-
42 :ご主人様に甘いりんごのお菓子1 :04/05/04 04:09 ID:???
-
いわく付きの偏屈息子が住むお屋敷に働きに出ることになったアップルビー・ローチ。
屋敷にはご主人様のジョシュア・グリーンウィルズ、執事、婆やが住んでいたが
婆やがぎっくり腰で入院したためにアップルビーが雇われたのだ。
執事の案内で屋敷に入ると台所からガラガラと物が落ちる音が聞こえる。
そこには砂糖まみれの青年が尻餅をついていた。
「まあ大変!怪我はない貴方?」とアップルビーは近づき
「大丈夫割れているのはどれも大して値打ちの無さそうな食器ばかりよ。
きっとそんなに叱られやしないわ」と耳打ちするが、執事はその青年に
「今日から私共にまともな食事を作って戴けるお嬢さんをお連れしましたよ」と紹介する。
だが、ジョシュアはアップルビーが住み込むことを納得しておらず、
本家の大旦那様が勝手に雇って押し付けたとクビを言い渡される。
弟や妹のためにどうしてもクビになるわけにはいかなかったアップルビーは
「どこもかしこも早速この荒れ様。おまけに飢えでお二人が屋敷内で遭難する前に
例え短期間でもお世話する人間は絶対必要でしょ。
グリーンウィルズの旦那様は賢明な御判断をされたと思います!」ともっともらしい理由を付ける。
「それに今月分のお給金 前払いでもう戴いてるんですもの」
「何だってえ?」
「それは大旦那様も手回しのいい」
「おまけにそれすっかり遣っちゃったし」
「なら働いて返して戴くのが道理で」
「お前少し黙ってろ」
「それに」
「まだ何か!?」
「このまま私に何も仕事をさせないまま返せば、そちらはまったくの支払い損でしょう。
幾らお金持ちだからって、そんな簡単に無駄使いするの良くないと思います。だ、だから…」
「・・・・・・・・・・・・・わかった。じゃあその分だけの仕事はしてみて貰おうか。僕は、腹が、減っている」
-
44 :ご主人様に甘いりんごのお菓子2 :04/05/04 04:11 ID:???
-
執事はジョシュアの好物は甘いものだというが、貧乏なアップルビーは
安い食材で栄養価の高い食事は得意でも菓子やケーキの贅沢品を作ったことが無かった。
見様見真似でアップルパイとかトルテとかなんかその辺の様な物を作って出すが
手もつけず「・・・アップルビー嬢をお家まで丁寧にお返しして」と言われてしまう。
「私はお屋敷の大旦那様から寄越されたんでしょう。じゃあ貴方からじゃなく大旦那様か
ら直々に解雇されない限りはやめる義理なんてありません!」とお屋敷から解雇承諾が来
るまで働くことになる。
その日の夜、アップルビーは家に手紙を書くが、ジョシュアの悪口になってしまい
家のつもりでうっかり窓から投げ捨ててしまう。
あわてて探しに行くとジョシュアの部屋にはまだ明かりがともっていた。
次の日は朝から大掃除を始めるアップルビー。
スカートをたくし上げて洗濯をするアップルビーに
「最低限の節度ってものを知らないのか」と呆れ注意する。
「おや この時間にお目覚めとは珍しい」と執事は言う。
「廊下をばたばたばたばた走り回る足音が騒々しくてね」
「起きてらっしゃったんならジョシュア様のお部屋のお掃除も」と言い返すが
僕の部屋には入るなと言う。
食事はどうするか聞く執事に食欲はあまりないと答えるジョシュア。
「あっそうですか。じゃあ軽めの物なんて。スープはいかがです。お野菜の色々入った。
あとお豆とか・・・」
「ああ」という返事に、ちゃんと普通のも普通に召し上がるのよねとホッとするが
「と、甘いもの」とジョシュアは付け加える。
とりあえずパンケーキを作って出すが、一口食べるなりシロップをどばーっとかける
ジョシュア。アップルビーは呆れるもののこれで当分凌げると、
しばらくはパンケーキにデコレーションで変化をつけただけものを出し続けるが
「アップルビー嬢をお家まで丁寧に」
「承知しま」という執事の腕を掴み
「明日から 明日から別のメニューで作りますから!」
-
45 :ご主人様に甘いりんごのお菓子3 :04/05/04 04:14 ID:???
