銀曜日のおとぎばなし/萩岩睦美
419 名前:銀曜日のおとぎばなし 第1部 1 投稿日:04/10/26 02:36:31 ID:???
ロンドンの毛皮商の息子であるスコットは鳥や動物を愛する心優しい青年。
父親の後を継ぐのを拒んでおり、父とは不仲である。
スコットは森でバードウォッチングをしている最中、一人の小人の少女と出会う。
ポーと名乗る小人の少女は、小人族の姫であった。
ばあやに叱られながら、仲良しの友達のリルフィー(鳥)と森で遊ぶのが趣味。
ポーは母親である女王に「ニンゲン」という種族と出会ったことを話すが、
女王は「人間」など知らない、二度と「人間」に近づくなとポーに固く言い渡す。
ポーは幼い頃から母親に優しくされた記憶がなかった。

小人族には代々伝わる言い伝えがあった。
新月の銀曜日に生まれた一千人目の女が死ぬ時、それは部族のたえるとき――
ポーこそが新月の銀曜日に生まれた一千人目の女だったのだ。(※銀曜日は人間界で言う金曜日)

母親の冷たい態度を寂しく思うポーはロンドンのスコットの元までリルフィーと共に会いに行く。
小人に会ったことが夢ではないとわかって喜ぶスコット。
しかしスコットの(自称)恋人であるクレアは、ポーを気に入らない。

一方、小人族の村ではポーが人間界へ行ったことがばれていた。
銀曜日に生まれた一千人目の女であるポーを死なせないためには、
10年ごとに人間をいけにえに捧げないといけなかった。
そしてポーの10歳の誕生日はあと少しだったのだ。

そんな時、小人族の村にキツネ狩りのために人間がやってきた。
それは毛皮商のスコットの父親であった。
9年前、森に押し入ってきた人間に夫を殺された女王は、いけにえにする一人目の人間をスコットの父親に決める。

スコットは急にやってきたポーの家のことを心配するが、
ポーは「母さまにちゃんと言ってきた」と嘘をつく。
クレアはポーに歩み寄ろうとポーのために人形の洋服を買ってくるが、ポーはそれを脱いでしまう。
切れたクレアは、夢を見すぎているスコットのためにも、ポーに出て行けと言い、
ポーはリルフィーと共に飛び去ってしまう。だがスコットはクレアを怒らない。
ポーのボロボロの服は、母親が初めて作ってくれたものだったのだった。

420 名前:銀曜日のおとぎばなし 第1部 2 投稿日:04/10/26 02:39:17 ID:???
ロンドンの街の中、ポーを探し歩くスコットとその後をつけるクレア。
クレアはその途中でポーの手がかりを見つけ、スコットを引っ張り、ポーを見つけ出す。
ポーはクレアに謝り、二人は和解(?)する。

小人族の村では、女王と村人たちが、森に押し入ってくるスコットの父親を目に見えぬ力で攻撃していた。
スコットの父は少しずつ衰弱し、だが森に戻って来ずにはいられないようになってしまう。

ロンドンのスコットの元で暮らしていたポーは、ある朝リルフィーが病気になり、
森に帰ってしまうことになる。ポーが行ってしまったことにしばし呆然とするスコット。

森に帰ったポーはリルフィーのために薬を出してと泣いてせがむが、
リルフィーは森に帰った途端に元気になっていた。
久しぶりに母親である女王と再会したポー。
リルフィーの病気は女王が一時的にリルフィーの体に変調をきたすように仕組んだのだった。
女王はポーの誕生日は盛大に祝うので、二度とこの森を離れるなとポーに言い含める。
母の言い方に腹を立てたポーだが、久しぶりの故郷である森に、ロンドンとは違った魅力を見つける。
ポーは、小人族の物知りじーさんに「ポーの母さまはどうしてあんなにいじわるで冷たいの?」と
尋ねるが、物知りじーさんによると、昔は女王はとても明るく優しい人だったと語る。
そしてポーに立派な女王になってもらいたいからこそ厳しく育てているのだとフォローするが、
ポーは女王にはなりたくなかった。
また、女王は父が生きていた頃はよく笑っていたと聞いて、ポーはやはり自分が母親に嫌われているのだと確信する。

