東京BABYLON/CLAMP
421 :東京BABYLON 1 :04/04/16 01:49 ID:???
作者:CLAMP
全七巻 *始めに告げておきますと壮絶なバッドエンドの話です。

皇昴流(すめらぎ・すばる):主人公♂
 表立って日本を霊的に守ってきた陰陽師の一族「皇(すめらぎ)一門」の現当主。
 祖母の命令で常に手袋をはめている。希少価値のごとく純粋で真面目な少年。
皇北都(すめらぎ・ほくと):昴流の双子の姉。ノリが軽く逞しい。
 昴流を保護者のごとしで非常に大切にしているが、星史郎と昴流の仲はやたらノリノリで応援している。
桜塚星史郎:
 歴史の裏から日本を支えてきた陰陽師の一族、暗殺集団「桜塚護(さくらづかもり)」の関係者疑い。
 都内で獣医を営む穏やかな物腰の青年だが、時折謎の黒さを見せる。おちゃらけた言動で昴流に迫ってくる。

眠らない都市・東京には人々の情念や怨念が渦巻いており、様々な霊障が絶え間なく起こる。
皇昴流は陰陽師として、夜な夜な依頼を受けては様々な霊的現象を解決する生活を送っている。
そんな彼をおちょくりつつも支えるのは、姉の北都と偶然知り合った獣医の星史郎。
どこまで本気かよく分からないが星史郎は昴流に熱烈モーションをかけており、北都もどういった意図かは不明だが
それを推奨してデートをセッティングしたりしている。

東京を舞台とする昴流の仕事を通して物語は進む。
大抵一つの仕事につき一つのテーマのようなものがあり、北都か星史郎の口を借りて語られる。
登場人物の背景にはやたら謎や伏線が多いので注意。

結構最初の方は、伏線以外はどうでもいい話が続きます。
vol.0:T.O.Y
それぞれの人物紹介がメイン。シャネルのスーツに宿った怨念の除霊話。
スーツを取り合うOLの怨念を垣間見た北都&星史郎の発言
→「今も昔も一番怖いのは人間ですから」がテーマらしい。
星史郎は東京という街を「この地球でたったひとつ、滅びへの道を『楽しんで』歩んでいる都市だから」好きだといった。

422 :東京BABYLON 2 :04/04/16 01:56 ID:???
vol.1:BABEL
東京タワーで自殺した女優の霊と対話する話。田舎から女優を夢見て上京してきたその霊は、
生前頑張ったものの道が開けなかった。そしてやっと巡ってきた映画に賭けていたのだが、
直前に主演女優の都合で映画は中止してしまい、ラストチャンスを断たれた彼女は自殺してしまったのである。
彼女は「ずるいよね『才能』があるって。それだけで『凡人』は何をしてもかなわないもん」と泣くが、
星史郎は人間が皆平等なわけはないと冷たく返す。星史郎は『東京』という街は理不尽なことがまかりとおるものだといい、
好きという感情だけではどうにもならないことが沢山あるんですよと語った。

vol.1.5:DESTNY
幼い昴流の回想。物語のキーである重要な話。
咲き誇る桜の木の下で、9歳の昴流は高校生くらいの男と出会う。桜の花が好きだという昴流に、彼は
「桜の木の下には死体が埋まっている。だからこんなに毎年綺麗に咲くんです」
「桜の花びらが薄紅色なのは、木の下に埋まっている死体の血を吸っているからですよ」と笑んで語った。
しかし「桜の下にいる人たちは苦しくないんですか?」と泣きながら尋ねる昴流に、彼は驚いた素振りを見せる。
そして「賭け」をしよう、と持ちかけてきた。
「君と僕がまた会えたら…」 よく聞こえず聞き返す昴流に対し、彼はそのまま言葉を続けた。
「だから今日は 見逃してあげますよ」と。

そして年月が経って、仕事で式神を追っかけていた昴流は池袋駅のホームでド派手に転び星史郎と知り合った。
星史郎は昴流に一目惚れをしたとのたまう。初めての印象がそんなマヌケな相手に良く惚れた、とからかう
北都の台詞に対し星史郎は「もうずっと昔に、僕は昴流くんと会っている」と謎めいたことを言った。