-
近くの村から週に何度か来る配達人に頼んだお菓子作りの本を見て練習する
アップルビーだがケーキは破裂し、ぶすぶすと音をたてていた。
失敗作を動物にと庭に撒きに出ると今夜もジョシュアの部屋に明かりがついていた。
本当に何やってるんだろう。夜中にお腹空かないかしら。
・・・・私の知ったことじゃないけど。・・・風邪ひいちゃわないかしらといろいろ気になる。
翌朝、咳き込むジョシュアにやっぱりと呆れるアップルビーだが執事は
「すぐにお医者様に御連絡しましょう」と言う。大袈裟なとびっくりするアップルビー。
「しなくていい」
「しかし次に先生が訪ねて来られるまでまだ日にちがありますし、ここは大事をとって」
「しなくていい!あそこに連絡が行くと屋敷にも連絡が行く」と連絡するなと言う。
「・・・・・・ではお薬だけはお飲みください。お出ししてきます」
自分が出すと言うアップルビーに執事はお仕事の続きをと言う。
まだ、ジョシュア様のお部屋だけ掃除をしてい無いと言うが
ジョシュア様がしなくていいとおっしゃってるならと執事は言う。
-
46 :ご主人様に甘いりんごのお菓子4 :04/05/04 04:15 ID:???
-
翌日、ジョシュアは起きてこない。咳が気になっていたアップルビーは
本当の雇い主じゃないとは言え一応私がお世話させて頂くのはあの人な訳なんだし
・・・風邪ひいていらっしゃるんだしと理由をつけ食事を部屋に運ぶ。
こんこんとノックしてもジョシュアは出てこない。
こんこんこんこんこんこんこんと叩き続けると
「・・・・・・うるさいな!」
「聞こえてらっしゃるなら返事くらいしたって・・・」といいかけて目をまるくする。
その隙に「食事は今日はいい!」とドアを閉めるジョシュア。
だんだんだんだんだん!更に叩き続けるアップルビー。負けてドアを開けると
「何ですかあれ!?何ですか今見た部屋の中!うちのジョンの小屋より汚いわ・・・!」
「誰だそれは」
「飼ってる犬です!」
「・・・」
食事を召し上がらないなら結構だけど今日は何が何でも掃除をすると部屋に踏み込んでいく
アップルビーに勝手に入るなと言いかけてジョシュアは咳き込む。
「ほらね。それ絶対環境のせいです。明け渡してください さあ!」
「いいから僕の事は放っておいてくれ!」
「いい歳して子供みたい!」
「何だって!?」
「わかりました。貴方のことはお望みの通り放っておいて差し上げます」
一瞬、どちらも言葉が止まる。が、
「でも、この屋敷に中にこんな部屋が存在してるなんて気になって私が我慢出来ないんです!」と部屋に入っていく。
「一体何の騒ぎですか」とどこからか執事が現れる。
「すぐグリーンウィルズにこのお節介な娘の解雇承諾の手紙を出せ!」
「はあ」
「じゃあそれの返事が届くまではやめませんよ。その期間のお給金だってきちんと払って戴きますからね!」
「君は・・・」と言いかけてジョシュアは倒れてしまう。
-
47 :ご主人様に甘いりんごのお菓子5 :04/05/04 04:17 ID:???
