あまいぞ男吾/Moo念平
533 名前:あまいぞ男吾大暴れ小学生篇[sage] 投稿日:2005/06/08(水) 22:21:28 ID:???
第一話

 巴男吾は荒っぽい両親と男勝りの姉のもとで育った。遅刻の常習犯、喧嘩に明け暮れ、成績不良、まさに
札付きの悪童。だが。彼の家族も負けてはいない
常在戦場の心構えを鍛えるという名目のもと、空手家の父、柔道家の母親、剣道家の姉、三者そろって
男吾の帰宅の際に闇討ちで出迎えるという非常識。

 ある日、男吾のクラスに一人の転校生がやって来た。転校生の名は奥田姫子。財閥の令嬢で、聡明で折り目正しく
上品な彼女は、転校初日腕相撲で男吾を負かすなど、あっという間にクラスの人気者となる。
 姫子のウィンクで心惑わされて腕相撲に負けた男吾は、帰宅するなり女に負けたことを理由に母親にしごかれるのだった。
「稽古不足は言うに及ばず、第一の敗因は己の心にあると知れ!」

 翌朝、男吾は姫子に果たし状を叩きつけた。笑われると思っていた男吾だったが、図らずも姫子は笑わずに
申し出を受けた。
 放課後、掃除の時間だが、誰もが姫子に気を遣い、清掃から遠ざける。腫れ物に触るかのような扱いに寂しさを
感じながら体育館の裏に姫子は向かった。男吾は掃除をさぼって先に来ていた。

「みんなの前であたしをやっつけないと意味ないんじゃないの? ここには誰もいないわよ」
「これは俺の心の問題だ。観客などいらん」
 パンチだキックだ柔道だ。あれ、男吾の奴、裸足で蹴りを放っているのにいつのまにかシューズはいてっぞ?
喧嘩も佳境に入り、石につまずいて体勢を崩した姫子にのしかかってパンチを放つ男吾だが、姫子の頬に涙が伝うのを
みてつい手を止めてしまう。

「この涙は痛いからじゃないの。くやしいからでもないわ。あたし、うれしいの〜。だってだって、アタシと心の底から
つきあってくれたのアナタが初めてなんですもの。からだ全部でぶつかってくれたのアナタだけなんですものォ」
 抱きつかれて泣きつく姫子に赤面させて硬直する男吾。その姿を微笑ましく見つめる男吾の姉がいた。
そして……帰宅した男吾は「女の子を泣かしたんだってなー。それでも男かー!」と姉と両親から追い回されるのだった。
「わー、いったいどうすりゃいいんだよー。逃げるのもトレーニングのうちだ。俺、頑張るぞ!」

534 名前:あまいぞ男吾大暴れ小学生篇[sage] 投稿日:2005/06/08(水) 22:45:03 ID:???
第二話

 いつまでも喧嘩に明け暮れて自由きままな巴男吾が気にくわない女子達は、共謀して男吾をクラス委員長に
してしまう。クラス委員長という枠に押しつけて男吾を鎖に繋ごうとしたのだった。 
 クラス委員長は皆の手本であるべきと言われた男吾は、喧嘩もわざと負け、掃除もさぼらず、授業中も
静かに席についた。行動する際に委員長のバッジが男吾の行動を抑制する。しばらくして、男吾は気の抜けたビール
のように死んだ目で登校するようになった。男吾のクラスの女子達は目論みが成功したことでほくそ笑んだ。
見かねた姫子は男吾に発破をかけた。「あなたらしくない!」
見かねた父ちゃんも男吾を道場に呼んでこう言うのだった。
「お前が正しいと思ったことを、胸を張ってやれ」

 一方、クラス委員長に選ばれなかったことで、荒れている男がいた。優等生の二宮秀一郎だ。
クラスメイトであるヒデキの「いまだになんで男吾が選ばれたのかわかんないよな〜」という言葉に水を得たかのように
「だろ! だろ!委員長にはこのボクが一番ふさわしいだろ? ケンカバカの男吾になんかつとまんないだろ〜」
と主張して、空き缶を蹴り上げた。放物線を描いて跳んだ空き缶は、六年生の頭にヒットした。

 男吾と姫子が校門前に来たとき、六年生に往復ビンタを食らって泣いているヒデキがいた。二宮は教師を
呼びに一目散に逃走していた。ヒデキを助けに六年生に立ち向かう男吾をクラスメイトが止める。
「ケンカはクラス会議で禁止だろう。委員長が破ってどうするんだよ!」
「バッキャロー! 勝つとか負けるとか。規則を破るとか護るとか、そういうことじゃねーんだよ」
クラス委員長のバッジを投げ捨てると、男吾は六年生に突っ込んだ。

