ガッチャガチャ/橘裕
115 名前:ガッチャガチャ 第一部 1/5[sage] 投稿日:2005/10/19(水) 23:29:27 ID:???
愛に生きる女子高生・室井友里は、11人目の男に12回目の浮気をされ13回目にしてフラれてし
まった。その現場を隣のクラスの美少女・神楽坂素子に見られ口止めしようとした矢先、素子が
告白されている現場に遭遇。しかし告白する男を尻目に、素子の目はブルマ姿の女子を追いか
けていた。それに気付いた友里は素子に目をつけられてしまう。
日本人離れした容姿。勉強も運動もでき、完璧で近寄りがたい存在だった素子。詩集を読み、
クラシックしか聞かず、野菜しか食べないのではという噂とは裏腹に、彼女は女子のブルマ姿が
大好きでスポーツ新聞を片手に魚肉ソーセージを食べながらオマリーの六甲おろしを聞く、まる
でオッサンのような女の子だったのだ。
もし人に話したら、以前見た友里の修羅場を脚色して言いふらすと脅され、踏んだり蹴ったりだと
思っていた帰り道。大勢の男に追いかけられていた金髪不精髭の男・矢部に友里は助けられ、
一目惚れ。(ちなみに追いかけられていたのは男達の彼女を寝取ったから)
制服から同じ学校の生徒だと分かり、早速友里は彼を探し回る。

友里が先日別れた彼氏は、病的な浮気症だった。その前の彼氏は金遣いの荒い自称パチプロ。
その前は薬物系暴力男。友里に言わせると皆優しくいいところはあったのだが…。
それでもめげることなく、すぐ次の恋を見つけて走る友里。
そういうのよく思わない人がいるだろう、と言う素子に友里は零す。
「…幸せになりたいだけなんだけどなぁ。なるべく早く…」
素子は、矢部のことを友里に教えた。ロクでもない男だけど頑張ってみれば?と。
しかし矢部は教師に追い掛け回されていて捕まらず。そこへ10人目の元彼が友里に会いに来た。
また借金を作ってしまってから助けてほしいと。お人好しの友里は放っておけず、彼の借金を返す
ために仕事をすることに。しかしその仕事がAVだと分かり逃げ出そうとしたところ、借金取りに
殴られ、助けを求めるも友達にも逃げられて、青くなる友里。
絶体絶命の友里を助けたのは素子だった。借金取りに飛び蹴りをかまし、必要以上に殴り蹴り
半殺しにしてしまった。友里は元彼を許し別れを告げる。

116 名前:ガッチャガチャ 第一部 2/5[sage] 投稿日:2005/10/19(水) 23:46:22 ID:???
先日の一件で素子の黒い噂が広まり、友里は自分のせいだと申し訳なく思う。
そんな折、彼女(の一人)亜紀に追い掛け回されている矢部を見つけ(原因は浮気)、無事
制服を返した友里。「男に騙されやすい」と見抜かれる友里だが、そういうのも可愛いと言われ、
友里はときめく。素子のことをよく知っている素振りの矢部だが…。
素子の置き忘れた手帳の中から、友里は美少女の写真を見つける。
素子と同じ中学出身の関根によると、写真の少女は素子の亡くなった妹・可菜子。病弱のためか、
素子を束縛していた彼女は、その日も出がけの素子を引き止め、業を煮やした素子は彼女を引っ
ぱたいた。帰りの遅くなった素子を迎えに出た可菜子は、道で発作を起こしそのまま亡くなったのだ。
そして素子は、彼女の遺体を見つけるまで雪の中を何時間と探し続けた…。
関根の話を聞き、女の子達をいつも見ているのは妹の面影を探しているのではと思う友里。
前に自分を助けてくれたことも、女は殴らないと言っていたことも、納得がいく。
「女の子ってさ、すーぐ壊れちゃうんだよなぁ」そう素子は言っていた。

