BAROQUE〜欠落のパラダイム〜/上田信舟
343 名前:BAROQUE〜欠落のパラダイム〜 投稿日:04/07/13 17:32 ID:???
原作のゲームを知っている方に、一応留意していただきたいのは
この作品は、原作の一解釈として描かれているものだということです。(まぁゲームがあれだし)
よって原作の拡大解釈やらもなされていますし、オリジナルストーリーです。
あと、何か規制があったのかどうかはわかりませんが(色々規制食らったらしい)
バロック = 妄想 という概念はありません。
バロックは歪みそのものを指す言葉として使われています。

用語集 世界観

あらゆるものがねじくれ、奇妙に歪み、荒廃した世界が舞台。

バロック 歪みのこと。人の体とかも平気で歪んだり、くっつきあって合成されてたりする。

マルクト教団
偽装天使と名乗る信者たちを持つ教団。
信者は、偽翼と呼ばれるフェイクの翼を背負い、翼が大きいほど位は高い。
最上位は上級天使。次点は十二人(十三人でもある)のコリエル達である。

神経塔
マルクト教団の本部。歪みの中心地。

感覚球
大熱波という災厄以降、世界中のあちこちに出現した球体。形はさまざま。
神の感覚器官が現出したものであるとされており、さまざまな物体を転移させる力を持つ。
偽装天使たちが人工的にまねて作った人工感覚球というものも存在するが、
こちらは情報しか運べない。

344 名前:BAROQUE〜欠落のパラダイム〜 投稿日:04/07/13 17:33 ID:???
コードに繋がれた不思議な機械(中に主人公が入っている)の周囲で、研究天使たちが
「意識シミュレート」なるものの開始を告げるところからストーリーは始まる。

あるとき主人公は気づくと、奇妙な世界に立っていた。
空は赤く染まり、奇妙なうめき声のような音が響き渡り、廃墟のような建物が並んでいる。
十字架に斜めの棒が一本加わったようなマークも、あちこちに飾られていた。

道端に立つ人間もいたが、首が異様に長かったり、頭からすっぽり袋をかぶっていたり、
皮膚がただれていたりと、まともな姿のものは一人もおらず、
皆一様に「神経塔へ行け」と言うばかりだった。
主人公は、自分に記憶がないことと、胸の奥に焼け付くような罪悪感だけを覚えていることに気づく。
途方にくれた彼が、人々が行けと指差す方向を見ると、そこに奇妙な形の塔があり、
ふもとには、地面から生えた刺つきの大きく奇妙な球(感覚球)と、
球の横に立つ白く大きな翼を背負った偽装天使の青年の姿があった。
目が赤いことと、翼をしょってるところを除けば、唯一まともな姿をしている人だ。
その青年、上級天使は、主人公に
「覚えてないだろうが、お前が人々や万物を歪め、世界を殺したのだ」と告げる。
天使達の教団マルクトの本部である神経塔。その地下最下層には創造維持と呼ばれる
神が実在しており、そしてその神は狂ってしまっている、ゆえに世界は歪んでいるのだという。
空に響くうめき声は、神の泣き声なのだと思うと、主人公は不思議と神に同情した。
上級天使は、主人公を神経塔の中へと導き、告げる。
「狂った神を浄化しろ。それがお前の使命であり、お前の罪悪感を癒す唯一の方法だ」と。


345 名前:BAROQUE〜欠落のパラダイム〜 2 投稿日:04/07/13 17:35 ID:???
今回だけは手伝ってやれる、と上級天使は主人公について歩き浄化の仕方を教える。
神経塔内には異形と呼ばれる化け物が徘徊している。主人公が彼らを殺すと、
死体ではなく、イデアセフィロスと呼ばれる、歪みなき、物の本質の結晶が残った。
これこそが主人公のみが持つ、「浄化能力」であった。
途中、異形とも人ともつかない不思議な姿の者を目撃しつつ、主人公達は最下層につく。
中心にいる神は、近づけばそれまでまともであった鳥でさえたちまちに歪んでしまう、歪みの元凶だった。
上級天使は主人公に大熱波と呼ばれる災害の映像を見せて、教える。
かつて神経塔を中心に、大熱波が広がり、世界を打ち砕き、溶かし、人間達を歪めて異形に変えてしまった。
自分のせいで世界がこうなったことを思い知らされ、主人公は呆然とする。
天使たちが用意した「天使銃」という、もうそれ銃ってかバズーカーじゃねーのかサイズの銃を渡され
それで神を撃つことで、浄化がなされると教わる主人公。神を撃とうとするが、
先ほど塔の中で見かけた、異形にも似た人物が現れ「その銃を撃たないで下サイ」と言う。
その姿は主人公にしか見えなかったが、このことから
上級天使が「天導天使」が意識シミュレートにハッキングしていると気づくと、その天導は姿を消した。
天導の言葉に戸惑いつつも、上級の言葉に従い、遠くに見える神を撃つ主人公。
「それでいい。忘れるなお前の使命を」という上級の言葉とともに、意識シミュレートが終了し
彼は現実の世界へと送り出された。