スコットの父親は尚も森を訪れていた。そのたびにスコットの父を攻撃する村人たちだが、
いくら憎い人間とはいえ、命ある者を殺そうとするのは耐えられないと女王に訴え、虹の玉を見つけようと提案する。
いけにえを出さず、かつポーを死なせずに小人族を救うには、虹の玉を見つける必要があった。
虹の玉は、銀曜日、信じあう者同士二人だけが見つけられると言う。
しかし、その代償もまた定かではないと書物には残されている。
虹の玉は10年間見つかっていないのだから、見つけられるはずがないと女王は反発する。

421 名前:銀曜日のおとぎばなし 第1部 3 投稿日:04/10/26 02:40:53 ID:???
ポーは女王の部屋にあった銀曜日の予言について書かれた書物を途中まで読んでしまう。
女王に本を隠されたポーは、なんとしても本を読もうとし、
友人のクープの助けで本を読むことに成功するが、「一千人目の女」が自分のことだと気づく。
大変なことだと知ったポーは、何としても虹の玉を見つけようと決意する。

後日に、スコットは父親が狩りへ行った先で発作を起こしたと連絡を受け、
初めて父がポーの住んでいた森で狩りを行っていたことを知る。
スコットの父は周りが止めるのも聞かず、森の奥に入ってしまい、ついに小人の村を見つける。
女王はスコットの父を気絶させ、動物たちに見張りをさせる。
父親を探すスコットもまた、小人の村を見つけ、ポーと再会する。

スコットはポーに父親の行方を尋ねるが、ポーは知らないと答える。
また、ポーはスコットに再会したことで気がゆるみ、スコットに泣きつく。
夜が更けて、周囲が見えなくなったスコットはポーの仲介でキツネの住処に泊めてもらうことに。
ポーは家に帰って、女王に、一千人目の女が自分なのかと問い詰める。
激しく動揺する女王。ポーは本当のことだと確信し、「虹の玉を見つける」と宣言する。
だが女王は「いけにはもう用意している」と言い放ち、ポーはそれがスコットの父だと気づく。

ポーは虹の玉を見つけようとする最中、縛られているスコットの父を見つけ、助けようとする。
意識を取り戻したスコットの父は、ポーを見せ物にしようとつかまえるが、ポーはそれを理解しない。
ちょうど朝になって目覚めたスコットは、ポーと共にいる父親と再会する。
スコットの父はポーを連れて逃げようとするが、女王と村人たちの力によって阻止される。
ポーは女王にスコットの父を逃がすように懇願するが、女王は聞き入れない。

全てをスコットに話したポー。スコットはロンドンに帰り、虹の玉について調べることにする。
夢の世界が崩れたことにショックを隠せないスコットは、待っていたクレアにも事情を話さない。

また、10年ごとのいけにえにより、永遠の命を与えられる代わり、ポーは魂のぬけたぬけがらと
なることが判明するが、女王はあくまでもいけにえの方法を取ろうとする。
何故なのかと問う村人に女王は「虹の玉など最初から存在しない」と断言するのだった。

422 名前:銀曜日のおとぎばなし 第1部 4 投稿日:04/10/26 02:41:53 ID:???
ポーは虹の玉探しに奔走するが、村人の大人たちは女王の命令で、誰も協力してくれない。
しかし、クープを始めとする村の子供たちはポーの虹の玉探しを手伝ってくれるのだった。
スコットと連絡を取り合いながら虹の玉を探すポーたちだが、ポーの10歳の誕生日は刻々と近づいていく。

業を煮やしたポーは、まず先にスコットの父を助けることにする。
ポーを見せ物にしようとしていたスコットの父は、当のポーが自分を助けてくれたことに拍子抜けする。
しかし、ポーの誕生日は既に来てしまっていた。
0時を過ぎると同時にいけにえの儀式が始まるのだ。
小人族の力を使い、スコットの父を彼が乗ってきた車でひこうとする女王と村人たち。
村人たちは「虹の玉はない。村を救いたいがためのつくりごとだった」と聞かされ既に諦めていた。
そこにポーの呼びかけを感じたスコットが駆けつける。
今にも殺されそうな父親の姿を見て、小人族に「共存できないのか」と訴えるスコット。
ポーは身をはってやめさせようとするが、幼い頃から母親に「人前で脱いではいけない」と
言われてきた帽子が取れ、そこには何と、虹の玉があった。
虹の玉が見えているのはポーとスコットのみ。「完全に信じあう者同士」はポーとスコットだったのだ。
始めは信じない村人だったが、激しく動揺し、虹の玉を使うのを止めさせようとする女王に、
虹の玉は本当に存在するのではないかと思い始める。
しかし女王は、ポーに虹の玉を使うのをやめさせるため、自らの胸を突いてしまう。
倒れた女王は「虹の玉はわたしが隠した」と告白する。
ポーが生まれた時にポーの父親と二人で見つけ、誰にも見つからないようにポーの帽子に隠したのだ、と。
今まで信頼してきた女王に嘘をつかれていたことにショックを受ける村人たち。