友里が矢部に手を出したと誤解され、修羅場になってしまう。友里は告白もしてないと否定するが、
タレコミがあった、と亜紀は聞き入れない。素子の悪口まで言われ、友里は激怒。可菜子のことを
公衆の面前で口にしてしまう。
黒い噂が消え、素子は喜ぶ。単に可愛い女の子を愛でるのが好きなだけなのに、レズと勘違いされ
困っていた、と。変だなと思う友里。矢部は素子に関根を使って亜紀に嘘を吹き込んだだろうと怒る。
「それになー、お前に妹なんかいないだろっ!」
全ては素子の仕掛けだったのだ。写真の少女は素子の「姉」なのだが、そんなこと友里は知らない。

117 名前:ガッチャガチャ 第一部 3/5[sage] 投稿日:2005/10/20(木) 00:01:42 ID:???
友里が矢部に入れあげてることが、校内で広まっていた。
中学時代の親友・香代子に嫌味を言われた友里。2年前、友里と香代子は同じ人に初恋をして
いた。消極的な香代子に相反して、友里はなんなく彼の恋人になり、半年後あっさり別れた。
それ以来、友里の恋人は次々と変わっている。
「男が絡むと女の友情ってすぐ壊れるよな」と意味深に言う素子。

生徒会長の平尾は、文武両道で顔も良く長身でモテるが女の子と接するのが下手。言葉足らず
でついキツイことを言ってしまうため、女嫌いだと噂されている。しかし、彼は友里を以前から知っ
ており、気がある様子。それに気付いた素子は面白がり友里に探りを入れるが、友里は平尾が
生徒会長ということさえ知らず、矢部しか見えていない。

友里が素子との関係を尋ねに矢部に会いに来た教室で、平尾と話しているところを香代子に見られ、
嫌がらせは激化する。香代子の今の想い人は平尾だったのだ。遂には友里の名前で何人もの男子
にラブレターが送られ友里はピンチに。
いつも小奇麗にし、好かれてもらう努力を惜しまない友里。遊んでいると言われるがいつも真剣だ。
平尾は以前、女の子に告白され初めてデートしたとき、上手く話せず相手に嫌われていると誤解され
別れた。そのとき、携帯で軽い口調で別れ話をしている友里を見て平尾は苛立ったが、見るとその
目には涙が溢れていた。
「大丈夫、あたし図太いから。気にしないで」

そのときから平尾はずっと友里のことが気になっていたのだ。
素子から友里の窮地を聞きつけた平尾は彼女を助けるが、矢野と間違われて告白され、意気消沈。
嫌がらせをした香代子(とその友達)は素子に〆られる。
「半端な努力で現状に甘んじてるクズが頑張ってる奴を妬むな」と。
香代子は自分が努力もせず先に諦めてしまったのだと認めるが、最後に友里に言った。

「でもあんただって今は私と同じ。矢部先輩の大本命は神楽坂素子なんだって――」

118 名前:ガッチャガチャ 第一部 4/5[sage] 投稿日:2005/10/20(木) 00:13:38 ID:???
素子は矢野に以前からしつこく「俺の女になれ」と言われているらしい。

友里に「もし自分が矢部を好きだと言ったらどうする?」と訊く素子。
関根は友人試すようなことはやめるよう窘める。
「室井さんは可菜子さんみたいに怖い人じゃないでしょう?」
「―――どうかな、女なんて大概似たようなもんだ」

平尾は放課後、買い物袋の破れた友里を送ることになり、友里の家族の話を聞く。友里の母は
二つ下の弟達を産んだ後、すぐ亡くなった。残された母の手紙を見て、後悔しない生き方をしようと
決意したのだと友里は言う。そこに彼女の柔らかな強さの源を見た気がした平尾。
友里は素子に訊いた。諦める気はないけれど、もし素子が矢部を好きなら自分の告白は裏切りで、
知らないじゃ済まされないから、好きなのかどうか教えてほしいと。
素子は矢部なんて好きじゃないから告白してこいと笑った。

矢部に告白しようとする友里に、矢部は一年前に女に刺されたという腹の刺し傷を見せ、自分は
ろくでもない男だからとやんわり拒絶する。
なぜ素子ならいいのかと尋ねる友里に、アイツは猛禽類の目をしているから、と矢部は答えた。
「あれくらい凶々しい女が多分俺には丁度いい」
それって本当に素子を好きなんだろうか、と納得しかねる友里だった。