そんな中、昴流は北都を含め3人で上野公園に花見に行く。
満開の桜を見て『綺麗』、でも『こわい』と、あの人を思いだす昴流に星史郎が声をかけた。
「ご存じでしょう。この桜だけ満開なのは、この下に死体が埋まっているからですよ」黒さ全開である。
冷たく暗い笑みで相対する星史郎に、呆然とする昴流。
しかし次の瞬間には昴流はそのことを忘れていた。そして星史郎はひとりごちる。
「だから今日は 見逃してあげますよ」 

423 :東京BABYLON 3 :04/04/16 02:11 ID:???
2:Dream
昴流に次に舞い込んだ仕事は原因不明で眠り続ける女子高生・実月を覚醒させて欲しいというもの。
実月は不良グループにレイプされてしまい、眠りの中に閉じこもってしまったのだ(冒頭で語られる)。
その眠る相手を見て、それが昔の知り合いの少女・実月であったことに昴流は驚く。
術で実月の夢の中に入り込んだ昴流だが、自らを守り閉じこもる実月は、昴流を侵入者として攻撃する。
反撃すれば実月の心を傷つける、となすがままの昴流であったが、そこに星史郎の式神乱入。容赦なく実月の心を攻撃する。
そして実月が必死に隠していたレイプ事件の傷があらわにされる。
全てが『夢』であればいいと願った実月は夢の世界に閉じこもっていたが、昴流の癒しによって目を覚ますことができた。

3:CALL
ダイヤルQ2にハマった電波少女達の話。自分を『特別』だと思い、ダイヤルQ2で連絡を取り合う3人の少女達。
1999年に地球は滅ぶ、その時に『声』に呼ばれ自分たちは戦士になるのだと電波全開の少女達は、
独学で色々な密教系の術を覚え『敵』と認識する場所に攻撃をかけていた。そして昴流に次の依頼が舞い込んだのである。
彼女達のダイヤルに参加して正体を探ろうとする昴流に、3人は敵だと認識して術を放つがプロの前にしっぺ返しを喰らう。
素人の彼女達は術の返しや呪詛に伴う禁忌などの重要事項を何も知らないのだ。
このままだといずれ自分たちが使った呪詛の反動でただでは済まないだろうと危惧した昴流は、彼女達を救うべく動き出す。
結界を張り、再びダイヤルで彼女達の一人に接触した昴流だが、すでに彼女の周りには様々な霊障が引き起こされていた。
ピンチの彼女は昴流を信用し、昴流は彼女の除霊に入るがバッドタイミングで他の二人が接触し、攻撃をしかけてくる。
除霊中に狙われた昴流は、無理な術の施行で怪我を負い気絶してしまった。そしてブラック星史郎降臨。
「いずれみんな死ぬんだ、『普通』なんてその他大勢で死ぬのなんて嫌だ」と叫ぶ素人娘に星史郎は容赦なく術を放ち、
素人娘2人は廃人となってしまった。気絶した昴流を見下ろし、星史郎は冷笑した。
「まだ僕との賭けは終わっていませんよ」

424 :東京BABYLON 4-1 :04/04/16 02:24 ID:???
4:CRIME
神社で学校の課題を写生をしている最中に、昴流は急に気の澱みを感じた。呪術がこの神社で行われたのだ。
神社内を探す昴流はやつれ果てた女性が佇んでいるのを見て、「犬神」の術が行われたと確信し彼女を問いただす。
「犬神」は呪う相手だけではなく自分自身さえ破滅させてしまうと訴える昴流に、女性は
「自分のしあわせはあの日にとうに終わった、どんな地獄があろうと今の毎日に大差はない」と狂気をもって答えた。

そして彼女は、自分の幼い一人娘が誘拐されて殺害されたことを昴流に語った。
「あの日まで本当に普通の家庭だった、あの子がいなくなってしまうまで。行方不明の間中何度も怖い夢を見たわ 
 でも現実の方がよっぽど酷い」 
犯人は精神鑑定で異常とされ、罪には問われなかった。
「あの子が殺されて初めて分かったわ。『罪』もそれを裁く『法律』も償いの『罰』も、全部『他人』が決めるんだって」
他人には被害者が受けた傷は絶対に分からない。
憎しみに囚われた彼女は、文献を読みあさり復讐の方法を探した。
そして「犬神」を見つけ術を施行しようとしたのである。破滅を感じた昴流は彼女を止めなければと思いたつ。
娘さんは本当にそんな復讐を望んでいるのか、お母さんに不幸になって欲しくないと感じているはずだと訴える昴流に、
彼女は「どうしてそんなことがわかる、もう娘には会えないのに、声をきくことはできないのに!」と叫ぶ。
昴流は自分がその道のプロであることを明かし、一時だけ娘の魂を呼び戻す(ようはイタコ)ことを試みる。

