GSホームズ極楽大作戦!!/椎名高志
185 名前:GSホームズ極楽大作戦!! (1)[sage] 投稿日:04/05/28 00:01 ID:???
魔術と錬金術を極め、不老不死の肉体をも持つ男…ドクター・カオスは得体の知れない怪物に襲われ窮地に陥っていた。
彼を救わんとするアンドロイド少女・マリア。
 
ところかわって19世紀のロンドン、ベイカー街。「赤毛連盟」事件を解決したばかりの
ホームズの許に、窓をぶち破ってマリアが飛び込んでくる。
慌てふためくワトソンにホームズは憎々しげな顔で「古い知人」とマリアを紹介する。
マリアが人造人間と聞かされて驚くワトソン。愛らしいマリアの微笑はとても人工のものとは思えない。
「ワトソンを惑わせるのはやめろ」と睨み付けるホームズ。
彼女は行方不明になったカオスを探す為、ホームズに探索を依頼しに来たのだった。

調査に赴いたソールズベリーの屋敷跡。この地に古い神が封印されている事を突き止めたものの、
軽はずみにその封印を解いてしまったカオスは、建物の倒壊とともに行方不明になってしまったという。
マリアの探索能力をもってしても見つけられないという事は、どこかの異次元に飛ばされたという事か…。
カオスが封印を解いた方法に鍵があるに違いないと睨むホームズ。カオスが持ち込んだ「精霊石」は
五つ紛失しているから五芒星の魔法陣を敷いたに違いないが、霊波の痕跡として残っているのは二カ所だけ。
残る三点はどこに設置されていたのだろう?

ホームズがパイプをふかして沈思する間、ワトソンはマリアに友と出会ったいきさつを尋ねる。
16年前、若き日のホームズの先進的な科学捜査に興味を持ったカオスは、彼に膨大な資料を与え、
助手として「娘のマリア」を使ってくれて構わないと言った。
「マリアは分類する作業は得意だが、データを立体的に捉える発送の飛躍がない。だから君に頼みたいのだ」と。

「立体的に」という過去の記憶に触発されて閃くホームズ。
五芒星は平面ではなく、建物の中で立体的に構築されていたのだ。
マリアが空中に五芒星を作り出すと、異界へのゲートが開く。
解決への糸口が掴めたものの不愉快そうなホームズ。
「今後二度と我々の生活を乱すことはやめてもらう」反応を見せぬマリア。
「16年前のようなことは、なしにしてもらう! いいな?!」

186 名前:GSホームズ極楽大作戦!! (2)[sage] 投稿日:04/05/28 00:08 ID:???
16年前。マリアを人間の女性と信じ切っていたホームズは彼女をデートに誘った。
音楽会からの帰り道、寄り添って歩く二人。「このままずっと歩いていたい…」
これを携帯するように、と、ホームズに精霊石のペンダントを授けるマリア。
だが彼女に口付けるとホームズは意識を失う。

気がつくとカオスの研究室。拘束されたホームズにカオスは、自分が人格を移植する為に、君は理想的な素材だと明かす。
マリアはその為にホームズに接触して、彼自身の能力を見定めていたのだ。
マリアの正体を知って動揺するホームズに、容赦なくカオスは人格転移を施す。入れ替わるホームズとカオスの体。
「おのれ!」飛びかかるホームズ(体はカオス)。カオス(体はホームズ)の窮地を救うためにマリアが発砲した弾丸は、
ホームズの首にかかった精霊石に命中し、その衝撃によって二人の体は元通りに入れ替わった。
爆煙の中、カオスを連れて飛び去っていったマリア…。

再度封印を解くと、取り込まれたかけたカオスごと、怪物が現れる。
「こいつは人間から知識と情報を吸い取る妖怪じゃよ、ああっ、もう何を吸われたのかも思い出せん!」
マリアが精霊石の弾丸で化け物を撃ち抜くと、怪物は爆発の中に消えていった。

世話になった、とホームズに礼を言うカオス。
「御礼にわしの所有しているものなら、なんでも譲ってやる」言われてホームズは表情を険しくするが
マリアから眼を反らすと「僕には仕事そのものが報酬ですよ」と言って背を向ける。
笑顔で見送るマリアは、しかし、自分の笑顔プログラムを削除して欲しいとカオスに要請するのだった。
 
帰りの汽車の中。ワトソンはホームズがマリアに冷たすぎるのではないかと咎める。
「精霊石を授けたのは君を守ろうとしたに違いない」
それなのに何故彼女を譲り受けなかったのかと言う問いにホームズは
「命に限りのある者が持つべきではない」と答えた。
「君の書く物語の中で僕は永久に生きていく。彼女にもし魂があるのなら、その存在の方が慰めになるだろう。
『人はむなしく、業績こそすべて』業績だけは彼女と同じく不滅のものだからね」と。


187 名前:GSホームズ極楽大作戦!! (3)[sage] 投稿日:04/05/28 00:13 ID:???
マリアと自分しか知らない筈の精霊石の一件をどうしてワトソンが知っているのか、ハタと気づくホームズ。
実はワトソンはマリアの記憶データを出力したものをこっそり読んでいたのだ。
「こんな記録は、こーだっ!!」窓から紙片を撒き散らしながら、汽車はロンドンへとひた走る。完。

---

短編なのに長くなってごめんなさい。
美神でカオスがボケていたのはここで記憶を吸われていたからなんですね。