電人ファウスト/上山徹郎
232 :電人ファウスト1 :04/04/10 23:36 ID:???
 暁光寺留詩葉がゲーセンで遊んでいると、謎の男がバイクごとゲーセンに飛び込んで来た。
その男は留詩葉の背後に近寄ってきたコートの男にいきなり発砲すると、有無を言わさず連れ去った。
「あんたなんなの? あたしをどうするつもり?」
「おれはロボットだ。お前を守りにきた。」
事態が飲み込めない留詩葉。

男は留詩葉を家電売場に連れていき、指先からプラグを出すとテレビに差し込んだ。
するとテレビには留詩葉の父で人工知能学の第一人者、ヴィーナスソフト社の社長・
暁光寺三太からのビデオメッセージが映し出された。
「9体のロボットが留詩葉の周りに現れるが決して捕まってはいけない。お前が一緒に
いるロボットは自分が送り込んだ。留詩葉を守り、命令も聞くようにプログラムしている。
必ず逃げ延びろ」
そこへさきほどゲーセンで留詩葉に近寄ろうとしていたコートの男・第一のロボット
(ルドルフ)が襲いかかってきた。

 銃でルドルフの右腕を吹っ飛ばし、なんとか駐車場まで逃げると、男は自分の自動操縦の
バイク(アシエル)に留詩葉を乗せて脱出させる。

 追いついてきたルドルフ。
「超合金繊維のおれの腕を砕くとは…。貴様何者だ!?」
「あいにくだが俺もよく知らねぇのよ。おまえのほうこそ名乗ってほしいもんだな」
「その必要は…ない!」
圧倒的なパワーの上にスピードも持っているルドルフに翻弄される黒い男。頼みの銃も
揉みあいで落としてしまう。


233 :電人ファウスト2 :04/04/10 23:37 ID:???
そして男はついにルドルフに捕まった
「このまま頭を握りつぶしてやる…!」
「お前はパワーだけの格闘バカだな。頭が弱い。捕まえたのは俺のほうだ!」
ピッと音がするとともに、男の手に落とした銃が吸い寄せられた。
ドン!!
至近距離でまともに銃撃をくらったルドルフは半死半生。
「お前らの主人(マスター)は誰だ。留詩葉になんのようだ?」
「ロボットはマスターの命令にないことはなにもしない。お前とて同じではないのか?」
「そうだったな…あばよ。」

逃げていた留詩葉が爆発音に驚いたのと同時にアシエルが止まった。
困惑する留詩葉の背後に黒い男がいた。
「あの野郎、自爆装置を内臓(のん)でやがった。間一髪だったぜ。」
「さて、長居は無用だ。リアシートに移れ。…………どうした?」
「名前、まだ聞いてないよ。」
男は答えた。
「ファウスト…それが俺の名だ」

234 :電人ファウスト3 :04/04/10 23:38 ID:???

 マンションの一室で目覚めた留詩葉はファウストを確認し、これまでのことが夢で
ないと再認識し愕然とする。ファウストはまだ起動したばかりなので、パソコン通信で
情報を集めていた。
 しかしこの通信はロボット(キューピッド)に傍受されていた。キューピッドは二人の
居場所をエンジェルという少女Jに伝える。エンジェルはロボット・ダッシャーとダンサーを向かわすよう命令する。

その頃、二人はパソコン通信で2日前大手ロボットメーカーRR社の工場で爆発事故があったことを知る。
RR社とは、工業用ロボットで大きくなったといわれているが、業界では軍事用ロボット
こそが本当の収入源というのが通説となっている会社。昨日のロボットがRR社製なのでは、と二人は疑う。

そこへ第二のロボット・ダッシャーが現れた。空飛ぶズボンプレッサーのようなダッシャーはファウストに猛烈な体当たり。
ファウストはマンションの壁をブチ抜いて落下してしまう。留詩葉も壁の穴から落ちて
しまうがアシエルが地上ギリギリで救出する。ファウストはなんとか逃げのびてアシエルをよこしたのだ。
「生きてたの!?」
「たりめーだ!」
「あのカラスは俺が相手する。お前はそのバイクで逃げろ」
「う、うん」
そのまま逃走する留詩葉。