425 :東京BABYLON 4-2 :04/04/16 02:26 ID:???
そして昴流は娘の魂を呼び出したが、その反応は昴流の予想し願っていたものとはかけ離れていた。
現れた娘は、苦しんで泣きながら
「くるしいよう こわいよう」「ママたすけて あのおじちゃんをやっつけて こらしめて」
と訴えていたのだ。母親は娘の魂の姿を見て感動にむせぶが、娘の声は昴流にしか聞こえない。
娘はなんと言っているのかと聞く母親に、昴流は「娘さんはこんなことをやめて欲しい、幸せになって欲しいと言っている」
と嘘をついてしまう。

夕食の約束をしていたため昴流は星史郎の家に行った。
今回の件で深く傷つき帰ろうとする昴流を、星史郎は落ち着けるため家に留める。
泣きながら
「人の幸せなんてその人にしか分からないのに。僕は自分自身の満足のために真実を伝えなかった」
と嘘つきの自分を責め続ける昴流に、星史郎は自分も許してやれと優しく慰める。
しかし昴流が眠り部屋から出ると、星史郎は冷酷な笑みで吐き捨てた。
「このままだと賭けは僕の勝ちのようですね… 昴流くん」

426 :東京BABYLON 5-1 :04/04/16 02:27 ID:???
5:SAVE
女子校で毎日イジメにあっている少女・橋本。泣いて苦しんでいた彼女は公園で優しげな女性と出会う。
奈岐久美子というその女性は、MS研究所といういわゆる自己啓発セミナーのようなものを開いており、
助けを求めた橋本はその研究所に通うことにしてみた。

一方、昴流は仕事に追われているため学校の出席も厳しい毎日を送っていたが、
「動物園の飼育係」の昔からの夢を諦めず頑張っていた。
北都は、獣医の星史郎と飼育係の昴流なんて運命のカポーだわっしかも宿敵同士なんて、とちゃかす。
あんな優しそうな星史郎が桜塚護なんて、と言う昴流に対し、北都は
「確かに優しそうではあるわね、でも本当に『優しい』かどうかは 謎だわ」と意味深なセリフを吐いた。
今日も仕事が入り補習を受けられない昴流に、北都は何があっても夢はあきらめちゃだめよ、と元気づける。

仕事に向かった昴流は、皇一門の前当主である祖母と久々に対面する。
祖母は昴流に「MS研究所」という新興宗教団体を調べて欲しいという依頼内容を持ってきたのだが、
メインの用事は別のことだった。昴を占った祖母は、良くない結果を得て忠告にやってきたのである。
「昴流さんが… 『桜』に攫われると」 
そう告げた祖母は、昴流の手をとり決して手袋は外すな、と念を押し「あのとき、昴流を一人にしていなければ」と嘆く。
「?」の昴流に、祖母は「『桜』には決して惑わされてはいけない、心を奪われてはならない」と繰り返していった。



427 :東京BABYLON 5-2 :04/04/16 02:29 ID:???
仕事で昴流はMS研究所に潜り込み、イジメられている少女・橋本と対面。二人も奈岐久美子のセミナーを受ける。
キリストのごとく「汝の隣人を愛せ」のようなことをのたまう久美子に他の生徒達は感動するが、昴流と橋本はなじめない。
そして偶然、昴流は橋本がイジメに遭っている現場に遭遇する。
MS研究所に入って自分を好きになるように頑張って祈った、けどなにも変わっていない、と未だ苦しむ彼女に、
昴流は「なんていったらいいのか分からない、あなたの苦しみの少しも自分は分かってやれていないんだろう」と返す。
久美子の授業でも救われなかった橋本だが、その言葉に初めて慰めを感じ昴流に好意を抱くようになる。

