アドルフに告ぐ/手塚治虫手塚治虫>
291 名前:アドルフに告ぐ[sage] 投稿日:2005/05/05(木) 09:17:16 ID:???


墓の前に佇む、主人公・峠草平の回想として物語は始まる。

第二次世界大戦前、ベルリンオリンピック。
スポーツ記者の峠は、在独の弟に「渡したいものがある」と言われるが、
取材のために時間を大分遅れて彼のアパートに着く。
ところが、部屋は荒らされ、弟は死体となって、
窓から投げ捨てられ街路樹にひっかかったまま放置されていた。
警察を呼びに行きアパートに戻ると、弟の痕跡は全て消されてしまっていた。
独自に捜査を進め、郊外に埋められた弟の死体を発見。
しかし情報源は殺され、峠もゲシュタポに捕獲される。
拷問の末、幹部のランプの顔以外の道筋は全て忘れてしまう。
また、弟の部屋から紛失したワグナーの胸像が関与していることが分かった。
捜査中にリンダという女が「弟の恋人だ」と名乗り出たが、
実はランプの娘でもあった。その事実を知り、
峠はナチスに復讐を遂げられないやりきれなさから彼女を犯し、ドイツを去る。
彼女は自殺し、ランプは峠を抹殺することを誓う。

292 名前:アドルフに告ぐ[sage] 投稿日:2005/05/05(木) 09:17:55 ID:???
神戸のユダヤ人街に住むアドルフ・カミル(以下カミル)と、
近隣に住む外交官の子アドルフ・カウフマン(以下カウフマン)は
親友だったが、カウフマンの父や、その妻由季江は、
カミルと付き合うことを息子にやめさせようとしている。
カミルは、父イザク達が不明のある筋から得た
「アドルフ・ヒトラーはユダヤ人である」との怪情報を立ち聞きし、
その秘密を紙に書いて木のウロに隠すが、
カウフマンもそのウロのことを知っているのを忘れていた。

カウフマンの父は、芸者絹子を殺した容疑で追及を受ける。
絹子もワグナーの胸像をもっており、
全部で5つあるうちのどれかにヒトラー出生文書が隠されていたのだ。
カウフマンの父はノイローゼと疲労から病気になるが、その枕元で
「ヒトラーがユダヤ人て本当?」と息子にたずねられ、激昂、
体調はさらに悪化し、死んでしまう。
カウフマンは父の遺言から、本国の士官学校に送られ、
カミルと離れ離れになってしまう。


293 名前:アドルフに告ぐ[sage] 投稿日:2005/05/05(木) 09:18:36 ID:???
峠に、弟の教師(カミルの教師でもある)小城から連絡が入る。
ドイツから送られてきた文書についての相談だった。
それは、ヒトラーにユダヤ人の血が混じっている明白な証拠だった。
峠はこれを受け取るが、小城がアカ容疑を受けていたことから、
特高・赤羽警部の執拗な追及を受け、嫌がらせから仕事も失ってしまう。
途中、峠は由季江と知り合う。由季江は峠に恋をし、
友人の本多大佐を頼って峠を助けようとするが、
本多は快く思っておらず、峠との親交はうまくいかない。
赤羽との対決で、峠は捕まり、赤羽は自身の過失から脳障害を負ってしまう。
峠は話の分かりそうな仁川警部に事情を半分打ち明け、無実を認められ釈放され、
文書と小城を連れ去った赤羽を追う。
道中ランプまでも現れ、すったもんだの挙句、
小城の兄と仁川は銃殺されてしまう。
ランプは撃退したが、文書は小城経由でカミルに託される。
峠は仁川の娘と暮らし始める。

