アスターリスク/赤石路代
276 名前:アスターリスク[sage] 投稿日:2005/08/23(火) 12:17:41 ID:???
八神あやめは中学三年生。占い師の姉と二人暮し。
姉は「嫌な感じがする」と言っては引越しをくり返し、あやめは転校ばかり。
新しい転校先であやめは、小学生の頃の同級生・水原周と偶然に再会する。
あやめがかつて小学校を転校した後に周も転校したのだという。
小学生のころ二人は仲が悪く、喧嘩ばかりして生傷が絶えなかった。
しかし、あやめが転校する事になった日に周はあやめを好きだと告白し、
七夕神社のキーホルダーを渡してくれた。織姫と彦星のようにまた会おうと。
二人の中を冷やかす同級生は周に、あやめが転校した時は寂しかっただろうと訊く。
「いや…あの時はそれどころじゃなかった。あそこんち両親が一辺に亡くなったんだ」
あやめは両親の謎の惨殺事件によって転校していったのだった。

あやめは教師の後藤が一瞬、黒い角を一本生やした鬼に見えた。
その事を周に話すと、周とその友人の九十九光(つくも・ひかる)も
後藤の正体に気づいている、あやめが見た通り後藤は鬼だという。
「幽霊やUFOが見える奴がいるだろ。それと同じように鬼を見る奴もいる。
 そういう奴はアスターリスク…日本語だと星紋だと言われる」
アスターリスクは5種類いて、それぞれ五感で鬼の存在を感じる。
あやめは恐らく角を見る事で識別する視覚のアスターリスクだ。
周は触覚。鬼に触れると煮えた湯をかけられたようにその部分が痛む。
光は嗅覚。鬼が近づくと辺りに血なまぐさいにおいを感じる。
「俺たちは鬼を絶滅させるために生まれた選ばれた人間なんだ」
光の家系は星紋ばかりで、皆がそういった使命感を持っているという。
星紋の能力が発生するのは血筋によるところも大きいが、
鬼に怪我を負わされながらも生き延びた場合にも発生する。
また、突然発生する事もあり、あやめと周は恐らくそのタイプだ。

あやめの怯えた態度に後藤が勘付き襲われるかもしれないと、
周は端午の節句に使ったという『あやめの刀』を護身用に貸してくれた。
あやめの花は鬼を払う退魔の力があるといわれる。
その名を星紋が持っているとはすごい偶然だ。

277 名前:アスターリスク 2[sage] 投稿日:2005/08/23(火) 12:19:23 ID:???
家に帰ってから、あやめは周との再会と星紋の事を姉に話す。
そんな事は信じられないと姉は何故か怒りだし、
七夕神社のキーホルダーを大切にするあやめに言う。
「あの神社はけして結ばれてはいけない神様同士が奉られてると言われているのよ。
 七夕神社の神が結ばれてできる子は世界を滅ぼすなんて伝承があるぐらいなんだから」
姉のいきなりの態度にあやめは拗ねながら就寝した。
「どうしよう…どうすればいいの…」その傍らで姉はつぶやいた。

周は道で落し物をしたあやめの姉を手伝う。その時姉の手にふれると、痛みが走った。
痛みを感じる相手は鬼だけだ。何故あやめの姉が鬼?

校内で後藤に襲われるあやめ。刀を使う前に恐怖で失神した。
目覚めると、傍らに後藤の死体があった。
そして、後藤の心臓を取り出す姉の姿が。
姉には二本の白い角があった。姉は鬼だったのだ。
姉が鬼で、しかも後藤の心臓を取り出していた……
あやめは恐怖で泣きながら周の家へと走る。
周の家の玄関の鏡にうつったあやめの頭には…二本の金の角があった。
あやめは周のもとからも逃げ出す。それを追う周。
「水原くんには見えないかもしれないけどあたしに角があるの!鬼なの!」
しかし周は痛みを堪えてあやめを抱きしめ「痛くないお前は鬼じゃない」と言った。
やがて、あやめの角は消え、周も痛みを感じなくなった。
あやめは他の鬼とは違い、感情が昂ぶった時のみ角がでるようだ。
だがあやめが鬼である事に変わりは無いだろう。
周が星紋として目覚めたのは、かつて幾度も起こした喧嘩の中で
あやめが引っかいたり叩いたりして周に小さな傷を与えた結果なのだろう。

