銀の三角/萩尾望都
386 名前:銀の三角 1[sage] 投稿日:05/01/12 18:24:54 ID:???
第一部
1.いのりのあさ
美しい黒髪をターバンに隠した楽師ラグトーリンは歌う、銀の三角の歌。

遠い遠い昔、銀の三角と呼ばれた星があった。その星はいつも闇に覆われていた。
朝が近づくと、人々は婚礼を支度を始める。
まつりが始まり、楽師たちが音楽を奏でるとそれをめがけて朝が訪れる慣わしであった。
しかしその年はいくら祈っても朝が来なかった。
そこで村で一番の楽師が夜を割り朝を呼び込むことになった。彼は新しい歌とその身を神に捧げた。
 神々よ いますこしこちらに目を向けておくれ
 夢のまひるに金銀の四角三角 六角無限角 恒久沙角…
彼の犠牲のおかげで朝は訪れ、人々は新たな子孫を作ることができたのだった。


2.チグリスとユーフラテスの岸辺
人類はその版図を宇宙の広範囲へと広げていた。
進んだ科学力で社会の安定と長命を得た人々の暮らす中央星系(セントラル)に住む青年・マーリーは
友人ジェイフからもらったカセットテープに入っていた激しく原始的な歌声に惹かれ、
歌声の主・エロキュスのコンサートのために政情不安な辺境惑星へ向かう。
コンサートの最中に暴動が起こり、マーリーは暴徒の中からエロキュスを救い出すが彼女は義足をもがれ重傷を負っていた。
川を下る小船の中で、エロキュスはかつてセントラル向けの音楽をやっていた頃に休暇で出かけた高地で見たという幻について語る。
虹彩の細い少年と、彼に向かって歌いかける黒髪の少女の幻を見て以来、
中央向けに調整された音楽をやめ、より原始的な音楽を始めたのだと彼女は語った。
そして彼女は死に、マーリーは遺体を中央の再生センターに送る。遺体の脳から抜き取られた彼女の記憶と意識は
「機械の体に記憶を移し再び中央向けの歌手として再生するか」と問われるが、彼女は再生を拒否する。

387 名前:銀の三角 2[sage] 投稿日:05/01/12 18:25:41 ID:???
3.ミューパントーの歌
マーリーはエロキュスが見たという少年と黒髪の少女について調査を開始。
辺境音楽を研究するブールマン博士に尋ねたところ、黒髪の少女は実在の吟遊詩人・ラグトーリンで
かつて博士のもとを訪ねてきたことがあるという。ラグトーリンもまた、虹彩の細い人種を探していた。
その人種は、3万年も前に滅びたはずの「銀の三角人」だった。
ガスに覆われた「銀の三角」の星では定期的にガスを晴らし、光を浴びて発情し交配を行う人々が住んでいたのだという。
銀の三角人はは予知能力を持っていたため、他の星系の人々に狩られ数を減らし、
やがて星系間の戦争に巻き込まれ死に絶えたのだという。


4.ラグトーリン迷路
マーリーはエロキュスが歌っていた歌に近い音楽がある辺境星系「赤砂地の国」を見つける。
政情不安で危険な場所に向かう前の常として、記憶を記録し再生センターに送ったマーリーは
エロキュスの遺品の琴を持って旅立った。
赤砂地に着くと、中央からの客人としてリザリゾ王に迎えられる。
ちょうど生まれたばかりだという長子の名づけ親になってくれと王はマーリーをその子と后の下へ案内するが、
生まれた子は細い虹彩を持つ王子であった。リザリゾ王は「魔性の子を殺せ」と命令する。