294 名前:アドルフに告ぐ[sage] 投稿日:2005/05/05(木) 09:19:01 ID:???
カミルの父イザクはポーランドの同胞を救うため日本を出る。
(カミルは小城との約束から、父に文書の存在を打ち明けないでしまった)
協力している教会の牧師と折り合いが合わず任務を遂行できないばかりか、
パスポートを盗られ、ユダヤ人であることからドイツに送られる。
カウフマンは混血であるため、特別訓練としてユダヤ人処刑を命じられる。
そこにイザクが現れ、カウフマンに命乞いをする。
他人の空似、イザクを名乗るのも虚言だと自分に言い聞かせ、処刑してしまう。
カウフマンはユダヤ人の娘エリザに恋をし、手引きをし日本に送り出す。
引受人としてカミルを頼りにする。この件は発覚せず、手柄も立て、
ついにはヒトラーの秘書の地位まで上り詰める。

小城とカミルは、峠の了解の下、小城の恩師に文書を託しにでかける。
ところが彼は自殺して(あるいはそう偽装されて?)いた。
遺された暗号から、芸者絹子の名前が浮かび上がり、その墓を張って、
本多大佐の息子芳男に行き当たる。
芳男は当初絹子との関係を否定するが、後日カミルをたずね、
文書をしかるべきルートに載せることを約束し、預かる。
ところがリヒャルト・ゾルゲ逮捕から、芋づるで芳男に追及の手が及び、
本多大佐は芳男を射殺(自殺と公表)する。
文書は本多邸の庭に埋められたままになってしまう。
仁川の娘は芳男に恋をしていたが、死を知り傷心から行方をくらます。


295 名前:アドルフに告ぐ[sage] 投稿日:2005/05/05(木) 09:20:48 ID:???
ヒトラー暗殺未遂の容疑で、カウフマンに英雄ロンメル将軍処刑の命が下る。
カウフマンは任務を拒否し、左遷させられ、アドルフ・アイヒマンの下、
ユダヤ殺しの日々を送ることになる。憔悴しきったある日、
ランプから、峠抹殺・文書回収の命を受け、潜水艦で日本に送られる。
母が峠と再会し結婚、エリザがカミルと婚約している事実を知り、愕然となる。
カウフマンはエリザを犯し、結婚を阻止しようとする。
カミルはカウフマンを殺そうとするが、
(うろ覚えです。峠が仲裁したのかな?)至らず。

空襲が始まり、由季江は子を身ごもったまま重体となる。
混乱の中、カウフマンは赤羽と組んで小城、カミル、峠を拷問にかけ、
カミルは小城の身を思い、芳男に文書を渡したことを吐く。
カウフマンは本多邸に峠を連れ、文書確保に成功するが、
既にヒトラーが死亡しており、徒労に終わったことを知る。
由季江は本多の計らいで入院することができたが、
カウフマンはそのまま峠たちの前を去った。
由季江は意識不明のまま娘を産むと、息を引き取ってしまった。


296 名前:アドルフに告ぐ[sage] 投稿日:2005/05/05(木) 09:21:31 ID:???
時は流れ、カミルは、イスラエルで軍人となり、
カウフマンはアラブ人の肩を持ち傭兵となっていた。
カミル率いる部隊に家族を殺され、
カウフマンは「アドルフに告ぐ!」とのビラを貼り、決闘を申し込む。
イザクのことは発覚しており、エリザのことなども相まって、
互いの心にはもはや憎しみしか存在せず、戦いは避けられなかった。
カウフマンは死に、カミルは再び戦場に戻った。

カミルが亡くなったあと、老いた峠がイスラエルのエリザやその子供・孫を訪ね、
アドルフ達の物語をまとめている事を告げる。
墓の前で思い出に耽る、冒頭の場面に戻って終幕。

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登場人物やエピソード、いくつか端折ってます。誤りあるかもしれません。

所感:
 作中、峠、カミル、カウフマンらが、民族、宗教、戦争について語る言葉がいくつか出てきます。
 彼らは個々の想いを十分に果たせぬまま、
 戦争と事件の波に飲まれていく・・・という姿を描いた物語です。
 空襲が始まり〜以後が、それまでよりも展開早い&多少強引だけど、
 いい場面も続いています。