教室

ユウちゃんだけ現代に戻れます
412 名前:漂流教室書いた人 投稿日:04/10/23 05:12:00 ID:???

「漂流教室」短めのあらすじ

(おおまかなあらすじ)
高松翔の通う大和小学校の生徒たちは、突然の爆発で校舎ごと未来世界に飛ばされてしまう。
頼りになるはずの教師たちは理性を失い、一面の砂漠に絶望して自殺したり
暴走した者に殺されたりして誰もいなくなってしまった。
翔たちは偶然交信できるようになった過去世界の母親の力を借りながら
未来生物や暴走する大人や病魔、飢えや恐怖と戦ってゆく…。

(ラスト)
彼らの行動が実を結び、未来世界もわずかだが希望が持てるようになってきた。
母から未来に送られた物資もある。
翔たちは、自分たちが「未来に蒔かれた種」なのだと気付き、
この世界で力をあわせて強く生きてゆこうと決心する。
ただ一人、爆発に巻き込まれてともに時空を超えてしまった近所の子供ユウちゃんだけを
過去世界へと送り返して……。

過去世界の母は、ユウちゃんから託された翔の日記を手に、未来世界で生きている翔たちを思う――。

35 :漂流教室:1 :04/04/23 19:55 ID:???
小学6年生の高松翔は、最近母親の干渉が鬱陶しく思えるようになってきた。
ある朝大切にしていたビー玉などを捨てられて母親と大喧嘩してしまう。
「今日限り、あんたなんか母親と思わないからなっ!!」
「ああそう!私もお前なんか子と思いたくはないわ!!」
思春期の子供なら一度は言ってしまう言葉、親との衝突。

「もう二度と帰ってこないから!!」
「ああ結構よ!!もう二度と帰ってきて欲しくないわ!!」
翔は学校へと走って行った。母もそんな翔の背中に怒鳴りつけた。
……お互いの言葉が真実となることも知らず。

登校中にクラスメイトの信一と合流するが、
二人は給食費を忘れたことに気付く。
信一はいったん取りに家に帰ることにしたが、
翔は「あんな家もう絶対二度と帰りたくないから」とそのまま学校へ向かった。

――給食費を持って学校へ向かう信一は、学校の方角からしたすごい音にしゃがみ込む。
通学路である商店街のガラスが割れ、地面にひびが入るほどの衝撃だった。
「まさかと思うけど、学校が……!!」
急いで学校へ向かう信一の足に、彼等の通う小学校「大和小学校」の看板が当たる。
「なぜこんなところに………?翔ちゃん!!」
信一は学校に、………「学校があったところ」にたどり着く。
大和小学校があったはずの場所は、大きな穴があるだけだった…。

36 :漂流教室:2 :04/04/23 20:14 ID:???
翔の母は、彼と喧嘩したことを後悔していた。
「帰ってきたら謝らなくちゃ」
給食費を払う日だったのでは、と学校に電話してみるが受話器からは何も音がしない。
それじゃあ直接……と学校まで向かう途中、周囲の異変に気付く。
「大和小学校が爆発したそうだっ!!」
「全生徒、血だらけで重症だそうだっ!!」
町を走る人々の声やサイレンの音が母を走らせる。
「し、信一くん!!うちの翔は!?」
学校の看板を手に抱えたまま、「みんないなくなってしまった」とパニックを起こす信一。
人を掻き分けて、母が見たものは……。

――信一と別れた後、翔はそのまま学校へ向かった。
いつもと同じ平凡な授業が進む。「今日は早く帰ってお母さんに謝ろう」
突然校舎が大きく揺れだした!!
みんなビックリして机に潜る。
……………。
………揺れがおさまった。
「やっと平常に戻ったようだから、授業にかかるかな。
どんな場合でも慌ててはダメだぞ!理性が狂うからね」
授業を続行する中、突然「ギャーーーーッ!!」という叫び声。
なんだなんだと窓から校庭を見ると、一人の教師が地面によろけ倒れていた。
担任の先生が見に行くが、気になった男子の代表の翔と女子の代表の咲っぺで様子を見に行くことに。
校門の前に先生たちが突っ立っていた。
一緒になって校門の外を見ると、一面砂と岩ばかり。道路も周囲の建築物もなにもない、一面の砂漠……。

37 :漂流教室:3 :04/04/23 20:45 ID:???
「学校の外が、みんななくなっちゃったーっ!!」
教室へ駆け戻りみんなに報告する翔。まさかと笑った生徒たちも、廊下の窓から外を見てパニックを起こす。
「屋上へ確かめに行こう!!」みんなして階段を駆け上がる。
……広い広い砂漠の真ん中に、ジオラマのように、
大和小学校の塀で囲まれた敷地だけがポツリとあるだけだった。
「あたしのうちは?」「ぼくんちはどこへいったんだ?」
「おかあさんっ!!おかあさーん!!おかあさんどこなのっ!?」
屋上のフェンスによじ登り、母を捜そうとした女生徒の一人が地面に落ちた。
嫌な音とその変わり果てた姿を見てしまった生徒たちは「家に帰る」と校庭に飛び出した。
校門のところにいた教師たちは慌ててみんなを止めようとする。
「心配ないから落ち着くんだっ!!」叫ぶ担任の手も震えている。
「おかあさん!!」生徒たちに混じって翔も叫ぶと、急に涙が出てきた。
今朝の母とのやり取りが頭に浮かぶ…。
この騒ぎを聞きつけて他の生徒たちも校庭に飛び出してきた。
女教師を踏みつけてまで外に出ようとする惨事に、一人の教師が強行に出た。
自分の眼鏡を握りつぶし、父の元に飛びついてきた自分の息子の腕につき立てたのだ!
「これでも騒ぐつもりかーーっ!!」
怯える生徒たちに担任は上級生たちに体育館へ行くよう指示する。
このままだと校舎にいる他の学年の生徒までパニックを起こしてしまうからと。
「学校の外で何かが起こっているか調べるならテレビをつければいいと思います!
ぼくに電話をかけさせてくださいっ!!」
声を待たず、翔は職員室へ駆けて行った。「もしもしっ!!もしもしっ!!」
「おかあさん、なぜでないんだっ!?何が起きたっていうんだっ!?」
テレビも電気が止まってつかない。教師の持っていたトランジスタラジオも聞こえない……。
女教師の一人が心臓発作を起こし苦しむ…頼ろうとした担任も冷たく突き放す…。
そこへ頭から血を流した校長が入ってきた。強盗にやられて教師たちの給料を奪われたと言う。
今まで気を失っていたという校長は、電話が通じないと知って強盗の足跡を追って走り出した。
塀を越えたらしい足跡を見定めようと外を見てショックのあまり倒れてしまう。
事態を重く見た担任は、翔に体育館にいるみんなに嘘をつけと言う……。

38 :漂流教室:4 :04/04/23 21:04 ID:???
「電話は通じた、お母さんが出た、お母さんはうちにいたんだ」
担任に言われ、生徒たちがパニックを起こさないようにと嘘をつく翔。
だが正直者の翔の嘘はクラスメイトの大友に見破られる。
「嘘つきっ!!」翔を殴りつける大友を、咲っぺは必死にかばう。
そんな騒ぎの中、放送部の先生が舞台に立ってみんなに宣言した。
「放送室の無線が突然鳴り出した、私たちを探しているという日本のニュースだった。
私たはどこか他の土地にいる、だからお父さんやお母さんは生きています!」
大喜びの生徒たちの中、「みんなをがっかりさせないために嘘をついてるんだ」と険しい顔の翔。
「屋上にのろしをあげましたが、救い出されるまで学校で生活しなくてはなりません。
学校の外には出ないでください。下級生をいたわってあげてください」
上級生たちの理性を信じて辛い嘘をつく教師たち。
翔たちが教室に戻ろうとすると、何も知らない1年生の教室からは歌声が聞こえてきたが、
3年生の教室に異変が起きていた。
縛られた女教師が「生徒が一人校舎の外に逃げた」と叫ぶ。
「あれは私の弟よ!誰か止めてちょうだい!!」
弟を止めようとする咲っぺ。だが弟は「お家に帰る」と走って行った。
そして、遠くで突然倒れた。そのまま動かない。
助けに行こうとする咲っぺをみんなも担任も止めた。
咲っぺを引っ張って教室に戻る一同。
「クラスのものは兄弟だと思ってしっかり手を繋いでいこう。
君たちがうちに帰れる日がくるまでは先生はみんなのお父さんだ」
亡くなった者たちにみんなで黙祷を捧げる。
「給食を食べて元気を出そうじゃないか。翔、お前給食がどうなっているか見に行ってこないか」
教室を出るとすぐに誰もいないところへ行って大声で泣いた。
大声で泣きたかった自分の気持ちをわかってくれた担任に感謝しながら…。

39 :漂流教室:5 :04/04/23 21:27 ID:???
ひとしきり泣いた後、給食室へ向かう翔。
「きみ、6年3組の子だろ?僕たち4組のものだけど」
男女二人に声をかけられ、共に給食室へ。
「これはみんなの噂なんだけど、今食べる給食がなくなったら
食べる物がもうないんじゃないかって……」
給食はその日食べる分だけ給食屋のおじさんが運んでくる。
ひょっとしたら給食やさんが来ないうちにこんなことになったんじゃないか…。
給食室の扉を開けると、床にパンが落ちていた。
手を伸ばしてパンをつかんだ男子の手に、突然モップの柄が突き刺さった!
返すモップで翔が殴りつけられる。
「いいかっ!!ここにあるパンは全部おれのものだっ!!」
給食のおじさん関谷が「まだパン代をもらっていない」と権利を主張し出したのだ。
給食のおばさんや給食を受け取りに来た他の生徒たちが遠巻きにしている。
教師が分け合おうと主張するも、モップで殴られてしまう。
包丁を手に、みんな出て行けと追い出したが、一人の女生徒が逃げ遅れて閉じ込められてしまう。
中から関谷の怒号と女生徒の悲鳴…。
翔は慌てて教室に駆け戻り、担任やクラスメイトに報告する。
みんなは「あのやさしい給食のおじさんが……!」と驚きを隠せない。
給食当番だった愛川さんが翔を迎えに行ったと聞き、逃げ遅れたのは愛川さんだとわかる。
担任が様子を見に行くと、給食室の前には事情を知った他の教師たちも集まっていた。
「関谷さん、ここをあけてくださいっ!」
「愛川くん!!愛川くんはいるかっ!?」
中から相川さんの声がした。どうやら無事のようだ。
関谷は扉の内側から教師たちの足元に灯油を流し込み、火をつけた!
勢いよく火が回り、炎に包まれる教師たち。
自ら両足を焼かれながらも担任は消火器で消火し、そのまま倒れた…。
「ここにある食い物は全部俺のものだ!今日からこの学校は俺のものだ!」
愛川さんに包丁を突きつけ、再び給食室にこもる関谷。
「先生たちが話し合ってるのを聞いたんだ、助からないんだ!俺は絶対に生きのびてやる!」

40 :漂流教室:6 :04/04/23 21:53 ID:???
「先生たちが大やけど、愛川さんが人質に!?」
女生徒の報告に、翔のクラスはパニックになる。
1・2年生たちもお腹がすいたと泣き始めているようだ。
電気もつかないし水も出ない。このままでは飢え死にだ!
「僕たち何人かでこっそり給食室に忍び込んで愛川さんを助け出し、
その後みんなで一気に関谷に飛びかかるんだっ!」
校舎の外側から給食室に回りこむ。学校の電池時計はまだ3時なのに、もう日が暮れてきた。
翔たちと二手に別れた二人の男子が、落ちていたピストルを発見。
「なぜ学校にピストルが!?たまも本物だ!」
驚いた拍子に発砲してしまう男子。この音で関谷に気付かれたのではと不安がる連れを置いて、
武器を手にした勢いで威勢良く給食室の扉を開けてしまう。
………いつの間にか外に回っていた関谷に背中を刺される男子。
苦し紛れに撃った弾は、連れの身体に命中してしまう…。
なんとか愛川さんを救い出すことができたが、ピストルを関谷に奪われてしまった。
翔は慌てて逃げた際に牛乳瓶とパンをつかんで来てしまったらしい。
教室に戻ると「パンが一つ足りないと関谷がピストルを手に暴れてる」との情報が。
「きみを探しに来ないといいんだけど…」「…このパンどうしよう…」
パンと牛乳を前に悩んでいると、校庭から笑い声がする。
窓から見ると、グラウンドに三輪車に乗った小さい子の姿。翔はその子供に見覚えがあった。
事件の前日の夕方、寄り道した学校の校舎で一緒に遊んだ男の子だった。
グラウンドに下りて確かめると、やっぱりその子だった。名前はユウ。
「明日も遊ぼうって言ったから朝からずっと学校にいたの」
ユウちゃんの三輪車にくくりつけられていた物は、すっかり錆び付いた大和小学校の看板だった……。

41 :漂流教室:7 :04/04/23 22:14 ID:???
看板を抱えて校門へ走る翔。看板があった位置には長方形のくぼみだけ残っていた。
はめ込んでみるとぴったりだった。見覚えのある傷もある。
なんだか嫌な予感がしてユウちゃんに看板のあった場所の事を聞いてみた。
「砂場の中にあった。石に字が書いてあった」
持っていたローセキで地面に書きだされた「ね む れ」の文字が不安を掻き立てる。
学校の砂場を探すが見つからない。「そこじゃないったら!」「なんにもないじゃないか!」
「砂場じゃないんだもん!」「さっき砂場って言ったのに、嘘つき!」
嘘つきと言われて、拗ねて帰ろうとするユウちゃんを慌てて引き止める。
「今夜はお兄ちゃんと学校で寝るんだよ」外はもう真っ暗になっていた。
お腹が空いたと泣くユウちゃんを抱えて教室に戻る。
みんな空腹だったが、ユウちゃんにパンと牛乳を譲ってあげた。
お腹がふくれてユウちゃんは眠りについた。
教室はもう真っ暗だった。遠くでピストルの音がする。
誰かが給食を取りに行って関谷にやられたのだろうか。
男子の一人が机の木を擦って摩擦でノートの紙に火をつけてみようとチャレンジする。
……と、ある男子がポケットにキャンディがあったと取り出した。
「みんなも探してごらんよ!」「そういえば………」
女生徒たちがこっそり持ってきていたお菓子が結構な数になったのだ。
「これだけあれば少しはもつぞ!」
みんなが涙を流して喜ぶ中、ノートに火がついた。カンシャク玉の粉を混ぜたのがよかったらしい。
紙と鉛筆をくべて、看板を照らしてみた。
「もしこれが門についてた物だとすると、僕たち、もしかしたら……」