235 :電人ファウスト4 :04/04/10 23:40 ID:???
ファウストの前に再びダッシャーが現れた。
「留詩葉をお嬢様とか呼んでたな…あいつとはどういう関係だ?」
質問を無視して突っ込んでくるダッシャー。ファウストは発砲するがダッシャーにはまったく効かない。
とっさに身を翻して逃げる。
「私の装甲は特殊鋼レイヴニウムで形成されている。この強固なボディを利した突進こそ私の唯一の武器。」
「いわば私は頭脳を持った弾丸なのだ」
「こうなりゃあれをやるしかねーか…」銃がこれまでとは異なる唸りを上げる。
「貴様の銃など通用せん!」三度突っ込んでくるダッシャー。
ドン!!
「ばかな!」銃弾はダッシャーに命中すると木端微塵に粉砕した。
これがファウストの必殺武器、業火弾(パニッシャー)だ。しかし、充填に時間がかかる、
エネルギーを著しく消耗するというデメリットがある。

決着がついたころ、留詩葉はダンサーにさらわれていた。
ダンサーは留詩葉を載せて走り出した。ファウストはアシエルを高速形態に変型させて追う。
ダンサーは自分たちがRR社によって製造された軍用ロボットの試作品であること、
しかしマスターはRR社ではなく、外部からハッキングしてきた者であること、マスターは
山にいてそこを目指して走っている、そこには留詩葉の父もいるということを留詩葉に話す。

236 :電人ファウスト5 :04/04/10 23:41 ID:???
ファウストが追いついた。ダンサーは爆弾を放出したり、オイルを撒いてアシエルを
滑らせたりするが、ファウストの超人的な能力によってことごとく回避される。
ファウストはファウストで、ダンサーが転倒でもすれば留詩葉が放り出されて死ぬのは確実なので
うかつに攻撃もできない。
攻めあぐねているところに橋がやってきた。ファウストは欄干を上りダンサーの後方に
パニッシャーを発射。橋は爆破された。残った橋も傾斜がきつく、ダンサーはそれ以上進めない。
ファウストは銃で留詩葉を固定しているベルトを打ち抜き、救出する。
留詩葉はマスターのことをもう少し教えてくれないかとダンサーに聞く
お嬢様には礼を尽くせと言われています、というとダンサーは語った。
マスターの名は「エンジェル」、彼女は留詩葉の父に造られたロボットで人間になりたがっている、
そのためには留詩葉の体が必要だと。そしてダンサーは自爆する。

所変ってエンジェルと留詩葉の父・三太がいる山荘。散歩の途中で三太はエンジェルが
まだ人間になることを諦めていないこと、エンジェルが留詩葉を捕らえようとしている
ことを知る。逃げようとするも、番犬ロボ プランサーに阻まれる。
「私は自分の夢をかなえるの。誰にも邪魔はさせないわ。たとえパパでもね…」
「行きなさい私の使徒、キューピッド、ドナー、ブリッツ」

再び所変って都内某マンション。ファウストと留詩葉の二人はマンションの空部屋を
見つけては勝手に使っているのだが、そこもキューピッドに発見されてしまった。
テレビから電波ジャックしたエンジェルが話しかける。
「私はどうしても人間になりたいの。留詩葉ちゃんお願いだから体ちょっと貸してよ。」
怒り心頭の留詩葉は父に会わせて、の一点張り。交渉決裂。それと同時に2体のロボットが襲ってくる。

237 :電人ファウスト6 :04/04/10 23:43 ID:???
ドナーはキューピッドを経由して近辺の電気を全て吸収し、「超電磁領界(メタトロンゾーン)」
を展開。辺りは停電する。
ファウストは発砲しようとするが体が痺れて動けない。領界の中ではロボットを含む
あらゆる電子機器が正常動作しなくなるのだ。
しかしまだ多少は動けるファウストに、ドナーは天雷撃(フィフストランペット)をくらわす。
もう一撃、というところでファウストに留詩葉が抱きつく。ファウストに攻撃すると留詩葉にも被害が
及ぶ。留詩葉を連れて行くのが目的なのでこうすれば攻撃できないだろうという目論見だ。
しかしそれは読まれていた。留詩葉はもう一体のロボット、ブリッツに抱えられ下水に
連れさられる。ブリッツには人間の脳が使われており、それで領界でも制限を受けず
自由に動けたのだった。