278 名前:アスターリスク 3[sage] 投稿日:2005/08/23(火) 12:20:23 ID:???
帰宅したあやめは姉に鬼の事を訊ねる。
「お父さんにもお母さんにもあたしにも、いつも角はあったのよ。
 ただあんたに見えなかっただけで。
 あんたは鬼の角を持たずに生まれた特別な子なのよ。
 同族には見えるはずの角があんたにはない。
 目覚めないですむ血なら目覚めないでほしい。
 あやめ は封印の意味でつけられた名なのよ」
だがあやめの力は目覚めてしまった。
後藤の角が見えたのは星紋ではなく、同族だったからだ。
鬼とは一体なんなんだ、何故こんな生き物がいるとあやめは言う。
「八神って名前を見て。右と左に引き裂かれた八という字。
 あたしたちは神から引き裂かれたもの。
 少しばかり先の事を見る力や、人の何倍もの腕力を持つ。
 そして怒ったり恐れたりすると――力が溢れ出てくる。
 手から爪のように口から牙のように、天頂から角のように」
姉が後藤の心臓を取り除いたのは、そうしなければ蘇ってしまうからだ。
二人の両親を殺したのは星紋だ。なにもしていないのに鬼だというだけで殺された。
残った仕事を終えればすぐに引っ越す、星紋には気を許すなと姉は言う。

279 名前:アスターリスク 4[sage] 投稿日:2005/08/23(火) 12:23:06 ID:???
光はあやめの姉が鬼だという事を察し、あやめの刀で刺した。
傷を負いながらも逃げた姉は、あやめに金を渡し親戚の家へ逃げろと言う。
鬼は強い生命力を持つが、あやめの刀でつけられた傷は癒えにくい。
「あたしね明日デートの約束してんのよ。まだ死にたくない。
 不思議ね。この呪われた血を持って生きたいなんて」
そこへ光とその父が現れ、あやめの刀で姉を惨殺した。
怒りに燃えたあやめは金の角を生やし、光の父を殺した。
光はあやめを殺そうとする。あやめをかばって周は倒れた。
あやめは光の片目を潰し、その場から逃げた。

もうじき退院する周は、あやめの残したキーホルダーを眺めていた。
七夕神社のですねとおばあさんが話しかける。
結ばれてはいけない神が奉られているらしいですねと周は言う。
「あら違いますよ。悪い世の中を壊すための救世主が生まれてくると言われているんですよ。
 あなたにも誰か織姫様がいるのかしら?」周はその言葉に肯き、あやめとの再会を心に誓った。
その二人のやり取りを影で見つめるあやめ。
周の無事を確認し、あやめは町を去っていった。

280 名前:アスターリスク 5[sage] 投稿日:2005/08/23(火) 12:25:27 ID:???
あやめは鬼ではない親戚に引き取られるが、
その一家の父に性行為を強いられ、父を殺して家を出てしまう。
赤い二本の角を持つ神庭魁(さにわ・かい)があやめを匿う。
魁は星紋によって家族を失い、今は高校生にして一人暮しだという。
角を隠せないのなら誤魔化せばいいと、人間の友人たちと共に
鬼のコスプレをした格好でバンド活動をしているという。
・鬼の血を引く者には苗字に「神」が入っている事が多い
・あやめは普段角が出ない反動か、角が出た時は星紋以外の者にも角が見える
などの情報が明らかになる。また、魁は親からある伝承を聞かされたという。

 九十九は百を欲する
 千の鬼の血を流し 万の民を支配する
 いつの日か 金の花が咲く日まで

九十九とは星紋の中でも勢力を誇る九十九一族の事だと言われている。
黄金の花とは――普通の鬼とは違うあやめの事かもしれない。
たかが鬼を見る事が出来るだけで何故世界を支配できるのだとあやめは問う。
「奴らにだけ俺たちが見えるのは何故だと思う?
 多分血が近いんだ。二つに引き裂かれたという神の片割れ。
 俺たちのように未来を見たり鉄を裂く力を持つ者があいつらにもいるのかもしれない。
 もしもそうなら、支配者になれる。似て非なる俺たちは邪魔なんだ」

事件の報道によって周はあやめの居場所を着き止める。
再会に抱擁を交わす二人。しかし、光も同じくやってきていた。
光はあやめにつけられた傷により視覚の能力も併せ持つようになっていた。
光とその仲間の星紋たちに襲われた魁は、
知り合いの鬼たちの居場所を書いたメモをあやめに渡すと絶命した。
周を巻き込んでは行けないからと、あやめは周を置いてメモに書かれた場所へと旅立った。