388 名前:銀の三角 3[sage] 投稿日:05/01/12 18:26:15 ID:???
5.風 水 時の流れ
マーリーは、王宮で出産に関して不吉な予言をしたために追放処分となった老いた予言者ペシャに会い、
「楽師を探すなら西の高原に住む「音の老サ」に会え、しかし行けば人死にがあるだろう」と教えられる。
言われた通りに西の高原の遊牧民の村にやってきたマーリーだが、そこで
「音の老サは昨年亡くなったが、マーリーが4年前に来た時に探していたラグトーリンという娘がちょうど20日前に村にやってきた」
と教えられる。だが、マーリーは今まで一度も赤砂地に来たことはない。
マーリーは4年前に誰か自分の名を騙った者がいるのか、といぶかしみつつもラグトーリンに会いに行く。
ラグトーリンのテントの中で彼女と二人きりになったマーリーはエロキュスの話をするが、
彼女はエロキュスの名前すら聞いたことがない、と言う。
マーリーは、追悼のために何か弾いてくれとエロキュスの遺品の琴をラグトーリンに手渡す。
彼は実は、ある音に反応し爆発する熱弾を琴に仕掛けておいた。ラグトーリンを殺すつもりだったのだ。
曲が佳境に差し掛かったとき、熱弾が爆発しラグトーリンを殺した…はずだったが、
気付くとマーリーはラグトーリンに再びエロキュスの話をしていた。
時間が巻き戻っていると気付いたマーリーに「私を殺しに来たのか」と問うラグトーリン。


6.消失と再生
マーリーは慌てて彼女に銃を向けるが、逆に殺されてしまう。
物音に気付いてテントに入ってきたラグトーリンの恋人・タカオは、マーリーの遺体を運んで密かに荒野に埋める。
タカオは「二人で遠くへ行こう」と誘うが、ラグトーリンは彼を残し一人消えてしまう。

その頃、中央のマーリーの属するセクションでは、マーリーの体内に埋め込まれた生体反応板から
送られてくるはずの反応波が9日前から途絶えていることが問題になっていた。
生体死を表すゼロ波すら送られてこない異常事態に、セクションの責任者チェッカー(注:人名)は
消失したオリジナル(マーリー1)を諦めクローン再生を許可する。
予め用意されているクローンの体に、赤砂地に向かう前にマーリーが記録しておいた記憶を注入するのだ。
最後の記憶が記録されてからクローンのマーリー2が目覚めるまでの間はわずか12日。
何も問題はないはずだった。

389 名前:銀の三角 4[sage] 投稿日:05/01/12 18:27:28 ID:???
第二部
1.マーリー2
マーリー2再生プロセスで事故が起こり、
たまたま記憶箱の隅に残っていたエロキュスの記憶も一緒にマーリーの頭脳へ注入されてしまった。
二人分の記憶を注入された人間は記憶喪失や人格分裂を起こしやすい。
チェッカーはクローン再生後のリハビリ中のマーリー2に面会するが、案の定マーリー2は記憶喪失を起こしており、
以前のマーリーとは全く違い不安げな表情を浮かべた子供のようになってしまっていた。
チェッカーは新たなクローン作成を指示したが、クローン体完成までに1年はかかってしまう。
マーリーが何のために赤砂地に向かったのかは依然謎のまま。チェッカーは焦る。
リハビリを終えて家に戻ったマーリー2は、自分が何者なのか一人悩む。


2.安定指数セクション
チェッカーはマーリーの友人ジェイフに接触し、表向きはフリーライターだったマーリーは
実は中央の保安機構の一員だったことを明かす。
中央の長命の人々のために安定した社会を実現する保安機構とは、
様々なデータを収集し安定指数を割り出しては不安要素を取り除く機構である。
マーリーは社会の変動を予知できる超能力を持っていたため、保安機構で安定指数のスペシャリストとして働いていたが、
赤砂地で行方不明になる前から異常な行動が目立っており、思考判断が狂えば殺人を犯す可能性もある、
とチェッカーは漏らす。
それを聞いたジェイフはエロキュスを殺したのはマーリーではないかと怪しみ、マーリーの家へ向かう。
しかし実はチェッカーは嘘をついていた。マーリーは本当は安定指数セクションの暗殺者だったのだ。
マーリーには、チェッカーの許可なしに不安要素を排除する権限が与えられていた。
チェッカーは、赤砂地で行方不明になったマーリー1の行動をジェイフを利用して探らせるつもりだった。

マーリーの家を訪れたジェイフは、家のそばの湖で水蛇とともに泳ぐ黒髪の少女の姿を目にする。
ラグトーリンと名乗るその少女と記憶喪失のマーリー2を残し、ジェイフはマーリー1の追跡調査に出かける。
彼女は何も覚えていないマーリー2に、かつてマーリー1が時空的に4年後の村にいたラグトーリンに
時空を飛び越えて会いに来たことを話し「また赤砂地に来て、今度は殺さないから」と言い残し消える。