しかし彼女はまたも学校で同級生のイジメにあい、抵抗して顔に深い傷を負ってしまった。
MS研究所でそのことを聞き驚く昴流に久美子は
「橋本は祈りが足りなかった、心が強ければ全てを許してやることができるのに、
 彼女は心が弱いから同級生のイジメをも許してやることができなかった」と言う。
霊力を持つ彼女は昴流にも特別な力があることに気づいていた。
そしてその力に苦しむ昴流を救ってやりたいのだと訴えるが、昴流は怒りをもって「あなたには誰も救えない」と言い捨てる。
他人の痛みを分かったふりをしているあなたには誰も救うことなどできない、昴流がそう責め立てた。
とそこに星史郎が登場。驚く昴流をあっさり眠らせる。
『桜塚護』として依頼されてやってきた星史郎は、その強大な霊力で久美子を難なく葬り去った。

そして眠っている昴流に「やはり賭けは僕の勝ちのようですね」と言い、首を絞めて昴流の手袋を外そうとする。
しかし昴流の手袋には祖母の守りが張られていた。黒さMAXの星史郎は凶悪な笑みで告げた。
「今日は貴方のおばあさまに免じて、賭けの最終期日は延期ということにしましょうか 昴流くん」

後日、入院している橋本を尋ねていった昴流に、橋本は自分は強くなりたいと話した。
久美子が言っていたような全てを許す強さではなく、はっきりと自分の意見をいって生き抜いていく強さが欲しいと。
そして強くなったらまた貴方に会いたいと話す。昴流はそんな彼女に会うのを楽しみにしている、と返した。

432 :東京BABYLON 6 :04/04/16 05:18 ID:???

vol.6:OLD
ある日昴流は公園で鳥を集める老人と出会い仲良くなる。
色々と教えてもらい楽しい時を過ごすが、その老人は家に帰ると娘夫婦と孫に邪魔者扱いされる立場となっていた。
娘は老いた父をお荷物だといい、ローンのかさむ生活のストレスもあって辛く当たり、
また祖父が死んだら自分たちの部屋が出来るんだってと無邪気に喜ぶ孫達に老人は涙を落とす。
しかし彼は娘をとても大切に思っており、死んだ妻との「娘に100個喜ぶことをしてやって欲しい」という約束を
守り続ける夢をまだもっていた。
99個まで叶えた、後一つで妻のところにいけるという老人は、病に倒れた娘のために買い物に行き交通事故にあう。
小さい頃から娘の好物だったバナナを買ってきた老人はこれで娘が喜ぶ100個目だと言い、昴流に託し息を引き取った。
昴流は老人から受け取ったバナナを娘に届けにいき、父の死で彼が自分をどれだけ大切に思っていてくれたかを
知った娘は号泣し父に詫び続けた。
後日、墓参りに行った昴流は、娘夫婦も墓参りしにきたのを目撃する。
お父さんに本当に酷いことをした、せめて一生懸命謝りたいという娘や、おじいちゃんが大好きだったという孫達に
昴流は老人の霊が微笑んでいるのを見た。

Vol.7:BOX
カラオケに行った昴流が星史郎のたきつけ?で不倫して自殺した女性の霊を成仏させる話。


433 :東京BABYLON 7-1 :04/04/16 05:20 ID:???
Vol.8:REBIRTH
風邪をひいて病院に行った昴流は人なつこい少年・勇弥と出会い、明るい勇弥が腎病を患っており
人工透析を受けていることを知る。昴流は彼を辛いだろうと案じるが、北都もまた昴流のことを案じていた。
「昴流は昔から人の想いを自分のものにしてしまう悪い癖があるの。他人が悲しんでると昴流も辛い」
「昴流はきっと今まで関わってきた人の想いを全部覚えているんだわ。当人が忘れても昴流はずっと忘れない。
 いつまでも抱えて手放すことが出来ないの」