311 名前:アスターリスク 6[sage] 投稿日:2005/08/25(木) 11:29:56 ID:???
あやめはメモに書かれた場所を何件か訪ねるが、すでに家人はいなかった。
おそらく星紋によって殺されたのだろう。
最後の一件を訪ねるため熊本に向かう途中、事故に遭遇する。
鬼の怪力であやめは犠牲者を救うが、助けた相手からすら恐れられてしまう。
逃げるようにその場を去り、あやめはとうとう神名木家へ着く。
神名木家の人は無事だ。彼らは青い二本の角を持つ。
一人息子は志郎という名だ。
このところ力のある星紋が出現し、仲間が次々と殺されているという。
神名木家の当主は、金の花に関する正確な伝承を言う。

 世界が汚泥に沈む時 九十九は百を欲する
 千の鬼の血を流し 万の民を支配する
 いつの日か 金の花が咲く日まで
 星供(ほしく)の夜に 運命(さだめ)の星が出会うなら
 金の花 必ず咲かん

星供とは星供養、七夕の事だ。運命の星とは、あやめが何者かと出会うという事だろう。
世界が汚泥に沈む時…それは今の澱み腐った政治や金融界を指している。
熊本の政治家で星紋の九十九十蔵は自分の手で政界を再編しようとしている。
九十九が百を欲する。星紋が権力を欲しているのだ。

周はテレビで、事故現場に金の角を生やした少女がいた事を知る。
すぐに熊本に向かおうと荷造りをする中、父が話しかける。
お前が鬼を探している事は知っている、祖父にも鬼を見る力があったと。
父自身にはその力が無かったが、祖父は周と同じく星紋だったという。
「おじいちゃんが何者かに惨殺された時、おばあちゃんは鬼がやったと泣いた。
 お前にもおじいちゃんの血が流れている…止めはしない。仇を討ってくれ」
周が星紋に目覚めたのはあやめのせいだけではなく、血縁者に星紋がいたからだったのだ。
しかし周は、仇を討つどころか鬼であるあやめを光の手から守るために旅立つのだった。
案の定、報道を見たであろう光も熊本行きの飛行機の中に乗っていた。

312 名前:アスターリスク 7[sage] 投稿日:2005/08/25(木) 11:31:12 ID:???
熊本についた光は、従兄弟で十蔵の娘である燈子に会った。
「私ねぇ、五感全部を手に入れたのよ。
 鬼に噛ませたの。私の言う事なんでも聞く鬼がいるから。
 その鬼は神名木という家にいるわ。金の鬼もそこにいる」

七夕の夜。鬼は狩られるほどに凶悪なのかとあやめは当主に訊ねる。
「一角の奴らはな。鬼にはな、一角の鬼と双角の鬼がいる。
 血が違うのだ。あれは本能の欲望が天頂から噴出している者どもだ。
 確かに一角も双角も人間とは違う力を持っている。だが一緒くたにされては困る」
かつて、あやめを襲った後藤は一角鬼だった。

九十九の者は鬼の伝承を気にしていた。
七夕に金の鬼が誰かに出会う前に、金の鬼を殺さなければいけない。
金の鬼を匿っている神名木家の者諸共殺す気だ。
そう話す光と燈子のもとへ、志郎がやってくる。
燈子を噛んだ鬼とは、志郎の事だ。二人は恋仲だった。
「全部嘘だったのか?本当に全部!」
光に『あやめの刀』で刺され重傷を負いながら志郎は訊く。
「能力が増えるたびに近寄れなくなっていくのよ。
 結ばれるわけ無いじゃない私たちが。
 本当にそんな事がわからなかったの?」
その場に逃げ出した志郎に、通りかかった周が肩を貸す。
触覚の星紋でありながら痛みを堪えて自分に触れる周に、
志郎はかつての燈子を重ね合わせる。
「聞いてくれ。俺は九十九に手を貸した。
 九十九の女を好きになって、彼女に言われるまま力を渡した。
 あいつは触覚のアスターリスクだった。
 なのに俺に触れてくれた。それが……どんなに嬉しかったか」
志郎が家に帰った時には既に九十九の者たちが襲撃を仕掛けていた。
家の者には手を出さないでくれと志郎は燈子に約束していたのに。
「約束は今日で終わりよ。しかたないのよ志郎」
燈子はあやめを斬ろうとする。志郎は燈子を殺し、光の刃に倒れた。

