7SEEDS/田村由美
490 名前:7SEEDS1 概要[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 13:47:27 ID:???
7SEEDS

作者 田村 由美
1〜8巻刊行。
月刊flowersで連載中。

短くまとめ
強制的に人類最後の生き残りにされた40名ほどの子供と若者、
数名の大人が、激変した日本でサバイバる話。
死人が何人も出て、ゴキブリや巨大昆虫がたくさん出る少女漫画にあるまじき漫画。
が、画力のおかげ?で気持ち悪さは少ない。

491 名前:7SEEDS2 1章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 13:48:00 ID:???
天ぷら、ヒレカツ、ポテトサラダ、大根の煮物にパスタ。
今日の晩ご飯はナツ(女子高生、引きこもり)の大好きなものばかり。
お腹いっぱい食べて眠りにつき、目が覚めたら暗闇の中だった。

激しい物音と揺れる床。電気を付けようとしてもスイッチが見つからない。
知らない女性(牡丹、警察官)が叫ぶ。「早く逃げて!ここは沈む!」
何が何だからわからないナツが起きあがると洋服を着ていた。足下はおニューのスニーカー。
―パジャマを着てたのに?ベッドで寝ていたのに?いつ着替えた?―
訳がわからないまま外に出たナツの目に飛び込んできたのは、荒れ狂う夜の海。

状況が把握できないまま、ナツはその場にいた3名と一緒にボートで避難する。
翌朝、嵐は収まった。だが事態は変わらない。
ここはどこなのか。なぜここにいるのか。何もわからない。
他の3名、牡丹、嵐(男子高校生、真面目)、蝉丸(男性高校生、いじめっこ)も同じだった。
船に乗った覚えも飛行機の乗った覚えもない。いつも通りに眠りにつき、気が付いたらここにいた。

492 名前:7SEEDS3 1章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 13:48:50 ID:???
いつまでもこうはしていられない。4人は手近の島に上陸する。そこは猫のような形の島だった。
水を確保しようと、一行は二手に分かれて水場を探した。牡丹は蝉丸と、ナツは嵐と。
嵐はどんどんナツに話しかける。「どう思う?俺達は誘拐されたのか?遭難したのか?ここはどこだろう?」
話しかけられてもナツは答えられない。―ここがどこなのか誘拐されたのか、そんな事わからない―

黙っているナツを見て、嵐は感心する。「石清水さんてすごいね。俺の彼女なら今ごろ泣きわめいて大変だよ」
ナツは黙ったまま考える。
―泣いたり怒ったりは自己主張できる人でないと難しいんです。あたしはそういうのが苦手なんです―
水場を見つけた嵐は下へ降りる道を探しに行く。ナツは水場が見つかったと伝えるように頼まれた。
大声で呼べば聞こえるからと。ナツは二人の姿を見つけた。ドキドキしながら声を出す。
―歌のテストは嫌いだった。カラオケも嫌いだった。大声なんて出した事ない―
「おーい!水場が見つかりましたー!」必死で大声を出したら、声がひっくり返って心臓がバクバクした。

水を汲むための水筒は荷物の中にあった。水筒だけではない。
今の状況に必要な物は揃っていた。ナイフ、ロープ、懐中電灯、シート、着替えなど。
しかしあって然るべき物はどこにもない。財布、携帯電話、時計。それはなぜだ?

493 名前:7SEEDS4 1章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 13:49:50 ID:???
救助隊に向けたメッセージを作り、食糧を探すことになる。
みんながテキパキ動いてるのを見て、ナツは落ち込んでしまう。
何も出来ないだけじゃない、こんな時にトイレに行きたくなったからだ。

一行は食糧を探して移動する。歩いてる時にナツは背中の違和感に気づいた。何だかチクチクする。
でも言い出せない。みんなに迷惑を掛けてしまう。足手まといだと思われたくない。
―気づいて欲しい。辛そうな顔してるから。声を掛けてくれたら言えるから…―
嵐が気づいた。「石清水さん、大丈夫?」
ナツはホッして背中の違和感について話した。背中にはヒルがついていた。
ヒルを見て慌てる嵐と蝉丸を尻目に、牡丹は冷静にライターでヒルを取り除いた。
その瞬間、上から大量のヒルが落ちてくる。慌てて走り出して林の中を抜け出した。

嵐は不審に思う。「島の奥に進んでいいのか?救助が来ても気づけないじゃないか。元の場所に戻ろう」
牡丹は反対する。「いつ救助が来るかわからないわ。島の周りに陸地は見えないし
舟影も飛行機も見えなかった。当てのない救助を待つよりも、生きる手段を整えるべきよ」
話を聞いていた蝉丸がニヤつく。「そうじゃないだろう。救助は来ないと思ってるんだろ?」

494 名前:7SEEDS5 1章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 13:50:21 ID:???
洞窟を後にした一行は、食糧を探しはじめる。機嫌が悪い蝉丸はナツに木の枝を割くように命令する。
「どうして?」と反駁するが、「どうでもいいからやれ。いじめられたくないならな」と押しきられる。
それ以上言い返せなかった。ぼんやり木を裂いてるナツに、牡丹が気づく。
「何してるの?食糧を探そうって言わなかったかしら?」「頼まれたから…」
「それは何?何のためにやってるの?」「わかりません…」
「わからないのにやってるの?貴方ばかなの?どうして考えないの?
ここは学校でも家でもないの。親も先生も助けてくれないの。自分で考えて生きていかなきゃいけないの。
目を見て話を聞きなさい!だから舐められるのよ!」

夏はその場から逃げ出した。ここは学校じゃないのに。初めて会った人達なのに。
私はここでも同じだ。居場所がない。学校でも居場所がなかった。
「石清水?そんな子いたっけ?」「あーあの子、暗いよね」「石清水さんと一緒の班は嫌だ。暗いの移りそうだもん」
考えるって何を考えるの?食べ物を探すの?
でも虫に襲われるかもしれない。道に迷うかも知れない。お願いだから早く助けに来て。誰か助けて。
…でも今ここに助けはいない…とにかく迷子にならないように目印を付けよう。
リュックに入っていたガイドブックを見て食べる物を探そう…

495 名前:7SEEDS6 1章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 13:51:35 ID:???
嵐が集めたバナナや山菜、ナツが採ってきたキノコで一行は食事をとる。
キノコは危ないから食べるなと言われたが、「せっかく採ってきてくれたんだから」と嵐は口にする。
その夜、嵐は吐き気が止まらず倒れた。
―あたしのせいだ!―泣きながら謝るナツに、嵐は笑いかける。
「石清水さんのせいじゃないよ。それにいいこともあった。ここはわからないことだらけだけど、
あのキノコは食べちゃ駄目だってわかった。そうやって一つずつ確認していこう」
彼女に連絡を取りたいと呟く嵐に、ナツはガッカリしながら納得する。
―こんなに素敵な人、彼女がいるに決まってる―

翌日、牡丹が誘拐犯の一味ではないかと疑ったナツと嵐は逃げ出す。
蝉丸は放って逃げようとするが、ナツが反対する。「でも仲間じゃないみたいだし…」
―ほんとうは嫌だ。麻井さん(蝉丸)が来るのは嫌だ。一緒にいきたくないけど「いい子」になってしまう―
蝉丸を誘ったが断られる。そしてナツに言う。「お前そういうところが嫌われるんだよ。なに考えてるかわかんねえ」