北都は昴流が自分の感情に鈍感な分、我がことのように彼のことを理解していた。
そして昴流は真っ白すぎて生きていけないと幼い頃から心配してきたのだ。
昴流は俗に言う博愛主義という奴で、自分以外の他人は全て好き、自分以外の誰かを大切にすることは
呼吸するより簡単だという人間だった。
そんな彼を北都は案じ、星史郎に語った。
「もし昴流がまったくの『他人』を特別に好きになったら…
 もしその誰かに裏切られたら…
 昴流きっと死ぬわ」
それらの話をきいて、星史郎は「『優しい人』に『真っ白』な心。僕には一番縁がないものですね」と呟く。
「賭けの最終期日が近いようですね 昴流くん」


434 :東京BABYLON 7-2 :04/04/16 05:23 ID:???
再び病院に行った昴流は勇弥と会うが体調が良くない勇弥は倒れてしまい、
昴流は母親が取り乱して腎移植を切望し訴えている場に遭遇する。
かつて勇弥には姉がいたのだが彼女も腎病を患っていた。
母親は息子と娘のどちらかを選ばなければならず、姉を選んだのだが拒絶反応が起こり姉は死亡。
母親は勇弥を選んでいれば娘は死なずに済み勇弥も今頃元気になっていたのかもしれない、と
自分を責め続け追いつめられていた。
そんな母親と勇弥を見て、昴流は自分の腎臓を勇弥にあげたいと考えていた。

しかし勇弥の容態は急変し、手術室へ運ばれる。
腎臓がないと泣く母親は追いつめられ錯乱し、ナイフを持って昴流に腎臓を頂戴と詰め寄ってきた。
自分の腎臓を、と話そうとする昴流の声も耳に入らずナイフを振り回す母親に、昴流は刃を受け止めようと目を瞑る。
しかし実際に刺されたのは昴流をかばった星史郎だった。
右目を切り裂かれ血塗れとなった星史郎を見てボーゼンとする昴流。
星史郎の運ばれた手術室のドアに我を忘れて泣いて取りすがる昴流を見て、北都は今までになかった弟の姿を感じた。

435 :東京BABYLON 8-1 :04/04/16 05:25 ID:???
Vol.9:NEWS
暗い部屋で星史郎の名を呼びうずくまる昴流。北都に星史郎の容態を聞くと、右目は失明したという。
絶望し自棄になる昴流を北都は一喝し、自分がどうしたいのか考えなさいと諭す。
昴流は星史郎に謝りたい、と北都に縋って泣き、北都は昴流を抱きしめ慰めた。

次の日、昴流は星史郎の元へ行くがそこには普段とまったく変わらず、逆に昴流を気遣う星史郎がいた。
泣いてひたすら謝る昴流に星史郎は、あれは自分が勝手にやったことだと明るく答え
人間は全て自己満足で動いてるんだから気にすることはないと言う。

しかし許してもらえたことに喜ぶ昴流と対照的に、北都はある危機感を強めた。
北都は星史郎に、あなたのことが分からなくなってきた、裏表のある人間だと思っていたと話す。
星史郎の眼は尋常な人がもつものではない。彼から血の匂いがすることも、カンの良い北都は感じ取っていた。
「あんなに昴流が取り乱したのを初めてみた。昴流が自分を見失って混乱するなんてあれが初めてよ」
誰が怪我をしても優しい昴流なら取り乱すだろうと返す星史郎に、北都はきっぱりと告げる。
「違うわ 貴方だからよ」
「昴流は貴方をその他大勢とは違う『特別』だと認識してしまった。もうすぐ昴流は変わってしまうわ」
そして星史郎に「昴流をどこか遠くへ連れて行かないで」と懇願する。

とぼける星史郎は、北都が去った後にあの暗い笑みを浮かべて独白した。
「北都ちゃんのカンの良さには感服しましたよ
 そろそろ タイムリミットですね」

436 :東京BABYLON 8-2 :04/04/16 05:27 ID:???
マスコミに今回の事件のことをかぎつけられ、ニュースでガンガンに報道されるのを見て
勇弥は『みんな』が母親が悪い人だと言っていると怯えて泣く。
皆辛いんだからこんな事件は…と報道するニュースに、誰かと同じ苦しみなどないと憤る北都。
母親がいけないことをしてしまったのかと聞く勇弥に、昴流はニュースで話しているのは
『現実』だけど『真実』じゃないと諭す。
「『みんな』なんていないんだよ。ニュースがそういってるからって、お母さんを悪い人だと思う必要なんかないんだ」
それを聞いて勇弥は、自分は母親が大好きだと答えた。