423 名前:銀曜日のおとぎばなし 第1部 5 投稿日:04/10/26 02:42:42 ID:???
予言が書かれていた本には続きがあったのだ。
虹の玉を使い、村が救われるのと引き替えに、ポーが消えてなくなるのだと言う。
ならば10年ごとのいけにえで、ぬけがらのようになっても永遠の命を与えられた方がいいと、
母としての女王は考えたのだった。そのために、始めからポーを愛すまいと、感情を殺してきたのだと女王は告白する。
涙を流すポーと、優しくポーを抱きしめる女王。
母親から、「愛している」という言葉を聞き満足したポーは、自らを犠牲にする決心をするが、
それを止めたのはスコットだった。
スコットは、「ポーにも父にも生きていてほしい」と自分をいけにえにしてくれと頼む。
スコットが炎上する車に飛び込もうとした時、銀の雪が舞い降りた。
銀の雪は、夜光虫か何かの一種だったが、村人たちは「銀の雪が儀式を止めた」と思う。
女王はスコットに、「あなたをいけにえになどできない」と言い、
「あとはわたくしたちだけで過ごさせてください」と頼む。
ロンドンに帰るスコット。
そして小人族の村は、最後の日に祭りを楽しみ、眠り薬を飲んで全員眠りにつくのだった。
その夜スコットは不思議な感覚に襲われる。

スコットの父親の容態はよくなっていた。だが、スコットの中には埋まることのない穴が空いていた。
クレアは、そんなスコットを慰める。
少しずつ元の生活を取り戻していくスコット。

しかし、ポーはスコットの元に戻ってきたのだった。信じられないスコット。
「スコットのおかげよ」とポーは語る。
祭りの後、村人たちが起きると、誰も消えず村人たちは無事だった。
慌てて本を読む女王たちは、新たなページを見つける。
「部族のわくをうちくだくことができればすべては方向を変える
 われわれ以外の生き物の力とふかくむすびつけば 運命はかえることができよう
 他の生命の力がふかくふかくむすびつけば…
 だがこれらのことが事前にあかされることはない」
スコットに深く感謝した女王は、ポーに人間をもっと深く確かめ、報告してくれるよう、
ポーをスコットの元に預けることにしたのだった。喜び合うポーとスコット。

                                           第1部 完

424 名前:マロン名無しさん 投稿日:04/10/26 02:51:02 ID:???
スコットやクレアやポーの間に恋愛感情はあるの?

425 名前:銀曜日のおとぎばなし 第2部 1 投稿日:04/10/26 02:51:45 ID:???
母親に愛されていることを知り、スコットと共にいられることに幸せを感じるポー。
クリスマスが迫ったある日、ロンドンをリルフィーと共に徘徊していたポーは、ピーターという少年と出会う。
ピーターは、ポーのような小人に会っても驚かなかった。
病弱な母親と二人暮らしのピーターは、労働者階級で、日々働きながら暮らす子供。
スコットに所に帰ろうとするポーに、何故か「帰らないで」と頼む。

ピーターは、以前から小人がいるのを知っていたと語る。
働きに出かけたピーターとついていくポーは、お金持ちの子供が物乞いの真似事をしているのを見つける。
子供を叱り飛ばすピーター。だがその子は、「僕を子分にして」とピーターに願い、ポールと名乗る。
ポールは家の者に連れ去られる途中、財布を落とし、ピーターはそれを拾う。

ピーターはポーに「小人がいると知っていた証拠」を見せる。
それはポーのサイズより一回り小さい、着込んである服だった。
ポーはその服を持っていた、ピーターの友人であるふくろうのシモンに聞いて、
服の持ち主が動物園に住んでいることを知る。
今度動物園に行こうと約束し、ポーはピーターと別れる。

家に帰ったピーター。
ピーターの母親、アイリーンは、彼が拾ってきた財布に書いてあったポール・トルハーストという名前を見て
何故か激しく衝撃を受け、財布を返しに行こうとするピーターに「その子に会わないで」と強く頼む。