42 :漂流教室:8 :04/04/23 22:36 ID:???
その時、突然5年生の生徒が飛び込んできた。
関谷がパンを盗んだ人を探して回っているという。
それどころか、みんなの持ってる食べ物まで奪うのだと……。
懐中電灯と包丁を手に、生徒たちから食べ物を奪う関谷。
切り付けられうずくまる生徒たちを踏みつけ、「関谷さまと呼べ!」と高らかに笑う。
その笑い声は翔たちのクラスまで響いてきた。
みんなは翔に逃げるように言うが、翔はきかなかった。
「それでみんなに迷惑がかかったら悔しい、
それに僕はこの子(ユウちゃん)を守らなければならない責任があるんだ!」
関谷が近付いてくる。お菓子を隠し、女子は机でバリケードを作る。
扉が開いた。入ってきた関谷に男子が飛び掛った!
ピストルで応戦され、包丁を振り回されて犠牲者も出た。が、無事関谷を縛り上げることに成功。
「ピストルに弾があと1発残っているぞ!撃ち殺してやるんだ!」
「許してくださいっ!私が悪かった!ぼっちゃんっ!」
泣いて懇願する関谷に容赦なく発砲するが、弾は外れてしまった。
拷問を提案する生徒たちを、「そんなことをしたら関谷と同じになってしまう」と止める翔。
貯蔵庫の鍵を手に入れ、無事に給食を分け合うことができた。
マッチも油もあるから、ランプもできた。
給食の他にジャガイモやメリケン粉(昔の漫画ですから)もあった。
咲っぺがこっそりと翔に言う。
「貯蔵庫の鍵は翔ちゃんが持ってた方がいいわ。今はみんな突然の出来事で夢中になっているけど、
そのうちまた関谷みたいなことが起きるわ。もしかしたら、もっと酷いことが……
昔戦争でニューギニアに取り残された兵隊が飢えに襲われたときのことよ…」
これ以上はとても言えないと怯える咲っぺを元気付ける翔。
関谷は縛られたまま更衣室に入れられ鍵をかけられた。
【おかあさんの料理を一度だって感謝して食べたことのなかった僕を許してください】

43 :漂流教室:9 :04/04/23 22:50 ID:???
給食を食べ終わると、みんな疲れが出たのかすぐに眠りに落ちてしまったようだ。
ユウちゃんはもう目覚めて三輪車で遊んでいた。
「おはようお兄ちゃん。変なお日様が出てるよ」
「日食だっ!!」
大声でみんなを起こす翔。みんなもビックリして日食を見上げている。
「日食はこの辺じゃ当分起きないって理科で習ったじゃないか。
学校の外の物が突然になくなったんではないんだ!!
突然になくなったのは僕たちの方なんじゃないだろうかってことだ!!」
詳しい説明を求めるみんなに答えを濁す翔。
看板が出てきたところに連れて行って欲しいとユウちゃんに案内を頼んだ。
校庭の砂場を越えて、裏門から外に出るユウちゃん。
みんな慌てて止めるが、ユウちゃんは平然と答えた。
「砂場ってここのことだよ。昨日ずーっとここで遊んでたんだよ」
指差した先には大きな石版のようなものがある。翔は看板を持って駆け出した!
『大和小学校の862人の霊ここにねむる』
862人の霊……!?僕たちのことだっ!!」
翔の様子がおかしいと気付き、みんなもつられて外に飛び出した。
「みんなこれを見ろ!僕たちは未来へ来てしまったんだっ!!」
みんなで石版を掘り出してみると、看板がぴたりとはさまるくぼみもあった。
全生徒・全職員の名前が刻み込まれた慰霊碑だったのだ……!
未来に来てしまったと知り、みんなそれぞれ自分の家のある方向に向かって走り出した。
翔も走った。家のあった場所は何もない、ただの砂漠だった……。

44 :漂流教室:10 :04/04/23 23:09 ID:???
教師たちは日食を見てパニックを起こしてしまう。
校長はただ笑い続け、もう一人の教師は自ら首を掻き切ってしまう。
「私を縛ってくださいっ!!どうかお願いです!このままではきっと!早く!」
担任は教師たちに懇願した。「この木に縛り付けてください!!」
木にすがりつくが「だめだ、もう遅い!!」とうずくまる担任。
肩を貸して教室に連れて行こうとする教師の首を静かに絞める。
「だから縛ってくれと言ったのに……」
倒れた教師に驚き駆け寄った他の教師に、ベルトを巻きつける……。
翔が家のあった場所からとぼとぼと帰ってくると、学校では生徒たちが泣いていた。
「先生がみんな死んでしまったんだっ!!」
担任が生きていることを喜ぶ翔。他の教師たちはみな自殺してしまったと言う。
「常識の矛盾に耐え切れなかったから、こうせずにはいられなくなってしまったんだ…
高松、手に怪我をしているぞ」
家のあった場所を掘っていたせいで、手に擦り傷を作ってしまったらしい。
ポケットから出した紐状の布で「包帯をしてやろう」と怪しく手を伸ばすが、
他の生徒たちがやってきたので、普通に包帯を巻いてやった。
教師たちの死を嘆く生徒たちを優しく慰め、学校の一角に葬ってあげようと運び出す。
更衣室の内側から関谷が叫ぶ。
「人殺しだっ!!私は見たんだ、ここで先生が首を絞めるところを!
早くつかまえないとあなたたちは全員殺されますよ!!
教えてあげたんだから出してくださいっ!!」
出してもらうための嘘だろうと、関谷の叫びもみんなには通じない……。

46 :漂流教室:10 :04/04/23 23:30 ID:???
亡くなった生徒や教師たちのお墓を校舎の片隅に作った。
職員室の先生たちのタバコを線香代わりにし、みんなで祈った。
担任は残っていた自動車で様子を見に行こうと提案、
6年生のクラス代表5人と担任とで探検に行くことになった。
翔もその中に加わった。理科室にあった磁石を持つのを忘れなかった。
都心に向かう途中、人を発見して呼び止めた。5年生の西さんという女の子だった。
彼女は小さい頃転んで脊髄を傷めてから松葉杖が離せない状態で、
自分が何かするとみんなの足手まといになるし、みんなは自分と遊ぶことを嫌がるし自分を見て笑う。
前から誰も人のいない世界に生きたいと思っていたらこんなことになってしまって不思議だけど、
ここにいてもみんなの足手まといになるから生まれた長野に帰ると言う。
「バカっ、何を言うんだ、それに方向が違うじゃないか!」
強引に車に乗せる翔。西さんを加えての道中、さっきから方角が違うことに翔は気付く。
荒川だったらしい場所に出た。水はもうない。橋も土になっていた。
花が咲いてる!と手に取ってみたらプラスチックの造花だった。
他にもビニールやポリエチレンがあちこちに…。
「そうだ、決して自然分解しないのだ、燃やす以外は…そして燃やすと毒ガスが出る」
気がつくと、生徒の一人がいない。慌てて探しに走る翔の足を、誰かがつかんだ!
足元の砂からいきなりのびた手にビックリして掘り返すと、いなくなった生徒だった。
ビニールを顔に巻きつけられて苦しむ生徒。どうにか解いてやると、担任にやられたと言う。
背後にせまる担任は、車に乗って走り去ってしまった。
「僕たちを置き去りにするつもりだっ!!」
焦って追いかけるが、逆に追われ、ひき殺されそうになる。逃げる生徒たち。
西さんに肩を貸しながら逃げる翔はみんなに置いて行かれてしまう。
「私を放って逃げて」と言う彼女の頬を張り、みんなに追いつこうと頑張って歩き出す。
ところが先に逃げていった生徒たちは次々担任の車に跳ねられ、ひき殺されていった……。

47 :漂流教室:11 :04/04/23 23:51 ID:???
最後の仲間が殺されて、西さんと翔の二人だけになってしまった。
疲れて動けない西さんをかばうため、両手を広げて叫ぶ翔。
「先生は僕たちのお父さんになってくれると言ったじゃないですかっ!!」
担任は正気に返らない。車のスピードは変わらない。
西さんが翔を突き飛ばし、松葉杖をフロントガラスに投げつけた!
が、西さんも跳ね飛ばされてしまう。
幸い気を失っているだけのようだったので、彼女を抱えて必死に逃げる翔。
洞穴を発見し、暗闇の中をどんどん進んでゆく。
背後から懐中電灯の光が見える。担任が追ってきたのだ。
横穴がたくさんある場所に出た。同じ穴が規則正しく並んでいる。
その中のひとつに飛び込んでみた。……出口だ!さっそく逃げようと足を踏み出したが、
そこは断崖絶壁だった。洞穴だと思ったのは老廃した建築物で、横穴は窓だったのだ。
高層ビルだったのか、地面は遠かった。
思わず西さんをその場に取り落としてしまう。
「おかあさん!」背後に担任が迫り、両手が翔の首を強くつかんできた。
「おかあさん!たすけてーーっ!!」

49 :漂流教室:12 :04/04/24 00:21 ID:???
大和小学校があったはずの場所は、バリケードが張られていた。
その周りを父兄が取り囲み、子供はどうなったんだと警官に詰め寄っている。
鉄条網を越えようとする翔の母。警官に止められ、泣き崩れる。
信一が母を見つけ、翔の父を呼んできてくれた。
雨が降ってきた。日も暮れて暗くなってからと説得して母を連れ帰る父。
ずっと付き添っていてくれた信一にお礼を言って、二人は帰宅する…。
帰宅してもずっと後悔し泣き続ける母。食事もロクにとろうとしない。
何かがわかるかも、とテレビをつけると信一が出ていた。
事故に遭うまでのいきさつを話す姿を見て、
「あなたは助かったのに、なぜ翔だけが!?」と嘆く母。
アナウンサーの「小学校の人々はおそらく……」「言わないでっ!!」
テレビを叩く母。「翔が死んだなんて!!」
半狂乱になる彼女は、それでも鳴った電話に「警察からかも」と受話器をとった。
聞こえてきたのは………
「おかあさん!!」
「翔!!」
「おかあさん!!たすけてーーっ!!」
「翔!!どこなの!?もしもしっ!!もしもしっ!!」
涙を溢れさせながら、翔の返事を待つ母。
どうしたんだとやってきた父が受話器をとると、信一の母からだった。
「奥様はどうしてるのかと思いお電話いたしましたが、お電話しない方がよかったのでは…」
「もしもしっ、翔!!」受話器を奪い取り、何度も問いかける母。
「よさないかっ!!」慌てて電話を切る父。彼には翔の声は聞こえないのだ。
「やっぱり翔は生きているのだわ!!そして何か困ったことが起きて助けを呼んでるのよ!!」
街中へ飛び出す母。だが途中で力尽きて倒れてしまう。
うなされながら息子の名を呼ぶ母を、父は抱きかかえて連れて帰った。

50 :漂流教室:13 :04/04/24 00:39 ID:???
……真夜中、うなされていた母は、救いを求める翔の声で目を覚ます。
ネグリジェ姿で家を飛び出す母。声に導かれるように走ってタクシーを止める。
おびえる運転手に声の聞こえる方向を指示し、やってきたのは高層ホテル。
料金も払わずにタクシーを駆け下り、エレベーターに飛び乗り、
声のするだろう部屋を激しくノックし、中に飛び込んだ。
部屋を家捜しし、中にいたカップルに「翔はどこ!?あなたが隠したのねっ!?」
とつかみかかった事でフロントに連絡され、父に連れ帰されてしまう。
もう一度あのホテルに、あの部屋に行きたいとせがむが、
「私たちは顔を覚えられてしまった。名前から住所まで控えられてしまった。
今度何かあったら警察に訴えると言われた」と止められてしまう…。
…翌日、大和小学校の新聞記事を読む母。
「爆発により全員粉々になった」との内容に「嘘よ!」と新聞を丸めてしまう。
泣きながら翔の部屋に行き、机の中にしまわれてた翔の大切にしていたナイフを手にする。
「お前はもう二度と帰らないと言って出かけて行った。でも今お前はきっとこれが必要なのよ!」
ナイフを手に自分の部屋に駆け下り、鏡に向かって着替えだす母。
「おかあさんはあなたを助けます、なんとしても!!」
ヘアーピースを取り出し、化粧をばっちり決めて別人のようになる母。
「あのホテルへ翔を助けに行きます。もう電話で嘘の住所と名前で申し込んでおきました。
お金は貯金から10万円おろしました。私今夜は帰りません、もしかしたら明日も明後日も」
止める父を振り払い、タクシーに乗り込んでホテルに乗り込んだ。
ボーイの案内も拒み、さっさと部屋に入った母は、なんと電動ドリルで壁に穴を開け始めた!