119 名前:ガッチャガチャ 第一部 5/5[sage] 投稿日:2005/10/20(木) 00:32:29 ID:???
矢部にフラれた友里は、反面、素子との仲が壊れなかったことにほっとしていた。しかし、矢部の口
にした理由には納得できない。素子は、矢部の傷が、矢部が物凄く惚れていた女につけられたもの
だと言う。素子の知る限り、その女は史上最悪な女。でも矢部は今も彼女を好きなのかもしれない。
「その証拠にあいつ、タチの悪い女とばかり付き合ってるだろ?」

藤田正実には、痴情のもつれで男を刺したという噂があった。放課後、中学時代付き合っていた矢部
と偶然会うが、懐く矢部に正実は素っ気無い態度をとる。荒れている生活の端を聞き、まともな子と付
き合う気はないのかと訊くと、一人まともな子に告白されそうになったけど予防線を張ったとのこと。
情に厚くて騙されやすくて、流石に手が出せないと矢部は笑う。今まで断ったことなんてなかったのに
と正実は驚く。

今度は平尾のファンに苛められる友里。自分のせいだと謝る平尾は友里に過干渉気味。
友里は自分のことが好きなのかと訊くが、平尾はつい思いきり否定してしまう。

そんな光景を楽しく眺める素子に、関根は友里に誰を選んでほしいのかと尋ねる。
「あたしだって矢部がヤバイことくらい分かってるよ。平穏な日常を送りたいなら生徒会長だろ?
でもあいつ、ダメ女だからなぁ」

正実が現れ、矢部と本当につき合いたいのなら友里を試したいと言ってくる。正実が矢部を刺した
女だと思い込んだ友里は、勝負で正実に勝つが、正実は自分は矢部を刺した女じゃないと否定。
全ては素子が知っていると言う。

正実は、昔の矢部のほうがかっこよかった、と矢部を振る。しかし友里は「今の先輩が好きだ」と
諦めないと宣言。馬鹿につける薬はないと思う素子だった。

120 名前:ガッチャガチャ 主要登場人物[sage] 投稿日:2005/10/20(木) 00:42:21 ID:???
室井 友里(むろい・ゆうり)
高1。愛に生きる男運の悪い少女。情に厚く柔らかい性格で尽くすタイプ。振られてもただで
は起きず、男の特殊技能をちゃっかり習得。可愛い容姿だが、遊んでいると周りに思われ、
嫌がらせを度々受けている。矢部を好き。母親がおらず家事の一切を切り盛りしている。

神楽坂 素子(かぐらざか・もとこ)
高1。長身で色白、ストレートロングヘア。日本人離れした容姿の美少女だが、男以上に漢ら
しい超絶武闘派。オッサンのような嗜好の持ち主。レズではないらしい。口が悪く出羽亀でト
ラブルを煽り引っ掻き回すのが好き。女への暴力には過敏で、人助けもする一面も。

矢部 鷹弘(やべ・たかひろ)
高2。女にだらしのない金髪で無精髭、耳にはピアスのチャラいダメ男。いつも追い掛け回され
ているか寝ているかケンカしている。以前は真面目で剣道全国1位、入試では首席だったが、
一年前女に刺されて激変。神楽坂家とは以前から家族ぐるみの付き合い。

平尾 匠(ひらお・たくみ)
高2。現生徒会長で剣道部員。容姿端麗で品行方正。やればなんでもできる矢野にコンプレッ
クスを持っている。女嫌いと思われているが、友里に片思いしている。自分の気持ちを表すの
が下手で中々告白できないヘタレ。

関根 智春(せきね・ともはる)
高1。素子のパシリ。男だが眼鏡を外すと美少女のような容姿でいつも男に狙われているため、
素子に助けてもらう代わりとしてパシリ契約をしている。素子に惚れているが、いつもいい様に
使われているだけ。思考回路も乙女のような男。

神楽坂 可菜子(かぐらざか・かなこ)
素子とは異母姉妹で二つ上の姉。心臓が弱い。母親を亡くし、父親が去って以降、孤独だった
ところ素子に出会う。素子を好きで異常なまでに執着し、矢部を刺したと言われているが…。
一年前に亡くなっている。