390 名前:銀の三角 5[sage] 投稿日:05/01/12 18:28:35 ID:???
3.影日
ラグトーリンの言葉に誘われ、再び赤砂地を一人で訪れるマーリー2。
赤砂地の国はちょうど「影日」と呼ばれる月食の夜であった。
宙港で入国手続きをしている最中、連絡を受けた荒地の城主ガルガがやってきてマーリー2を密かに連れ出す。
ガルガによると、王子の不吉な出産に立ち会ったものは王により全て殺されて清められ、
唯一生き残ったペシャとマーリーを王が血眼になって探している最中なのだという。
反乱を計画しているらしいガルガは、遠まわしにセントラルの助力を請うが
何も力にはなれないとマーリー2は答える。
影日の祭りのために楽師たちが高原に集まっていると聞いたマーリー2は
ラグトーリンに会えるかもしれないと期待し、ガルガに頼んでヘリコプターを借りて高原へ向かう。


4.高原幻想
高原に一人降り立ったマーリー2はラグトーリンを探すが見つからず、
代わりに「音の老サ」に会い「時期が来ればラグトーリンと会えるだろう」との予言をもらう。
その後、遊牧民の少女に手を引かれ、王から逃れ高原に来ていた予言者ペシャの元へ案内される。
ペシャのテントには、王宮で生まれた虹彩の細い赤子がいた。それは殺されたはずの王子だった。
この王子は何度殺されても死なず、最後は井戸に放り込まれたがそれでも死ななかったので
王宮の予言者の一人が密かにペシャに託したのだ。
ペシャは「王子を星から連れ出して助けてやってほしい」とマーリー2に王子を渡す。
断ろうとしたその時、胸に剣を刺される瞳の細い少年の姿とともに「引き受けて!マーリー」という声が心に響き、
つい王子を受け取ってしまう。
迎えのヘリに乗り込みながら、記憶もなく自分の身すらもてあますマーリー2は頭を抱える。


5.バリエーション
マーリー2はヘリのパイロットに直接宙港へ向かうよう指示。
ヘリの中で彼は赤砂地から逃れられず王に捕らえられてしまうという予知夢を見る。
彼は何度もパターンを変えて脱出の予知を試みるが、どんな方法を採っても最後には王に捕縛されてしまう。
多重予知夢に絶望し、時空の狭間に落ち込んでしまうマーリー2。
そこにラグトーリンが現れ、王子の運命は赤砂地に深く縫い付けられており
どうしても助けることができないのだ、と告げる。

391 名前:銀の三角 6[sage] 投稿日:05/01/12 18:29:25 ID:???
6.歪んだモザイク
ラグトーリンは、王子とマーリーは時空人なのだと言う。
時空人は体内に時間軸を持ち、予知・予言のみならず、時間と空間を移動し過去・未来に干渉することが出来るのだ。
彼女はマーリー2に15年後のリザリゾ王宮で起こる出来事を見せる。
そこでは、成長した王子=ル・パントー(小さな銀の三角人、の意)が王の前で兵士達に剣で何度も刺され苦しんでいた。
目も見えず耳も聞こえず一人では何もできないル・パントーだが、彼は時空人だったために
肉体が死ぬと体内の時間軸が死ぬ前の体を持ってきてしまい、何度殺されても死ねないのだ。
そして15年後のその日、とうとう王自身が剣を取り、ル・パントーを突き刺す。
王である父親に刺される瞬間、ル・パントーは自分が父に殺され続ける運命から逃れられないことを予知し絶望、
異形音を発して体内の時間軸を破壊する。そしてル・パントーは王の剣によって死ぬ。

ラグトーリンは、ル・パントーの発する異形音を止めたいのだと言う。
その異形音は彼の体内の時間軸のみならず、この宇宙を構成する時空の結晶のモザイクをも破壊してしまい
世界を歪ませてしまうのだ。
ラグトーリンは歪んだ未来とたわんだ過去を見、そしてあらゆる時空の中ル・パントーを探し続けていた。
彼女はル・パントーが過去に未来にと飛ばした夢の跡を辿り、ようやくル・パントー本人を見つけ、
彼が異形音を発しないように様々な方法で彼を救おうとしたが
彼の運命は赤砂地の上に深く縫いこめられており、どうやっても引き剥がすことができない。
彼を助けるためにマーリー2の助けがいるのだ、とラグトーリンは話す。