そして星史郎は病院の屋上から、押し掛けるマスコミの報道陣を見て冷笑する。
「賭けの決着をつける時がきたようですね 昴流くん」

233 :東京BABYLON 9-1 :04/04/27 05:35 ID:???

vol.10:PAIR
昴流は幼い頃の自分と、その自分と会話する男の夢を見る。
京都で生まれた昴流は、皇一門の当主となるため初仕事を行うべく東京に祖母と来ていた。
そして桜の下で男と出会い、賭けをしたことを思い出す。(→Vol.3と同じ場面、会話が交わされます)
その場面を見ていた昴流は、後から声を掛けられる。そこにいたのは顔がよく見えないが星史郎らしき男。
そしてその腕に抱かれた、胸を貫かれ血だらけになった自分の姿だった。
驚きその男の名を呼んで目を覚ます昴流。 
あれは夢ではない『現実』、『記憶』だ…
衝撃を受けた昴流は、目覚めたとき誰の名を呼んだのか覚えていなかった。

星史郎の見舞いに行こうとした昴流に、北都は話しかけた。
昴流は桜塚星史郎のことをどう思っているのか、と。
北都は昴流のように陰陽術を操る才能は持っていなかった。だがそんな北都は昴流にない力を一つだけ持っている。
それは自分の心に鈍感な昴流の心がわかる力だった。
そして昴流に「今回の事件で誰が一番変わってしまったのか」を考えるよう言い聞かせる。
右目を失った星史郎だと答えようとする昴流を北都は否定した。
「あの人は変わっていない。強いて言えば…もう『装う』ことをやめてしまっただけよ」
北都は昴流がずっとはめている手袋、祖母しか知らないその理由がもうすぐ分かる気がする、でもその時が…
と暗い未来を暗示した。
そして昴流を抱きしめ、「大好きよ だから『どこか遠くへ行ってしまわないで』」と願った。

234 :東京BABYLON 9-2 :04/04/27 05:37 ID:???
病院に向かった昴流は北都の言葉に従い、自分が星史郎のことをどう思っているのかを考え出した。
星史郎が右目を切られた時、自分は何も考えられなかった。
なぜ北都の声も分からないほど混乱していたんだろう…
そう昴流が何かに気づきだした時に、目の前で盲導犬を連れた盲人が絡まれているのを目撃する。
盲導犬珍しさに絡んでいる高校生をいなし、昴流は目が見えない人の話を聞きたいと思い色々話をした。
右目を失った星史郎はいずれ左目も見えなくなるだろう、その時自分になにができるかと必死に考える昴流に、
そのおじさんは昴流がその相手のことを本当に好きなのだねと言った。

病院に着いた昴流は星史郎の病室の前で色々と思いを巡らし、そして気づいた。
「僕は星史郎さんに、嫌われるのがこわかったんだ」
人の想いに敏感で相手の心が分かっても、昴流は今まで相手に何かを望んだことはなかった。
相手にどうして欲しいとか、どう思ってもらいたいとか思ったことはない、
だが星史郎が昴流をかばい斬られたとき、自分は彼に嫌われたのだと、もう会えないのかと恐れて泣いていた…
昴流は星史郎が自分にとって『特別』の『好き』な相手であることに気づく。

そして病室に昴流が入った時、そこは平常の空間ではなく桜の舞う術中の空間だった。
とまどう昴流の目に、桜の木の下に佇む冷酷な笑みを浮かべた星史郎が写り、『賭け』の決着を宣言した。

235 :東京BABYLON 10-1 :04/04/27 05:40 ID:???
Vol.11:END
賭けの決着をつける時がきた、と言う星史郎にとまどう昴流。
「貴方と僕が再会してから今日で一年立ちました。『約束』の日ですよ」
わけが分からない昴流だが、今朝見た夢をもう一度その場で見る。
そして星史郎は、あの昴流と話している男は誰なのかを思い出させた。
昴流と星史郎は7年前に会っていた。
それを忘れていたことを訝る昴流に、星史郎は自分が記憶を消したからだと答える。
なぜと問う昴流に、さらに星史郎は記憶を想起させた。