52 :漂流教室:14 :04/04/24 00:51 ID:???
ものすごい音に苦情が来てるとのボーイの訪問に、テレビの音を大きくかけすぎたと苦しい言い訳。
母は信一を電話でホテルに呼び出した。自分を信用してきてくれた信一に事情を話す母。
「翔は生きているのよ、そして今殺されようとしているの!
行けるなら私が助けてやりたい、でもどこにいるかわからないのよ!
だからせめてこれを翔の手に握らせてやりたい!!これは翔のナイフよ!!」
この辺から聞こえたから、と窓際の壁にナイフを埋めようと言うのだ。
信一の見張りのおかげで、無事に穴を開けることができた。
錆びないようにビニールやナイロンで包んだナイフを穴に入れ、奇麗に埋めなおした。

――担任に首を絞められ、絶体絶命の状況で、翔は無我夢中で手を伸ばす。
と、そこに母の託したナイフが!
夢中で担任の喉に突き刺すと、彼は足を踏み外してはるか下に転落する。
担任の死を嘆く翔。安全な場所に西さんの身体をずらすと、彼女が目を覚ました。
「私、夢を見ていたわ!高松さんのお母さんが出てきて…高松さんを探しているの!
そして高松さんの持っていたナイフを、ホテルケイヨーの4225室の壁に埋めるのよ」
その言葉に驚いて手元を見ると、確かに翔のナイフだった。
担任に刺した弾みで刃の部分は折れて、柄もボロボロにはなっていたが。
不思議な符号に戸惑いながらも、やっぱりここが未来であることを実感し、慄く二人。
担任のことはみんなには内緒にしよう、全員事故で死んだと言おうと
涙ながらに決意して学校に戻る…。

54 :漂流教室:15 :04/04/24 01:53 ID:???
ようやく学校が見えてきた。
「おーーーーい!!」と足早に向かう翔のもとへ、咲っぺが走ってきた。
「逃げてっ!殺されるわ!!止めようとしたけどダメだった!!」
傷だらけの咲っぺは、ぐったり倒れてしまう。
咲っぺを西さんに任せて、翔は校内に突入する。
そこには磔にされた男子生徒がいた。傷だらけで、助けを求めている。
まわりにはたくさんの下級生たちが集まって木片を足元に積んでいた。
翔が「何をする気だ」と叫ぶが、生徒たちに石を投げられてしまう。
体育館の扉が開き、クラスメイトたちが翔を招き入れてくれた。
「どうしたというんだっ!?」
1・2・3年生が辰巳という番長をあんな状態にしたのだと言う。
翔たちがいないあいだに学校生徒の間に変な噂が立ったのが原因らしい。
「この学校の中に一人だけよくない人がいる。名字のはじめに「た」がつく人らしい」
「僕も高松だからたの字がつくじゃないか!」
もちろん、彼ら以外にもたの字のつくものは大勢いる。
番長核の辰巳はみんなを苛めていたのでその恨みが出たのだろう。
「火あぶりにして、苦しんでいるところをヤリで突き刺すんだ!!
突っついて流れる血が火を消せば雨が降るんだ。
雨が降れば飢え死にせずに済むし、雨が降ると学校の外の景色も現れるって…」
「それじゃあまるで野蛮人のまじないじゃないか!!」
「でも雨が降らないと水がもうないんだ!!」
「君たちまでそんなこと言って……!!」
辰巳くんが焼け死んでしまう!と無意識のうちにバケツを持って走り出す翔。
「水を!!」とやってきたのはプールだった。


55 :漂流教室:16 :04/04/24 01:54 ID:???
「水だ!こんなにあるじゃないか!!」
さっそく汲んで火を消す翔。学校のみんなにも水の存在を知らせ、
他にもまだ何かあるかもしれないと探させる。
学校の外側の塀に、どこかのマーケットの倉庫がくっ付いてきていた。
中にはたくさんの食料品。缶詰も豊富にあった。
電気製品の工場や、関谷の自動車の中に古米が入っているのも発見した。
6年生で相談をして、全校集会が開かれることとなった。
舞台に立つ翔は、みんなに未来に来てしまった事実を話す。
「大人の人はみんないなくなってしまった、だから僕たち自身で生きていかなければならなくなった。
先生が死んでしまったのは、大人の人は理屈で物を考えるから
理屈に合わないことが起きた時耐え切れなくなったんだと思う。
大人の人はもう自分のものさしができてしまっているが、
僕たちは色々な可能性を考えることができるからこうして生きていられるんだと思う。
でも逆になんでも信じてしまって今回のようなことになったりもする。
食べ物や水も見つかったから当分は安心だが、いつまでも続かないんだ。
身の回りにあるものは大切にしなければならないんだ」
翔の話を、みんなはまじめに聞いていたが、下級生から質問があがった。
「お父さんやお母さんは死んだんですか?」
「それは!!生きています!!」
不思議なほどにはっきり言う翔。
「じゃあなぜお父さんやお母さんはいないのですか?」
答えにつまる翔。そこに5年生の転載少年我猛くんが代わりに答えてくれた。
「たとえば僕たちは新幹線のひかり号に乗りました。お母さんたちは普通列車に乗りました。
同じ時間に東京を出発したのに、今は別々の場所にいるのです。それと同じです」
「みなさん!!僕たち6年生は、他の人たちの親になろう!!
男の人はお父さんに、女の人はお母さんになろう!!
僕たちを親だと思って頼ってくださいっ!!」
翔の宣言の後、みんな嗚咽を噛み締めていた。
プールの水を水槽に移動し、プールには蒸発を防ぐビニールシートを被せるなどの対策をして、
その夜はみんなで体育館で眠ることにした…。

60 :漂流教室:17 :04/04/24 03:03 ID:???
真夜中。校門に何かがぶつかる音がした。
翔と咲っぺが様子を見に行くと、担任に襲われて死んだと思っていた長田くんだった。
長田くんは手に木の葉っぱを握っていた。「どこにこれが!?」
うなり声を上げて、長田くんは死んでしまった。口の中に砂をたくさんつまらせている。
「ひもじくて砂を食べようとしたのよ!みんなに木のある場所を知らせようと学校まで…」
「長田くん、ありがとう!!」
次の日、そのことをみんなに知らせるとみんな大はしゃぎ。
長田くんのことは悲しかったが、植物があるということは大きな可能性だったから。
その木を求めて、探検隊を組んで出かけることになった。
そんな中、閉じ込められていた関谷が小細工をして出てきてしまった。
ユウちゃんを人質にとって、果物がある場所に連れて行けと脅してきた。
関谷は未来に来たことを信じず、「1ヶ月もすればアメリカの兵隊が助けに来る」などと言う。
長田くんの足跡を追ってゆくと、薄気味悪い植物の生えている森があった。
「あそこに実がなっているぞ!」
関谷は翔に毒見をさせるが、一口噛んだら口の中で砂になってしまった。
だが葉っぱが何かにかじられた跡がある。卵の抜け殻もある。
生き物がいるんだ!
関谷に確かめてこいと蹴飛ばされた翔。助けに行ったみんなは、巨大なムカデのような怪虫を発見!
慌てて逃げる一同。卑劣な関谷は気絶してる翔を怪虫の前に放り投げ、時間稼ぎに利用した。
翔を食べ終えたのか怪虫が迫る。このまま学校まで怪虫を案内させるわけにはいかないと、
勇敢な池垣くんが関谷を羽交い絞めにする。抵抗した関谷に散々蹴られるが、気絶しても離さない。
怪虫がふたりに迫る……!
残った三人の生徒は、ユウちゃんを先に学校へと逃げさせる。
「僕たちは戦うんだ!」大友くんが提案するが、臆病風に吹かれた残り2人は大友を殴って気絶させ、
おとりにして逃げてしまう。「ごめんよ、ぼく怖かったんだ!」
一人が勇敢にも引き返し、怪虫に勝負を挑むが、あっけなく食べられてしまう…。

61 :漂流教室:18 :04/04/24 03:04 ID:???
逃げる彼・赤羽は途中でユウちゃんを見つけ、背負って泣きながら学校へ走った。
「みんな怪虫に食われてしまった!ぼくは一生懸命戦ったけどダメだった!」
怪虫の迫る危機をみんなに知らせに校内を走る咲っぺ。
そこになんと女番長がいた。「お姫様と呼んでもらいたいわね!!」
楯突く男子をやっつけて、自分が指導権を握るべきだと主張する。
女番長はみんながこんなことになったのは翔のせいだと言い、赤羽もそれに同調して翔を弱虫だと言う。
反論する咲っぺを容赦なく殴りつけ、女番長は君臨した。
「倉庫の食料が無断で盗まれていた、犯人は靴を片っぽしか持ってない人だ」
シンデレラよろしく、手元に残った靴を一人一人に履かせてみようというのだ。
犯人らしき生徒が学校の外へ逃げ出すと、そこには翔がいた!
みんなも生きていて、後からやってきた。
女番長に翔の卑怯な行いや弱虫ぶりをけなされるが、翔にはもちろん心当たりがない。
大友くんは気絶したままだが、自分が殴られておとりにされたことをうわごとで言っていたという。
赤羽は激しく動揺し、逃げ出してしまう。
関谷は怪虫に襲われたショックで幼児退行してしまっていて役に立たない。
女番長はさっき逃げ出した生徒を捕まえてリンチを行おうとする。
生徒は靴をすりかえられたんだと無実を主張するが、言い逃れだと言ってきかない。
指を一本一本折ってゆくリンチを始めようとしたその時。
屋上にたくさんの1年生たちが集まって泣いていた。
「おとうさあーん、おかあさあーん」
フェンスによじ登り、大きな声で親を呼ぶ1年生たち。
そのうちの一人が「鳥になってパパやママのところに飛んでいくんだ」と
フェンスを飛び越えた………。

63 :漂流教室:19 :04/04/24 03:07 ID:???
「鳥になって、飛んでいってしまった!!僕も飛ぶんだ!!あたしも!!」
次々飛び降りる1年生たち。彼らは次々地面に激突してゆく。
止めようとしたすぐ目の前で男の子が落ちて、翔はキレた。
「バカーッ、やめろ!!こうなってもいいのかっ!!」
泣きながら遺体を抱えて屋上に見せつける翔。
「6年生や5年生も見ろーっ!!これが僕らが争ってた間の結果だーっ!!」
みんなその叫びにうたれて翔のもとに駆け寄ってゆく。
不機嫌になった女番長はリンチを中断した。
天才少年我猛が「政治が必要」と提案した。
心理学によると、このような状況下で一番大事なのは決断力のあるリーダーなのだという。
我猛の予想通り、女番長は親分を選挙で決めようと言ってきた。
翔と女番長は同点だったが、我猛が翔に入れて翔が総理大臣となった。
女番長と彼女を慕う数人は、学校を出てゆくと言う。
赤羽は泣いて翔たちに詫びた。
「覚えといでっ!!」
最後に一発赤羽を殴りつけて、威勢よく去って行った……。

日本の国会を真似て、他の大臣を他の6年生から任命した。
クラス委員の大友くん・厚生大臣
勇敢な池垣くん・防衛大臣
天才少年我猛くん・文部大臣(5年生だが特別に)
あとの3人は面識がないので他の人に選んでもらった。
この7人で頑張って行こうとした矢先、給食室の近くで生徒が倒れていると連絡が入った。
ガチガチ震えてうなり声を上げ、ひたすら空腹を訴える姿に仕方なく雑炊をやるが、
もっともっとと欲しがって苦しんだ。
「どういうわけかお腹が空いてたまらない」と言う彼。なんと倉庫の食べ物を盗んだことを白状した。
10人分はあったのに、全部食べてしまったのかと驚く大臣たち。
我猛が言うには「恐怖心の曲げられた表現」らしい。
元の世界に戻らない限りは永久にお腹が空くのだと。
だが彼にこれ以上やるわけにはいかない。暴れだす彼を仕方なく押さえつけ、
彼のクラスでロープで縛ったまま見張っててもらうことにした。

66 :漂流教室:20 :04/04/24 03:42 ID:???
大臣たちは中断されていた会議を再開した。
怪虫は必ず学校へやってくる。見てない人は存在を信じていないが、
あいつが学校に入り込んだら大変なことになるだろう。
「門から入ってきたら上から重しのついたクイを落とす」
「障害物競走の網で動けないようにする」
「理科実験室に塩酸か硫酸を探す」
などの案も出た。防衛大臣池垣くんはここぞとばかりに張り切った。
やがて、重しと網のついたクイが完成した。さらに落とし穴を下に掘って、
穴に落ちたらクイが落ちるように工夫したのだ。
数日後、大食いの彼が逃げ出した。クラスの人たちの食べ物を容器ごと奪ったのだ。
クラスメイトたちが同情してのことだった。
彼は落とし穴の存在を知らず、近くにしゃがんで必死に食べていた。
食べ終えた彼を翔が呼ぶ。責められると勘違いした彼は、落とし穴の方に逃げてしまった。
追いかけて彼をかばう翔。その上にクイが落ちてきた!
幸い、倒れた場所がよかったのか、翔も彼も無事だった。
ところがそこに怪虫が迫ってきた!肝心な時に罠は作動しなくなる。
防衛大臣の池垣くんは、翔に教室に入れと命令。二人は握手を交わした。
校庭に怪虫が侵入してきた。池垣くんたちが巨大なボウガンのような物を怪虫に当て、
硫酸と塩酸の瓶を投げるが、全然堪えない。彼らは慌てて校舎に入り、非常シャッターを降ろした。
2階のシャッター前まで非難するが、もうこっちに迫ってくる。
池垣くんたちは翔たちに3階に行けと命令する。
「僕が2階でやられたら、きみが3階で戦うんだっ!!」
シャッター越しに「がんばれ!!」「あとをたのむぞ!!」と声を掛け合う2人。
2階のシャッターが破られ、怪虫が侵入してきた!
斧を手に飛び掛る池垣くんだが、大きな爪に右手を挟まれ斬られてしまう。
「僕の手!!」左手に斧を持ち直し、「最後までやるんだっ!!」と飛び掛る…。