346 名前:BAROQUE〜欠落のパラダイム〜 3 投稿日:04/07/13 17:43 ID:???
主人公が気づいたときには、彼は再び何事もなかったかのように赤い空の下に立っていた。
意識シミュレート内で見たのと同じ人々が周囲にいたが、歪んだ姿の彼らは、皆好き勝手に喋ったり、
意味不明のことを呻いたり、叫んだり、主人公の心の声を読んでエコーさせたりしている。怖い。
更に意識シミュレートと違い主人公は喋ることもできなかった。
何もわからず、迫りくる歪んだ人々に怯えた主人公は、すがるように塔のふもとまで逃げる。
「救済がほしいか?」という言葉とともに、上級天使が姿を現してくれたが、彼にすがろうにも
現実世界では上級の体は立体絵像でしかなく、触れることもできない。
一方的に天使銃を渡され、「行け。これからが現実の罪の償いだ」と上級から言われた主人公は
その言葉に従い、不思議そうに見守る歪んだ人々に見送られて、神経塔へと向かうのであった。
胸の奥の罪悪感を、癒して満たされるために。

主人公が塔の中を歩くと、意識シミュレートのときと違い、異形以外のものともであった。
目のくぼんだ胎児に羽をつけたような、小さな天使(?)の幻がが<助けて><苦しい>飛び去っていく。
さらに感覚球が浮かぶ泉に上で、主人公と同い年ほどの少女がふわふわと楽しげに浮かんでいる。
彼女は主人公の存在に気づくと、驚き、突然怒り出した。
「もぉ! 遅いよ。僕ずっと待ってたんだよ。どうして今まで来てくれなかったの?」

続く

347 名前:BAROQUE〜欠落のパラダイム〜 4 投稿日:04/07/13 18:23 ID:???

喋れない主人公が、心の中で(誰?)と呟くと、少女はその心の声に当然のように返事を返した。
「誰って、ひどい! 僕のこと忘れちゃったの!? じゃあ遊びだったの!? そうなのね。もぉ、信じらんない」
いきなり、痴話げんかを吹っかけられて、戸惑う主人公に、少女もショックを受けたように、呆然とした。
「本当に忘れちゃったんだね……」「いいよ、もう。僕は別に苦しくなんかないもの」
「――でもどうして、僕のこと捕まえておいてくれなかったの?」そう言って、少女は泉の中へ沈んでいく。
追おうとするも、泉の中までは追いかけられず、あきらめて主人公が帰りかけたとき、
少し調子を取り戻したのか、少女は泉から顔をのぞかせて、拗ねたように何故今更ここへ来たのかと訊ねた。
罪の意識から逃れるために、世界を壊した罪を償うために、創造維持を浄化しにいくと主人公が告げると、
少女はしばし呆然として「そう、君はそう思っているんだね」と意味深に呟く。
しかし次の瞬間には明るく、「君が望むのなら、僕が手伝ってあげるよ」と、どこからかき集めたのか
天使たちが塔の中で生き延びるために使っている道具を、どさどさと主人公に持ってきた。
少女が、はしゃぐように一つ一つ使い方を教えてゆく中で、彼女は焼印を拾い上げて、それを自分に平気におす。
「これはお守りみたいなものらしいよ。捺すと跡が残るの。綺麗でしょ。君もやってみる?」
しかし焼印は当然熱く、何も感じなかったような少女と違い、主人公はしばし痛みに苦しんだ。
それををみて、少女は再び呆然とする。「ごめん。僕達はあまり痛みと言うことがわからないんだ」
「他にもたくさんのことが、色々と欠けている気がするのだけれど……」

348 名前:BAROQUE〜欠落のパラダイム〜 5 投稿日:04/07/13 18:24 ID:???

その後も少女ははしゃぎながら、幾つかのことを教えた。
異形のイデアセフィロスからは、苦しみの声が少しだけ聞こえること。
赤ん坊のような姿の天使は、天使虫リトルというものの幻で、いつも苦しいとしか言わないと。
<苦しい><助けて><でもそれは死――>
そこへ異形が現れて、少女は唐突に姿を消した。
強力そうな異形<カトー>に、持っていた剣を振り落とされ、主人公は怯えて、思わず天使銃を撃つ。
すると撃たれた異形の姿は大きく歪み、ぷっつりと消滅し、あとには血まみれの白い羽根が舞い落ちるばかりだった。
天使銃のあまりの威力に主人公が呆然としている間に、盗み癖の強い異形<グリロ>に銃を奪われ
さらに別のカトーが迫ってくる。逃げ惑うも二匹のカトーに通路で挟み撃ちにされ、主人公は殺されてしまった。

どこかの研究室のモニタールームで、研究天使たちが主人公の生体反応が消えたことを確認する。
とりあえずはこんなものか、と呟く彼らの部屋に、不意に上級天使が現れ
「死体の回収」と「次の目覚めまでに人工感覚球を移植すること」を命じた。

そして死んだはずの主人公は、再び赤い空の下に立っていた。その体には何の傷跡も残っていない。
戸惑いながら、歪んだ人々とすれ違い、塔のふもとまで行くと、
上級天使が、償いを果たすまではお前は死んでも何度でもこの地点に戻ってくるのだ、と教えた。
こうして天使銃を渡され、主人公は再び、神経塔へと潜っていった。