 男吾のクラスの担任が突いたとき、男吾はぼろぼろになってグラウンドに仰向けに寝転がっていた。
姫子が二宮にこう「友達のためにここまで出来るの?! ねェ!」突っかかるのを止めさせると、男吾は大の字のまま
大笑いするのだった。その日の放課後、クラス委員長のバッジを二宮に手渡すと、
男吾は元の悪童に戻り、「廊下は静かに」という貼り紙を無視して駆けだした。

540 名前:あまいぞ男吾大暴れ小学生篇[sage] 投稿日:2005/06/09(木) 20:56:41 ID:???
第三話

 クラスの授業で「趣味」について作文を書くことになった。
姫子の手前、俺の趣味は食うこと、寝ること、ケンカと言ったものの、いざ原稿用紙を前にするとなかなか書くことが
できない。なんとなく、男吾は隣の屋敷に住む姫子のところまで行くことにした。

 長い竹馬を使って窓に顔を出す男吾に驚く姫子に、バランスを崩して倒れる男吾。
なんとか部屋に入った男吾は姫子にこう言った。
「おまえ、趣味はないとか言ったけど、部屋のなかホビーのかたまりじゃん」
「うん、でも、これはお父様が勝手に買い与えてくれたものだから。私の欲しかったものじゃないわ。こんなものより私は」
「そうだ! 欲しい物があったら」
「バカッ! そんなつもりでここにきたんじゃねーや!」

 稽古の時間だと大声でどなる家族の声に呼ばれて男吾はまた竹馬に乗って帰っていった。
バランスを崩して竹馬の下敷きになる男吾をみて姫子はこう思うのだった。
「わたしの趣味、強いて言えば巴男吾を観てることかな」

 次の日、男吾のクラスでファミコンソフトを二人組の男に奪われた生徒が泣いていた。それを聞いて少し不安
にかられる姫子。以前、彼女は「病気の弟が欲しがるソフトが売り切れになっていて……」と泣きつく
二人組の男にファミコンソフトを貸したことがあった。

 二人組の男は児童からファミコンソフトを奪っては売りさばく強盗だった。真相を知って我慢できず男の頬を
ひっぱたく姫子。加勢に出た男吾は男を挑発してゲームソフトの詰まった鞄を投げつけさせると、それをキャッチして
姫子を引っ張って逃走。

 翌日、自分の趣味はある男の子を観察することだと発表する姫子の姿があった。
「ケンカの次に昼寝が好きという彼……きっと今も、春のようにあたたかな夢を見ていることでしょう」

やはり、一話形式では短く書けないものだな。
 

541 名前:あまいぞ男吾大暴れ小学生篇[sage] 投稿日:2005/06/09(木) 21:18:13 ID:???
第四話

 男吾のクラスで授業参観の日が迫っていた。去年授業参観に来た男吾の父は、「そんな教え方で出来の悪い
うちのせがれが理解できるはずがないだろ〜」と担任にくってかかった末、背負い投げで投げ飛ばした。
 その話を聞いた姫子は面白がって喜ぶのだった。
「こっちの身になってくれよ。今年は来なきゃいいんだけどな」
「そうかしら? わたしのお母様こそ来なきゃいいんだわ!」

 今年、男吾の父は就職に成功したので授業参観に出席できないことになった。
恥ずかしい思いをしなくて済むと喜ぶ男吾だったが、そうは問屋がおろさず、母親が来ることになった。

 授業参観が終わる十五分前、男吾の母はやって来た。男吾の母は、問題を起こしてすぐ仕事を首になる
父親の分も内職外職で働いていて忙しい。今日も突然入った服の仕立ての配達で遅れてしまったのだ。

 堂々と大声で遅れた理由を述べる男吾の母を笑う父兄とクラスメイト。そんなこんなで授業参観は終わった。
遅れてきて参観したりない男吾の母は、次の体育の授業を見学しても良いですかと男吾の担任に申し出る。
慌てて止める男吾だったが、男吾の担任は凄まじい圧力に呑まれて許諾した。

 こうして始まった体育の授業。見ているばかりで物足りなくなった男吾の母は、止める男吾を蹴散らして
子供達に混じってドッジボールを始める。豪放磊落でパワフルな男吾の母親の周りで楽しそうに遊ぶ子供達を
見て、父兄達も子供達に混じってドッジボールを勤しむ。指輪と服を見せびらかしていた姫子の母も。
 男吾の母親の側に来た姫子は、彼女の耳元で小声で囁くのだった。
「男吾君のお母さんをみて、男吾君がどうしてあんなにステキなのか分かったような気がします」

 帰り道、笑いあって仲良く帰宅する男吾親子の姿があった。