逆境ナイン/島本和彦
726 名前:逆境ナイン 1/6[sage] 投稿日:2006/01/28(土) 12:36:45 ID:???
逆境とは!思うようにならない境遇や不運な境遇のことをいう!

全力学園野球部主将・不屈闘志が、校長に廃部を宣告されるシーンから物語は始まる。
成績不振で勝てない部に興味は無いと言い切る校長に、不屈は今期高校野球での優勝を予告し
その証拠として、地区最強の日の出商業野球部に練習試合で勝ってみせる、と啖呵を切る。
絶対無理だ!と反論する部員たちを気合で論破し、過酷な特訓を始める不屈。
だが、その不屈を襲う逆境!怪我や補習、果ては女に振られて欝だという理由で脱落していく部員たち。
部員のほとんどが脱落し、しまいに自分も肩を脱臼してなお、不屈は諦めるとは言わない。
「男の三つの条件がおれたちに無茶をさせているのさ!…ひとつ!男はイザという時にはやらなければならない!
 ふたつ!今がイザというときである!そしてみっつ!おれは…おれたちは男なんだッ!」
そして試合当日。豪雨の中現れた日の出商野球部は、肩慣らしの試合に体は張れぬと不戦敗宣言。
全力学園野球部は辛うじて首を繋いだ。

日の出商に勝ったと吹聴して株を上げた全力野球部に、黒風高校野球部が練習試合を申し込んできた。
彼らも廃部を目前にしており、“日の出商に勝った”全力野球部を倒して箔を付けたいのだ。
黒風のキャプテン・ハギワラが、全力のマネージャー月田の幼馴染と知り、気まずい不屈。
さらに当日、月田が好意のつもりで差し入れた弁当が当たってしまい、黒風ナインは全員青息吐息。
後ろめたさのあまり及び腰の全力ナインとの間で低レベルな接戦が続く。
最終回、黒風逆転のチャンス。自分も負けるわけにはいかないが、どうしても本気が出せない不屈の前に
サカキバラ・ゴウと名乗る謎の男が現れた。
「今のきさまにいい言葉を教えてやる…そいつを胸に刻んで投げてみろ。───『それはそれ!これはこれ!!』」
この言葉に力づけられた不屈は全力で黒風を粉砕。部の命脈を保つ。
ちなみにその後、ハギワラは家の事情で全力学園に転校。全力野球部に新たな戦力が加わった。

727 名前:逆境ナイン 2/6[sage] 投稿日:2006/01/28(土) 12:37:25 ID:???
地区予選を前に、長く空位であった野球部顧問を補充してほしいと願い出る不屈。
野球部最後の餞別として我侭を聞いてやろうという校長に対し、不屈が希望したのは
産休の先生の代わりに臨時講師としてやってきたあの男、サカキバラであった。
「実践の歴史」を説く社会科講師としての知恵が今の野球部に必要だと不屈は考えたのだった。
いよいよ始まる地区予選一回戦の相手は、駄麻下(だました)商業。
マネージャー月田が、駄麻下野球部に直接取材してきたデータを元に、対策を練る全力ナイン。
だが、いざ試合が始まってみると、取材データとは全く違う駄麻下ナインの攻めに全力は翻弄される。
駄麻下野球部は、偽の弱点をわざと取材させたのだ!…って、相手がわざわざ弱点を教えてくれる時点で気付け。
うろたえてペースを崩し、いいように点を取られていた全力ナインの前に、二日酔いで遅刻したサカキバラが現れる。
「おれは昨日、貴重な体験をした…酒をのんでものまれるな……敵をのんでものまれるなッ!」
この言葉にヒントを得た不屈は、無理にでかい態度をとって相手のピッチャーを威圧。
萎縮した相手を一度呑んでしまうと、偽データの逆を行く相手の行動はむしろ分かりやすく
全力ナインは逆転勝利をおさめたのだった。

一回戦突破した全力ナインを襲う次なる逆境、それは試合ではなく、中間テストであった!
赤点を取ってしまえば補習のため、地区予選に出られなくなる。ほとんどの部員は楽観しているが
不安なのはショートの新屋敷と…肝心の不屈であった。
二人に速成勉強法を請われたサカキバラは、女好きの新屋敷には勉強好きの女の子の写真を突きつけて
モチベーションを上げさせ、一方の不屈には名刺大のカードを渡し、これに試験範囲をまとめろと命じる。
部員からレギュラーを選抜する要領で、試験範囲を選り分けつつ、切り捨てた部分にも心を配る不屈。
努力の甲斐あって、不屈と新屋敷は好成績で試験を突破する。
…が、楽観していたほかの部員のうち6人が赤点で脱落!全力野球部はメンバー割れの危機に陥った。