一方ポーは、ピーターから聞いた「幸福な王子」の話のツバメにひどく感動し、
自分もツバメのようなことがしたいと、母親である女王からもらった宝物の中にあった、
「どんな病気でも治る薬」をピーターの母親にこっそり(?)届ける。

426 名前:銀曜日のおとぎばなし 第2部 2 投稿日:04/10/26 02:52:46 ID:???
その頃ポールは、祖父から溺愛されるお坊ちゃま暮らしに飽き飽きし、ピーターからの電話を待ち焦がれていた。
財布を返すために電話をかけてきたピーターの呼び出しに、意気揚々と出かけるポール。
ピーターはと言うと、母親にクリスマスプレゼントしようと思っていた手袋が売れていて、ショックを受けていた。
ポーはそれを聞き、「あの洋服を作った小人さんたちに作ってもらおう」と提案する。
ポールと再会したピーターは、ポールにひどく慕われる。屈託のないポールはポーともすぐに仲良くなった。
動物園で、外国から渡ってきたと言う小人の一家に出会ったポーは、
ピーターの母親の手袋を作ってもらうよう頼み、引き受けてもらう。

クリスマス当日。
スコットの家で、ポーにピーター、ポール、クレアが集まり、一同は楽しく過ごす。
自分の家に帰ったピーターは、小人に頼んでおいた手袋をプレゼントするが、
それに感動したピーターの母・アイリーンは、ピーターが自分の子供でないことを告げる。
しかしピーターはとうにそれを知っていた。
ピーターの家についてきたポールは、アイリーンが、自分の家にあった絵の女性にそっくりなことに驚く。
真実を語るアイリーン。
ピーターの実の父は絵描きで、アイリーンは絵のモデルだった。
アイリーンは彼を愛してしまい、ピーターを自分の子供だと錯覚するように愛し、屋敷から連れ出したのだ。
2,3日経って罪悪感に見舞われた彼女は、ピーターを屋敷に戻しに行ったが、
そこで見たのはピーターの実の父母が交通事故で亡くなった葬式だった。
そしてアイリーンは、ピーターを返す機会を失い、そのまま行方をくらましたのだ。

アイリーンは、ピーターを、本当の家である、トルハースト――ポールの家に返すことを決心する。
ポールは、家から家族がいなくなってから、寂しさにより、ピーターの祖父が孤児院から引き取った養子であった。
ピーターの祖父は、ピーターを返しに来たアイリーンを激しくなじる。去っていくアイリーン。
だがピーターは、血の繋がっている祖父を受け入れられず、母親を恋しがる。

427 名前:銀曜日のおとぎばなし 第2部 3 投稿日:04/10/26 02:53:40 ID:???
アイリーンは、ピーターを失ったことにより自殺を図るが、
「幸福な王子」のツバメに感化されているポーに、トルハースト家から持ち出した宝石を渡される。
(ポーは「宝石=幸せのもと」と思い込んでいる)
しかしアイリーンはポーの目の前で身を投げる。ポーは動物たちの力を借りて、必死でアイリーンを助ける。
スコットも一命を取り留めたアイリーンを絵描き教室に連れていくなどして、気分転換を図ろうとする。

ピーターはポールから、ピーターの実父が描いていたアイリーンの絵を見せてもらい、感動して涙を流す。
その様子を見て、ピーターを孫だと実感する祖父。
祖父は、ピーターの父が生前、アイリーンに惹かれていたことに気づいていた。
アイリーンが戻ってきたら彼女を叱らないでやってくれ、というのがピーターの実父が残した最後の言葉だったのだ。
気持ちの整理がつかず、祖父は悩む。

貴族の生活に慣れないピーターは今まで通りバイトに出かけようとするが祖父に止められる。
だが、責任と信頼を重んじるピーターは、祖父に激怒し、家を出て、ポールもそれを追いかける。
ピーターとポールはしばらく家に帰らないことにしようと話し合い、人さらいごっこをしようと思いつく。
浮浪者の男を担ぎ出し、ピーターとポールを返してほしくば「母親に10万持ってこさせる」よう脅迫電話をかける。

ピーターの祖父は、アイリーンを探しに彼女の家まで出かけるが
そこでピーターとアイリーンの今までの暮らしを感じ取り、複雑な気分になる。
スコットの家にいたアイリーンを見つけ出したピーターの祖父は、
アイリーンがポーからもらった指輪を見て驚く。それはガラス玉だが、亡くなった祖父の妻の形見だったのだ。
「ピーターがさらわれたから一緒に来てくれ」とアイリーンに頼む祖父。