そして昴流は、7年前に星史郎の足元に少女の死体があったことを思い出した。
あのとき祖母を待っていた昴流は何かに呼ばれ、東京を歩いていて桜の木に辿り着いた。
その桜の木には多くの怨念が宿っており、昴流はその怨念を取り除きたいと願い術を行使していたが、
そこで少女の胸を貫いた男とはち合わせたのである。
過去の星史郎は昴流を眠らせその処分を考えていたが、目覚めた昴流が何も覚えておらず無垢だったことに
興味をひかれた。そして何喰わぬ顔で会話を始めたのだ。

一連の流れを見てショックを受ける昴流に、星史郎は自分が『桜塚護』であることを明かす。
『桜塚護』を見たものは必ず殺される、なのになぜ僕が生きているのかと混乱する昴流に、
星史郎はそれは『賭け』をしたからだ、手袋をはめている理由を思い出せ、と告げる。
幼い昴流は、両手に『桜塚護』の獲物だという印を刻まれた。再会したときにすぐ分かるように。
かけつけてきた祖母は孫の両手に宿敵の印が刻まれていることに驚愕し、封印の手袋を施したのである。
しかし今、星史郎は祖母のかけた封印をあっさり破り、昴流は倒れた。

236 :東京BABYLON 10-2 :04/04/27 05:43 ID:???
そして『賭け』の内容を思い出させる。
「君と僕がまた会えたら 一年間だけ一緒に過ごしましょう」
星史郎は昴流の真っ白な心とは正反対の心を持っていた。
もし再会したら、星史郎は昴流を『好き』になるよう一年間だけ努力してみる、
もし一年たって星史郎が昴流を『特別』だと思えたら、昴流の『勝ち』だから殺さない、と。
それが賭けだった。

星史郎は人間を殺しても何も感じない人間なのだと言う。
『桜塚護』は自分一人しかいない、継承するときに先代もろとも周りの全ての関係者を殺すので
常に一人しかいないのだと。星史郎は先代・自分の母を殺して『桜塚護』を継いだ。
自分は昔から『人間』と『物』との区別がつかない、といい星史郎は昴流の腕を折る。
さらにバカスカと蹴り、それでも何も感じない星史郎は『賭け』は自分の勝ちだとして昴流を殺そうとした。
反撃もせず力無く泣く昴流に、星史郎は
「人間が人間を裏切る、そんなことは『東京』にはどこにでも転がっています」とこともなげにいい、別れを告げた。
しかしそこに祖母の式神が現れ星史郎の術を破る。
とりあえず星史郎は退散し、傷ついた昴流は一人病室に残された。

237 :東京BABYLON 10-3  終 :04/04/27 05:50 ID:???
北都の予言通り『特別』な者に裏切られた昴流は、心が壊れ廃人のようになってしまう。
何も食べず話さない昴流に、北都は泣いて自分のせいだと詫びた。
北都は、聖人のごとく過ごし自分に執着をもたない昴流に「人のことなどどうでもいい」
そう思えるほど『特別』な思いを持って欲しいと願っていた。
そして星史郎なら昴流の特別になれる、と分かっていた北都は
彼の危険性を分かっていながらもむざむざと近づけてしまったのである。
こんな結末になって死ぬより辛い目にあわせた、ごめんね とひたすら謝り、北都はある覚悟を決める。
『桜塚護』は必ず昴流を殺しにくるだろう それだけはさせない、と。
北都は「どうか戻ってきて」と告げ、姿を消した。

北都が消えて1カ月、寝たきりの昴流は自分を呼ぶ声を聞く。
夢の中で見たものは、あの日見たのと同じもの。
しかし星史郎に抱かれ、胸を貫かれ息絶えているのは北都だった。
叫びながらはね起きた昴流を祖母は必死に止め、昴流は崩れ落ちる。
それからかかってきた電話は、北都の死を知らせるものだった。
正気に戻った昴流は「姉さん…」と涙を流し、決意する。
「あの人だけは僕が… 殺します」

                  <END>

*そして「X」という別作品に続きます。
 人相も性格も全く変貌してしまった昴流と、全く変わっていない星史郎が
 主役ではなくメインの登場人物で出てきます。
 彼らの決着は一応「X」で着いています。