121 名前:ガッチャガチャ 第二部 1/2[sage] 投稿日:2005/10/20(木) 01:04:16 ID:???
平尾が友里のことを好きだと気付いた矢部は、平尾をからかう。真剣に怒り、友里を渡さないと
言う平尾を見て、昔の自分を思い出した矢部は謝る。素子は平尾をけしかけるが、まだ平尾は
友里に上手く接することもできない。日に日に友里と仲良くなっていく矢部。矢部本人も友里に
慕われて悪い気はしないと言う。「揺らぐよ。あそこまで慕われると」
素子を好きなんじゃないのかと尋ねるが、矢部はどっちらけな答え。しかし友里にアプローチさえ
できない自分にそれを責める資格はないと思い、告白しようと決意する。

捻挫した素子を誰が送るかという話になり、素子は矢部にうちには来れないだろうと笑った。
友里は素子の言葉に引っかかりを覚える。結局、矢部に唆された平尾と友里が送ることに。
平尾は矢部が自分を後押ししているのかと不思議に思う。少しだけ友里に思ったことを言える
ようになった平尾だが、告白は未遂に終わる。

矢部は神楽坂邸で起こったことを思い出していた。
色々ありすぎて、今でも腹の傷がうずく。
神楽坂邸はメイド(ただし皆老けている)もいる豪邸だった。
そこで昔の矢部の写真を見つけた友里は、写真の中に以前見た「可菜子」を見つけ驚く。
可菜子は素子の妹ではなく姉で、亡くなる前矢部と付き合っていたらしい。
矢部を刺し、矢部が今でも想っている女は素子の姉・可菜子だったのだ。

素子は話す。
「憎まれながら刺されたんだ。」
「あの女の中に矢部への愛情はこれっぽっちもなかったよ。あいつは死ぬほど可菜子を好きだっ
たのに、それをあの女は利用したんだ。」

「あの女は…可菜子はずっとあたしを好きだったんだ。」

122 名前:ガッチャガチャ 第二部 2/2[sage] 投稿日:2005/10/20(木) 01:48:00 ID:???
三人の間に何があったのか。姉妹としての愛情とは違うのかと友里は考え込む。

矢部が寝言で可菜子の名前を呼ぶのを友里と平尾は聞く。
落ち込む友里を励まそうと思う平尾だが、友里がまた嫌がらせを受けていると知る。
素子は言う。
「色恋が絡んだ女は良くも悪くも何でもやるよ。誰を傷つけようが構わないんだ」
"愛してるわ 素ちゃん"
「誰を騙そうが、誰を刺そうが、目的のためには何でもする」
"―――おまえのしてることはムチャクチャだ。あいつは本気でお前を好きなんだぞ"
「時には、自分の命をかけもする」
"罰よ だってあの男、あたしの素ちゃんに近づくんだもの"
素子の前で、友里は顔面に肘鉄を食らい、キレた素子は女を壁に叩きつけ殴りかかった。
"あんな男、どうなろうと私の知ったことじゃないわ"
矢部は素子が女を殴れないと話す。初めて姉を殴った日に、死んでしまったではないか。
女を殴ると吐いてしまうのだ。友里は止めに入り、自分が彼女達を引っ叩くことでケリをつけた。
その姿に矢部は「友里カッケー」と微笑み、平尾は自分に残された時間が少ないことに改めて気付く。
早く告白しないと―――。

素子は姉のことを語った。
加菜子は自分近づく全ての人間に手ひどい嫌がらせをして排除してきた。
けれど、矢部だけは駄目だった。矢部は巻き込まれただけだ。可菜子のあたしに対する執着心に。
自分勝手なあいつのわがままに。
…だから、可菜子がこの世からいなくなったと思った時…
         心の底から、ほっとしたよ

「あたしはおまえの思うような人間じゃない」
「…な…んか、上手くいかないねぇ。皆…幸せになりたいだけなのにねぇ」
友里は泣きながらそう言った。慰めも癒しの言葉さえ見つけられないことを、もどかしく思いながら。

