フラワー・オブ・ライフ/よしながふみ
486 名前:フラワー・オブ・ライフ[sage] 投稿日:2007/10/01(月) 18:07:36 ID:???
春太郎は白血病の治療のため、高校の入学式にも出れず一年以上入院していたが、姉の骨髄をもらって復学した。

春太郎は普通の少年以上に明るく元気で、すぐにクラスに溶け込み文化祭やらクリスマス会やらを楽しんだ。
特に仲がいいのは翔太という太めの少年で、一緒に漫画を描いたりするようになる。
入院していたころ、あまり物の持ちこめない無菌室で暇つぶしに、
数冊の本を参考にしながら絵を描きまくったのでかなり画力があり、翔太はストーリーの担当だった。
春太郎は「正直なのが取り柄」であり、白血病の治療の副作用で実は子供のつくれない体である事を翔太に明かした。

春太郎の姉・さくらは美人で料理上手。だが人間関係に気を使いすぎて気苦労する性格な上、
男運が悪くひどいふられ方をしてしまった経験から、現在は無職で引き篭り状態である。
春太郎の治療費の返済などで忙しくてあまり家にいない両親は、姉に働けとよく言っていた。

春太郎と翔太の漫画は、デビューこそできなかったものの結構な評価を受け、担当編集者がつくまでになった。
「俺はそのうち漫画家になって稼ぐから、そしたら姉ちゃんは無理して働かなくてもいいよな ずっと姉ちゃんの面倒みるから」
と春太郎は就職の事で悩むさくらに言った。翔太の家に泊まりこみで漫画を描きに行くことが多くなったある日、さくらは泣き喚いて言った。
「あんたは本当は完治してない 骨髄を受けても再発する可能性がある
 両親は可哀相だかと内緒にしていた いつ死ぬかわからないくせに未来の事なんか言わないで」
ショックを受け、呆然としながらも英語の宿題をやっていたら、辞書の中の英文に目がいった。

He died in the flower of life.――彼は若い盛りに死んだ。
春太郎は死にたくないと泣いた。

姉との騒ぎは両親の知るところともなった。両親は忙しさを言い訳にして、本当は嘘をついたまま春太郎と向き会うことを恐れていたらしかった。
再発する確率は低いのだから平気だ気にしなくてもよかったのに、と春太郎ははじめて嘘をついた。
翔太には再発するかもしれないという事は言わず、いつもの日々を送った。
自分に真実を黙っていた両親の気持ちをよくわかっていたから。

時には真実を話さないことも必要だと知り春太郎は少し大人になり、やがて春になり進級した。