728 名前:逆境ナイン 3/6[sage] 投稿日:2006/01/28(土) 12:38:08 ID:???
部員の半分以上が赤点で脱落するという逆境にあってなお、不屈は前向きの姿勢を崩さない。
「あのメンバーでは甲子園には行けんのだ!だから赤点を取らざるをえなかった!大いなる宇宙の意志がそうさせた!
 と、いうことはだ…これから集まるメンバーなら、必ず甲子園にいける!!」
生徒の中から新たな野球部メンバーを探そうとした不屈は、王貞治そっくりの巨人ファン、亀谷万念と出会う。
野球は観るだけの主義という亀谷に、入部をかけた勝負を挑む不屈だが、亀谷のお宝である
本物の王選手が愛用したバットの迫力に圧倒されてしまう。
しかし、サカキバラの仲裁で勝負を翌日に持ち越した不屈は、バットの迫力は親の七光りと気付く。
「あのバットだって、打った数より空振りした数のほうが多いはずだ。それに比べこのボールは
 一度も打たれたことのないボールだ!おそれることはないっ!」
ここで不屈は、投球に異常な迫力を付加して相手の調子を狂わす魔球「全力スペクトル」を編み出す。
勝負に敗れた亀谷は入部を承諾。これをきっかけに、新部員探しは軌道に乗りだす。

新入部員が揃いはじめた最中、不屈は学校の廊下でぶつかった少女、桑原さんに一目惚れしてしまう。
そして迎えた地区予選第二回戦当日、不屈は桑原さんとのデートで試合をすっぽかしてしまった。
実はこのデート、連戦で痛んだ不屈の腕を心配する医師、桑原さんの父のはからいだったのだが
この一件で不屈の株は大暴落。その隙に、新入部員として入ってきた校長の甥、完人(かんと)が部を牛耳ってしまう。
全力野球部は不屈を補欠に下げたまま三回戦を勝ち抜くが、それは不屈への怒りで他の部員が結束した結果で
今なお野球部のキーパーソンが不屈であることに気づいたのは校長だけだった。
そして迎える準決勝、不屈の代わりに投げていたハギワラは、無理がたたって腕を痛めてしまう。
サカキバラの「背に腹はかえられんっ!」の一声で、投手として復帰を許された不屈。
…だが、療養と補欠生活による練習不足のおかげで不屈の投球は絶不調。辛うじて守備陣の活躍で勝ちを拾った。
再び補欠に戻される不屈。だが、ハギワラは彼の心境を理解しつつあった。

729 名前:逆境ナイン 4/6[sage] 投稿日:2006/01/28(土) 12:38:49 ID:???
地区予選決勝戦、全力学園の相手として勝ち残ってきたのは予想通り日の出商だった。
以前の不戦敗を実力負けのように吹聴され、全力への復讐に燃える日の出商。
準決勝で一方的に相手校を叩きのめし、晒し者にする日の出商の試合に、パニックを起こし逃げ出す全力ナイン。
その頃、補欠として学校に残っていた不屈はハギワラに声をかけられる。
ハギワラは、不屈の桑原さんへの恋が彼の決意を鈍らせていることを見抜き、不屈にあるものを手渡す。
「好きなほう取ってかたっぽは捨ててくれ」、という言葉に従い、家で袋を開けた不屈が袋の中に見たものは
「野球」「かけがえのない女」とそれぞれ書かれた二枚の板。そう、不屈はそうそう器用な性格ではない。
野球と恋のどちらをとるか、ここで決断しなければならないのだ!
自分は三年だからもうすぐ部活も終わる。それに比べれば、恋人はあるいは一生ものではないかと
「かけがえのない女」を選びかける不屈。だが、そのとき不屈は校長に切った啖呵を思い出す。
男が途中で決意を変えるわけにはいかない。彼は「野球」と書かれた板を握り締め
家にやって来た桑原さんを、涙を呑んで追い返した。扉を閉めて号泣する不屈に代わり、不屈の父が応対する。
「闘志はあんたのことを真剣に好きだったようだが──それならばなおのこと!物事を途中で放棄するような
 男としてあんたとはつきあえんし…そんな男とニコニコつきあうあんたであってほしくもない…
 もともと選べる道はひとつだったのだ」
不屈の決意を知った桑原さんは、さびしげに微笑んで去って行った。
そして不屈は、負け犬と化した全力ナインを召集し、戦うことの意義を熱弁する。
「万年二回戦どまりの俺たちがいきなり甲子園出場してみろ!もしそれで優勝でもしようもんなら───
 はっきりいって、歴史に名が残る!!(背後にベートーベンやワシントン等、歴史上の偉人のイメージ)」
あくまで前向きな不屈の言葉に、全力ナインは再び闘志を燃やし、明日の決勝戦への出場決意を固める。