平尾は友里に告白するが伝わらず、混乱して素子が好きなのだと言ってしまう。

126 名前:ガッチャガチャ 第三部 1/4[sage] 投稿日:2005/10/20(木) 19:15:38 ID:???
平尾の恋を応援しようと頑張る友里。四人でWデートがしたいらしい。てめえのために自分を
ダシに使うなと怒る素子。そもそも平尾は相手を間違っている。
「平尾先輩は相手を間違えて告るほど馬鹿じゃないわよ」
「あいつマジで馬鹿なんだよっ!」
素子は平尾が友里を好きなのだと言おうとするが、平尾に邪魔される。関根は平尾に、素子は
誰とも付き合わないと泣いて怒るが、素子に「パシリのお前には関係ない」と言われてしまう。

関根は眼鏡を外すと女の子と見紛うほどの可愛い容姿で、中学一年のときに男に襲われそうに
なっているところを、当時少年のような風貌だった素子に助けられた。「自分は正義の味方じゃな
いから、パシリになると約束したらこれからも助けてやる」と言った素子を関根は好きになった。

素子は毎週水曜日は、関根を自宅まで送り届ける。なんで二人はいつも水曜日に一緒に帰るん
だろうと友里は不思議に思う。

素子は関根を送る途中、男に角材で頭を殴られてしまった。その男・軍司こそ、関根を長年狙い
続けているホモなのだ。彼は喫茶店を経営しており、その定休日が水曜日なのである。
血まみれで意識を取り戻した素子は「今度こそホモ野郎のピ―――(伏字)をぶっ潰してやる!」
とマジギレ。平尾医院で応急処置をすると、軍司の経営する喫茶店から関根の居場所を割り出し、
関根が襲われそうになっているところを助け出した。
「あたしのパシリにホモふぜいがちょっかい出すんじゃねぇよ、あぁ?」
泣いて素子に抱きつく関根。友里と平尾は「吊り橋上の恋」ではないかと思うのだった。

※ちなみに、素子は額を割ったが脅威の回復力で二日で完治した。

127 名前:ガッチャガチャ 第三部 2/4[sage] 投稿日:2005/10/20(木) 19:32:17 ID:???
授業中、寝惚けて先生に「別れないで」と泣きついた友里は罰として校庭を走らされていた。
矢部が走るのに付き合ってくれて(授業中です)、その優しさに友里は惚れ直す。
熱烈に告白する友里に、矢部は過去を思い出す。
「あたし絶対に矢部先輩のこと幸せにしますよっ」
"最初から傷つけるつもりだったわ"
「あたしは矢部先輩を大好きだしっ 絶対に傷つけたりなんかしないよっ」
"あなたのことなんて一度も好きになったことない"大嫌いよ"大嫌いっ"
矢部はつい「重いよ」と言い、友里を泣かせてしまう。
それはいつも全力疾走でタフな友里の弁慶の泣き所だった。過去の幾人もの友里の彼氏も
同じことを口にしてきたのだ。素子は矢部を「誰よりも重い恋愛をしていたおまえが」と笑った。

矢部は電話で友里に謝った。問題は友里にではなく、もうそんな恋愛ができない自分にある。
そんな矢部に友里は、自分は可菜子ではないと言う。必要なときだけでも頼ってくれたらなん

でもするし、かけつけるからと。
―――腹の傷がふさがらない。どうしても、可菜子とのことを思い出してしまう。
ボンヤリと「じゃあ今すぐ来て」と言った矢部の言葉を友里は快諾し、矢部は驚く。しばらくして
高校生くらいの女の子が跳ねられたと聞き、青くなる矢部。
"…矢部…可菜子が死んだよ"

友里は軽症だった。
「ちゃんと来たでしょ」と笑う友里を、矢部は笑いながら抱きしめるのだった。

128 名前:ガッチャガチャ 第三部 3/4[sage] 投稿日:2005/10/20(木) 19:45:49 ID:???
可菜子はいつも孤独だった。メイドには病気のせいで親に見捨てられたのだと囁かれていた。
だが、手を差し伸べてくれた手足の長い「少年」が現れ、彼女は恋をした。