ドナーはファウストにフィフストランペットをくらわせる。同時にブリッツにいびられていた留詩葉の
叫び声が聞こえる。
「ブリッツはなにをやっているんだ……むっ!?」
ドナーの背後に黒い影が忍び寄る
「いつまでも…調子こいてんじゃねぇーっ!!」
復活したファウストに殴られたドナーは吹っ飛ばされ左腕を損傷する。
「まだ領界を解いていないのに…まさかヤツはブリッツと同じ…?」

ファウストはドナーを放置して留詩葉を探しに行く。

一方、ブリッツは留詩葉をスタンガンで気絶させドナーを待っていた。
足音がしたのでドナーかと思いきや、それはファウストだった。
逃げるブリッツ。しかしファウストは正確に追ってくる。ブリッツの動作音は全て
消しているし、留詩葉の心音にしても他人との区別がつかないので、そのどちらを
追って来ているわけではない。そしてブリッツは留詩葉の持っている時計の音によると気づく。
街は停電して電子機器が止まっているため、余計に時計の音が聞き取り易くなっているのだった。
ブリッツは一計を案じ墓場に逃げ込む。ファウストも追って墓場にやってきた。

269 :電人ファウスト7 :04/04/11 20:38 ID:???
ブリッツは墓の一つに時計を置く。時計に近づいたファウストを狙い撃ちする寸法だ。
そんなことにも気づかないファウストが時計に近づく。あと2歩…1歩…「今だ!」
ズザッ!
ファウストの背後からドナーが襲いかかってきた。
「天流星!(サードトランペット:バルカン砲のような連撃)」
「生きてやがったか!」
「あのバカ…」
ドナーの襲撃によってブリッツの策は台無し。
なおも攻撃を続けるドナー。
「天障壁!(フォーストランペット:攻撃にも使えるバリヤー。仮面ライダーブレイドが
ヘシンするときに出るやつのようなもの)」
「ぐあっ」
「フィフストランペット!」
爆風が周囲を包む。
「やったか…」
しかしファウストは間一髪で難を逃れ、死角の溝に退避していた。ファウストは悩む。
パニッシャーを使おうにもそんな隙は見当たらない。逃げるにしても留詩葉をどうするか。
ファウストの隠れている場所に近づくドナーの肩を掴むものがいた。ブリッツだ。
その隙を逃さず、墓石をドナーに投げつけるファウスト。命中。もう一つをブリッツに
投げつけるがこれは破壊される。しかし周囲に煙が充満し、ファウストを見失う二人。
ファウストはすかさずブリッツに一撃をお見舞いし、ひるんだ所で留詩葉救出。
そしてブリッツをドナーの方へ蹴り上げる。ブリッツはドナーが出していたフォース
トランペットによって気絶する。
崩れ落ちるブリッツ。その先にドナーが見たものは、銃を構えるファウストだった。
「パニッシャー…!!」
ズン!
墓場に爆風が広がる。
しかしドナーはキューピッドに救出されていた。
「ブリッツの識別信号が消えた…やられたか…。やむをえん、今回は撤退だ」
その頃ファウストは川原で留詩葉を介抱していた。
同じ頃、さきほどの墓場に黒い影がゆらりと立ち上がるのであった。


270 :電人ファウスト8 :04/04/11 20:39 ID:???
おそらく山荘への途中にあると思われるお寺。
留詩葉は体になんの異常もないのに三日三晩眠ったままであった。
つきっきりのファウストは気分転換に散歩に出かける。
「やれやれ…よっぽど墓に縁があるようだな」
適当に散歩していると一人の女性が墓参りをしているのを見つける。
「あれは…!?」ファウストは走り寄る。

一方その頃廃ビルに潜伏していたドナーの元にコメットが現れる。
コメットはファウストの下へビクスンが向かったこと、ファウストはブリッツと極めて
近似した機体であることなどを、ドナーを修理しながら話す。