しかし、ピーターとポールは、本物の誘拐犯にさらわれてしまっていた。
祖父とアイリーンは共に誘拐犯のもとへと出向くが、アイリーンをかばって祖父がナイフで刺されてしまう。
祖父はアイリーンに「こうなる前におまえを許しておけば」と語り「子どもたちをよろしくたのむ」と告げるが
ナイフはおもちゃであった。犯人はポーの機転で捕まる。

428 名前:銀曜日のおとぎばなし 第2部 4 投稿日:04/10/26 02:55:04 ID:???
祖父はアイリーンに「渡したいものがある」とトラファルガースクエアに来てくれるよう言う。
大晦日、祖父はアイリーンに生前、ピーターの父が描いていたアイリーンの絵をプレゼントし、
新年の鐘と共にアイリーンの頬にキスをする。
そしてみんなで仲良く暮らそうと言い、ピーターとポールを喜ばせた。

ポーはアイリーンが元気になり、あげた薬が効いたのだと思うが、実際は薬に効果はなかった。
しかしスコットは、女王から届いた手紙に「ポーの気持ちが通じれば威力を発揮してくれることと思います」と
付け足しておいて、ポーを安心させておいたのだった。

                                   第2部 完

429 名前:銀曜日のおとぎばなし 第3部 1 投稿日:04/10/26 02:56:14 ID:???
スコットと共にスケッチ旅行に出かけたポー。
旅先で暴風雨に遭い、ポーは湖に落ちてしまう。
それを助けたのは、シャーロットと呼ばれる女の子のように美しい少年だった。
シャーロットは子どもの頃にふらっと村に現れ、自分のことを妖精と思い込んでいる少年らしい。
シャーロットの住んでいる家には、動物の剥製が数多く置かれていたが、剥製がまだ温かいことに驚くスコット。
スコットは何故ポーのことを驚かないのかとシャーロットに問うが、
シャーロットは「ぼくはずうっと小人があらわれてくれるのを待っていた」と答える。

また、その村では子どもばかり何人も行方不明になっており、誰一人戻ってきた子はいないらしい。
息子を失くしたある中年の男性は、子どもがいなくなったのはシャーロットのしわざだと主張する。

シャーロットはポーに、自分の生まれてきた世界の話をする。
彼は、魔法で人間の姿に変えられて、妖精の世界を追放されたのだと言う。
だが、自分たち妖精は、昔から何度も小人に救ってもらってきたので、もう大丈夫だと言うシャーロット。
シャーロットはポーに「妖精に戻して」と頼むが、ポーはどうすればいいのかわからない。
またリルフィーは、シャーロットを嫌い、反発する。

翌日、リルフィーの言葉が全くわからなくなってしまったポー。
しばらくシャーロットの家に留まることにしたスコットは、村の学校で絵の先生をすることになる。

シャーロットから妖精の世界の話を聞くうちに、ポーはできるならば彼を妖精に戻してあげたいと思うが、
そうしたらシャーロットが見えなくなってしまうと不安になる。
神秘的な魅力を持つシャーロットにポーは次第に惹かれていく。
また、村の病弱な子どもジュディと一緒にいるシャーロットを見て、ポーは羨ましがる。
スコットはそれをポーの初恋だと判断する。

430 名前:銀曜日のおとぎばなし 第3部 2 投稿日:04/10/26 02:57:13 ID:???
シャーロットは、息子を失くした中年の男性から尋問を受け、木に吊るされていた。
ポーはシャーロットを助けるが、シャーロットは「大人になんてならない方がいい」と
ポーに彼の「宝物」を見せようとする。
ポーはシャーロットの宝物を見て愕然とする。
それはシャーロットの持つ不思議な針によって時を止められた村の子どもたちだった。
家にある花や剥製たちも、みんなシャーロットが成長を止めたものだったのだ。
シャーロットはみにくくなって朽ち果てるよりも、美しいままの姿に留めておいた方がいいと主張する。
そこでポーは、シャーロットが何故妖精の世界を追放されたか分かったのだった。

ポーはスコットにもこのことを話せず苦悩する。
しかし、シャーロットがスコットにも針を刺そうとしたこと、リルフィーが言葉をわからないようにしたことを
ポーに白状し、ポーはシャーロットのことを怒る。
ポーはスコットと共にロンドンに帰ろうとするが、再び雨が降り、今度は村の子どものジュディが湖に流される。
シャーロットはそれを助けるが、自分にはもう見えなくなった水の底の妖精の世界が
ジュディには見えたことにショックを受ける。