逃げ出した二人は食虫植物に襲われて動けなくなるが、間一髪のところを見知らぬ男(百舌)が助けに入った。
救助隊かと喜ぶ二人だが、男は違うという。自分も同じ立場だと。目を覚ました時、男の姿は消えていた。
島の中を進む二人だが、結局牡丹と蝉丸と合流する。4人で小高い丘に登り島の周りを確認した。
そこには絶望的な風景が広がっていた。四方のどこにも島影が見えない。陸地もない。飛行機も船もない。
「数日経っているのに、なぜ誰も探しに来ないんだ!」苛立った嵐が怒鳴りつける。
「俺は早く帰りたいんだ…」―彼女のところに―

496 名前:7SEEDS7 1章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 13:52:10 ID:???
もっと高い場所に上り周、囲を確認しよう。そう決めて急な山道を登っていく。
三人が注意深く上る中、ナツだけ足を踏み外してしまう。
「転んだりするのが男に可愛く見えると思ってるかもしれないけど、ここでは命取りだから。注意してね」
―そんなこと思ってない!「どんくさい」子供の頃からそう言われていた。ずっと嫌だった―
必死になってナツはついていく。どんくさいと思われたくない。注意して。気をつけて。
嵐の横顔を盗み見るが、嵐は前だけを見ている。
―いつもなら気を使ってくれる。大丈夫って聞いてくれるのに。彼女のことだけ考えているんだ―

苦しくなってフラフラになっているナツに、牡丹が声を掛ける。「休む?あなた人から「大丈夫か」って
聞かれるのを待ってるでしょ。甘ったれないでね。休みたいなら自分から言って」
見透かされてる!「大丈夫です、登ります」

登り続けていると、微かな人声がした。声のする方へ移動すると、三人がワニに襲われていた。
牡丹は躊躇なくワニの群れに突っ込んでいく。三人は逃れたが、牡丹が襲われた。
その時、嵐とナツを救った百舌が表れワニを追い払ってくれる。
怪我の手当をし、人心地ついたところで牡丹は語る。7人揃った。だから全てを話す。

497 名前:7SEEDS8 1章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 13:53:02 ID:???
恐竜はなぜ絶滅したのか。有力な説に、巨大な隕石が落ちてきたからだと言うものがある。
隕石の衝突で舞い上がった塵が地球を包み、太陽光線は遮断され地上は暗く冷える。
今同じ事が起こったらどうなるだろうか?それを正確に予測した学者がいた。予言ではない。観測による予測だ。
各国の首脳は協議に協議を重ねた。あらゆる対策を講じ、最悪のケースも想定して保険を作った。
人類が絶滅した時に希望となる、最後の種。若く健康な人間を選び、冷凍保存し、地球を災厄が襲う中眠らせ続ける。
そして人が住める環境に戻ったら、解凍し放出する。
7SEEDS。7つの種。それが貴方達だ。貴方達は夏のBチーム。

7人は眠っている間に集められ、冷凍された。家族はこの話を承知していたはずだ。
その後地球に何が起こったのか今はいつなのかはわからない。
数日後かも知れない。数か月後かも知れない。数百年後かも知れない…
嵐が驚く「百年!?百年も経っていたらみんな…」
―花(嵐の彼女)は生きていない。俺がいなくなって心配したまま…―
ナツは気づく。―最後の晩餐。あれはお別れだったんだ。だから大好きな物ばかり作ってくれたんだ―

現実を受け入れられない一行。牡丹の話がどこまで本当かわからない。
牡丹も騙されているかも知れない。希望を捨てずに一行は陸地を目指して旅立つ。

498 名前:7SEEDS9 1章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 13:53:34 ID:???
短いまとめ
隕石衝突による人類滅亡を避けるため、選ばれた7名の若者が冷凍睡眠で保存される。
それが7SEEDS。
プラス、彼らを守り導くガイドが1名存在する。
異質な島にたどり着いた7名と1名がサバイバルってゴキブリと食虫植物、肉食ねずみの島から脱出する。

現在地:九州海域。
生存者:全員生存。

補足
ナツは真面目で優しくしてくれる嵐が好き。
いじめっこ蝉丸は、いじめられっこ気質のナツに気づいてちょっかいをかけてばかりいる。
夏チームのメンバーは名前に夏の季語が入っている。(百舌を除いて)
他チームも同じく季語が入った名前のメンバーばかり。

499 名前:7SEEDS10 2章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 13:54:14 ID:???
目覚めたら海の上だった。お前達は人類の最後の生き残りで、春のチーム。
ガイドを自称する男(柳、自衛官)に、そう告げられた。
信じられない話だったが、それでも生きなければならない。
手近な島に上陸しようとしたが無理だった。その島には肉食の昆虫が住んでいた。
島に上陸して1分経つとかぎつけられて、襲われる。しかたがなく水上生活を余儀なくされていた。

だがそれも限界だ。水が尽きようとしていた。
食物は島の周縁で採取できたが、水だけはそうはいかない。川が見つからなかった。
しかし島の観察で、崖上に水場があると予想された。ロッククライミングの
経験がある花(女子高生、サバイバル能力に長ける)が崖を上り、皆を誘導する事になる。

無事崖を上り終えたが、そこは更に凶悪な虫の巣だった。
巨大なトンボやカマキリに襲われ苦闘する一行。
ここでは闘わなければ水は手に入らない。覚悟を決めて虫と闘う。
柳がカマキリに襲われて怪我をしたが、水を崖下まで引く事に成功し一行は水上生活へと戻った。

500 名前:7SEEDS11 2章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 13:54:45 ID:???
怪我後、柳の様子が一変する。
今までも口やかましく態度が大きなスケベ爺だったが、
口答えする花やハル(男、ピアニスト)を殴りつけ暴力で一行を支配しはじめた。

花は柳に嫌悪感を催すが、力では適わない。法の届かないこの状況下では、人権など何の役にも立たない。
今はまだこの程度で済んでいるが、長期化すれば花や藤子(女、医者志望)の身の安全は保障できないだろう。
一行は島を捨て陸を探しに出発するが、計画は失敗する。
海に出てまもなく天気が荒れ始め、嵐になった。イカダは大破して一行は何とか島にたどり着く。
そこは元の島だった。逃げようとして戻ってきたのだ。

でも今回は違った。なぜか虫が近づいてこない。
そして柳の様子がますますおかしくなる。言葉がたどたどしくなり顔色が悪い。
柳が言う。「脱出の鍵を見つけた。今から皆でそこに行く」
誰もが変だと思ったが、「脱出」の魅力には逆らえなかった。
おかしいと思いながら柳の先導に従って一行は島の奥深くへはいる。

501 名前:7SEEDS12 2章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 13:56:37 ID:???
辿り着いた先はカマキリの巣だった。
なぜ虫が襲ってこないのかわかった。柳がカマキリに寄生されていたからだ。
カマキリを恐れて虫は近寄れなかったのだ。
柳の中のカマキリは孵化しようとしている。内側から身体を食い破ってカマキリが姿を現す。
パニックに陥りながらも一行は生きる道を模索する。

カマキリに囲まれて逃げ場がなくなった一行は、叫ぶ。
「助けて柳さん!」「ヒーローになりたかったんだろ!助けてくれ!」
「重要な場所で危険な任務について、女子供を守りたかったじゃないのか!」
柳の指が動いた。ライターを取り自らの身体に火をつける。
火はあっという間に燃え広がり、カマキリがパニックになった。その隙に一行は逃げ出した。

ただ1人の大人は死んでいった。
「西を目指せ、そこに7つの富士がある。富士に生き残る術がある」と言い残して。
8人から7人に減った一行は、西を目指して旅立つのであった。

