バラが咲いた/ジョージ朝倉
86 :バラが咲いた :04/05/05 00:23 ID:???
 塚本晋次の右脳には生まれつき得体の知れない塊があり、そのためか感受性が乏しい。
感情に惑わされ判断を誤る事などもちろん無く、晋次は優等生としての日々を過ごす。
一人暮らしをしている晋次が部屋に帰ると、ドアの前に、小学生の時に感情の無い晋次が
初めて美しいと感じた少女・戸川がいた。晋次と正反対で嘘つきで夢ばかり見ている戸川は、
嫌がる晋次にかまわず部屋に住み着いた。部屋中をペンキで勝手に塗ったり花を散らしたりする
戸川に呆れながらも、晋次はこの世の全てを手に入れたような幸福を感じた。
 造る事は出来ないとされる青いバラが欲しいと戸川は言う。もし植物学者になって
青いバラをつくってあげたら戸川は戯言を呟く時と同じように笑ってくれるだろうか?
 学校にも行っていない戸川が、セックスで相手の運勢を占うという売春まがいの事をして
金を稼いでいる事を知り、晋次は生まれて初めて涙を流す。戸川に振り回されるうちに
晋次は成績をどんどん落していく。あまつさえ、戸川と同棲している事がばれて、学校側に退学を迫られる。
感情が自分を腐食させるんだ。感情を起こさせる戸川が原因だ。晋次は戸川を追い出す。
 数日後、晋次は倒れ、全く動けなくなった。体中の細胞が、五感が戸川を感じすぎ依存したために
戸川が消えた今、機能するのをやめたかのように。しかし涙だけは流れつづけた。
やがて体中が湿り、晋次を養分に苔が生えシダやツルまで伸びてきた。
そして、花が咲いた。戸川の望んでいた青いバラだ。
右脳の塊はこの花の種だったのだ。晋次の感受性を詰め込んだ種だ。
意識が途切れていく。この花を見て欲しい。そして花から僕の思いを知って欲しい……
追い出された戸川が晋次の部屋のドアを開けると、部屋一面に青いバラが広がっていた。
戸川はそのバラに晋次の顔を見たような気がした。
 晋次の隣の部屋の住人は、物音が全く無く、新聞の溜まっている
晋次の部屋を不審に思い、管理人と共に晋次の部屋を訪れた。
部屋には家具も人も無く、甘い香りと青い花びらだけがあった。