-
アップルビーがジョシュアの所から戻る途中、戸棚の瓶を執事がいじってるのを見つける。
「それ全部薬ですか?ジョシュア様の」
「ジョシュア様は?」
「怒りつかれてお休みになられてるわ。・・・風邪にしては嫌な咳だと思った。
病弱だ何て聞いてませんでしたよ」
「言ってませんからな」
「昔から?」
「はあ生来に」
「なのにこんなすぐにお医者様も呼べない様な所に・・・」
「・・・・・・お噂は何かお聞きで?」
「いわく付きの偏屈息子って噂があるのは聞きました。
お屋敷から遠く話して隠すように住まわせてらっしゃるんだもの。
どうせ旦那様がメイドに手をつけたかそれとも
お嬢様が馬丁と恋に落ちた末の世間体の悪い不貞の子か」と言ったところで執事は薬瓶を落とす。
「あら正解。どっちの方?」
「どっちかです」
「それでも十分なお金で不自由なく暮らしていけるんだもの。同情の気持ちは私には沸かないわ」
「別に同情して戴こうとは思ってませんがね」と言う執事を黙って見つめるアップルビー。
「・・・・・ここに貴方達が暮らし始めてどれくらい?」
「まあ十年以上は」
「ジョシュア様は好きでここに居るの?」
「今はそうですね」
「昔は違ったのね」
「失敬。私の口が軽かった」
「ううん。人の御家族の事情を聞きだすつもりはないんです。私もごめんなさい。
でもそんなに長い間このお城の中に三人きりだったんなら・・・そうね同情はしないけど寂しいだろうなとは思うわ・・・」
ジョシュアが居ない間に部屋に入り掃除をするアップルビー。部屋の中は本だらけだった。
そこに書きかけの原稿を見つける。
朝、「ジョシュアごめんなさいね・・・」と屋敷に置いてかれた時の夢で目が覚め、
自室に向かうと部屋はピカピカになっており、ソファーでアップルビーが原稿を読んでいた。
-
48 :ご主人様に甘いりんごのお菓子6 :04/05/04 04:20 ID:???
-
後にジョシュアがいることに気がついたアップルビーが
「あの」
「え?」
「ここつづり間違えてます」思わず原稿をひったくるジョシュア。
「毎晩籠もってこれを進められていたのね。とても貴方が書いたなんて思えないわ
童話をお作りになるんですね。これティムがとても気に入りそう」
「それは君の飼ってる猫?」意地悪に聞く。
「末の弟です。可愛らしい物語だわ」ジョシュアの表情からが険がとれる。
「ちょっと説教臭いのが鼻につくけど!
凄いわあ。ちゃんと一冊もう本になってますもんね。初版から何年も経ってるけど
それが次回作なんですね?執筆はご趣味で?それとも作家として」と話し続ける。
「・・・・・・いいかい。君が自分のトランクの中を他人に引っ掻き回されたらいい気分はしないだろう」
「まあするもんですか。そんな奴張り倒してやります」
「おまけに荷物を一々吟味されたりしたら」
「警察に付き出します!」
「よーしそれはわかってるんだな。じゃあ」
「ああそういうこと。じゃあ代わりに私の使ってるお部屋好きになさったらいいわ」
と部屋に招き入れ、トランクを突き出す。
「この中には君の着替えとかも入ってるんだろう」
「当然」と答えるアップルビーに呆れ、机に目をやったジョシュアは家族写真を見つける。
アップルビーは妹は体が弱く、汚れた空気の部屋にいると咳が止まらなくなるからベッドがある部屋の掃除は
手を抜かないことなどを話すが父親のことは黙り込んでしまう。
アップルビーの父親は大工だが、ハシゴから落ち足を骨折したためにアップルビーが働きに出たのだった。
骨折の原因は仕事中に窓に下着姿の奥さんが見えたからだったので恥ずかしくて言えなかったのだ。
-
49 :ご主人様に甘いりんごのお菓子7 :04/05/04 04:21 ID:???