村に留まることにしたポーとスコット。
ポーは、病気が悪化したジュディの時をも止めようとするシャーロットに対して、
シャーロットはほんとうの愛がわかっていないと責める。
ジュディは放っておくと死んでしまう。それでもいけないのか、とシャーロットはポーを抱きしめ
今までにない感情の高ぶりを見せる。

家を飛び出したシャーロットは、子どもを連れ去ったことが中年の男性にばれ、
銃で撃たれるも無傷だった。
ポーはシャーロットと一緒に逃げる決意を固める。
シャーロットは次第に思いやりやあたたかい表情を出すようになり、ポーは喜びを感じる。
ポーが側にいてくれるならば、ジュディに針を刺さないと約束するシャーロット。

431 名前:銀曜日のおとぎばなし 第3部 3 投稿日:04/10/26 02:59:13 ID:???
シャーロットは、「宝物」たちが気になると、様子を見に行くが
時を止めた子どもたちが成長しているのを発見する。
ポーはそれが「シャーロットの心が動き出したから」と主張する。
そうしたらこのまま息を吹き返して生き返るかもしれないと。
だが、シャーロットが妖精に戻ることはない。
ポーは「小人が妖精を救うのならば、ポーを刺せば元に戻れるかもしれない」と
自分を針で刺すように言うが、シャーロットはポーが動かなくなってしまう、とポーを刺すことは拒否する。
しかしポーは「シャーロットが幸せになれるならそうなってもいい」と言う。
シャーロットは自分が何故ポーだけは刺せないのか自分でもわからなくなる。

そんな時、シャーロットは今にも死にそうなジュディの声を聞き、ジュディを針で刺してしまう。
ジュディの時を止めて、ジュディの苦痛をなくすことしか、シャーロットには考えられなかった。
そしてポーに「もうぼくを惑わさないで」と言う。
ポーはシャーロットが約束を破ったこと、シャーロットのために何もしてあげられなかったことに
深く傷つき、シャーロットと別れる。

また、シャーロットを逃した中年の男性は
「妖精の丘の上のやぶを焼き払えばとらわれの子どもたちはときはなたれる」と書いてある本を読み、
山に火を放ってしまう。
その近くの小屋には、ポーがいた。
スコットとシャーロットはポーのいる小屋へ走るが、
シャーロットの体は水がなければ生きておられず、火の中に入れば体から水分が蒸発し、
シャーロットが死んでしまう可能性がある。
しかし、そこまで考えが及んだ時、シャーロットは燃え盛る山小屋へ飛び込む。
自分はどうなってもいいからポーを助けたいという気持ちに気づき、ポーに「愛してる」と告げる。
スコットがなんとか二人を助け出し、
シャーロットは自分以外のものを愛することがどういうことかわかった、と語り、今まで一度も流したことのない涙を流す。
そしてポーに時を止めてきた針を差し出し「ぼくを刺して」と頼む。
一番幸せな時に消えてなくなりたい、と無理矢理ポーに針を握らせ、体を刺し、シャーロットは湖に落ちて行った。
その時の湖の底には、妖精の町が見えた。

432 名前:銀曜日のおとぎばなし 第3部 4 投稿日:04/10/26 03:00:43 ID:???
シャーロットに時を止められていた子どもたちは再び動き出し、彼の住んでいた家は崩壊する。
そして、ジュディも元気になっていた。シャーロットの体は湖から引き上げられる。

ポーはしばらく森に帰ることにする。スコットはいつでもロンドンに出ておいでと言いポーと別れた。
ポーはシャーロットからもらった湖の底の石を泣きながら磨くが、
顔を上げると、そこには妖精の姿のシャーロットがいた。
シャーロットは死なずに、妖精の世界に戻っていたのだ。

帰ったらポーの好きなものを贈ってあげよう、と思い悩みながら歩いているスコットの後ろ姿を
ポーの呼び声が追いかけた。

                                銀曜日のおとぎばなし 完

433 名前:マロン名無しさん 投稿日:04/10/26 03:08:08 ID:???
>>424
クレアは恋愛感情としてスコットが好きです。
スコットはなんだか謎です。万が一ポーに恋してたら種族云々の前に犯罪です。クレアが彼女ということでいいと思います。
ポーは第3部でシャーロットに恋をします。
第2部と第3部は番外編的なものと考えた方がいいかと思います。