花岡ちゃんの夏休み/清原なつの
303 名前:花岡ちゃんの夏休み[sage] 投稿日:2006/04/14(金) 21:03:29 ID:???
清原なつの「花岡ちゃんの夏休み」シリーズ投下します。

最初に。
「花岡ちゃん」は5本の短編集です。
タイトルは順に
「花岡ちゃんの夏休み」
「早春物語」
「アップルグリーンのカラーインクで」
「青葉若葉のにおう中」
「なだれのイエス」
です。

このうち、「アップルグリーンのカラーインクで」は花岡ちゃんが脇役の話。
「青葉若葉のにおう中」は花岡ちゃんにそっくりなキャラが登場する話です。
以下コミックス等収録順にあらすじを投下します。

310 名前:花岡ちゃんの夏休み[sage] 投稿日:2006/04/14(金) 21:16:33 ID:???

「花岡ちゃんの夏休み」

花岡ちゃんは才女と評判のメガネの女子大生。
夏休み、花岡ちゃんはある本を探していたことをきっかけに、蓑島(みのしま)という
ロンゲ男と知り合う。蓑島は花岡ちゃんと同じ大学で「悪魔のように頭が切れる」と
評判の男だった。
友人のおぎちゃんは「関わらない方がいい」と忠告するが、蓑島との会話が楽しく、
花岡ちゃんは蓑島がよくいる公園に押しかけては議論を仕掛けるようになった。

そんなある日、花岡ちゃんに見合い話が持ち上がった。相手は東大卒のエリート。
友達の美登利に「蓑島のことが好きじゃないのか」と問われるが、「蓑島さんとは
そういう関係じゃないから関係ない」と花岡ちゃんは馬耳東風。見合いを決行する。
しかし見合いの席でも蓑島が気になって身の入らない花岡ちゃん。結局中座して蓑島に
会いに行ってしまう。驚くが、快く迎える蓑島。なんとなくいい雰囲気に。

そこへ突風が吹いた。そして蓑島の麦藁帽とカツラが飛んでいった。実は蓑島には
もう一つ、「ハゲ」という噂があったのだ。ハゲが大嫌いな花岡ちゃんは、蓑島に別れを
告げる。
しかし蓑島を諦めきれない花岡ちゃん。泣き暮らす彼女に、美登利が「花岡ちゃんが
好きになったのは蓑島さんの髪だったの?」と聞く。それをきっかけに、花岡ちゃんは
改めて蓑島の何に惹かれたのか考える。
”好きになったのは 理由なんて分かりません”
”ただいっしょにいたいだけ いっしょにいるとたのしいだけ……”

次の日、花岡ちゃんはまた蓑島に会いに行った。
”人生の意義はまだわからないけれど”、蓑島と一緒にいたいと思ったから。


304 名前:花岡ちゃんの夏休み[sage] 投稿日:2006/04/14(金) 21:04:52 ID:???
「早春物語」

前作の続編。ゆるゆると付き合いが続いている蓑島と花岡ちゃん。
その蓑島に美人で才女の笹川華子が目を付けた。華子は蓑島にアプローチをかける一方、
花岡ちゃんをけん制する。
いつも恋ばかり追っているようにみえる華子に、花岡ちゃんは「人生の意義を考える事は
ないのか」と質問。華子は落ち着いて答える。
「その問の答えは……ないわよ」
「何のために生きるか課題が与えられていたら
 あなたはその通りに生きるつもりなの?」
格の違いを見せつけらた花岡ちゃん。多大な葛藤の末、蓑島から身を引くことを決意する。

花岡ちゃんに身を引くことを告げられ、彼女の葛藤をほぼ正確に推察した蓑島。
どう慰めてやろうと考えるが、そこで華子と偶然出会い、つい華子を優先させてしまう。
しかし楽しいはずの美女との会話にも身の入らない蓑島。結局華子をフッて花岡ちゃんの
元へ。