67 :漂流教室:21 :04/04/24 03:43 ID:???
「バキッ」 「ギャッ」
大きな音と声が翔たちのいる3階に響き渡る。
我猛くんは実際目にするまで怪虫の存在が信じられなかったと言う。理論的に不自然だと。
砂漠の中の森にしても、出し抜けに大きな木が生えるわけがないと…。
「僕も前に自動車で探検した時に通ったのに、その時は何もなかった」
とずっと戸惑っていた翔も疑問を口にした。
前に翔たちが襲われた時のことを聞き、気絶している人や
関谷のように精神が眠っている人が助かったのだとわかった。
標本の中のありったけのクロロホルムでまず下級生を眠らせた。
が、もうクロロホルムが残っていない。
「そうだみんな、考えを止めるんだ!みんなでイスになるんだ!!」
精神力をギリギリまでもたせるように、翔が廊下に立ち、みんなにいっせいに合図を送った。
「イスになれーーーーっ!!」
イスのことだけを考えて、イスになった者は怪虫も気付かずに通り過ぎ、
耐え切れずにパニックを起こした生徒は、無常にも切り刻まれ食べられてしまう。
嵐のようなとても長い時間が過ぎていった。
助かった者たちは無事を喜び合ったが、精神統一の続かなかった者たちは無残な姿となっていた。
2階へ駆け下りると、そこにはボロ雑巾のような姿になった池垣くんが、いた。
池垣くんにすがりついて涙を流す翔。
【池垣くんの身体は肉がちぎれ内臓がはみ出て血にまみれていたけど、
僕は気持ち悪いなどとはちっとも感じなかった】

68 :漂流教室:22 :04/04/24 04:16 ID:???
怪虫は去って行った。が、倉庫の食料まで食い荒らされてしまった。
怒りに震える翔は、こっちからやっつけに行って池垣くんたちの復讐をする決意を露にする。
そこに大ぐらいの彼が食べ物を欲しがってわめき始めるが、
「怪虫が池垣くんたちを殺して、その上食べ物まで食い荒らしていった!君にやる分はない!!」
我猛の重大な話も聞こうとせず、4年生の男たちに後を任せて、5・6年生のみんなで森へと向かった。
……いない。戸惑う男たち。まさか僕らがいないうちに学校を襲ったのでは……?
大ぐらいの彼がまた苦しみだした。「仲田くん!!」
食べると砂になってしまう果物を食べようとする彼を、みんなで必死に止める。
そこに西さんがやってきた。学校は無事だが、気になることがあるから追いかけてきたのだと言う。
彼女が差し出した紙には、怪虫の絵が描かれていた。「2年4組なかた」とある。
今5年生の大ぐらいの彼・仲田が2年生の時に描いたものらしい。
職員室を調べていて見つけたと言う。
西さんは2年の時彼と同じクラスで、「一番怖かった絵」を描くように言われて描いた絵らしい。
怪虫の背景は、この森の植物と同じ……。
我猛がさっき中断された重大な話をする。「怪虫や植物は彼の妄想ではないか」
「でもちゃんと手で触れるし怪虫は仲間を殺したんだぞ!」
「仲田くんがお腹が減るようになったのと森が現れたのが同じ頃です。
それに彼が食べ物を食べると怪虫が現れるということです!」
食べ物のエネルギーがすべて妄想の怪虫のエネルギーになるのではという大胆な推理。
試しに彼に食べさせてみると、途端に地中から怪虫が現れた!
みんなで怪虫に飛び掛るが、我猛は必死に止める。
「仲田くんに大きなショックを与えれば妄想は消えるはずです!!」
翔は仲田に絵を見せ、君の妄想だと言うが、仲田は認めようとしない。
植物にくくりつけ、怪虫から助かりたければ妄想を消すよう言うが、
大友はそれじゃ甘いとナイフを突きつける。「こいつが死ねば妄想なんて消えてなくなる」
「もしも本当に妄想じゃなかったらどうするんだ!!」
そこへ戒めの解けた怪虫が迫ってきた!翔は大友からナイフを奪い、
「許してくれーーっ!!」とぶつかっていった。
今にも食いつこうとしていた怪虫や植物は、砂となって消えていった…。

71 :漂流教室:23 :04/04/24 04:46 ID:???
仲田くんは自分が刺されたと思ってそのショックで妄想が消えたが、
ナイフで突いた瞬間に刃ではなく柄の方をぶつけただけで、無傷だった。
植物が偽者だったことにショックを受け、弱音を吐いてしまう大友くん。
だが、怪虫がい消えていった場所には捕られたはずの食べ物があった。
喜んで拾い集める翔たち。
見張り役だった生徒が、学校の方から誰か来ると言い出した。
疲れきった様子の女生徒が2人、こっちに向かってきたが倒れて動かない。
身体中に小さいぶつぶつの穴がいっぱいあいていた。
何かが学校で起こっているらしい。みんなは石斧を持って学校へと戻った。
学校はやけに静かだった。校庭に落ちているランドセルには血が…。
1年生から6年生まで、すべての教室に誰もいない。
生徒の一人がザワザワと変な音がする教室に入った。
「誰もいない」と言う報告の後に聞こえたものすごい悲鳴。
慌てて扉を開けた翔たちが見たのは、服と骨だけの姿となった彼だった…。
潮が引くみたいに遠ざかってゆく音を追って地下室へ。
懐中電灯で照らしてみるが、地下室には何もない。暗い変なシミのようなものが見えるだけだ。
安心して中に入った生徒の足元から、ザザザと黒い物が覆いかぶさってくる。
黒い粉のような物にたかられた場所からどんどん骨になってゆく…。
身の危険を感じた翔たちは、彼を地下室に閉じ込めてしまった。
断末魔の声に罪悪感を覚えて泣き出す生徒たち。

72 :漂流教室:24 :04/04/24 04:47 ID:???
「痛いっ!!ギャッ!!」一人の腕の中に何かが入ってきた。
苦痛のあまり、腕の肉ごとそれを食いちぎる。
翔がそれを石斧で潰すと、なんと怪虫の子供だった。
まだ妄想が続いているのか、と疑惑の目を向ける生徒たち。
仲田はもうお腹は空かないから僕の妄想じゃない、と否定する。
そんな仲田を西さんはかばう。2年生の時苛められてた自分を励ましてくれた、
足が悪くて一人ぼっちだった私と今の仲田くんはそっくりだ、と。
「私はこんなことで私を理解してくれた友だちを失いたくない、逃げて!」
仲田は西さんの手を引いて逃げ出した。追う大友たちを翔は止めるが、殴られてしまう。
正門の扉を閉めて退路を塞ごうとしたが、扉には怪虫の子供がびっしり張り付いていた。
生徒たちを襲う虫津波は学校の外まで追ってくる。
西さんは砂漠に倒れたままみんなの蹴った砂ほこりにまみれて姿が見えなくなった。
はるか遠くに咲っぺやユウちゃんたちがいた。他の生徒たちも逃げてきたのだと言う。
こっちにも虫は近付いてきた。このままじゃみんなやられる!
「犠牲者を選んでそいつが食べられているうちに逃げるんだ!」大友が叫ぶ。
みんなで仲田を責めるが、西さんが虫たちに追われて逃げてきた。
みんなに追われて逃げる仲田は、西さんのピンチに勇気を振り絞った。
「虫の群れ、消えろ!!元の世界に戻れ!!西さん、僕のこと忘れないでねっ!!」
石斧を自ら額にぶちあてて、仲田は倒れ、虫は消えた。
「やっぱりあの虫も仲田くんの妄想だったんだっ!!」
大友の言葉に翔は怒る。
「もしかしたらあれは本当の生き物で、仲田くんの最後の一念が消したかもしれないじゃないか!!」
仲田の死を悲しむみんな。さらに恐ろしい事件が生徒たちを待っている…。

77 :漂流教室:25 :04/04/24 07:18 ID:???
大友の先走った行動をきつく注意する翔。
翔がリーダーであることを忘れていたと謝罪し、握手を交わす。
西さんと咲っぺもお互いに自己紹介。
本当の姉妹のように仲良くしようとの言葉に西さんは涙を流して喜んだ。
仲田くんの遺体を運びながら学校へと向かう生徒たち。
【これがうちに帰るのならどんなに嬉しいでしょう!!
どんな悲しいことも苦しいこともいっぺんに消えてしまうでしょう!!
今までなら学校が終わるとそのまままっすぐうちにかけて帰った。
うちにおやつがあっても、食べたくない時はかじっただけで捨てたりもした】
校門の前で足を止める翔。これがうちの門だったらどんなにいいだろうと考える。
心の中で「ただいま」と言ってみたら、涙が溢れて止まらなかった。
僕は総理大臣だから泣き声を出す訳にはいかない。そう言い聞かせてまっすぐ門の中へ入った。
「ただいま!!」
口に出てしまったこの言葉を、大友くんも、みんなも、口に出して中に入った。
「翔ちゃん!これから僕たちの合言葉は「ただいま」だっ!!
本当に僕たちが「ただいま」と言える日がくるように、その日がくるように頑張るために!」
大友くんが泣きながら提案する。みんなも泣いて同調した。
「僕は国語が得意だったけど今まで気付かなかった、
「ただいま」なんて気にも留めてない言葉だったけど、言い切れないほどいい言葉だっ!!
今の僕たちにはこのありふれた言葉が一番重くて、一番遠くにある言葉なんだねっ!!」
一人の生徒のこの言葉に、みんなは堪えきれず大声で泣き出した…。

78 :漂流教室:26 :04/04/24 07:19 ID:???
会議室で今後のことを話し合う大臣たち。
全校生は810人、関谷を入れても811人。先生たちを入れて51人も死んでしまったのだ。
どんなに少なくしても、食料はあと20日くらいしかない。
プールの水や溜め置きの水もそんなにはもたないだろう。
外で何か騒ぎが起きている。慌てて見に行くと、プールで男子生徒が溺れていた。
なんとか助け出すが、水泳の得意な橋本くんだったので一体なぜだと驚く翔たち。
溺れたなんて嘘で、プールの水を飲もうとして落ちたんだ、
大騒ぎになったから溺れたふりをしたんだと主張する生徒たち。
なかなか起きない橋本くんを見てみると、すごい熱だった。水を吐き出させて保健室へ連れてゆくことに。
翔は咲っぺに病気に詳しい医者の息子の柳背くんを呼びに行かせた。
ベッドでうなる橋本くんを見て、柳背くんは肝臓が悪いことを指摘する。顔色が黄色いのだ。
人体解剖図を見ながら触診すると、確かに肝臓が腫れていた。
熱を下げさせるためにアスピリンを飲ませるが、心細くなった橋本は怯えて叫ぶ。
咲っぺが背中をさすったりして落ち着かせている間、柳背は翔たちにこっそり打ち明けた。
「助からないんじゃないかと思うんだ。肝臓はなかなか悪くならない代わり、
悪くなったら治りにくいんだ。心臓や脳は機械で代わりができるが、肝臓だとそうはいかない。
たとえお医者さんがいても、あんなに腫れあがっていては……」
「このままでは死ぬのを待つばかりと言うなら僕たちも一緒だ、
このままだとみんなくたびれるし橋本くんも可哀想だ。…橋本くんを殺すんだ!」
大友くんが恐ろしい提案をしてきた。彼は橋本の声に耐えられず、翔につかみかかる。
そこへ男子がやってきて「桃の実が食べられるぞ!」とみんなを呼んだ。
思わぬ朗報に、喜んで保健室を飛び出す一同、後に残された橋本は、血を吐いて苦しんでいる…。

79 :漂流教室:27 :04/04/24 07:20 ID:???
「桃の実なんてどこにあったんだ?」
「昔植えた桃の木の花が咲いたんだ!実がなるから秋には食べられるんだぞ!」
男子生徒の言葉に大友は怒り出す。
「そんな実がなるまでまってられるか!僕たちはあともう20日……!」
慌てて大友の口を塞ぐ大臣。翔が大変なことに気がついた!
「このままでは、学校にある植物は全部実がならないかもしれない!!」

よろよろと保健室を抜け出し、床を這いずる橋本。
そこに数人の生徒たちが現れ、彼の吐いた血を拭き取ってやる。
「トイレ………」弱弱しく訴える彼は、間に合わずに下痢をしてしまったのだ。
優しい生徒たちはパンツを脱がし、奇麗に拭いてあげる。
後始末中に手についてしまったが、汚がってる場合じゃないと仲間に怒られる。
拭いた物やパンツは、再利用のために学校の外の砂漠にほうり投げて捨ててきた。
彼らは「下痢のことは内緒にしておくよ」と言って、彼を保健室のベッドに寝かして去って行った。

翔はみんなに説明する。「花粉はハチや蝶や風で運ばれるんだろう?ここには昆虫も風もない!
僕たちの手で全部つけてやらなければいけないんだっ!」
絶望する大友を叱りつけ、生きる努力をしようと仕事を開始する。
咲っぺと柳背は橋本の様子を見に行く。
「待てっ!!あぶない、近寄るなっ!!」
橋本の側に行こうとした咲っぺを止める柳背。衝立の後ろに見えた足には黒い斑点が…!
「ペストかもしれない!!肝臓だと思った腫れはリンパだったんだ!!」
僕らにもうつったかもしれない、高松くんたちが感染していたら他の人にもうつるぞ!!
咲っぺが慌てて駆けて行き。翔たちに報告する。
ペストは1日で発病し、酷い熱が出てリンパが腫れて下痢をして3日か4日で死んでしまう恐ろしい病気だ。
橋本くんがプールに落ちた時に下痢をしていたらもうプールの水も使えない。
1日経てば証拠が現れる。その時にはもう取り返しがつかなくなる。

80 :漂流教室:28 :04/04/24 07:21 ID:???
翔たちは自分たちがペストにかかった可能性があるとみんなに言い、
喉が渇いてもプールの水は飲むな、全員他の校舎に移り、医務室に近付くなと注意する。
そして昨日から橋本くんと一緒にいた人を呼ぶが、誰も出てこない。
我猛と西さんは別行動をしていたため感染の危険はないようだ。
翔たちは校庭に出て、我猛に指示を飛ばす。
「6年生に言って他に大臣を決めてくれ、僕たちが明日になって熱が出て
ペストにかかってたらガソリンで焼いてくれ!」
大友たちもその言葉には激しく動揺し、助かる方法はないのかと柳瀬を問い詰める。
ストレプトマイシンという薬があれば助かるのだが……。