730 名前:逆境ナイン 5/6[sage] 投稿日:2006/01/28(土) 12:39:28 ID:???
地区予選決勝戦開始。だが、不屈は日の出商の一番打者、星野のピッチャー返しをまともに顔面に喰らい
気絶してしまう。そして、不屈が目を覚ますと、試合はすでに9回で、点差は3対112に開いていた。
普通なら、負けを認めて「形の上の勝利」以上の何かを求めるところだが、不屈は諦めはしない。
「先生!こんな時にへんな冗談はやめてください!たかが100点差…形の上だって勝ちます!
ここで、不屈は己の魂をボールに込め、必死の覚悟を持って投球する。その瞬間、球は燃え上がり
熱い咆哮と鋭い睨みをもって相手バッターを完全粉砕した。魂の魔球“男球(おとこだま”の誕生である。
男球によって日の出商の攻撃を止めた不屈。だが、勝つには最終一イニングで100点差を覆さねばならない。
不屈は、最高潮に高まった己の魂のパルスを部員たちに共鳴させ、彼らの魂を一流のレベルへと引き上げる。
“男の熱い魂──それは交わした腕と燃えたぎる眼光によって伝達される!これは冗談ではない!”
一流の魂に共感した部員たちは、やはり一流である日の出商の選手たちの思考を掴み取り
確実に打点を上げ、点差を縮めていった。…しかし、激しい運動に全力ナインの体はついていかず
ついに不屈以外の選手たちは全員気絶してしまう。
時間も日没を過ぎ、もう手元も見えない暗さ。堂々と不屈を倒さねば気のすまぬ日の出商キャプテン高田は
翌朝への試合延長を申し出、不屈はこれを受けざるを得なかった。
流石に自分一人では勝ち負け以前に試合にならぬと弱音を吐く不屈。しかしサカキバラはそれを叱り飛ばす。
不屈が気絶している間、不屈の復活を信じて試合放棄せず戦い続けた部員達に報いるには、絶対勝つしかない、と。
翌日、たったひとりで試合再開の場に立った不屈は、この試合に特例として「透明ランナー制」が適用されると知った。
それを聞いて大笑する不屈。これならば一人でも試合続行できる!
…そしてその日の昼。日の出商の勝ちを予想して放送を確認した全力学園生徒たちが聞いたのは
一人で日の出ナインをねじ伏せ、100点差を覆した不屈の勝利であった!

731 名前:逆境ナイン 6/6[sage] 投稿日:2006/01/28(土) 12:40:30 ID:???
単身日の出商を倒し、甲子園の切符を手に入れた不屈は、ここまで機運が盛り上がれば
校長も野球部をつぶせまいと増長する。しかし、その増長ぶりを戒める不屈の父の一喝と
「100点取り返すなど一見すごいことのように思えるが、1点も取られないほうが理想的じゃないのか」
というもっともなツッコミに屈し、我に帰る。日の出商の高田が、押し掛けコーチになってくれたこともあって
全力ナインは改めて甲子園優勝目指して動き出した。
そんな折、産休の安藤先生が復職し、サカキバラ先生は急遽、全力学園を去ることに。
心の師を失った不屈だが「しょせん男はひとり!おれ自身の戦いにおいて支障はない」と
豪快に笑って見せた後、無言でサカキバラの去っていった方へ一礼するのだった。

ついに始まる甲子園。初出場の全力学園だが、「男球」を打てる選手は存在せず
圧倒的な強さで勝ち進む全力ナインは今大会の台風の目となっていった。
だが、決勝戦で全力の前に立った強力学園は、なんと主将の無敵勇士以下11名の部員全員が
不屈と同等の根性を有するとんでもない野球部だった!さらに彼らは、強力学園に転任してきたサカキバラを
ブレーンに据え、準決勝でわざと100点差をつけられる逆境を体験することで「男球」をも習得していた!
そして決勝当日。他の部員たちのはからいでゆっくり休んでから宿を出た不屈は、交通事故に巻き込まれ
記憶喪失になってしまう。辛うじて甲子園にたどり着くものの、動機を失った彼には闘志もチームワークもない。
だが、強敵の存在と主将の不運に、他の部員たちが燃え上がる。不屈と共に夏を戦ってきた彼らは
すでに不屈と同等の根性を身につけていたのだ!その根性に刺激され、不屈も記憶が無いなりに発奮する。
「記憶を失った、などという後ろ向きないい方はやめてください!──過去を捨てたのです!」
そして最終回、力尽きたハギワラの代わりについにマウンドに立った不屈は、全力を込めた「男球」を投げる──

逆境を払いのけ──そして 彼らはついに最後まで戦いぬいた
だが これで戦いが終わったわけではない!人生を突き進んでゆく限り──
逆境はつねに おれたちの目の前に立ちはだかってくるにちがいないのだ!!

全力学園校長室に置かれた優勝旗、そして「負けるな!」の大書とともに物語は終わる。

732 名前:逆境ナイン[sage] 投稿日:2006/01/28(土) 12:41:36 ID:???
逆境ナイン 作:島本和彦 月刊少年キャプテン(徳間書店)に89年〜91年連載
徳間書店からのコミックスは絶版だが、05年の映画化に伴い、「吼えろペン」連載中の
小学館サンデーGXコミックスから全6巻で復刊。
ちなみに映画版は、地区予選優勝までを換骨奪胎してまとめている。
島本和彦の最高傑作と呼び声も高い作品。作中の漢の名言の数々を、この要約でも拾うよう努めたが
異常なまでのテンションの高さは、ぜひ実作品の通読をお奨めする。