502 名前:7SEEDS13 2章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 13:57:20 ID:???
短いまとめ
春のチーム登場。
戦争映画大好き、女は男の三歩後な俺様自衛官が、さんざん嫌われて最後に命をはってチームを救う。
虫に寄生されて内蔵を食い破られているのに、
それでも意識が残っていて体も動き、遺言まで残すと言うスペシャルな離れ業を見せる。

現在地:関東海域。横浜近く。
生存者:ガイド死亡、生き残り7人。

補足
春チームのひばり(女、小学生)は解凍に失敗して眠ったまま。
常温で何の処理もほどこされていないのに、死なないし食べないし排泄しない。

一章に出る嵐と二章に出る花は恋人同士。
恋人に会えない事が何よりも辛いらしく、しょっちゅう嵐ー!花ー!とやっている。
お互いが7SEEDSに選ばれたことは知らない。

503 名前:7SEEDS14 3章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 13:58:13 ID:???
夏のBチームは移動を続けていた。ここがどこなのか手がかりが欲しい。
しかし何も見つからない。
それでも皆は明るく過ごしていた。考え始めると暗くなる。だから明るく過ごしていた。
進むうちに、少しずつ周りの様子が変わってきた。陸地が増え動物を見かけた。
肉食ゴキブリや巨大食虫植物でない普通の動物を見るのは安心する。
が、普通の動物を見て浮かれる一行を尻目に、容赦なく百舌が仕留める。食糧になるからだ。
ナツや嵐を助けた時といい、食糧になる動物を仕留め捌く手付きといい、
百舌はかなりサバイバル慣れしている。

嵐がかねてからの疑問を牡丹にぶつけた。
「なぜ夏だけ2チームあるのか。他のチームは一つなのに」

それは保険だ。誰を選ぶかは慎重に検討を重ねた。遺伝性の病気がないこと、
親族に早死にの傾向がないこと、身内から犯罪者が出ていないこと、
体が丈夫でアレルギーがないこと、大けがや大病を経験していないこと、
頭脳優秀で、見目麗しく、文化を保存する為に特定の分野に秀でている、生殖能力のある若者。

504 名前:7SEEDS15 3章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 13:58:45 ID:???
そうした意図で厳選された若者を選抜した後、不安になった。
美しい優等生は適応力が弱いのではないか?激変した日本で生きていけるのか?
だから保険を作った。社会に適応できない落伍者、引きこもりや家出人など
全く違うタイプで健康で生殖能力のある若者。それが夏のBチームだ。

ナツはショックを受ける。いじめられて学校に行けなかった。
社会に適応できなかった。でもそんな理由で選ばれるなんて。

ちまき(男、大学生、画家)が人骨を見つけた。
掘り返してみると、辺りには同じような人骨がたくさん埋まっていた。
家屋らしきものも見つかる。遠くに火山が見えた。ここに街があったが、あの火山が噴火したらしい。
どこの街かわからない。しかし街があったのは事実だ。
必死になって地面を掘り返す。何か手がかりを得る為に。ここが日本でない事を願って。

505 名前:7SEEDS15 3章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 13:59:33 ID:???
地面を掘っていた一行は、海面に浮かぶ妙な岩を見つける。
それは大きな手だった。何かの建造物か銅像のように見える。
嵐と蝉丸が潜って確認する。
右手は原爆の脅威を、左手は平和を象徴する。それは長崎の平和祈念像だった。
長崎は海に沈んだ。遠くに見えた火山は雲仙。海の底にはずっと続く町並み。
何があったのかはわからない。隕石が落ちたのか定かではない。
でも、ここで何かがあった。そして長崎は海に沈んだ。

ここが日本である確信を得た一行は、暗く沈んだ。
日本でなければいい、そう信じる事が出来なくなったから。
それでも移動を続ける。地方富士の一つ由布岳を目指す。
7つの富士に必要な物資が蓄えられている。きっと役に立つはずだ。

由布岳の麓に仏像があった。それが目印だ。
中には米や作物の種、塩に砂糖、布に本、大工道具…
自給自足に必要と思われる物資が集められていた。

506 名前:7SEEDS17 3章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:00:29 ID:???
浮かれる一向に、ちまきが別行動を申し出る。実家が熊本にあるから見に行きたいという。
しかし、熊本も自身の姿を留めていなかった。そこにはただ熊本城の残骸があるだけ。
小さい頃からずっと写生していた。見間違えるはずはない。
ちまきの家は熊本城から10分。家ももうないだろう。
これは夢でも何でもない、現実だ。

嵐が言う。「諦めるな。家は潰れても人は避難したはずだ。きっとシェルターに逃げたはずだ」
「でもシェルターに国民全部は入らないよね。70のおばあちゃんは入れてくれないよね」
一同は何も言えなくなる。
「この天変地異がいつ起こったかわからないけど、おばあちゃんが死んだ後だったらいいね」
倉庫から持ってきた種をその地に蒔いた。

嵐は悟る。これは現実だ。逃げようがない現実だ。だったらやる事は一つしかない。
嵐もまた、一行から離れて東京を目指す事にした。そこに会いたい人がいるから。
チームを離れた嵐に、ナツがついていく。ナツの家は埼玉だった。
邪魔にならないようにするから一緒に行きたい、そう言うナツを嵐は喜んで迎えた。

507 名前:7SEEDS18 3章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:01:05 ID:???
短いまとめ
夏のBチームが長崎と熊本の壊滅を発見。なぜ夏だけA、B二チームあるか明かされる。
チームは家柄、健康、性格、才能、容姿と全てに優れたエリート予備軍の若者と子供が選ばれた。
が、エリートは逆境に弱そうだし、ってことで急遽夏Bチームが追加。
他のチームと真逆で落ちこぼれ、引きこもり、性格に問題があるなど社会不適応者、
ただし身体だけは丈夫な7人が選ばれた。それが夏のBチーム。
一行は7つの富士の一つ由布岳にたどり着いた。物資を発見し定住が決定する。
嵐とナツのみ実家の様子を見るために関東へと旅立つ。

現在地:九州の由布岳。
生存者:変化なし。

補足
夏のAチームとBチームは九州、冬チームは北海道、春チームは関東と、保存された場所はバラバラ。

508 名前:7SEEDS19 4章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:04:54 ID:???
漂流を続けた春のチームは、船を見つける。
喜び勇んで近づくが、それは難破して苔むした船だった。
それでも初めてであった人造物だ。力が湧いてくる。自分たちの世界に帰った来たのだと思った。
しばらく進むと、妙な岩が見つかった。近づいてみると岩でない事が判明する。
これも人造物らしく、金属で出来ている。向こうに落ちた橋が見えた。

ここがどこなのか一行は悟る。
船は氷川丸、橋はベイブリッジ、金属は観覧車。横浜は海に沈んだ。
重要なのは、横浜が沈んだ事じゃない。それがそのまま放置されている事だ。
一切復興されていない。それは何を意味するのか。

花はここで別行動を取る。家が都内にあったのだ。
花とハルは都内へ、藤子と桃太(男、小学生、天才少年)は北側へ、
角又(男、坊主の息子)とちさ(女、良家の子女、大和撫子)、
ひばり(女、小学生の少女、解凍に失敗し眠ったまま)は残ることになった。