392 名前:銀の三角 7[sage] 投稿日:05/01/12 18:30:36 ID:???
第三部
1.交錯
ラグトーリンは「あなたはル・パントーを救う音楽を知っているはず。あなたのもう一つの名は?」との問いを残し消える。
マーリー2が我に帰ると、人気のない夜のガルガ城にまだ赤子のル・パントーを抱いて座っていた。
空の月の欠け具合から、数日かあるいは数ヶ月時間移動したことを知る。
彼の隣には、成長した姿のル・パントーの夢の影が座っていた。

マーリー2が再び赤砂地で消息を絶ってから1年後、中央ではマーリーの新たなクローン・マーリー3が目覚めた。
今度は完璧にクローン再生されたマーリー3は、マーリー2の再生の失敗は仕組まれたものに違いないとしてチェッカーに調査を依頼。
リハビリを終え自宅に戻ったマーリー3のもとに、1年間の追跡調査を終えたジェイフがやってくる。
マーリー3はジェイフの誘導尋問にひっかかり、エロキュスを殺したことを知られてしまう。
エロキュスの歌は変動指数が高く、中央の安定のためには排除するしかなかったとマーリー3は言い訳するが、
怒ったジェイフはマーリー3に銃を向ける。

393 名前:銀の三角 8[sage] 投稿日:05/01/12 18:31:31 ID:???
2.糸をほぐす名前
ジェイフが引き金を引こうとした瞬間、突然マーリー3とジェイフの間に「エロキュス」という名に惹かれたマーリー2が
時空を移動して現れる。その手には、マーリーが爆弾を仕掛けたエロキュスの琴が。驚くマーリー3。
マーリー2が琴の弦をはじき琴が爆発したかと思われたが、一瞬の後マーリー3はラグトーリンとともに時空の狭間に漂っていた。
ラグトーリンはマーリー3に事の次第を説明する。

反乱を企てたガルガ一族が鎮圧された後に無人となったガルガ城にいるところを
マーリー2とル・パントーは捕らえられた。
それからというものル・パントーは毎日のように王に殺される日々を送ることになり、
そして15歳で異形音を発して死んでしまうのだ。
ラグトーリンは、赤砂地に固く縫いこめられたル・パントーの運命の糸のほつれを探し
ル・パントーが生まれてからの一日一日を丹念に辿ってみた。
ル・パントーが4歳の頃、彼女が小さな村にいるところにマーリー1がエロキュスの琴を持って4年の時空を超えて現れ、
マーリー1の話を聞いて初めて彼女はエロキュスの存在を知った。
ラグトーリンはマーリー1を殺してエロキュスを探しに出掛け、そしてエロキュスを見つけた。
彼女が見つけたエロキュスは、セントラルで歌う歌手エロキュスでもなく、暴動に巻き込まれて死にゆくエロキュスでもなく、
遠い遠い昔、惑星地球の古代、葦の茂る川辺で一生を過ごす歌人エロキュスであった。
もし、このエロキュスを強引にル・パントーのいる時代に転生させれば、
本来の場所から引き離された彼女の回帰願望のエネルギーがパントーの運命の糸を解す力になりはしないか、と
ラグトーリンは思いつき、それを実行に移したのだ。
転生しセントラルの歌手となったエロキュスに一節の音楽を聴かせれば彼女は目覚め、
赤砂地のル・パントーの元へたどり着くはずだった。
…マーリーがエロキュスを殺しさえしなければ。

一方、マーリーの家から再び時空を移動しリザリゾ王宮に戻っていたマーリー2は、
自分の名前が「エロキュス」であることを思い出し
「いつかあなたを救う歌を思い出したら、二人で私のふるさとの岸辺へ帰ろう」とル・パントーに語りかける。

394 名前:銀の三角 9[sage] 投稿日:05/01/12 18:32:37 ID:???
3.異郷
ラグトーリンは何度も過去に干渉してみたが、どんなパターンを試してもマーリーはエロキュスと出会い彼女を殺してしまう。
そこでラグトーリンは、エロキュスを手に入れるために彼女の記憶をマーリー2に注入したのだ。
もう邪魔されたくはないのだ、と言うラグトーリン。
彼女に捕らわれそうになったマーリー3は時空の狭間から逃げ出す。