医務室の方から煙が上がる。橋本くんの悲鳴も聞こえる。
火をつけられ、橋本くんが燃えていた。
ペストを恐れるあまりの、みんなの凶行だった。
翔たちにまでガソリンをかけて燃やそうとしたので、慌てて学校から離れた。
橋本くんは可哀想だったが、もうこれで学校の中にペスト菌はないだろう。
安心しかけたその時、咲っぺがとんでもないことに気がついた。
「橋本くんをベッドに寝かせた時と頭と足の位置が逆だったわ!」
「誰か橋本くんに接触した人たちがいる!!」
橋本くんの汚れたパンツが捨てられていた。これは確実にペストだ。
土をかけて埋めて感染を防いだが、これで感染者が校内にいることが判明してしまった。
足跡を辿る。やっぱり学校へ続いている。途中で転んだ跡があった。
背の小さい人で、胸にマンガバッジをつけていることが読み取れる。
咲っぺは3人はいると推測した。その事実を我猛に伝えようとしたら、彼が飛び出してきた。
新しい大臣を任命したのは誤算だった、翔に関係する人間はペストの疑いがあると言われ
皆殺しにされると逃げ出してきたのだ。
魔女狩りのような状態になって、翔たちはふたたび逃げ出した。

81 :漂流教室:29 :04/04/24 07:22 ID:???
総合病院があったらしい場所を見つけ、そこを探してみるが、薬瓶はみんなボロボロになっていた。
病院の地下室らしい穴を見つけ、潜り込む翔は、そこでミイラを発見、大騒ぎになる。
そこに我猛がやってきた。どうやら無事だったようだ。
側にくるとペストがうつるぞ!と止めるが、我猛はそれでもいいと言う。
手を取り合う2人。ミイラのあった場所で夜を明かすことにした。
翌朝、みんなは発病していなかった。ユウちゃんや西さんや学校のみんなが心配だと言って
翔は大臣を一人連れて学校へ向かう。
ユウちゃんたち翔の関係者は新大臣に旧校舎に閉じ込められ、窓に板を張られていた。
大臣の手には斑点が…その配下の3人の中に、背の低い、マンガバッジをつけた生徒がいた。
みんなの元に戻れと言われ姿を消したその3人は、校舎の影で倒れていた。
翔に発見されて詫びる彼ら。橋本くんに親切にしてあげたばっかりに、彼らはペストになった。
彼らがいなかったら自分たちが感染していた……むせび泣く翔に、新大臣が襲い掛かる!
「この手で触れたぞ!」
3人が新大臣につかみかかるが、新大臣はそれを返り討ち。学校中の奴にペストをうつすとヤケになる。
旧校舎に火がつけられた。学校は殺し合いのパニックになってしまう…。
学校の方から昇る煙を見て、大友たちが解決策を必死に考える。
……ミイラを動かして「怪物が来たぞーーー!!」と威嚇して争いを止め、旧校舎を消火する。
ところが、全員斑点が身体に現れ、倒れてしまう。
翔は叫ぶ。「おかあさんっ!!助けてっ!!薬をくださいっ」
「翔!!翔、どこなの!?」
学校に響き渡る母の声。その声に向かって必死に叫ぶ。
「僕たちは未来に来てしまったんだ!地球は砂漠になっているんです!
それに僕たちは全員ペストにかかっているのですっ!!薬をくださいっ!!」
側に倒れていた西さんに躓き、倒れながらも叫ぶ翔……。

82 :漂流教室:30 :04/04/24 07:57 ID:???

翔の母は走っていた。大和小学校のあった場所に慰霊碑が建てられたのだ。
翔の名前があることに怒り、花や線香を払い捨てる。
大友の母が彼女を止める。「慰霊碑ができたことでみんなあきらめることにしたのです」
「翔は死んでなんかいない!!」つかみかかる母。
こんな場所には二度と来ないと言い残し、泣きながらその場を去った。、
帰宅すると、玄関先にユウの母親がいた。
「勇一はまだ3歳で、小学校へ行く年じゃないのに、
あなたの息子さんに無理やり連れられて学校へ行ったんですよ!?」
ユウの母を追い返す翔の母。
彼女は誰もいない時間帯に、慰霊碑に花を置きに行く。
父から警察は翔たちの捜査を打ち切るそうだと聞かされ激しくショックを受ける。
突然東京の一角でペストが発生して大騒ぎらしい。
ニュースを見ると、アメリカから帰国したAさんの飼っていたリスが媒体となって広まった模様。
2匹のうち1匹が行方不明と伝えていた。
突然テレビが砂嵐になり、翔の声を運んできた!
「おかあさん、みんなペストにかかっているんだ、薬をください!」
「どうやって薬を渡せばいいのっ?」
「ミイラがあります!ミイラの中に薬瓶を入れてください!
学校の近くにある大きな病院の地下室の冷蔵庫のようなところから出てきたミイラで、
右の手首に傷があります!」
そこまで言ったところで、テレビはもとのニュース番組に戻ってしまった。
父にはただの砂嵐にしか聞こえなかった………。

83 :漂流教室:31 :04/04/24 08:00 ID:???
翔の母は雨の中ストレプトマイシンを買いにくる不審な女性として近隣薬局からマークされて、
薬を売ってもらえない。
「翔!!お母さんは何としても、どんな恥ずかしい思いをしても薬を手に入れるわ!!」
翔の言う病院の地下室にこっそり忍び込み、死体を調べるが傷などない。
途方に暮れた母が受付の前を通ると、偶然ミイラと同じような傷を持った男を発見する。
「右手を見せてください!あなたはどなたです?顔を見せてくださいっ!」
サングラスを外すようすがりついて頼み込むが、不審に思われて逃げられてしまう。
そこにちょうど信一くんが現れて、代わりに男の後をつけて行った。
結局まかれてしまったが、男の正体はすぐにわかった。有名なプロ野球選手・大木だったからだ。
信一と一緒に野球場に試合を観に行く母。翔も彼のファンだったと教えてもらう。
野球好きの信一は、大木の活躍に大はしゃぎ。翔もきっとこんな風に夢中になっていただろうと思いにふける。
そんな中、大木選手がボールに当たって倒れ、病院に運ばれてしまう。
「ベッドで昏睡状態……面会謝絶……何としても会わなくては。
あの人はミイラになるのよ…そして翔の言葉通りにミイラの中にストレプトマイシンを入れなくては」
母は救急車を一台電話で呼んで、自分の腕を包丁で斬り付けた!
希望通りに大木選手と同じ病院に運ばれる母。看護婦に容態を聞いてみるが面会謝絶の一点張り。
こっそり病室に忍び込むと、大木選手は元気だった。
自分の能力に限界を感じ、野球をやめたいと漏らす大木。
その時、外で悲鳴が上がった。
「誘拐だっ!!患者の子供が!!」
犯人らしき男が駆けて行くのが窓から見える。大木はバットを手に窓から飛び降り、子供を救う。
が、犯人に刺され、そのまま死んでしまった。

84 :漂流教室:32 :04/04/24 08:12 ID:???
父が見舞いに来た。明日退院する前に今夜どうしてもやらなくてはならないことがあると言う。
病院のストレプトマイシンをこっそり盗み出していたのだ。
これを大木選手の身体の中に隠すのだ。大木選手の遺体は今回のことで、この病院に永遠に残ることになったのだ。
父は入ってきた看護婦の手前、翔が砂漠の中にいるなんてないと断言。
ストレプトマイシンをさりげなく自分のカバンに入れ、帰って行く。
置き去りにされたカバンを開けてみると、手術道具が入っていた。
「死体に薬を入れる時の………あなたっ!!」
深夜、母はミイラの中に薬を入れ、強引に退院した。
「神様、どうか薬が翔の手に届きますように!
どこか知らない未来で、翔が薬を手にしていますように!」

未来世界。苦しむ翔がミイラを調べると、中から薬が出てきた!
柳瀬を呼んで、彼に処置をしてもらい翌日には元気になった。
でも半分近くの生徒が間に合わなくて死んでしまった。
死んだ生徒は古い校舎ごと燃やすことになった。大木選手のミイラも。
「学校にリスがいる!!」
生徒の報告に喜ぶ一同、つかまえて大事に育てようと提案するが、柳瀬に却下される。
「あのリスがペストをばら撒いたんだ!このまま放っておくと同じことが起きる!」
せっかく見つけた仲間を殺さなければならない悲しい事実。
リスの死体は燃え盛る旧校舎に投げ込んだ。

悲しみを乗り越えて、生きる手立てを始める提案をする翔。
畑をこしらえて、学校中の食べられる植物を増やす。
理科室に会ったとうもろこしの種をひとつぶずつ配布し、
良い場所が見つかったらそこに植えてこの砂漠を緑の世界に戻そうと呼びかける。
大小便もクロレラを培養してプールで増やせばいいし燃料にもなる。
明かりは学校にある自転車の発電装置を使えばいい。
色々な案が出る中、一人の生徒が辛い知らせを運んできた……。

85 :漂流教室:33 :04/04/24 08:31 ID:???
プールの底にひびが入り、水が全部なくなっていた。
至急水を求めて探検に出ることになった。翔たちは東京湾だった場所に来たが、
そこも砂ばかりだった。船だった残骸が残っているだけの乾いた世界。
翔たちは乾きに疲れ途方に暮れていた…。
学校に残った女生徒は、植物の植え替え作業をしていた。
まわりの生徒たちは水を求めてよくない雰囲気になってきている。
ユウちゃんが心配になり探しに行くと、ユウちゃんは水が飲みたい、おうちへ帰りたい、
ママに会いたいと泣き出してしまう。
「ママはこのお姉ちゃんでしょう?パパは翔ちゃんじゃないのっ!
いいわ、ママが雨を降らせてあげる!!」
咲っぺは女生徒を集めてヤケ半分で指示した。
「オルガンをグラウンドへ出して、私が弾くからみんなで合唱してお祈りするのよ!!」
みんなで歌い出すと、本当に雨が降ってきた!!
ありとあらゆる物に雨水を溜めるべく容器を並べる生徒たち。
「学校を燃やしたから雨が降ったのよ!大火事の後には雨が降るそうよ!
大声で歌ったことも空気を振動させたのね!あながち迷信じゃないわね!」
ところが、その恵みの雨が、また悲劇のもととなる…。

雨を喜ぶ翔たち。彼等のいた場所は底なしドロの海だったらしく、
急がないとどんどん沈んでいってしまう。
ぬかるんでうつ伏せに倒れて沈んでゆく翔。
「みんな、僕を踏んづけてわたれっ!早くしろっ!」
お詫びをしながら翔を踏みつけにする生徒たち。3人のうちの一人は足を滑らせ、落下してしまった。
翔を救い出すべく手を伸ばして引っ張り合う際に、また一人犠牲になって沈んでいった…。

その頃、女生徒たちのいる学校も危機が迫っていた。
山津波が学校を襲ってきたのだ。水が学校の中に入ったら、せっかく植えた植物がダメになってしまう!

86 :漂流教室:34 :04/04/24 09:07 ID:???
咲っぺが校門へ走る!流れ込む水を、自分の身体の分だけ入れないつもりで、
背を向けて門にしがみついた。他の女生徒たちも、一緒に防波堤になろうと頑張る。
水は激しく流れ込み、最初の一撃で女生徒の首が吹き飛んだ!
咲っぺの隣で必死に耐えていた女生徒がさようなら!と叫ぶ。
と同時に彼女は地面に倒れこんでしまった。フェンスをつかんだままの手首を残して…。
次々倒れてゆく女生徒たち。咲っぺも限界だった。
気付くと、門に砂がたまって防波堤になっていた。
安心して倒れる咲っぺ。雨もあがりはじめていた。
戻ってきた翔はなんて無茶をと嘆くが、彼女たちのおかげで植物は無事だった。

この夜、自転車発電機のおかげで、初めて体育館に明かりがともった。
みんなは安心して落ち着いた眠りにつくことができた…。

翌日、畑に薄気味悪いキノコが増殖し、せっかく植えた植物がしおれてしまった
学校の人数は442人になったので残りの食料は約1ヶ月ぶん。
このキノコが食べられれば貴重な蛋白源だが…。
咲っぺが未包装の食品すべてにキノコが生えてきたと持ってきた。
食べ物が半分になってしまったと嘆く咲っぺ。
が、このキノコを食べれば2倍に増えたことになると提案する大友。
関谷に食べさせてみればいい、との言葉にみんなは大賛成。
反対した翔は木に縛り付けられて、見ているしかできない。
「僕らの先祖だって試行錯誤を繰り返して食べ物を見つけてきたんだ!」
みんな「試行錯誤」と呪文のように唱えながら、幼児退行している関谷を校庭に連れ出す。
途中で関谷が階段から落ちてしまったが、急におとなしくなったので気にせず連れ出した。

87 :漂流教室:35 :04/04/24 09:16 ID:???
関谷の前にキノコを投げつけ、食べさせる。
両手でキノコを抱えるように持って食べる関谷。1個目は大丈夫そうだったが、次はどうだろう?
2個目を、鼻をつまんで無理やり口に入れようとしたら、口から1個目を吐き出して苦しみだした。
これはダメだと関谷を保険室に運んで吐かせる。
そんな騒ぎの中、校内に探検隊が帰ってきた。メンバー外だったが、勝手に出て行ったのだという。
彼は「怪物がいる、大和小学校を襲う相談をしていたんだ」と訴えるが、正気を失っているようだ。
とにかく保健室に連れて行ったら、関谷がいなくなっていた。
生徒の一人・大月が関谷を探していたが、彼は関谷がキノコを食べるふりをしていたことに感づいていた。
その背後に忍び寄り、強引にキノコを食べさせる関谷。
階段から落ちた拍子に正常に戻っていたのだ。
キノコの反応を見ていたが、大月は関谷にナイフを突きつけられてるのに楽しそうにしている。
みんなの声がする。関谷はまたバカのふりをするから口裏を合わせろと言う。
大月も楽しそうにそれを承諾し、関谷は自分が見るから大丈夫だと人払いをする。
一方、翔たちは自称探検隊の少年から話を聞こうと頑張っていた。が、どうしようもない状態だ。
そこへ大月が楽しげにやってきて、キノコを目の前で食べて安全をアピールし始めた。
「関谷のおじさんはお腹の具合が悪くて吐いただけだよ。僕はこっそり食べてみて大丈夫だってわかったんだ」
みんなに大声で知らせてまわる大月を必死に止める翔。
これは未来の植物、僕たちは未来植物を食べて生きていくんだと言って今までの植物を引っこ抜いた。
大友も大月の意見に賛成し、これから何でも食べて行けるようにならなくちゃいけないと主張するが、
「僕たちの植物をとってしまったら何が僕たちの吸う酸素を作ってくれるんだ!」
翔も咲っぺも、みんな一丸となってキノコを引っこ抜き始める。
大月は呆れて学校の外に遊びに出てしまった。
「どうして今まで砂漠を恐れていたんだろう?」