509 名前:7SEEDS20 4章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:07:39 ID:???
花とハルは都内へ進む。しかし陸は見えてこない、ずっと海が続く。
東京はどうなったのか、ここはもう都内に入ってるのか、不安になりながら進む。
ハルが気づいた。都内も駄目だ。全滅だ。
だってあそこに見えるのは、苔むした新宿の高層ビル群。
全て水に沈んだ。ビルの残骸、崩れた高速道路だけが残っていた。
誰1人、見つからない。諦めた二人は一行と合流し、富士を目指した。

しかし富士もまた姿を消していた。一行は灰に覆われ死滅した樹海の跡を闇雲に歩き回る。
富士にあるはずのシェルターは見つからない。意見が分かれる中、花があることに気づく。
先ほどから足下に、草で作った輪や石で作ったサインがあるのだ。
これは誰かが富士の在処を教えてくれているるのかも知れない。誰か、人がいるのかも知れない。

7つの富士と言われて真っ先に富士山を目指したが、本家の富士は入ってないのではないか。
噴火したら一番被害が大きい富士にシェルターを作らしないだろう。
印は東に進めと言っている。それが目指す場所ではないか。桃太が言う。東には地方富士がある。
一行の目的地は決まった。

510 名前:7SEEDS21 4章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:09:35 ID:???
シェルターの前で焚き火の跡を見つける。そう古いものではない。誰かがここへ来たんだ。
喜びシェルターに入った一行は失望する。シェルターは水浸しになっていた。
それでも花は諦めず、水の中へ潜っていく。分かれ道の先にはロープがはられていた。
こちらへ進めという印。誰かはここに来たんだ。
シェルターの奥で物資と共に手紙を見つける。夏のBチームのナツと言う人が残した手紙。
自分たちは九州にいること、立ち寄ったら目印を残して欲しいこと、
無事に生き延びて欲しい、獣に気をつけてと書いてあった。

角又が提案する。「今まで俺達は遭難したと思っていた。だから帰ろうとしていた。
でも現実は違った。俺達は遭難したんじゃない。帰るべき場所はない。
ここで生きていくためにどうするか考える時期だ。移動を続けるか、ここに定住するか―」
花は考える。―生きて何になるだろう。誰かと一緒になって子供を産んで命を繋ぐ。
それに意味があるのか。嵐がいないのに。
嵐と一緒なら地獄でも生きていける。嵐がいないなら天国でも生きられない。
…でも諦めたら終わりだ。嵐が生きてると信じよう―
春のチームは定住する決意をした。

511 名前:7SEEDS22 4章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:10:08 ID:???
短いまとめ
春のチームが横浜と東京の壊滅を発見。
人の姿は見ていないが、人がいた痕跡を発見。
夏Bが残した手紙を見つける。
7つの富士の一つ経ヶ岳を発見して定住を決意。

現在地:横浜、東京を経て神奈川の経ヶ岳。
生存者:変化なし。

512 名前:7SEEDS23 5章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:12:13 ID:???
目が覚めた時、最初に見たものはひからびた死体だった。
解凍に失敗したのだ。冬のチームは5人から始まった。

最初は順調だった。小動物や木の実で食べ物には困らなかったし、水もあった。
チームには高校球児が二人、大人しい鷹と騒々しい吹雪が選ばれていた。
二人はなぜか気が合い、そこに美鶴(女、日本舞踊の天才)も加えて
3人はいつも一緒に行動していた。

美鶴はかなりの辛口で吹雪をいつもやりこめるが、なぜか野球に詳しい。
実は美鶴は大の野球好きだった。だから鷹と吹雪のことも知っていたのだ。
美鶴は皮肉ばかり言ってるが、ほんとうは二人に会えて嬉しかったのだ。

513 名前:7SEEDS24 5章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:12:47 ID:???
美鶴の荷物には舞台衣装が入っていた。次に踊る予定だった夕鶴の衣装だ。
でも美鶴は踊りに行き詰まっていた。愛しい男と別れなくてはいけない
切ない悲しみが理解できていないと怒られていた。その衣装がここにある。
こんなものを入れられても困る、何の役にも立たない。
そう言いながらも、美鶴は衣装を捨てる事が出来ないでいた。

ある日、異変が起こる。埋葬しようと安置していた死体の1つがなくなった。
動物が餌として持っていったのかも知れない。これ以上死体を荒らされることを危惧し、
残りの遺体は埋めた。しかし埋めた死体も掘り返される。
ガイドと睦月(男、写真家)も虎に襲われて死亡する。

冬のチームは3人になった。
睦月が最後に残した助言に従い、北東を目指す。途中で怪我した犬を見つけ、鷹は手当をしてやる。
その後、犬はつかず離れる一行についてきているようだ。時折遠吠えがしている。
大雨に降られたり、濁流に呑み込まれそうになったり、下がっていく気温に
耐えながら一行は移動を続ける。そして、虎も一行を追ってきていた。

514 名前:7SEEDS25 5章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:13:30 ID:???
鷹は美鶴を見ていた。美鶴は美人なのに気さくだ。鷹は美鶴が好きになった。
でもずっと見ていたから気づいた。美鶴は吹雪を見ている。そして吹雪も。
美鶴は吹雪に言う。「私より先に死なないで。約束してね」

吹雪が虎に襲われた。美鶴と鷹を逃がすため、あえて虎に向かい倒れた。
鷹にも襲いかかってきたが、手当をした犬が助けに現れる。
犬が虎と争っている間に、美鶴と鷹は逃げた。意識がもうろうとする鷹を美鶴は手当てする。
どんどん気温が下がり、雨は雪に変わった。鷹の身体が冷えていく。

美鶴が呟く。「吹雪に手紙を書いたの。夕鶴の解釈ができなくて行き詰まっていて。
別れの悲しみが理解できなくて。返事なんて来ないと思っていた。
でも返事が来た。…涙が出た。吹雪は私のヒーローだった…」

515 名前:7SEEDS26 5章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:14:11 ID:???
夕鶴のつうは与ひょうを愛していた。ずっと一緒にいたかった。
でも与ひょうは約束を破ったから、もう一緒にいられない。お別れだ。
気温はますます下がっていく。美鶴は自分の服を全て脱ぎ、鷹にかぶせた。
ずっと持っていた夕鶴の衣装を身にまとい、雪空の下で舞う。

鷹が目を覚ました時、寒さと痛みを覚えた。
目の前で美鶴は凍死していた。鷹だけが生き残った。
「なぜ生きてるのか。僕だけが、なぜ」
嘆き続ける鷹の目に、影が映る。吹雪だ。吹雪は生きていた。
それなら美鶴が死ぬ必要はなかった。美鶴は吹雪の後を追ったのに。

二人は美鶴の死体を川に流した。もう埋める体力が残っていなかったのだ。
二人は一緒になって眠った。目が覚めると、吹雪の身体が暖かかった。
―ありがとう。生きていてくれてありがとう。
役に立たなくてごめんなさい。守られてばかりでごめんなさい。
闘えず、助けられず、何もできなかった。でも今度は違う。吹雪を守ってみせる―

516 名前:7SEEDS27 5章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:15:13 ID:???
翌日から鷹は変わった。
今までは動物を狩ることができなかった。どうしても躊躇っていた。
でももう迷わない。鷹は動物を狩り、餌をとることを覚えた。
虎はきっと襲ってくる。牙も爪もない、それでいて大きな無力な獲物。
これほど食べやすい餌はないだろう。だから武器を作る。木を削ってヤリを作った。

この足場は大丈夫か、この岩は崩れないか、ここは上れるか。
全部の力と全部の神経を集中させてシミュレーションする。
慎重に判断し決断する。甲子園ではそうやっていた。生きる事も同じだ。
慎重に慎重に行動して吹雪を守ってみせる。