再び寺。
「なにか…?」
「いや、知り合いに似てたもんで…人違いだったかな」
ファウストと打ち解けた女性は身の上を話す。1年前のオランダ便の墜落事故で夫を
亡くしたこと、今日が一周忌なこと、でも彼がひょっこり戻ってきそうな気がすること…。

そこへ新たな刺客・ビクスンが現れた。彼女は紙のように薄い特殊合金製の複数の刃を
ファンネルの如く自在に操る「シルバーテイル」という技でファウスト翻弄する。
崖下の森林で戦う二人。ファウストの銃は木に阻まれる。しかしシルバーテイルは木々の
間を縫ってファウストを襲う。あまりの猛攻にパニッシャーを充填する時間ももらえない。
「それじゃこの辺でフィナーレといこうか!」
シルバーテイルがファウストを襲う。
そこへ先ほどの女性がファウストの前に立ちはだかる。ビクスンはマスターより無用の
殺生は避けるよう命令されているので、女性を殺さないよう攻撃をそらす。


271 :電人ファウスト9 :04/04/11 20:40 ID:???
「なにしにきた!? あんたにはかんけーねー話だ!」
彼女は涙しながら答える「関係ない…そんなことないわ…あなた、三郎さんでしょ…」
「かばってくれたあの腕、あの人と一緒だった! わたしのところへ戻ってきてくれたんでしょう!?」
次の瞬間、彼女はシルバーテイルにくるまれファウストと引き離される。
「みつ子!」
「野次馬がジャマするんじゃないよ! せっかくのクライマックスなのに!」
「てめぇーーーーーっ!」
迫り来るシルバーテイル!
バガァン! 煙が舞い上がる。みつ子も衝撃で吹っ飛ばされる。
「終わったか…」
だがファウストはまるでダメージを食らわずに生きていた。
「まさか!? ヤツの能力で今の攻撃をかわせるハズがない!」
追い討ちをかけるビクスン。かわしながら木を倒しまくるファウスト。
「自分から木の下敷きになるとは…どういうつもりだ…」
その時、周りの空気が放電し始めた。
「パニッシャー!?」
「そうか、ヤツは倒木を盾にして充填する時間を稼いだのか!」
「間に合わない…ここは逃げるしかない!」
パニッシャーがビクスンを追う。シルバーテイルでガード! しかしパニッシャーは
ものともせずビクスンを葬るのだった。

272 :電人ファウスト10 :04/04/11 20:41 ID:???
「三郎さん!」
「さっき自分で言ったろう。君の夫は一年前に死んでいる。」
「俺はもう、君は守れない−」
それだけを言い遺し、ファウストはみつ子の下を去る。

その頃留詩葉は夢を見ていた。父と母との楽しかった思い出。母が死んだ時に父に思わず
取ってしまった冷たい態度、父からもらった母の形見の時計、そして自分の元から去ってゆく父。
「お父さん…わたしをひとりにしないで−」

戻ってきたファウストに留詩葉は言う
「あたしね、わかったんだ。自分の行く道、何を為すべきか、ね。」
「パパを救わなきゃ!」

アシエルで山荘に向かう二人
「おい、ほんとにこっちでいいのか?」
「んー自信ないけどこのまままっすぐ! パパの山荘はもうすぐだ、多分」
「やれやれ、頼りねぇ道案内だなぁ」
「こぉらなんて口きくの! これでもあんたのマスターなんだぞ!」



273 :電人ファウスト書いたヤシ :04/04/11 20:42 ID:???
というわけでここで終了。
「ドナーとの再戦は?」「ブリッツもこれみよがしに復活してたのにどうしたの?」
「コメットってあれだけ?」「結局エンジェルとの決着は?」「三郎とみつ子さんの
過去話もないの?」「てゆーか三郎、みつ子ってやっぱキカイダーから?」
といった数々の謎を残す、お手本のような打ち切りエンドです。

ぐぐってみたところてんとう虫コミックスDXでも特に新エピソードが加筆されたとかはないようで。