気付くと、マーリー3はところどころに大岩のそそり立つ台地に横たわっていた。
近づいてくる人影に驚いて身を起こすと、それはジェイフであった。
三日前にこの場所に飛ばされてきたというジェイフによれば、
ここは誰もセントラルのことなど知らないとんでもなく辺境の惑星らしい。
マーリー3もジェイフとともに旅人として近くの町に身を寄せることにする。
マーリー3とジェイフは町で自分達以外にも異星人の客がいるとの話を耳にし、
会いに行ってみるとそこにいたのは、細い虹彩を持つ銀の三角人の青年であった。


4.空白の岸辺
彼らが出会った銀の三角人の青年・ディディンは、
銀の三角人の滅亡を惜しむパヴァーという名の研究者と子孫を作る契約を結び、
星々を転々として様々な星の女達と交配を繰り返していた。
マーリー3はその話とパヴァーの家にあるレリーフから、自分達が3万年の時空を移動し
最後の銀の三角人=ミューパントーが死んだという惑星・プロメにいることを知る。
ラグトーリンがいったい何を画策しているのか、
何とかエロキュスを排除し元の時空へ戻れないものかとマーリー3は考えをめぐらせる。

395 名前:銀の三角 10[sage] 投稿日:05/01/12 18:33:27 ID:???
5.夢籠
リザリゾ王宮では、ル・パントーは地下に幽閉され、毎日のように王に殺され続けていた。
最早記憶も定かではないマーリー2は王の慰み者となっていたが、頭が少しおかしいというので城や城下に出入り自由の身となり
町に下りては楽師たちに音楽を聞き習い、城に戻って囚われのル・パントーに歌を聞かせていた。
しかし歌を聞かせても何の反応もしないル・パントー。かつて見たル・パントーの精神の幻=夢の影すら現れない。
マーリー2は、幼い王女をさらってル・パントーを助け出す計画を練るが、中庭で遊ぶあどけない王女の姿を見て諦める。
しかし忌むべき姿を王女の前に晒したことが王に知れ、マーリー2は王の兵士達に叩きのめされ道端に捨てられてしまう。

道端にたたずむル・パントーの影に誘われ瀕死のマーリー2を見つけたのは、かつてラグトーリンの恋人であったタカオであった。
タカオはマーリー2を連れ帰り手当てをする。その横には、マーリー2を見つめ静かに涙を流すル・パントーの幻があった。
ル・パントーの夢の影がマーリー2を助けたのだ。
タカオに名を聞かれたマーリー2は、自分は歌い手エロキュスだと名乗る。
時がたち、いくらか傷の癒えたマーリー2にタカオがラグトーリンが置いていった琴を差し出す。

一方、3万年前のプロメで、マーリー3はディディンが殺される予知夢を見る。
ラグトーリンの計画の裏をかきたいマーリー3は、夢を無視しディディンを助けないことにする。
そして夜、宇宙船に乗った海賊が街を襲う。

396 名前:銀の三角 11[sage] 投稿日:05/01/12 18:34:03 ID:???
6.ノヴァ
ディディンの元にかけつけたマーリー3とジェイフは、海賊に殺されたディディンとパヴァーの遺体を見つける。
しかしまだ残っていたディディンの意識が精神感応でマーリー3に話しかけてきて
パヴァーがディディンにやると約束していた小さな惑星へ連れて行ってくれと頼む。
「これもラグトーリンのプランのうちか」と怪しみながらも
マーリー3はディディンの遺体を海賊から奪った船に乗せ、その惑星へと向かう。

赤砂地では、マーリー2が毎日のようにル・パントーの夢の影に歌を聞かせていた。
ル・パントーの夢の影は、地下に幽閉され動けない彼自身に音楽を運んでいるようだった。
その頃城下町を疫病が襲い、幼い王女までもが亡くなってしまう。
王は影日の日に災厄の象徴であるル・パントーを自ら殺す儀式を行うことを決める。
マーリー2はタカオに誘われ、影日の祭りのための蛍木(ケイボク・明かりを発する木)を集めに森へ向かった。