その頃花岡ちゃんは、公園で1人雪だるまを作っていた。
心の中で、彼女を急き立てるように浮かび続ける「なぜ」という疑問。本当は1人で
答えを探すのに疲れた。蓑島の助けが欲しい。でも言えない。
そんな気持ちを抱えつつ、蓑島に背を向け延々と雪だるまを作り続ける花岡ちゃん。
蓑島は両手を広げて言う。
「くやしかったらここまでおいで」
花岡ちゃんはその胸に飛び込んでいった。

305 名前:花岡ちゃんの夏休み[sage] 投稿日:2006/04/14(金) 21:06:31 ID:???
「アップルグリーンのカラーインクで」

花岡ちゃんの友達の美登利と、その幼なじみのおぎちゃんの話。
美登利は芸大1回生。おぎちゃんの通う大学には入れなかった。

ある日美登利は、同じ大学の笹川華子がおぎちゃんに言い寄っているのを知る。
しかし美登利は「おぎちゃんはおぎちゃんで好きな人を見つけ 恋を語ればいい」と
強がる。本当は塩と砂糖を取り違えるくらい動揺しているのに。
気分転換に部屋の模様替えをする美登利。荷物の奥から、昔おぎちゃんに貰った蝶の標本を
見つける。幼い頃、おぎちゃんはアフリカに蝶を取りに行くことを夢見ていたのだ。

おぎちゃんの誕生日の日。おぎちゃんは笹川華子と喫茶店にいた。
華子に「時々遠くを見ているような顔をする」と指摘されたおぎちゃんは、昔アフリカに
蝶を採りに行きたかったと語る。今からでもお金を貯めて行けばいいと言われ、
今の自分の望みが昔とは微妙にずれていることを自覚する。
話が白け、喫茶店を出る2人。その姿を美登利が見てしまった。美登利はおぎちゃんから
逃げるように去る。

美登利への仕打ちを花岡ちゃんに責められたおぎちゃんは、昔を思いながら考えた。
昔、おぎちゃんの夢を知った美登利はアフリカに一緒に行きたがった。もしライオンに
襲われたら死んだふりをすればいいと信じていた。
考えた末、おぎちゃんは、もし美登利が喰われそうになったら、わが身にコショウを
ふってライオンの前に飛び出そう、と決めた。そうしたら神様が蝶の大群を遣わせ、
ライオンの目鼻を隠し、そしてサバンナを導いてくれるだろうと。

翌日。華子に「僕は今日アフリカに行くよ」と宣言するおぎちゃん。
その夜大荷物を抱えて美登利の部屋に忍び込む。荷物の中身は、かつておぎちゃんが
集めていた蝶の標本だった。それらを前に当時の思い出を語る2人。
おぎちゃんが今欲していたのはアフリカ行きの切符ではなく、
過去を優しく語り合う時間だったのだ。

306 名前:花岡ちゃんの夏休み[sage] 投稿日:2006/04/14(金) 21:07:28 ID:???
「青葉若葉のにおう中」

花岡ちゃんにそっくりな容姿の宮嶋桃子が登場する話。

金之助の通う大学に、高校の後輩だった聖子が入学してきた。金之助にとって聖子は、
ずっと大切に慈しんできた存在。また、聖子も金之助を「金さま」と呼んで慕っていた。
その聖子に片思いを寄せる人物が現れた。聖子と同じ学部に入学した宮田玲。
宮田はすさまじい美少年だったが、聖子は歯牙にもかけなかった。そして昔と同じように
日々金之助と仲睦まじく過ごす。

ある日、悪友の宮嶋桃子が金之助の下宿に押しかけた。15回目の失恋のショックを
ぶちまけにきたのだ。収まらない桃子を、金之助は呑みに連れ出す。
呑み屋で、桃子は金之助と聖子の関係を問いただした。金之助は「好きだよ」と答える。
「たぶん最初に出会ったとき、彼女は僕の心の中に芽を出した
 そして今でもみずみずしい双葉のままで僕の中にいる」
「もうお互いに子供じゃないのよ」と桃子に返されるが、金之助は「いつまでも
あのままでいてほしい」と聞く耳を持たない。