吹雪は虎に襲われた怪我が痛むのか苦しそうにする。
鷹は吹雪を休ませて見張りを買って出る。
―元気でいて欲しい。どうか元気でいて下さい―

517 名前:7SEEDS28 5章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:16:17 ID:???
どんどん空気が乾燥して、火の付きが良くなってきた。
山火事が起こりそうだと危惧していると、山中に火が見えた。
風上へ逃げる二人の元へ虎が襲いかかる。鷹の反応が早かった。ヤリを刺された虎は絶命する。
後ろから小さな虎が出てきた。あの虎の子供だ。虎も自分たちが生きるために餌を狩っていたのだ。
―ただ生きることが、どうしてこんなに辛いのか―

二人は火事を逃れ、7つの富士の一つ阿寒富士に辿り着いた。シェルターには多くの物資が蓄えられていた。
人の姿はなかったけれど、人がいた名残に接しただけで嬉しかった。
―生きていける。まだ生きていける―
泣きながら振り向いた鷹は、そこに死んだ犬の姿を見る。
吹雪は虎に襲われた時、死んでいた。でも死んだと認めたくなかった。
1人になったと思いたくなかった。1人では生きられなかった。だから犬を吹雪と思っていた。

―ありがとう。一緒にいてくれてありがとう。
1人で生きていけるまで、ずっと側にいてくれた。ここまで連れてきてくれた―
冬のチームは1人になった。それでも僕は生きていく。

518 名前:7SEEDS29 5章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:17:31 ID:???
短いまとめ
なぜか北海道に虎がいて襲われる冬チーム。
一人ずつ襲われていき、最後の一人を残してみんなやられる。
生き残った一人は犬を連れてシェルターへ辿り着く。

現在地:北海道、阿寒富士。
生存者:1名を除き全員死亡。

補足
鷹が助けた犬も死んだが、2匹の子犬がいる。
鷹はこの子犬に吹雪と美鶴と名付けて暮らす。

519 名前:7SEEDS29 6章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:20:21 ID:???
関東を目指す嵐とナツに、蝉丸が追いかけてきた。
蝉丸の実家は浜松だ。彼も実家が気になるらしい。
7つの富士の一つ神戸富士に近づいた頃、嵐が蜂に刺されて倒れた。
熱を出して意識が戻らない嵐を前に、ナツは助けを求めて走り出す。
誰もいないとわかっていても、じっとしていられなかったのだ。

ナツは見つける。板を打ち付けた橋があった。畑があった。家があった。人が、いた。
蜂に刺されたことを伝えて救いを求めると、十六夜(男、消防士)は安心するように言う。
しばらく高熱が出るが命に別状はないらしい。
十六夜の名前を聞いてナツは気づく。それは秋の季語だ。彼は秋のガイドだった。

そこへ馬に乗った男と女が現れ、畑を荒らし家畜を殺す。
秋ヲ(男、ベンチャー企業の社長らしい)と蘭(女、設計士らしい)、彼らが秋のチームだった。
ナツ達と出会った二人は、ナツだけを自分たちの住処へ呼ぶ。
一人で行くことに反対する蝉丸と嵐だが、ナツは決めた。
―この人達は怖い。でもしっかりしないと。行って情報を聞いてこなくては―

520 名前:7SEEDS30 6章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:21:38 ID:???
辿り着いた先は一つの村だった。高い塀に囲まれ、門があり、家がある。
驚く間もなくナツは尋問される。略奪に来たのではないか。何しに来たのか。
否定するナツに不審の目を向ける。
―人がいない世界を怖いと思っていたのに、人がいるのはもっと怖い。あんなに誰かに会いたかったのに―

鐘が鳴った。反省会の合図らしい。反省会?と不思議がるナツを残し、秋ヲと蘭は出ていった。
秋チームのメンバーが今日の仕事内容を報告する。
そして仕事が進んでいないくるみ(女、牧場勤務らしい)に暴行を始める。
許しを請うくるみに容赦せず、蘭はくるみを鞭打つ。
他のメンバーを見ると、みんな身体にアザや怪我の後があった。あれは全部蘭と秋ヲが…?

ナツは蘭を止めるように十六夜に言う。「あなたはガイドなんでしょう。止めてください!」
だが十六夜は首を振るばかり。そんな十六夜を見下して蘭が言う。
「その男に期待しても無駄よ。たった一人の大人で事情をしっていたのに逃げたのよ。そう言う男よ」
何度も「すまない…すまない…」謝り小さくなる十六夜。
ナツは思う。―私もこう見えてるんだろうか。小さくなって丸くなって。何て情けない…―

521 名前:7SEEDS31 6章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:22:46 ID:???
暴行はますます激しくなり、ナツは止めよとするが止められない。
そこに嵐が止めに入った。ナツの様子が心配で、蝉丸と二人で後をつけたのだ。
「あんた達は王様なのか。こんな境遇に突き落とされた者同士、助け合おうと思わないのか!
あんた達もなぜ反抗しない!なぜ言いなりになってるんだ!」

蘭が静かに言う。「ここで1か月しか暮らしてない人に、何も言われたくないわ」
秋ヲが呟く。「1週間目、夢だと思う。2週間目、参ったなと思う。1か月後、諦めないぞと思う。
半年後、もう無理かなと思う。1年後、死のうかと思う」
ナツはわかった。3年ぶりに人を見て略奪だと疑う。
高い塀を巡らして、かがり火を焚いて、見回りを欠かさない。
―この人達も人間が怖いんだ―

嵐はなおも言う。「略奪するつもりも盗むつもりもない。俺達は関東へ行きたいだけだ。
物資を分けてくれれば嬉しいけれど…」
「分ける?何と交換して?ここにはお金はないのよ」絶句する嵐。

522 名前:7SEEDS32 6章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:23:17 ID:???
嵐と蝉丸は取り押さえられる。二人を捕まえた男は、オリンピックの柔道選手だ。
「そんなに強いのに言いなりになっているのか。人は平等だ。目を覚ませ!」
秋ヲは言う。「ここでは人は平等じゃない」

ナツだけは元の家へ連れて行かれ、食糧を出される。
二人は急に英語で話し出した。話しについていけないナツ。
もし生き残りがいれば、英語圏の人間だろう。だから忘れないように話しているのだ。
ナツは思い出す。7SEEDSは選ばれたエリートなんだ。この人達は優秀な人達だったんだ。

英語が話せないこと、夏のBチームだと打ち明けると、二人の態度が変わった。
ナツ達が落ちこぼれだとわかったからだ。馬鹿馬鹿しいとナツの相手をするのを止める。
そのまま放置されたナツは、二人の元を逃げ出して嵐と蝉丸を助けに向かった。

523 名前:7SEEDS33 6章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:24:22 ID:???
逃げようとする三人の元へ、十六夜がやってきた。水を差し出されるが、蝉丸が止めた。
地面に落ちた水を飲んだ鶏が死んだのだ。毒が入っていたのだ。
十六夜は貯水池にいた。そこへ毒を流し込もうとするところを止める。
「みんな死んだ方がいいんだ。もっと早くこうすればよかった。
ガイドはみんな持っている。死にたくても死ねなくなった時のために…」

―これは俺達の3年後の姿なのか?何も知らないから綺麗事を言えるのか?―
そう思いながらも、3人は諦めなかった。
夏Bのガイド、牡丹も毒薬を持っている。でも使わないでいてくれた。何度も助けてくれた。
俺達は生きていこう。邪魔はさせない。