88 :漂流教室:36 :04/04/24 09:43 ID:???
翔たちはわずかな食料を大切に食べる。
「食べる前のお祈りを神様にしよう」
神様は見えないからわからない、と泣く下級生のために、大臣の一人が石膏像を持ってきた。
工作の時間に翔が作った、お母さんの像だった。
美川さんという女生徒は食事に手をつけず、咲っぺにあげると言って出て行ってしまった。
給食後はそれぞれの作業を進める。畑に草を植えていたら、そこに翔たちの神様が捨てられていた。
今まで石膏像が置いてあった場所に、一つ目の光る不気味な粘土細工のような像が置かれていた。
何のためにこんな悪戯を、と怒る翔。夜は必ず見張りを立てることにした。
その夜、翔は他の生徒と見張りを交代して眠りについた。
そこに、翔を迎えに来たと言う声がする。いきなり見張りの生徒に襲い掛かってきた。
騒ぎにみんな目を覚まし、侵入者を見て泣き叫ぶ。
すぐに出て行ったものの、みんなは朝まで怯えて過ごした。
手足に大きな爪を持ち、顔に蛇のような鱗が生え、胸に槍を突きたてられても平然としている、明らかな化け物。
だがその姿はどことなく大月に似ていた…!
「キノコを食べるとああなるのか?」
美川さんがそれを聞いて救いを求めてきた。「私もあんなふうな姿になるわっ!」
大月のように朗らかになれるなら、と彼女もキノコを食べてしまったのだ。
でもあんな姿になるのは嫌だと、けれど大月の姿を気味悪いとも思えないと言う…。
一つ目の神様は美川さんの仕業ではない。他の誰かと言う言葉に仲間の存在を感じ、
全員の身体検査を行った。キノコを隠し持ってる生徒が何人かいた。

89 :漂流教室:37 :04/04/24 10:13 ID:???
何かしていないと不安に襲われる。汲み置きの水にも限りはあるし、井戸を掘ることにした。
昔川があっただろう場所を掘り返すが、何も出ない。
ろくに食べていないのでみんなやつれていた。
そんな中、美川さんだけが水も飲まないのに元気そうだった。
夜、咲っぺが理科室にいる美川さんを発見する。
顔に変なできものができていたが、それをうっとりとガラス戸にうつして眺めているのだ。
去ろうとする咲っぺを、変なお面を被った生徒たちがつかまえる。
美川は咲っぺに一つ目像を見せ、一つ目教に入るよう脅しにかかる。
咲っぺは必死に抵抗して、そんな気味の悪い宗教には入らない、と叫ぶ。
鳥の剥製の足をもぎ取り、その足の爪で咲っぺの顔を引っかこうとするが、そこに翔が助けに入ってきた。
ずっと見張っていた大友たちが逃げる彼女たちを捕まえようとするが、とても無理だ。
「誰か来てーっ!!」
思わず叫ぶ咲っぺ。そこに一人の女生徒が現れた。
「小山さんっ!」小山さんの説得に、美川が正気を取り戻し始める。
その夜、「ヒイーーーーーーー」という薄気味悪い声に導かれて美川が外に行こうとする。
キノコを食べた生徒たちも起き出して外に出た。
「行かせて!殺される!」と小山の制止を振り払おうとする。
美川の耳をふさいで、薄気味悪い声が聞こえないように必死に守る小山。
「神様が私を殺しに来る!!」今度は美川の目を塞ぐ小山。
自転車の発電装置を作動させ、武器を手に待ち受ける生徒たち。
不気味な一つ目の神様がやってきた。
「もう目隠しなんて意味がなくなったのよ!」
この世界での友だちに別れを告げ、これから起きることを見せないために小山自身の目を塞がせる。
四つんばいの怪しげな姿で、神のもとへと走り去る美川。
恐怖は去ったが、美川さんを守ることも怪物をやっつけることもできなかった…。


90 :漂流教室:38 :04/04/24 11:14 ID:???
生徒たちの中に、やたら翔に突っかかってくる者たちがいる。
「みんな噂してるぞ!君の悪戯からこんな未来へ来てしまったんだと!」
走り去ってゆく生徒たち。翔は大友に事情を聞くが、ちゃんと答えてくれない。
未来へ来たのは大地震のエネルギーのせいだと言うが、それと自分とどういう関係があるのかわからない。
苦しい立場に追われた翔に、関谷がボウガンを突きつけ、神様の像を打ち砕いた。
「今日から神様はこの俺だ!高松が何をしたのか知ってる奴は言ってみろ!」
大地震の前の晩、翔がこっそり学校に来て、職員室の縁の下に入っていったのを見たと言う。
みんなで縁の下を調べたらダイナマイトの破片を見つけたと見せびらかしてきた。
「高松くんは勉強が嫌いだから学校を吹き飛ばそうとしたんだ!爆発が大地震を引き起こしたんだ!!」
みんなに殺されそうになる翔。だが偶然起きた地震のおかげで命は助かった。
が、翌日誰も口をきいてくれない。食べ物ももらえない。
校庭に飛び出す翔の後を、大友や咲っぺたちが追ってくる。
食べ物を分け与える彼らに腹を立てた関谷に、井戸掘りを命じられる翔たち。
上に上がる梯子を取り上げられ、水を見つけない限りずっとそこで暮らすように言われてしまう。
関谷は軍隊式の教育法で残った生徒たちをしごきにかかる…。

井戸の奥に、地震でできたらしいひび割れがあった。奥に穴があったので潜ってみることにした。
そこは地下鉄の線路だった。地下鉄が走っているのを発見し、人がいるのだと期待する翔たち。
線路を歩いて東京駅の方に向かうが、知らない駅を見つけ、そこにさっきの電車が停まっていたので
上に上ってみた。どこかのビルの地下に続いているようだった。
そこは一つ目生物たちの集会場だった。ソファーの後ろに隠れて様子を探る翔たち。
美川さんや大月たち、キノコを食べた生徒たちもいた。
彼らはもうすぐ一つ目の種族に変化すると言う。背中にコブができ、一つ目ができかけていた。

91 :漂流教室:39 :04/04/24 11:14 ID:???
一つ目の神は、時折過ぎ去ったものに対する儀式として、
部屋の明かりをつけたり地下鉄を走らせたりしているらしい。
神はテレビに「祖先の映像」を見せはじめた。
公害で濁る空、排気ガス一杯の道路、人々が捨てるゴミで汚れる町・山・海。
奇形の魚・母親のえい児殺害・一つ目にそっくりの子供を生み捨てた母親の姿、
世界各地に大地震、大津波来襲、自殺者急増、各地の水不足、食糧危機、姥捨て復活、
地球全体が砂漠になっていく様が細かく映し出されていた。
翔たちは声を出さずに泣いていた。もしこの映像が本当なら、母たちはどうなったのだ。
人類が20世紀の終わりに滅び、一つ目たちが生まれてきたのだ。
仲間割れを起こして共食いを始める彼らにショックを受け、咲っぺが悲鳴をあげて見つかってしまった!
思わず美川さんに助けを求める咲っぺ。
「早く逃げるのよ!!」
かすかに残っていた理性で、美川さんたちは一つ目たちに立ち向かう…。
地下鉄を動かして、慌てて逃げる翔たち。東京駅には地下の商店街がある。
食べ物を探しに行くが、缶詰が食べられた形跡があった。しかもまだ新しい。
たくさんのミイラや骨がお墓のように集まっていた。
遺体のポケットを探るとライターやハンカチ、さらには10万円札まであった。
ほこりを踏んでできた足跡がある。誰か生きてる人がいるんだ!
ある部屋の中に、ぼろぼろの服を着た老人がいた。
翔たちと目が合い、話しかけられたショックで彼は死んでしまった……!
意気消沈する翔たち。が、彼が今まで生きていたということは水がどこかにあったのだ!
足跡を追ってゆくと、泉を発見した!割れた地面から奇麗に澄んだ水が湧き出ているのだ!
みんなで喜んで飲んだ後、信じてもらうために落ちていたウイスキーの瓶に水を入れて
持って行こうとしたその時、その穴から熱湯が噴出した!
火山帯ができていたらしく、今にも爆発しそうな勢いだ。
地中をやたらに掘り返し、管を突き刺すからこんなことになるんだ!
翔は今まで母に助けられていたことを打ち明け、今回も母に救いを求める――
「管を地面に突き立てるのをやめてくださいっ!」

92 :漂流教室:40 :04/04/24 11:15 ID:???
母は翔に20通目の手紙を書いていた。
手紙と一緒にヒエの種を同封し、瓶に詰めて海に流した。
翔の声は聞こえない。

翔がいくら叫んでも、状況は変わらない。
……西さんだ!あの時は西さんが側にいて、僕とお母さんを結び付けてくれたんだ!
激しい地震の中、必死に出口へと向かう翔たち。
みんなを先に通すため岩を持ち上げていたスコップが折れ、挟まって出られなくなった。
咲っぺは翔を助けようとするが、大友は見捨てて逃げようとする。
出口はふさがってしまったが、火山が爆発した風圧で地上に出ることができた。
大友が鉄版を押し、前にいた翔を殺そうとした!
「まさか大友くんがわざと倒したのでは……?」
2人は殴り合いの喧嘩になってしまう。
止めようとした咲っぺが大友の背中についたクモの糸を見つけ、喧嘩どころではなくなった。
一つ目がつけたんだ!慌てて逃げ出す翔たちの背後に、一つ目が迫る!
追ってきた一つ目をなんとか倒すが、未来人類が大勢でやってきた!
学校へ逃げ込もうとするが、関谷が頑丈なバリケードを作らせて入れないようにしていたのだ。
中からは何も知らない生徒たちの歌声が聞こえてくる…。

93 :漂流教室:41 :04/04/24 11:16 ID:???
学校の塀にクモの糸で翔たちを固め、一つ目たちが学校内に侵入してきた。
音楽室では、関谷が流行歌を歌えと無理を言う。酒も歌も無しでこんなまずい物が喰えるかと
貴重な料理を床にぶちまけ、足蹴にした。女生徒も容赦なく殴りつけて命令する。
そんな暴君ぶりの中、怪物が侵入してきた!関谷は竹やり特攻戦法で生徒たちを犠牲にしてゆく…。
翔たちは必死にクモの糸を抜け出した。関谷の自動車が走って逃げてゆく。
関谷の自動車から零れ落ちたビスケット。きっと関谷は食べ物を全部持って逃げたのだ。
絶望する翔。未来生物に襲われる生徒たちの悲鳴を聞いて、
翔は鉄条網のめぐらされた塀を越えて校内に飛び込んだ!
「お願いだっ、やめてくれっ!お前たちも人間なら、どうか聞いてくれ!
僕たちにはもう食べ物がないんだ!僕たちはもう飢え死にするだけだ!
放っておいても飢え死にする僕たちを、今こうして殺すのだけはやめてくれ!!」
力尽きて倒れる翔。彼は夢を見た。原始人になって狩りをする夢、
遊びで釣りをして魚を殺してしまい、怖くなって水にかえす翔。
力の限り走って帰宅する翔を迎えてくれる母。
「おかあさーん!!」そう叫んで目を覚ます翔。
未来人類は学校から出て行ってくれたのだ。
食べ物は関谷が踏み潰した、ほんのわずかな物だけだった…。

99 :漂流教室:42 :04/04/24 13:30 ID:???
もう手遅れだと断言する大友。彼の指差した先…グラウンドには、巨大なオニヒトデの大群がいた。
屋上から竹やりで突くと、フェンスに一部肉片を残してヒトデは落下した。
このヒトデの肉は食べられるだろうか?
生でかじったらドロのような変な味がする。
焼いてみたら化学薬品のような臭いがして、涙が止まらなくなった。
「きっと化学薬品か何かが溜ったところで発生したものなんだ!
もうこの世界には僕たちの食料になる物は何一つないんだ!」
「こんな世界にしてしまったのは、僕たちの親や僕たちの仲間さ!
自分勝手に未来の分まで使い果たしていい思いをしたからさ!」
大友は翔を責めたてる。お前のせいでこんな世界に来てしまったと罵倒する。
翔は誤解を解こうとするが、信じてもらえない。
「なぜ大友くんはそんなに僕を目の敵にするんだ!」
「なぜだって?君と一緒にいたくないだけだ!僕はこれから別行動をとる!」
翔ももう限界だった。学校にあるみんなの全財産を公平に分けることにした。
一人分の米と、植物や野菜の種、草の苗も分け合った。
学校に留まるのも出てゆくのも自由、飼っていた小鳥たちも自由にしてやろうとするが、
大友は貴重な最後の肉だと反対、殴り合いの喧嘩になってしまう。
ぶつかった際に鳥かごが開き、小鳥たちは飛んでゆく。
小鳥たちに別れを告げる下級生たち。
大友も翔も喧嘩をやめ、中断していた配給を続ける。
ユウちゃんには亡くなった生徒のランドセルを与えてやった。
1年生になったと無邪気に喜ぶユウちゃんに涙を流す咲っぺ。
大友は「新校舎はきみにやるから、残りは僕がもらう!」と宣言、
足を踏み入れたら殺すと言ってきた。