素子は教師のパソコンに勝手にメイドのエロゲームをインストールして遊んでいた。
神楽坂邸のメイドも以前は若かったのだが、素子が懐くのが気に食わない可菜子にやめさせ
らてしまったらしい。

矢部は女関係を整理し始めていた。ちゃんとするから友里に付き合ってほしいと言おうとした
矢先、素子は友里を拉致。可菜子のことをふっきったのなら家に来れる筈だと矢部に言う。
矢部の告白に落ち込む平尾に、素子は矢部の動向に関わらず友里を奪えと言ってくる。
平尾には素子の心理が分からない。

可菜子と素子は異母姉妹で、可菜子の母親が死んで父親が素子の母親と駆け落ち同然で
出て行ったのだという。病気の可菜子を残して。しかしそれは祖父が医療費を盾にとったから
でもあった。祖父は素子の両親の結婚を認めなかった。素子の両親が亡くなって屋敷に引き
取られるまで、可菜子は素子の存在を知らなかった。
だから最初は、可菜子は素子を男の子だと思っていたのだ。

矢部と可菜子が出会ったのは、素子が屋敷に来て初めての夜桜の会に出席したとき。
素子が、可菜子にちょっかいを出した男を相手に暴れまわっているところを矢部が止めたのだ。
素子は以前、矢部にケンカを売ったことがあり、知り合いだった。
素子と親しげな矢部を見て、可菜子はおかしくなっていった。

矢部は可菜子に惚れ、二人は付き合い始めた。素子と遊ぶのを名目によく訪れていた矢部。
しかし矢部は可菜子が素子を好きだと言うことに少しずつ気付いていく。
矢部は素子に、一人称を「オレ」から「あたし」に変えて髪を伸ばし始めた理由を聞く。素子は
矢部が気付いているのか図りきれない。練習にも身が入らず、疲れた顔をする矢部に、
正実は今の彼女とは別れたほうがいいと言うが、矢部に別れる気はなかった。
素子の寝込みを襲おうとした可菜子を見て、ますますドツボに嵌っていく。

129 名前:ガッチャガチャ 第三部 4/4[sage] 投稿日:2005/10/20(木) 20:10:03 ID:???
普段は気丈だが、素子にだけは甘える可菜子。素子は好きでもない男とヤるなと忠告する。
―――身体の繋がりなんて大した意味はない
―――この世で一番好きな人に抱かれることは永遠にないのだから
素子はなにも言えなくなった。
それから素子は可菜子と顔を合わせなくなった。口をきいたのは、それから半月後。
その日は可菜子の心臓手術が決まった日、そして可菜子が矢部を刺した日でもあった。
可菜子は自分は手術なんてしてもどうせ死ぬし、死んだら矢部に素子を取られる。
それは許せない、と。素子は可菜子を引っ叩き、その後…。

矢部は刺されて意識が朦朧としながらも、可菜子を庇った。そして未だに引き摺っている。
そんな矢部を受け止めることが出来るのかと問う素子。素子は矢部と友里が付き合うことに
反対しているのだ。友里は自分で迎えに行くと、屋敷を出て行こうとする。
平尾が友里に告白しようとしたところ、矢部が神楽坂邸に現れ友里は飛びついた。
矢部はまだ可菜子のことを吹っ切ったわけではない。けれど、友里が傍にいてくれたらなんとか
マシな男になれそうだから、と友里に告白するのだった。友里は泣いて喜んだ。

『――え?可菜子がまだ帰ってない?――だ…って、もう3時間にもなるんだろ?』
素子はあの日、腹を立てながら雪の中を探し続けていた。
『見つけたらまたひっぱたいてやるっ!』
"ごめ…ごめん…なさい"
脳裏に泣きながら何度も何度も謝っていた可菜子が素子の頭を掠める。
"ひとりぼっちにしないでっ"
『あたしにどうしろって言うんだよっ!!!』
息を切らして、よくやく見つけ出した可菜子は、雪の中に倒れていた。
『ホント…――馬鹿な、女…』
―――どうもできやしない
あたし達は女同士で、姉妹なんだから……

―――だけどまだ終わってない

終わってないんだ