3人は脱出する途中で秋チームのメンバーに会った。一緒に逃げようと誘うが、断られる。
「人間が平等じゃないのは本当だ。この世界では生きる力を持つ者と持たない者がいる。
あの二人は蹴飛ばしても立ち上がらせてくれる。間違ったやり方でも構わない。僕らはこれでいいんだ」

524 名前:7SEEDS34 6章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:25:05 ID:???
秋チームの村を出て、海岸線に行き当たった。歩いても歩いても切り立った崖が続く。
嵐は悟る。蘭が言っていた「物理的に関東にはいけない」と言う意味がわかった。
日本はフォッサマグナで分断された。
どうやって下へ降りるか相談しているところへ、十六夜がやってくる。
ロープを使って下ろしてくれると言う。
その代わり東でいいものを見つけたら、秋のみんなに教えて欲しい。そう申し出てきた。

信用ならんと言う蝉丸を放置、嵐は彼を信じた。
―僕は消防士でした。覚悟してきたつもりだったけど、心のどこかで本気じゃなかった…
どうか前向きでいて下さい。東で何を見ても希望を失わず戻ってきて下さい―

ボートで進んでも進んでも、陸は見えなかった。
ひょっとしたら東の世界はそのままで、家族が行方不明の子供を捜していて…
そんな事はありえない。昔と同じものは、何も残っていない。

三人の目の前には、切り立った崖とカラカラに乾いた大地が広がっていた。

525 名前:7SEEDS35 6章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:26:49 ID:???
東の大地はカラカラに乾いていた。乾いた大地には、たくさんの恐竜の死骸が埋まっている。
しかし、それは死骸ではなかった。おしっこをひっかけられた一体が、いきなり息を吹き返した。
乾期の間は土にもぐって眠り、雨期になり水分を補充すると生き返る。
いわば冬眠しているようなもの。無数の恐竜は雨期と共に蘇る。いつ雨期がやってくるかわからない。
追い立てられるままに、三人は足を急がせる。

だが関東に近づくに連れ、嵐の様子がおかしくなる。
日本は壊滅した。関東も激変した。東京も無事ではないだろう。
花(恋人)はどうなったのか死んでしまったのか。花を思い出し意識がかすむ。

経ヶ岳のシェルター近くで、誰かが作った印に気づく。それに従って進むとシェルターを発見した。
そして気づく。これが経ヶ岳のシェルターなら、ここは神奈川だ。
しかしここに至るまでの間、富士山を見なかった。富士も消えた。
―花は、花はどうなったのか…?―

嵐は水浸しになったシェルターの中にロープを張り、ナツは置き手紙を残した。
翌日、辿り着いた東京は予想通りだった。無事なものは何一つ残っていない。

526 名前:7SEEDS36 6章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:27:41 ID:???
ぽつぽつ雨が降り始めた。もうすぐ雨期が来る。乾いた大地が蘇り、生き物も活発になる。
乾期の間は陸も海も静かだ。でも雨期が始まれば様々な危険がある。
毎日何も変わらない。ずっと同じ世界。でも今日は違った。人の声がする。
「誰かいないのか!返事しろよ!」蝉丸が叫んでいる。
鷹は返事が出来ない。返事がしたくても声が出ない。やっと人に会えた。

鷹の目の前で嵐が海へと入っていく。
蝉丸とナツは止められない。嵐が落ち込んでいるのがわかるからだ。
鷹は止めたかった。雨期が近い海は危険だ。魚が襲ってくる。
危惧した通り、嵐が魚に襲われる。
鷹は走り出した。ずっと待っていた。こんな日を夢見ていた。誰かを助けるられる日を。

鷹の投げた槍が刺さり、魚は沈んでいった。気力をなくし海に沈む嵐を、鷹の犬達が引き上げた。
嵐は叫ぶ「助けてくれなんて頼んでない!なぜ助けた!あんたは何だ!?」
鷹は静かに答える。「僕は冬のチームの生き残りです。人に会ったのは貴方達が初めてだ」
答えを聞いて嵐は絶望する。―そうだ、普通の生き残りなんていない。花はいないんだ―

527 名前:7SEEDS37 6章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:29:07 ID:???
ナツは自分たちが夏Bのチームであること、九州のシェルターに仲間がいることを話す。
経ヶ岳のシェルターで目印を作ったのは鷹だった。
彼はたった一人生き残った後、15年東北や関東を彷徨っていた。
その間誰にも会えなかった。でもずっと会えると信じていた。
三人と鷹は火を囲み、食事を共にする。

やがて皆が寝静まった後、蝉丸がナツを起こす。
「たった一人生き残ったなんて怪しい。殺し合いした挙げ句の生き残りかも知れない。
あいつの話しなんて信用できない。ずらかるぞ」
「黙っていくなんて。いい人なのに…」ナツは反論するが、嵐も蝉丸に賛成してしまった。

三人が去っていく足音を、鷹は黙って聞いていた。
「もうすぐ雨期が来る。気をつけてください。
溺れそうになっていた貴方に言います。貴方は一人じゃない。それはここでは素晴らしいことなんだ」
そう言われても嵐は納得できない。―それが何だって言うんだ。花がいないのに!―

528 名前:7SEEDS38 6章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:30:01 ID:???
三人は去った。鷹は一人残った。犬と暮らしながら、鷹は思い出す。
「あれは夢だったんだろうか。本当に人にあったんだろうか。
…夢じゃない、夢じゃないよね。
姿が怪しかったのかな。ずっと身なりなんて気にしなかったから。
次に誰かに会った時は、もっと慎重にしよう。遠くから見守ることだってできる。
誰かに会いたい…」

雨期がやってきた。雨の中で花は子犬に出会う。そして恐竜のような獣にも。
子犬を追ってきた鷹は花の姿に驚く。
…また拒絶されるかもしれない。それでも放っておけない。
鷹は犬を使って獣を追い払い、花を助けた。

呆然としてる花に、恐る恐る声を掛ける。「こんにちは…」
花は笑って答えてくれた。「こんにちは」

529 名前:7SEEDS39 6章[sage] 投稿日:2006/06/04(日) 14:31:45 ID:???
まとめ
夏のBチームの夏、嵐、蝉丸は神戸で秋のチームに出会う。
秋のチームは3年前に解凍され、神戸のシェルターの上に村を築いている。
蘭と秋ヲがリーダーとなり、暴力で村を支配しているが秩序はある。
関東と関西は分断されている。
嵐は東京が無事ではないこと、花も死んでいることに絶望して自棄になる。
東京でナツ、嵐、蝉丸は冬の生き残り鷹と出会うが拒絶する。
鷹は三人を見送り、花と出会う。

現在地:神戸から神奈川を経由して東京へ。
生存者:全員生存。

補足
解凍時期は、チームによってバラバラらしい。
狭い日本国内で、なぜか虫だけの世界恐竜がいる世界などと全く異なる生態系が共存している。
四季は存在しない。乾季と雨季に別れる。

767 名前:7SEEDS40 7章[sage] 投稿日:2006/07/11(火) 12:36:05 ID:???
鷹は春のチームと合流した。
春チームはたくさんの情報を得るが、藤子は鷹が信用できず懐疑的だ。
鷹がボールを投げた姿を見て花は気づく。新巻鷹弘!その名前は知っている。
いつも試合を見ていた。甲子園が好きで春も夏も見ていた。でも同い年だったはずだ…