100 :漂流教室:43 :04/04/24 13:31 ID:???
【お母さん、僕は今日からお母さん宛に手紙を書くことにします。
でも決して届くことのない手紙です。
紙も鉛筆もわずかしかないので、長い手紙を書くことはできません…】
ノートに今までのことを書き込んでゆく翔。
大友と彼につく者は、他の校舎に閉じこもり、侵入者は本当に殺す気らしい。
翌朝、大友所有の東校舎と翔の給食室を取り替えて欲しいと投げ文が来た。
当然翔は断った。が、大友の仲間が給食室を奪い取ろうと責めてきた!
本気でかかって来られ、思わずヤリで突いて殺してしまった。
「僕、人殺しをしてしまったんだ!もうお母さんのところへは戻れない!」
翔の仲間たちは、死んだ大友側のランドセルから食料を取り出した。
「事態が悪くなるからやめろ!」と止めようとした翔が腹痛に襲われた!
盲腸かもしれないと慌てて教室に運び込む。
そんな翔に見切りをつけた仲間が、大友の仲間になりに行ってしまった…。

炊事用のゴム手袋に水を入れて冷やすが、ちっともよくならない。
手術をするしかない!だが誰が?
医者の息子の柳背くんがやってきた。やはり手術しかなさそうだ。
翔が死んだら、みんな大友に殺されてしまう!
玄関に大友たちがやってきて、翔を出せ!と騒ぎ立てる。
「私が行ってくる!」咲っぺがヤリを持って玄関へ走った。
大友たちは、翔側の裏切り者の死体を持ってきた。
咲っぺはひるまず堂々とやり取りする。
上の階から聞こえてくる翔のうめき声。「あれはなんだっ!?」
「一人言うことをきかない人がいたから、罰を与えてるのよ」
どうにか大友たちを追い返し、翔のもとへ走る咲っぺ。
そこでは麻酔のない手術が行われようとしていた…。

101 :漂流教室:44 :04/04/24 13:33 ID:???
みんなに手足を抑えられ、苦しむ翔。
鉛筆削り用のカッターを職員室にあったウイスキーで消毒し、
人体解剖図を見ながら執刀開始。
カッターで腹を割き、看護婦志望の女の子が指で切り口を広げる。
その度に恐ろしい悲鳴が上がる。
「誰か……っ少しでも痛みを止める方法を知らないのっ!?」咲っぺが泣いて訴える。
我猛がスズランの汁が麻酔薬になる、と言ってきた!スズランなら校庭にある。
が、スズランは大友のいる校舎脇にあるのだ。咲っぺと女生徒たちは花壇へ走る!
スズランを引っこ抜くが、大友勢に囲まれてしまう…。
手術は続く。看護婦が足りないとの声に、西さんが名乗り出た。
盲腸を切り取ったが、出血が多いため輸血をしなければ危ない!
注射器は衛星室にあるが、翔の血液型がわからない。
「誰か知ってる人は?」「咲子さん(咲っぺ)です!」
咲子はスズランの花を捕りに大友の敷地へ行ったとの言葉にみんな青くなる。
早く連れてこなければ翔が危ない!

バトンリレーの用にスズランを投げながら、一人残った咲っぺが翔の陣地へと走る。
女性陣の援軍によって、咲っぺもスズランも無事戻ってきた。
患部は縫合も終わり、スズランは必要なくなってしまったが…。
翔も咲っぺもAB型と判明、輸血を行う。
輸血も無事終了、看護婦志望の杉山さんはこんなところに来てしまって
夢はもうダメだと思っていたけど、本当は逆だったと気付いたという。
最後まで頑張ろう、と柳背と握手を交わす。
もう一人の看護婦、西さんにお礼を言おうとするが、目を開いたままぐったりと倒れていた…。
夢の中でうなされる翔。母に救いを求めて叫ぶ。
「僕もうダメだっ!苦しい!」
いつか合図があるからと翔のトランシーバーを受信可能な状態にしていた母は、翔に応える。
教室では、寝たままで弱音を吐く翔と、やはり寝たままの西さんが母の声で、お互いに会話をしていた。
咲っぺもまわりの生徒もビックリしながら聞いていた。
確かに翔の母の声で、学校のみんなの帰宅を待っていると言ってくれたのだ…!

103 :漂流教室:45 :04/04/24 14:00 ID:???
そんなみんなのもとに、突然老婆のような女が現れた。
とてもそうは思えなかったが、前に学校を出て行った女番長だった。
「富士山の見えるところに天国があるわ…水も食べ物もなんでもあるわ…
でも私はどうしても学校に帰りたかった……」
咲っぺの差し出す水筒の水を一気に飲んだショックで女番長は死んでしまった。
天国があるのに、なぜ戻ってきたのだろう?

翔は永い眠りから覚めた。なんと4日間も眠り続けていたのだ。
その間みんな食料は、昨日一口と水を少しだけしか食べていないと言う。
咲っぺもユウちゃんもやつれていた。
西さんもずうっと眠っている。
大友たちはそのままだと言う。グラウンドに気味の悪い生物が現れて外に出られないのだ。
未来人間が学校の側でグラウンドにいたのと同じ生物を食べている。
「あの時僕たちもキノコを食べていれば、あの生物を食べて生きて行くことができたのに!」
お腹が空いたと泣き出し、最後の食料を食べてしまおうとするみんなを、咲っぺが制止した。
「変な臭いがするわ!」
人間たちにはとても不快な臭いだが、生物たちはその臭いに引き寄せられるように
巨大な蛇のような生物の口の中に潜っていった……。
未来人類は食べられてしまった。恐るべし食物連鎖。

105 :漂流教室:46 :04/04/24 14:19 ID:???
変な黒い雲がどんどん大きくなりながら学校に近付いてくる。
雨雲にしては黒すぎる……。
「未来人類も生物もいなくなったから、大友たちはきっと食料を奪いにやってくる!
だから先にこっちから攻めて食料を奪ってやれ!」
生徒の一人が恐怖のあまりに仲間を募って行ってしまった。
止めようとした翔は、ずっと寝ていたので思うように動けない…。
先手必勝とばかりに、翔の仲間たちは大友勢の1年生を殺して食料を奪い、その場で食べて戻ってきた。
彼らは大友勢に引き渡されるのを恐れ、校舎の外に逃げ出した!
屋上から望遠鏡で様子を見るが、彼らは黒雲の方に向かって駆けて行く。
黒雲に包まれ、苦悶の表情で倒れる彼らを見て、ただの雲じゃない!毒の煙だと知る。
「スモッグの塊が襲ってくるぞー!!」みんなして学校の外へ逃げ出すことになった。
翔はいまだ目の覚めない西さんを連れて行くと言う。病み上がりの上何も食べてなくてフラフラなのに!
みんなの非難をよそに、翔は西さんを放っておけないと叫ぶ。
咲っぺの心配をよそに、翔は咲っぺとユウちゃんをせかして歩き始めた……。 
学校がスモッグに包まれた。大友側の生徒たちとごっちゃになってしまった。
なぜかみんなはいつの間にか富士山を目指して歩いている。
女番長の一言でこんなことになるなんて、天国なんて本当にあるのだろうか?
女番長の精神は異常だったのか?いや、学校を追い出された復讐のために、
わざと嘘をついていたとしたら……この先にあるのは天国じゃなくて…。
前方に細長い筋が見える。地割れだった。
迫ってくるスモッグに焦った生徒が飛び越えようとして落ちてゆく。
翔はなんとか一番狭い幅の場所を見つけたが、それでも2メートルはある。
翔は最後に飛ぶと言う。大友が第一に飛び越え、みんなに勇気を与えた。
出っ張りがもろくなっているので、下級生から先に飛ぶことになった。
ユウちゃんが一番に飛ぶ。向こう側の大友は悪態をつきながらも
ユウちゃんをしっかり受け止めて助けてくれた。

107 :漂流教室:47 :04/04/24 14:56 ID:???
落ちてしまった生徒もいたが、大半の生徒が向こう側に飛べたのだ。
残ったのは西さんと翔と咲っぺの3人だけ。
翔はインスタントラーメンをひとかけだけ食べると、西さんの両腕をつかんで振り回した!
無事向こう側に飛んでいった西さん。翔の仲間たちは腕を組み合って、
彼らを助けられるように待っていた。翔は咲っぺと手を取り合ってジャンプ!
どうにか越えることができたのだ!喜び合う翔の仲間たち。
ひたすら急いでスモッグから逃れるために歩き続けた。
そしてとうとう、富士山らしい山の残骸を発見。
大友たちの足跡を辿ってゆくと、空飛ぶ円盤があった!
「富士・大レジャーランド・天国」
そんな看板らしき物が落ちていた。これが女番長の言ってた天国?
円盤の内部に足を踏み入れると、「ようこそ天国へ……」という声と女性の姿が!
………それはマリリン・モンローの本物そっくりに作られた人形だった。
母のおっぱい恋しさに、下級生がその豊満な胸に手を伸ばした。
作り物の皮膚は溶けるように崩れ、機械の内部を醜く露出させて倒れた。
その拍子に故障したのか、その怪力で生徒たちの頭を握りつぶしてゆく。
逃げる翔たちが次に入った部屋は恐竜のいる世界。
壊れた人形が施設のコンピューターを弄り回したせいで、
恐竜たちのロボットも滅茶苦茶に動き回って生徒たちを踏み潰した!
次の洞窟は原始時代。暴走した原始人ロボットたちがみんなを追いかける。
戦国時代を通り抜け、現代の銀座に辿りついた翔たち。
お菓子屋さんの透明なケースに入ったお菓子やジュースを発見して大喜びでスイッチを押す。
「ご自由にお食べください」の言葉もむなしく、ボタンを押しても作動しない。
動力源が切れているのだ。鉄パイプで叩いてみてもびくともしない。
そこに大友側の生徒たちがやってきて先に来たんだから俺たちのだと権利を主張した。
翔側の下級生を殺し、ランドセルから食べ物を奪い取る。まるでけだものだ。
恐ろしくなって逃げ出す翔たちは「未来への入口」と書かれた扉に飛び込んだ。

108 :漂流教室:48 :04/04/24 14:57 ID:???
………ところが、扉の向こうは途中から壊れて、目の前には砂漠がうつるだけ。
絶望のあまり「私たちの未来はどうだって言うの?」と叫ぶ咲っぺ。
すると壁面に残っていた コンピューターが喋りだした。
みんなで一斉に質問するが、ファジーな内容は理解できないようだった。
苛立った生徒に蹴られて本格的に狂ってしまうコンピューターに、翔は最後の質問をする。
「大地震と共に突然砂漠と化した未来へ来てしまったらどうやって元に戻ればいいかっ!?」
『過去に戻る方法、それは時間の壁が破れた場所に戻り、巨大な衝撃力で時間の壁を広げること』
時間の壁が崩れた場所……学校だ!みんなは力尽きて学校に戻る気力もない。
ショックと飢えで死んでしまった生徒に怯え、。みんなで最後の食料を口にした。
翔たちがこれで最後なら、大友たちはもうとっくに食べてしまったのでは…?
その不安は的中した。大友たちが食料をよこせと飛び込んできたのだ。
みんな食べてしまったと言うが、彼らは死んだ仲間を連れて行ってしまう。
「いったい何をする気なんだっ!?」
空腹で途方にくれる翔たちのいる部屋に、肉を焼く臭いがしてきた!
何か食べ物を手に入れたんだ!翔は仲間と様子を見に行く。
キャンプファイヤーのように火をくべて、何かを丸焼きにしている。
大友は焼けた肉片を切り取り、一人の生徒に毒見をさせた。
何も言わず夢中で食べ続ける毒見役の姿に、みんな我先にと肉に飛びついた。
その美味しそうな臭いについ音を立ててしまった翔の仲間はヤリで刺されて倒れてしまう。
「*1匹*やった!!もう*1匹*も逃すなーっ!!」
大友の恐ろしい命令でヤリが飛び、翔のランドセルに突き刺さった。
みんなのもとに駆け戻ると、手に手に武器を構えた仲間たち。
「あの臭いはなんだったの?」
「ブ、ブタ肉の丸焼きだった!あいつら全部食べてしまった!
僕と一緒に行った仲間も殺されてしまった!」
得体の知れない恐ろしさに嘘をつく翔。
先に殺さなきゃ僕らがやられる!あいつらは肉を食って力がついてるんだから!」
やってきた大友側と全面対決となり、醜い争いが始まってしまった。
翔は自分もあの中に加わって同じことをしそうになる衝動を必死に抑えていた…。

111 :漂流教室:49 :04/04/24 15:51 ID:???
ユウちゃんは泣いていた。本当のパパとママじゃなきゃいやだと泣き叫ぶユウ。
泣き出す咲っぺに、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら「泣くな!」と叫ぶ翔。
「ふん!!仲のいいこった!!まるで夫婦気取りじゃないかっ!!」
大友が現れ、前からそのイチャイチャしたところが気に入らないと言う。
「その女をこっちへよこせっ!!」
「お前たち、人の肉を食ったなっ!!」
お互いに手にしたヤリで戦いだし、お互いフラフラになりながらもやめようとしない。
咲っぺの必死の願いも二人には届かないのか……?
「翔……」
「お母さんっ!!」
再び西さんが母の声で語りだす。
「お前の声がさっきからずっと聞こえているのですよ…。
学校のある場所が一番こことそことが近いということじゃなかったの…」
自分の声はどうやって伝わるのかと訊ねる母。西さんの口を通じてだと答える翔。
「すごいことを思いついた!その時は合図するからお母さんも協力してくださいっ!
できれば日本中の人に協力してもらってくださいっ!!」
それまで西さんの力を溜めておきたいと言う翔。
母に挨拶をして、学校へ戻るべくみんなのもとによろよろと向かう…。
怪我だらけで苦しむみんなに「学校へ戻って、もとの世界へ帰ろう」と言うが、
みんなはこの場所を離れないで、ここを自分の物にするんだと言い張る。
「何の肉でもいいから食いたい……」
1人の生徒が誰かの手の肉を見つけるが、翔はそれを奪い取った!
「ふん、バカどもはここにいろ!僕は学校へ戻ってもとの世界へ帰るぞ!
噂通りにこの世界に来てしまったのは自分のせいだと暴露する翔。
だからみんなのために一生懸命やっていたが、もういいやと学校へ向かう翔。
みんなは怒りをパワーに変えて、翔を殺してあいつの肉を食ってしまえと追いかけてくる。
翔は西さんを抱え、ひたすら学校まで歩き続けた。スモッグはもうないようだ。
ひび割れにぶつからないように回り道をして、ようやく学校に辿りついた。
力尽きてよろけた翔に、大友たちが襲い掛かる。