-
「・・・・・・ああ、立ち入ったことを聞いた」
「いいえ私もこの間うっかり立ち入った事聞いちゃったんで構いません。あの、私思ったんですけど」
「え?」
「ここは確かに街から遠くて不便でド田舎で森も気味が悪いくらいだけど
何が素晴らしいって空気がとても綺麗です。貴方のからだの為にってきっとそれは考えてらしたんだわ」
「・・・・・・・・・」
「でも、こういう可愛い小さな女の子が病弱なんて言うともっともですけど
ここまで育った大の男がそうだなんて鬱陶しいだけですよね」
「解雇通知はまだかなーッ」と部屋を出て行くジョシュアにソファーをどかして
仮眠がとれるよう部屋にベッドを持ち込んだらどうかと話す。
机に呼び鈴を置いて貴方が呼べば夜中でもお茶を運ぶと言うアップルビーに
「その時間君は寝てるだろ」とジョシュアは言うが
「起きてみせます」とアップルビーは答える。
ジョシュアは原稿を仕上げ、村から来る配達人に郵便を頼む。
雨が降ってくる。そこに妹が危篤だとアップルビーの叔母が迎えに来る。
ショックで気の抜けたアップルビーに君の家に僕の主治医を寄越す。君が帰る頃には診療出来ている筈だとジョシュアは言い医者と車の手配を執事に言いつける。
いい薬を持っていて本人も名医だから大丈夫と宥めるが
「・・・そんな・・・・こんな貴方一人治せない癖に名医だなんて信用できないわ・・・」
「こんな時に冷静に・・・治せないんじゃない。僕が直ろうとしてなかったから」と言って顔をそらす。
「・・・僕がずっと飲まなきゃいけない薬を飲んだフリして隠れて捨てていたせいで」
「もしかして甘くないから?」
「甘くないから」
「・・・・・・・子供だわ」泣きそうな顔で言う。
-
50 :ご主人様に甘いりんごのお菓子8 :04/05/04 04:22 ID:???
-
車がやって来る。雨は大降りになっていた。
「あの有り難いんですが・・・治療費や車代とてもお支払い出来ません」
「取り立てる気はないけど君が気になるなら給金から天引きしておこう」
「ああ、やっぱり引かれるんですかー」
「どうしたいんだ」
雨がこれ以上酷くならないうちに急かされるが、アップルビーは不安そうな顔でジョシュアを見つめる。
「大丈夫」とアップルビーの手を掴むジョシュア。
アップルビーが家につくと既に医者が診療した後だった。妹はもう大丈夫だと医者は言う。
気が緩み泣き出すアップルビー。
どうして妹をちゃんと見ててくれなかったのと弟達を責めるアップルビーに、
兄弟皆でアップルビーへの手紙を書いていたが、妹はたくさん書くことがあるのに上手く書けなくて夜遅くまで無理をしたために風邪をこじらしたと言う。
泣いているアップルビーを見て
仕送りで当面は凌げたし、来月には足も動くようになるから辛いなら戻ってくるように父は言うが叔母はご主人様は噂みたいな嫌な感じの青年には見えなかったと言う。
今回だって助けてくれたしいい人じゃないかという叔母に決していい人じゃないけどと即答するアップルビーだが、心ではううんでもジョシュア様に掴まれた手がまだ熱いとさっきのことを思っていた。
「・・・・・・・熱い?あー!戻って先生。ジョシュア様が」
屋敷に戻るとジョシュアは高熱を出し寝ていた。
「名医を連れて来ましたよ。ジョシュア様。馬鹿ね。自分だって弱ってた癖に」と
おでこに手をやるアップルビー。
「馬鹿とは何だ・・・」
「起きてらしたの」
「可愛い妹は」
「大丈夫だって貴方がおっしゃったわ」
「君の手氷みたいだぞ」
「ええ熱かったのがすっかり道中冷えきってしまいました」
「え?」
「いいえっ今夜特に冷えてるんです!あれからずっとそりゃあ冷たい雨と風が」と手を離しかけるがジョシュアはその手を掴み
「いいからそのまま気持ちいい」とアップルビーの手を自分の頬に持っていく。
-
51 :ご主人様に甘いりんごのお菓子9 :04/05/04 04:26 ID:???