鷹は微笑む。「15年経っちゃったね」
同世代の人間が15年前に死んでいる。その事実は春チームを打ちのめした。
鷹は様々な情報を提供してくれたが、生存者の話も聞きだした。
しばらく前に3人連れに遭ったらしい。
花は嵐かもしれない!と意気込んで尋ねるが、青年が溺れていたと聞いて力が抜ける。
嵐は水泳の選手だったからだ。溺れていたなら嵐ではない…

鷹は塩が取れる場所も案内してくれた。その帰り、花はぬかるみに足を取られて滑る。
バランスをとろうと手をついたところに、青紫色の変わった植物?が生えていた。
花は焚き火の後を見つける。
燃えかすに見覚えがあった。ロビンソン・クルーソーの上巻だ。嵐に借りた本だ。
花は本の切れ端が嵐に繋がってる気がして元気が出た。
手の甲が、少し痒かった。

768 名前:7SEEDS41 7章[sage] 投稿日:2006/07/11(火) 12:36:51 ID:???
雨期が続いていた。気づくと手の甲が更にかぶれている。
かゆみ止めを塗ったが収まらない。赤い湿疹は青紫色に変わっていた。
青紫はあの日手をついた植物にそっくりで…
あの場所に行ってみる。前よりも広がっている。これは…
鷹が追いかけてきた。
「近づいてはいけない!あれは感染するんだ。動物も植物もどろどろに溶ける」
「…治す方法は?」
「わからない。近づくと感染するから調べられないんだ」

シェルターに戻った花は保管されていた医学書を読みあさる。
何か薬になるものは。オオバコ、オトギリソウ、ドクダミ…そんなものがどこにあるのか!
―どうしよう。藤子ちゃんは医者志望だ。相談しようか…―
花は手を見る。青紫が広がっていた。今はもう腕にまで伸びている。
―見られたくない。醜くどろどろに崩れていく。そんな姿を誰にも見られたくない―

769 名前:7SEEDS42 7章[sage] 投稿日:2006/07/11(火) 12:37:34 ID:???
花は出ていった。仲間を感染させるわけにいかず、事実も打ち明けられないまま一人で出ていった。
―この病気はどうなるのか。内臓も冒されるのか。どろどろになったまま生き続けるのか―
花は嵐との思い出の地を目指す。初めてデートした場所、横浜へ。
そこでまた焚き火の後を見つける。そしてロビンソン・クルーソー。
ひょっとしたら嵐かも知れない。微かな可能性だけど…
もし嵐が生きているなら、どこまでも探しに行った。歩いても泳いでも探しに行った。
―でも今は会えない。誰よりも嵐に会いたくない―

その頃、残された春のチームは花の書き置きを見つけた。
「彼氏の手がかりを見つけたのでを探しに行きます。藤子ちゃん、相談しなくてごめんね」
一行は途方に暮れる。黙っていくなんて花らしくない。
藤子は気づく。「なぜあたしに名指しで…?」
―そう言えば最近お風呂に誘っても毎回断っていた。生理でもないのに。
何か本も読んでいた。…動いてる本は医学書だ。
…相談したかったんだ。医者志望だから、あたしに相談したかったんだ!―
花の気持ちに気づいた藤子は悔いる。

770 名前:7SEEDS43 7章[sage] 投稿日:2006/07/11(火) 12:38:44 ID:???
横浜からボートを出した花は、波に任せたまま海を漂っていた。
そんな花に鷹とハルが追いつく。二人は花を心配して追いかけてきた。
「近寄らないで!感染するから…気持ち悪いから見ないで」
そう言う花に鷹は微笑む。
「それは病気の症状だ。だから恥ずかしいとか隠そうと思わないで。治す方法を考えよう」

潮風に吹かれて、病気の進行は止まったようだ。
それまではどんどん広がっていたが、今は広がっていない。
鷹が連れてきた犬達は花に近づかないが、子犬は無邪気に近づいてしまう。
しかし親犬がすぐに引き離し海に放り込む。
その様子を見て鷹は気づいた。青紫は岩塩がある辺りには表れなかった。
青紫は雨期の前に増えるけど、いつの間にか消えている。
雨期になると陸は水に沈み海の水が逆流してくる。天気が回復した時には青紫は消えていた。
きっと塩に弱いんだ。

771 名前:7SEEDS44 7章[sage] 投稿日:2006/07/11(火) 12:40:18 ID:???
漂っているうちに、猫のような形の島にたどり着た。
同時に海が荒れ始める。ボートを引き上げる間もなく波が襲ってきた。
三人は必死で高台へ登る。
ボートが波に攫われた。これで島から出られなくなる。
「あたしのせいだ。あたしのせいで…ごめんなさい…」謝る花を鷹が遮る。
「気にしないで下さい。自分で決めて来たんだから。僕は悔いの残らないように行動したい」
「何でそんなに優しくしてくれるんですか…」
「あなたたちにはわからないかもしれない。僕がどれだけ人に会いたかったか。
あの時笑いかけてくれて、ほんとうに嬉しかったんだ…」

ハルは塩を探しに出掛け、鷹も熱の上がった花を心配して海水を汲みに行く。
戻ってきた時、花の姿は消えていた。鷹は慌てて花を探す。
―僕はまた死なせてしまうのか!―

772 名前:7SEEDS45 7章[sage] 投稿日:2006/07/11(火) 12:42:29 ID:???
青紫はもう顔に広がっていた。どうしても止められない。
花は一人で死のうとしていた。
倒れた花に百舌が近寄る。「死にたいなら殺してやる、花」
首を絞められ朦朧とした花の目に、岩に掘られた文字が移った。
「夏のBチーム参上」「石清水ナツ」「牡丹姐さん」そして「青田嵐 花へ」

「死にたくない!」花は嵐が生きていると知り希望を取り戻した。
百舌は去っていった。
その頃、ハルが塩水の水溜まりを見つけた。
花は大量の塩水を使って青紫を治療する。

花は鷹に聞き出す。「東京で会った三人組、嵐だと思うんです」
夏のBチームは九州にいると聞き、花は九州を目指す。
そこにいればいつか合流するだろう。そんな花に、鷹とハルもついてきてくれると言う。
元気を取り戻した花を見てハルは危惧する。
「喜んでるけど、彼氏が今も生きてるかわからないよね」

773 名前:7SEEDS46 7章[sage] 投稿日:2006/07/11(火) 12:43:01 ID:???
その頃、ナツ達3人は東北を目指していた。
降りしきる雨に蝉丸は苛立ち、嵐は暗く沈んでいる。
ナツは嵐を元気づけたいが、どうすればいいのかわからない。

―今まで誰かを励まそうとか優しくしようなんて考えたことなかった。
ママが風邪で辛そうな時も、手伝うのが恥ずかしくて何もしなかった。
あたしは冷たいな。もっと優しくすればよかった―

ナツは必死になって嵐を励ます。
返事がなくても何度も話しかけて気を引き立てようとする。
慣れない気遣いで疲れたナツは、そのまま眠ってしまった。
「気を使わせてる」と苦悩する嵐に蝉丸は笑いかける。
「俺は早く元気になれとは言わないぜ。悩みまくるのも悪くねえ」

774 名前:7SEEDS47 7章[sage] 投稿日:2006/07/11(火) 12:43:44 ID:???
翌日、ナツは蝉丸に相談する。嵐を元気にさせるいいアイデアはないか。
蝉丸の提案でナツは慣れない漫才をする。
照れながら、つまりながら、ネタを忘れながらの人生初めての漫才。
嵐はあまりのつまらなさに呆気にとられる。