やがて酔い潰れた桃子を、金之助は仕方なく自分の下宿に泊めてやる。もちろん何も
なかったのだが、翌朝金之助の下宿を訪ねてきた聖子に桃子を見られてしまった。
走り去る聖子。金之助は後を追わなかった。聖子の中の金之助像を壊してしまったのが
分かったからだ。「聖子をただ慈しむだけの金之助」という虚像を。

たまたま走り去る桃子に行き会った宮田は、金之助に会い、それを悟る。
そして聖子を訪ね「たぶんあの人とは違う意味で」愛してると告白する。

季節はめぐる。
再び出会った聖子の隣には宮田がいた。聖子は昔と同じように微笑み、「金さま」と
呼んだ。だが、金之助は昔と同じ微笑みを聖子に返さなかった。
”君はもう僕の城には住めない 僕はつみ木の城をこわしてしまったんだ”
今、春はさかり、緑が目にしみる。

307 名前:花岡ちゃんの夏休み[sage] 投稿日:2006/04/14(金) 21:08:22 ID:???
「なだれのイエス」

花岡ちゃんシリーズ最終話。
ある冬の夜、花岡ちゃんの家に蓑島の友人の遠野から電話が入る。蓑島が学内で雪崩に
会い、遭難したというのだ。
花岡ちゃん達の通う大学には「みやもり坂」という急な坂があり、毎年冬になると
怪我人が出ていた。そこで雪崩が起き、蓑島が巻き込まれたという。
現場に駆けつけた花岡ちゃんは、雪の中から蓑島愛用のカツラを発見する。しかし
蓑島自身は発見できず、絶望的な状況。花岡ちゃんはショックで気を失ってしまう。

深夜、遠野はその蓑島からの電話を受けた。雪の中で2時間ほど気絶していたというのだ。
さらに、頭がしもやけになったので四国の実家で療養するという蓑島。
その時、遠野の頭にある計略が浮かんだ。蓑島には長期の休養を進め、さらに「誰にも
連絡を取るな」と言う。うかうかと計略に乗った蓑島は、花岡ちゃんにも連絡を取らず
里帰りしてしまう。

邪魔者を遠ざけた遠野は、花岡ちゃんに「みやもり坂の犠牲になった蓑島のことを映画に
しよう」と持ちかけた。遠野は映研所属なのだ。花岡ちゃんはそれを了承。蓑島のカツラを
かぶり、悲劇のヒロインを演じることに。

映画の内容は、花岡ちゃんが雪の中からカツラを見つけるシーンから始まり、やがて
『みやもり坂にリフトを設置しよう』と学生運動を起こす、というもの。
「この映画作りはキナ臭い」との笹川華子の忠告も聞かず、与えられた役を無心に演じる
花岡ちゃん。アジテーションのシーンを撮り終え、ふと周囲を見渡すと、リフトの話を
真に受けた学生達が本当に学生運動を起こしていた。その熱気に押され、花岡ちゃんは
さらに扇動役を演じ続ける。

308 名前:花岡ちゃんの夏休み[sage] 投稿日:2006/04/14(金) 21:08:57 ID:???

そんな時、蓑島が実家から戻ってきた。蓑島の姿を見つけた花岡ちゃんは役を放り出し、
なぜか蓑島から逃げ出す。その花岡ちゃんを華子が捕まえた。花岡ちゃんは蓑島が
生きていたというわりに暗い顔をしていた。
花岡ちゃん「この場合どんな顔をしたらいいかわかんないの!」
華子「いちおうハッピーエンドじゃないの。うれしい顔なさいよ」
花岡ちゃんは素直にうなずき、追いかけてきた蓑島を笑顔で迎える。いちゃつきだした
2人に華子はあきれ気味。

一方、死んだはずの蓑島を見てとまどう学生達。すべては遠野の策略であったことを知り、
遠野に詰め寄る。当然学生運動は瓦解した。
実は、遠野もかつてみやもり坂で怪我をした1人だった。高校時代有望なスプリンター
だった遠野は、怪我のために夢を諦めざるをえなかった。だからこれ以上怪我人を
出さないようリフトを作りたかったのだ。

学生運動は瓦解したが、映画は最終カットまで撮った。
最終カットは、蓑島のカツラをかぶってアジテーション中の花岡ちゃんの銅像だった。