-
数日後、執事が焚き火をしていると郵便が2通届く。
1通は出版社から、もう1通はお屋敷からのアップルビーの解雇承諾だった。
その頃、台所ではアップルビーがアップルパイに成功していた。
「アップルビー!来てくれアップルビー。見せたい物があるんだ」という声に
「私もお見せしたい物があります。ジョシュア様。今そちらへ!」と行きかけて
料理中捲り上げていたスカートの裾を戻す。
「さあ来ましたよ」息を弾ませてやって来る。
「ああ僕もだ」お互い手を後ろに回してアップルパイと手紙を隠している。
執事がお屋敷からの手紙をそっと火にくべる。
「で、見せたい物って何」
「あ、そちらの用事からお先に」
「いや、君から」
「いえいえ貴方から・・・」
終わり
-
52 :楽園1 :04/05/04 04:27 ID:???
-
「さむい。あ、そうだ。ぼくは、おいていかれたんだ。」
屋敷を走り誰かを探す男の子。
「ここにはだれもいない。ぼくはひとりだ。」
泣いている男の子の肩に執事が手を置く。
「もー信じられない!まぁたこのまま眠ってましたね〜〜〜〜〜〜〜!?」
アップルビーの大声で目が覚めるジョシュア。
「まったく!なんの!ために!
わざわざ書斎にベッド入れたんです。ほらすぐ横にあるでしょう。
ちょっと移動すれば済むことじゃないですか。じゃなきゃせめて毛布被るとか。
少しは反省して自衛して貰わないと!また風邪こじらせちゃうんですからね。
知りませんよ肺炎起こしてうんうんうなされたって」
「あの」
「もーあんな大変な看病御免ですから!」とまくしたてる。
「あのねえ君」そっと本の間に青い封筒を挟み隠し
「ここには入ってくるなって」と逃げ腰のジョシュア。
ジョシュアの部屋で酒の空き瓶を見つけ太陽はとっくに頭の上だと更に怒るアップルビー。
食事はどうするのか聞くアップルビーに食欲はあまりないと答えるジョシュア。
「え?」と心配そうに顔を覗き込む。
「本当に風邪ひきました・・・?」ジョシュアの額に手を当てる。
「二日酔いだよ。ただの」
「でも少し熱い」
「軽いものなら食べたいな。甘いやつ」というジョシュアに
だと思って今、婆やさんがケーキを焼いてるから庭で食べようと誘う。
昨日の雨のおかげで花が満開なんですよとアップルビーは言う。
-
53 :楽園2 :04/05/04 04:30 ID:???
-
「ね、綺麗に咲いたでしょう」
庭にはテーブルが用意してある。
「それで仕上がったんですか?」お茶の用意をしながら執筆状況を聞くアップルビー。
「出版社から催促状が届いたら君が破っておいてくれ」
「こっちはどうします?今朝着きました。いつもの青い封筒」と執事が尋ねる。
「・・・・・・ああ」と困り顔で答える。
「こんなに今期良く手紙を出す元気があるならまだくたばらないかな」と言うジョシュアに
「まあ酷いですね。御心配なんですよ」
「じゃあここに出向いて直に僕に言えばいいのに」とつぶやく。
「え?」
「君も?僕が「道楽」の物書きなんてやめて早く落ち着けばいいと思ってる?」
「いいえ。私あなたの書くお話は好きです!」
ジョシュアの頭の中に『戻っておいで』と一文が響く。
「何です?ちゃんとお花見てるんですか?」
「見てるよ」
「私じゃなくて!」
「見てるじゃないか花を」とアップルビーに笑いかけるが
『戻っておいで』『お前の場所へ』手紙がこだまする。
真っ赤になるアップルビーに
「赤毛ッ。ケーキが焼けたよとっととお運び!」と婆やの怒鳴り声が聞こえる。
「ではこれは私がお破きしましょう」と執事が青い封筒を両手に持ち替える。
執事に見透かされ照れるジョシュア。
「ちゃ・・ちゃんと名前で呼んで下さいって言ってるでしょう!!」
「何だい。髪と同じくらい赤い顔して。風邪ならうつさないでおくれよ」
遠くで婆やとアップルビーの声が聞こえる。
終わり
|