ディディンの遺体を小さな惑星に降ろした直後、突然超新星爆発の光が空に満ち溢れる。
消えかかったディディンの意識がマーリー3に葬送のいのりの歌を歌うよう促す。
ディディンの意識の歌うままに後に続いて歌うマーリー3。
 「神々よ いますこし わたしたちに目を向けておくれ…」
それはかつてエロキュスが歌っていた歌、エロキュスの見たラグトーリンの幻が歌っていた歌だった。

マーリー2は影日の暗闇の森で迷ってしまう。
森の中から聞こえてくる聞き覚えのある歌に惹かれ、マーリー2が向かった先にいたのはマーリー3とディディン。
3万年の時を一気に超えて現れたマーリー2=エロキュスにマーリー3は銃口を向ける。

397 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:05/01/12 18:35:05 ID:???
7.夢狩りの夕べ
とうとうル・パントーを救う歌を見つけたマーリー2=エロキュス。
「ようやくあの子を連れて岸辺へ帰れる…」マーリー2がつぶやいた瞬間、マーリー3はマーリー2を撃った。
3万年の時を隔てた赤砂地では、リザリゾ王がル・パントーの胸を貫いた。

マーリー3は突然世界が揺れ動くのを感じ、暗闇の中で沢山の銀の三角人たちの幻を見る。
幻たちは音楽を奏で踊り歌いさざめきながらマーリー3とマーリー2=エロキュスを取り囲み、
そしてエロキュスの中へ吸い込まれるように消え、エロキュスの姿もまた暗闇の彼方へと消えていった。

エロキュスが目覚めると、そこはふるさとの岸辺であった。
パントーの名を呼ぶエロキュスに、ラグトーリンが「彼はもういない」と告げる。
エロキュスがその歌を見つけル・パントーを結び付けていた糸をほどいて彼を救い、
ル・パントーはエロキュスを故郷の岸辺に送り、
そして結び目は全てほどけたためにその結び目自身だったル・パントーも消えてしまったのだ。
結び目のほどけた世界では、異形の王子ル・パントーは生まれず、
セントラルの歌手エロキュスも生まれず、銀の三角という星もなかった。
ほどけた結び目は全てエロキュスの中に入ってしまい、今はただエロキュスの中にだけ存在する夢となったのだ。
どうかあの子を消さないで、あの子を戻して、と静かに涙を流しラグトーリンに懇願するエロキュス。
しかし「あなたは消え去った夢の結晶体として永遠にこの時空に存在するだろう」と言葉を残し、
ラグトーリンは川辺を去った。

398 名前:銀の三角 13[sage] 投稿日:05/01/12 18:36:06 ID:???
時空の狭間から岸辺に帰っていくエロキュスの様子を見ていたマーリー3の元に、ラグトーリンがやってくる。
本当はラグトーリンが狩り食べるはずだった銀の三角の夢。
エロキュスは不安な夢・育たない夢=銀の三角の夢の結晶体であり、彼女が死ぬとまた夢が散じてしまうので
彼女は永遠に生き続けると語るラグトーリン。
地球にいけば自分のクローンであるエロキュスと会えるのだろうかと言うマーリー3に
ラグトーリンは微笑を浮かべ「また殺す?」と答える。

そして気付くと、マーリー3はジェイフとともに再び時空を移動し自宅に戻っていた。
そこは銀の三角は最早存在しないが、元いた世界と大して変わりない世界だった。
だが、エロキュスが死んだ惑星の神殿には何故か彼女の義足が飾られており、
惑星プロメの遺跡からはジェイフの落書きが発見されたりもする。
マーリー3は思う、いつか地球に行ってみようと。
そうすれば川辺でエロキュスに会えるかもしれない。
この感じ病みやすいこの空間が狂い出すまで、不安な夢狩りの歌を歌い続けようと。

402 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:05/01/13 15:46:52 ID:???
マーリー1がエロキュスを殺した理由は>>392で中央の安定のためだったとわかるけど、
>>388でラグトーリンまで殺そうとしている理由も同じなの?
それと、ラグトーリンの正体は結局何なの?

403 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:05/01/13 17:01:56 ID:???
>>402
>>388の時点では説明はなく、>>392で判明するのです
ラグトーリンの正体も明かされません。
宇宙規模でマーリーと同じことをやってる、という想像はできますが。