313 名前:アスターリスク 8[sage] 投稿日:2005/08/25(木) 11:32:15 ID:???
あやめは光に殺されそうになるが周に助けられ、
抱き合うような形で死んでいる志郎と燈子の死体を残して
神名木の生き残りたちと共に場を逃げた。
娘を殺されたことに怒った十蔵は、なんとしてでもあやめを殺すと決意した。
神名木の人々は、あやめの運命の星とは周だろうと言った。

周とあやめは二人で逃避行を送る。
新しい土地でアルバイトを始めるあやめ。
そこで出会った鈴木という男はあやめをいつもじろじろと見てくる。
まさか星紋ではないかと、あやめは怯える。
アルバイト先に来た周は、鈴木が鬼である事に気づく。
彼の本名は神田将。
神田の目には角はなくともあやめが金の光を纏っているように見え、
鬼ではないがその血を薄くでも引いていると思ったのだという。
以前には無かった金の光を怪しむ二人。
ある朝、出かける前に周があやめにキスをすると痛みが走った。
あやめは角を出していないのに…金の光といい、あやめの力が強くなっているのだろうか。
このままあやめの力が強くなっていけば、いずれ周はあやめに触れることが出来なくなってしまう。
同族の神田や、普通の人間ならあやめに触れることが出来るのに……


314 名前:アスターリスク 9[sage] 投稿日:2005/08/25(木) 11:33:41 ID:???
周は以前あやめがほしがっていたスノーボールを買う。
名前入れのサービス期間中という事で、AYAMEと彫ってもらった。
その帰りに周は電車事故に巻き込まれた。意識の無い周を光が引き取る。
光は周に手術を施させる。脳神経を切り、記憶を失わせるのだ。
周の手によってあやめを殺させるためにだ。
九十九の力により、周は死亡したと報道された。
それを見て倒れるあやめ。入院してはじめて、あやめの妊娠が発覚した。
神田が見た金の光とは、あやめの中の子供から発せられるものだったのだ。
そして金の花とは、あやめの子供自身だったのだ。
周がいなくなっても、世界を汚泥から救う子供を必ず産まなければとあやめは決意した。

目覚めた周は、スノーボールに書かれたAYAMEという文字に懐かしさを感じる。
しかし今までの記憶はもうない。周はあやめの事を思い出せなかった。
光は、触れて痛みを感じる相手は鬼だ、鬼を殺せという。
周と光はあやめのもとへ向かう。光の手により神田は死んだ。
「あやめちゃんのお腹の中には…お前の子供が……」
神田は最後にそう言って周にすがりついた。周は混乱する。
追い詰められたあやめ。周は咄嗟に光を殺してしまう。
「何故君を助けたかわからない。僕が誰で、君が誰かも。
 ただ…君を見ていると胸が熱くて。でも…なにもわからないんだ」
「思い出していけるわ。きっと二人で…いいえ三人で」

そして半年後。
遠く北海道の地で金色の光に包まれた子供が生まれたという噂が流れた。
その子供は歳若い両親とともにどこへともなく去っていったという。
<終わり>

317 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2005/08/25(木) 13:23:33 ID:???
中3にして子持ちの方が驚愕

318 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2005/08/25(木) 13:40:59 ID:???
中3なのか?
作中でどんどん月日が経ってるんだろうなぁと思ってたけど

319 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2005/08/25(木) 14:02:10 ID:???
子供のせいで周があやめを触れなくなってたんなら
周は子供に触れないってこと?

320 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2005/08/25(木) 14:25:20 ID:???
嗅覚の星紋は鼻詰まりの人は効果ないんだろうか…
味覚や聴覚の場合どうなるか作中に書かれていましたか?
味覚はかなり気になる

325 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2005/08/25(木) 15:09:14 ID:???
アスターリスク書きです

>>317
>>318の通り、作中では数年が経っています。
あやめが鬼に目覚めてから魁と会うまでに一年が経過していて、
その後は何年経ったというのは書かれていませんが
光の髪が伸びていたり、主人公たちがアルバイトで生計を立てたり
アパートを借りているところから見て18歳以上にはなってると思います。

>>319
言われるまで気づきませんでしたが、理屈でいえばそうですね。
その事については特に作中で触れられていません。

>>320
鼻詰まりや味覚については書かれていませんが、
聴覚の星紋の場合は耳鳴りがするそうです。