112 :漂流教室:50 :04/04/24 15:54 ID:???
「待ってくれ!僕がダイナマイトを仕掛けた犯人だと告白したのは、
みんなを怒らせてここまで連れてくるためだった!」
「黙れ卑怯者ーっ!!今さら何を言う!!死ねーっ!!」
大友のヤリが翔の腕に突き刺さる。が、大友の仲間はふらふらで手元が狂ってはずしてしまう。
「みんな聞いてくれ、もとの世界に返りたくないのかっ!?
僕はみんなを怒らせてここまで連れてくるのが目的だった!そしてみんなは学校へ帰ってきた!
ダイナマイトを仕掛けたのは、本当は僕じゃないんだ!!」
大友はみんなに早くこいつを刺せと叫んでいる。
「学校がもといた世界に一番近いのはコンピューターでわかった、
ここで少しでも早く強いショックを起こせば、帰れるんだ!
でも僕はダイナマイトの作り方を知らない!僕が犯人ならよかったんだけど…」
「みんな、騙されるな!帰れる保証なんてあるか!」翔の腕からヤリを引き抜く大友。
翔は西さんの不思議な力について説明する。
声が届くくらいだから、物質だって届くはずとの言葉にみんなは動揺する。
「西さんはいつも別の世界に行きたいと考えていた、その精神の集中力のせいだ!」
「黙れっ、騙されるなっ!みんなでやっつけてしまえっ!いくぞみんな!!」
先陣を切ったはずの大友が、仲間たちを妨害して翔を守った!
「やめろーっ!!」翔の前に両腕を広げて、翔をかばう大友。
「やめろみんなっ!!犯人は僕だーーーーっ!!」
今まで毎日がとても苦しかったと泣きながら懺悔する大友。罪の意識から逃れることができず、
翔に罪をなすりつけてしまった。心が痛めば痛むほど翔に冷たくあたってしまっていた。
クラス委員で成績優秀でいなければならない重圧に耐えられなかったのだ。
学校なんかなくなってしまえばいいと思ってダイナマイトを仕掛けたが、
職員室はバラバラにならなかった、だから今度こそと思ってもう一つ用意していたのだと
ランドセルからダイナマイトを取り出す大友。
「大友くん!そのダイナマイトは上手く爆発させることができるのかっ!?」
「もちろん、今度こそは!!」
今までのことを心から詫び、力を合わせてゆこうと硬い握手を交わす2人。
まわりの生徒も泣きながら歓声を上げた。
咲っぺやユウちゃんも翔を信じて学校まで戻ってきてくれた――。


113 :漂流教室:51 :04/04/24 16:53 ID:???
みんなでグラウンドに輪になって手を繋ぎあう。
「ダイナマイトに火がついたら、みんなで一斉に元の世界に帰りたいと願うんだ、
怪虫に襲われた時、イスになるようにと思ったのと同じように!
そうすればきっと元の世界に帰れるんだ!」
一緒に連れて帰るんだと、ユウちゃんが三輪車を輪の中央に転がして手を繋ぎなおした。
「これから始めますよ!僕たち、全員で帰ろうと心で強く祈ります!
どうかお母さんも僕たちが帰るようにと心で強く思ってください!
日本中の人にも僕たちが帰るようにと思うようにお願いしてくださいっ!!」
「わかりました………」西さんを通じて母の声が聞こえてくる。
ダイナマイトに火がついた――!

ETVテレビ局では、歌番組の生放送の最中だった。
人気グループエンジェル4の歌が終わり、
司会者がエンジェル4と馴染みの深いふるさとの人を紹介し始める。
翔の母が司会者のマイクを奪い取り、日本中、世界中の人々に
大和小学校の子供たちが帰るように心で強く念じて欲しいと呼びかけた。
テレビ局は大騒ぎ、母はスタッフに取り押さえられる。
ラーメン屋で放送を見ていた子供たちは不思議に思いながらもやってみることにした…。

ダイナマイトが爆発した!が、地面に穴があいただけで、実験は失敗だった。
ところが、ユウちゃんの三輪車だけが消えてゆき、とうとうどこにもなくなってしまった。
失敗を不思議がる翔たち。西さんは苦しそうにうなされている。
遠くで火山の噴火が始まった!ダイナマイトの爆発が火山活動を誘発したのだろう。
火山帯が学校の下を通っていれば学校ごと吹き飛ばされる危険もある。

114 :漂流教室:52 :04/04/24 16:54 ID:???
咲っぺがいない!彼女のいた場所には、ノートを引きちぎった置手紙があった。
『さようなら。翔ちゃん、それから学校のみなさん。元の世界へ帰れなかったのは私のせいです』
咲っぺは翔が好きだった。お互い好き合ってると思い込んでいた。
でも翔は西さんが好きなのだとわかってしまった。だから自分は帰りたくなかった。
ここにいればユウちゃんのパパとママでいられるから。
自分の心がみんなの心を邪魔したから帰れなかった、だからさようなら。
追おうとする翔を引きとめ、大友が駆け出した!「僕に心当たりがある!」

雨の降る中、翔の母は憔悴していた。
ひたすら翔のことを思い続け、引き寄せようとしているのだ。
玄関先で音がする。もしやと思い走ってゆくと、三輪車が玄関に置いてあった。
捨てられた物だろうと父は言うが、この雨にも濡れてないから、
翔の帰ってくる前触れに違いないと主張した。
翌朝、ちゃんと玄関に三輪車が置いてあった。
翔が帰ってくる印だからとここに置いておく事にしたのだ。
大和小学校関連のニュースに、慌ててテレビの前に座る。
小学校に事件前夜忍び込んで教師たちの現金袋を盗んだ泥棒が、
翌日逃走しようとして爆発に巻き込まれたのだが、
奇妙なことに右腕と右顔半分が失われていた。……いや、失われてるように見えたのだ。
彼にとってはちゃんと右手の先は存在し、石をつかむ事だってできる。
顔半分欠けてしまえば普通は生きていられない、自分の手と顔は砂漠に存在しているのだと…。
「あっ、女の子がやってきたーっ!おーいっ!!」


115 :漂流教室:53 :04/04/24 16:54 ID:???
泣きながら砂漠を走る咲っぺ。大友が追ってくるがかまわずに走る。
絶壁から飛び降りようとして、体当たりで止められてしまった。
「きっと君は公園の跡へ来ると思った。君は何かあるとよくここに来ていたから」
泣き出す咲っぺにどこにも行かないでくれと懇願する大友。
「おれ、き、きみが前から……好きだったんだっ!!」
いろんな感情が混ざり合って余計に泣き出してしまう咲っぺ。
「高松くんのことすぐには忘れられないだろうけど……
おれのことあまり好きじゃないかもしれないけど……
おれのこと好いてくれなくても、おれはきみのこと、ずっと好きでいるよ」
2人、崖の上に横たわり、砂漠を見つめている。涙はもう枯れ果てた。
と、ゴーという音を聞きつけ、例の地割れの場所に行ってみると、
「水だーっ!!地下水だーっ!!さっきの火山の爆発で出てきたんだーっ!!」
「風も出てきたわ!」
よみがえり始めた自然に、手を取り合って喜ぶ二人。
みんなに知らせようと走る咲っぺは何かに躓く。大和小学校の生徒の死体だった。
せめて埋めてあげようとよく見たら、身体から草の芽が出てきていた。
「みんなで分けた草の種が、死体の養分を吸って芽を出したんだっ!!」
「みんなの死は……無駄じゃ…無駄じゃなかったのねっ!!」
優しく土をかけて大きく育つことを祈る二人。
学校へ戻り、みんなにこのすばらしい奇跡を伝えると、学校の畑にもキュウリやマメがなってるとのこと。
みんなは喜ぶが、ユウちゃんは早く帰りたいと泣き続けている。
今度は火山の力を利用して挑戦しようとする。
そん彼らを遠くから見つめる男がいた。関谷だ。
「失敗しろ、バカめが!!」

116 :漂流教室:54あと少しです :04/04/24 17:24 ID:???
いくらやっても上手くいかない。みんなも焦り始めている。
翔が思いもかけないことを言い始めた。
「僕たちは今まで狭い範囲で判断していたのじゃないだろうか?
僕たちは選ばれた人間なんだ!世界では何かが起きてみんな滅茶苦茶になってしまった!
そして生きているのは僕たちだけだ!
僕たちは何かの手により未来にまかれた種なのだ!!」
「そうだ!!」大友が同意する。
「僕たちのしてきたことが、少しずつでもこの世界を変えてきた!
もっと考えてもっと行動すればもっともっと変わると思う!!」
学校の中には緑が一杯だ。逃がしてやった小鳥たちも帰ってきた。
……突然上空からロケットが降りてきて着陸した。
宇宙人かと警戒して近寄るが、何も出てこない。
用心深くタラップを登ると、そこには一通の手紙があった!
「高松翔さまへ………お母さんからだっ!!」
「な、なんだって!?」
手紙は確かに母の字だった。泣きながら声に出して読む翔。
「ロケットにはあなたたちに必要な物が濃縮したりしてすべて入っています。
人工衛星があなたたちをキャッチしたらロケットが降りていきます。
あまり長い手紙は書くことができません。ロケットの重量限度ギリギリにいろんな物を積むからです。
でも、紙の裏表にびっしり書きます。他の人のお家の方もみんなお元気です」
感極まって泣き出す翔。
「このロケットは、元の世界から僕たちに送られた物だ!僕たちはこの世界で生きていくんだ!!」
「いやだ!!」
ユウちゃんだ。パパやママのところに帰りたいと泣き出すユウ。
元の世界はやがてこんな風になる、そんな恐ろしいことを体験するよりここにいる方がいい。
そう説得してもわかってはもらえない。
「ウソつき!」翔を責めるユウ。
「みんな!ユウちゃんだけは、なんとしても帰そう!!ユウちゃんはまだ子供なんだ!
たとえどんなことになってもパパやママの側がいいんだ!!」
「うん!!」

117 :漂流教室:55あと少しです :04/04/24 17:42 ID:???
みんな集まって輪になり始める。咲っぺが言う。
「ユウちゃん!おねえちゃんのこと、きっといつまでも忘れないでね」
「うん!本当のママのところに帰っても忘れないよ!」
みんなの言葉を受けて、ユウは約束する。
「うんとお勉強して偉くなって……きっとこんな世界にならないようにする!!」
我猛がそれを聞いて興奮した。
「もしユウちゃんが元の世界に戻り、元の世界を変えたとしたら、
僕たちの目の前からユウちゃんが消えてしまったその瞬間に、この世界が変わるかもしれない!!
そうか!僕たちが未来へ来たのは振動のせいだ!光より速い振動を起こせば過去に戻れるぞ!
僕、きっとタイムマシーンを発明して、君に会いに行くからね!」

翔はユウちゃんに、元の世界に戻ったらお母さんに渡して欲しいと今までつけていた日記を託す。
みんなが祈り始めたその時、俺が帰るんだと関谷が乱入してきた!
ナイフを持った関谷がユウに近付く。
……と、ユウのランドセルの中に隠れていた泥棒の右手と顔半分が関谷に飛び掛った!
関谷の首を絞め、絶命したのを確認してから、手と顔はもう一度輪の中に戻り、
ユウと共に現代へ帰っていった……。

そして現代。泥棒男の手と顔が元に戻っていた。関谷との乱闘で手に傷は負ってはいたが。

玄関の人の気配に、翔の母は慌てて迎えに行くと、そこにはユウがいた。
「おにいちゃんから預かってきたの」とノートを託すと、置いてあった自分の三輪車をこいで帰って行った。
「翔のノート……翔の字だわ!!」
玄関先で泣きながらノートを見つめる母………。

ユウは疲れ果てながらも、自分で三輪車を転がしてゆっくり家に向かっていった…。

118 :漂流教室:56ラストです :04/04/24 17:43 ID:???
来る日も来る日も、母はひたすら玄関先で翔の帰りを待った。
もしドアを開けて「ただいま」と帰ってきたら「おかえり」と言って迎えてやりたくて。
もう帰らないと知りつつも……。

月日は流れてゆく。
母は何度も何度も繰り返し翔の日記を読み返していた。
翔が怪虫と戦っているところを読んで、
「あんなに頼りないと思っていたのにこんなに頑張れるなんて」と感心する。
でも母には一つだけわからない文章があった。
「一番最後の走り書きの【お母さん、空からの贈り物ありがとう】ってなんのことかしら…?」
母にアメリカから電話がかかってきた。翔にあてた瓶詰めの手紙がアメリカ太平洋岸で見つかったという。
その手紙を読んで非常に感激された科学者からだった。
「いいえ、私英語はできません。なんですって?私に会いたいですって?」
一体どういう用件だろう。でもその人はわざわざ日本まで会いに来てくれるのだ。
窓から星空を見上げ語らう高松夫婦。
「よかった。少しでも未来に望みを繋ぐ糸口ができたんだ」
「ええ!私、もうくよくよせずに未来にいる翔のため頑張るわ、もっと…。
たとえ誰もが信じなくても…翔は未来で立派に生きている!
ここにいなくても、未来にちゃんといる!」
その時、夜空を翔たちが元気よく駆けてゆくのを母は見たような気がした――。