「人前で何かをするなんでだめです!歌もだめなんです!」恥ずかしがるナツに、蝉丸はかっこつける。
「じゃあ進歩だろ。恥をかくのも人生だ」「は、恥はかきたくないです」
でも嵐も少し元気が出たようだ。
安心したナツが食事の用意をしようと鍋を洗っていると、手が滑ってしまう。
慌てて追いかけるが川が深くて取りに行けない。蝉丸に頼むが、蝉丸も川に嵌ってしまった。
二人で漫才のようなやりとりをしている横で嵐が笑う。「俺がいなきゃ駄目じゃん」
飛び込んで鍋を拾ってきてくれた。「いろいろごめん!ありがとう」

そして三人は仙台のシェルターを見つける。
そこには物資だけではなく、船があった。

775 名前:7SEEDS48 7章[sage] 投稿日:2006/07/11(火) 12:46:16 ID:???
まとめ
冬チームの生き残り、鷹は春チームと合流する。
鷹は花達と同世代だったが、30代になっていた。時間差に一行は愕然とする。
少女漫画のヒロインなのに、花は青紫に皮膚がくずれる病気に感染する。
病気を苦にした花はチームから抜けた。それを鷹とハルが追う。
横浜から海に出て、なぜかボートで九州にたどり着く。
花の病気は塩で治るとわかり、塩水に浸かって病気を治す。
塩水の水溜まりはハルが見つけた。水が落ちる音で塩水を発見したらしい。
花は猫島で嵐の手がかりも見つけ、夏のBチームに合流するため九州を目指す。
東北を目指した夏Bの三人は船を入手。

現在地:神奈川から九州へ
生存者:全員生存。

補足
藤子ちゃんは男前好きなので、髭を剃った鷹を見て信用した。
鷹は笑いかけてくれた花を守ると誓っている。
ハルは花が好き。

97 名前:7SEEDS 49 8章[sage] 投稿日:2006/08/30(水) 17:13:22 ID:???
ワーグナーが鳴り響くと一日が始まる。
起床の合図と共に一斉に子供達は朝の準備を始める。
食事前はいつもお説教がある。
「君たちは選ばれた子供だ。厳選された精子と卵子から産まれた特別な人間だ。
君たちには国を救う使命がある」
彼らは産まれた時から施設にいた。毎日学習を積み体を鍛えている。
食事以外にも様々な薬を与えられ、強制的に身体機能を強化していた。
劣っている者は容赦なく脱落する。大勢いた仲間達は少しずつ減っていく。
そして17才になった年、最後の7名が選ばれる。

仲良し三人組の女の子、小瑠璃、繭、のばらは未来に行くと誓ってミサンガを作った。
優等生の安居は弟分の茂と一緒に未来に行くと決めている。
しょっちゅう違反を犯して懲罰房にぶち込まれる涼も残っていた。
彼らに家はない。親もいない。帰るところもない。
脱落したらどうなるのかわからない。彼らは未来に行くしかない。

98 名前:7SEEDS 50 8章[sage] 投稿日:2006/08/30(水) 17:14:30 ID:???
13才になる頃、訓練は本格化した。狩猟、格闘技、炭焼き、水質汚染、
気象、土木建築、生態系、農耕など、学ぶ分野は多岐に渡った。
衣類を作り、家畜を飼い、畑を作った。衣食住は自分たちの手で揃えた。
だが学ばない分野もある。経済、機械、コンピュータは学んだ事がなかった。
今の文明は未来には滅びている。不要な知識は与えられなかった。

ある日、涼と安居が衝突した。二人は取っ組み合いの喧嘩になり懲罰房に入れられる。
二人になった時、安居は兼ねてからの疑問を涼にぶつける。
「お前は未来に行きたくないのか?先生に逆らい違反ばかりする。脱落したいのか?」
安居の質問を涼は一笑に付した。
「俺は何十回も懲罰房入ったが残っている。何が基準で選ばれるかわからない。
大人しく真面目な優等生が選ばれると思うか?」
安居はショックを受けた。
―真面目で面倒見が良くて優秀。それでは駄目なのだろうか?―

99 名前:7SEEDS 51 8章[sage] 投稿日:2006/08/30(水) 17:16:07 ID:???
15才になる頃、のばらが脱落した。
彼女は視力が落ちていた。近視の遺伝子は落とされる。
施設を去ったのばらから便りがなく、仲が良かった小瑠璃と繭は寂しそうだ。
授業はますます激しくなった。背後から教官に襲われる。
部屋に毒虫が放たれる。家具が壊され、電気やガスが止まった。

厳しい日々が続く中、安居は花畑であゆを見た。あゆはとても綺麗だ。
しかしつれない。「安居君がそんな事言ったら、またいじめられるわ」
苛めに驚き力を貸そうと言うが断られる。
「先生は苛める側と苛められる側、どっちを残すと思う?」
安居は答えられなかった。

射撃の訓練が始まった。安居は上位に食い込むが途中から撃てなくなる。
的が人に変わったからだ。しかし涼は躊躇なく撃つ。
「人を撃つのか!?」叫ぶ安居に涼は言う。
「ナイフを持った人間は撃っていい。病気の奴も撃っていい」
訓練のトップは涼が獲った。

100 名前:7SEEDS 52 8章[sage] 投稿日:2006/08/30(水) 17:17:46 ID:???
あゆにふられた安居を小瑠璃が茶化して慰めた。小瑠璃は安居が好きだった。
そんな様子を卯浪(教官)が目にとめ、小瑠璃の胸をつかんで罵った。
「こんな貧弱な胸で色気づいてる場合か!お前初潮もまだだろう。
子供が産めない女は未来に行けないからな!」
激怒した安居は卯浪に襲いかかる。

小瑠璃は部屋で泣いていた。
「どうしたら生理になる?セックスすればいい?そうしたら始まる?」
嗚咽する小瑠璃を繭が慰める。
「あたし達はずっと薬を飲まされている。だから身体がおかしいんだよ。
小瑠璃もすぐ始まるから変な事考えちゃだめ。自分の体は自分で大切にしようね」

教官に刃向かった安居は、特殊な懲罰房に入れられていた。
本来は家畜の血や内臓の貯蔵庫だ。
鼻を突く悪臭に耐え、腐った血と内蔵が混じる中で安居は人の手を見つけた。
その手はミサンガをつけていた。のばらがつけていたミサンガだ。
のばらは外の世界に帰ったはずだ。でものばらの手はここにあった。
脱落した仲間はみんなここで腐っていった。安居は悟る。
―俺達に外の世界はない。7人に選ばれない限り生き残る道はない―

101 名前:7SEEDS 53 8章[sage] 投稿日:2006/08/30(水) 17:19:58 ID:???
夜、涼と恋人の虹子は職員室に忍び込み、一つのファイルを見つけた。
7SEEDSプロジェクトと書かれたファイルから幾つかの情報を得る。
人類滅亡は事実であり、自分達は夏チーム候補生で、チームは他にもあると判明する。
教官の名簿もあったが、要についてはどこにも書かれていなかった。
要は不思議な立場だ。教官ではないが子供達を指導している。
教官も要に一目置いている。彼は重要人物らしい。

足音が聞こえた。貴士教官と要だ。
「他のチームは一般から選ぶのか?ここから全部選べばいいんじゃないのか?」
問う貴士教官に要はNOの答えを返す。
「同じ境遇で育った者は一つの原因で絶滅する恐れがある。全体の一部だけ優秀と言うバランスが重要だ。
最終テストでは死人が出るだろう。でも死んだ者は優秀じゃない。生命力が試されるんだ」

懲罰房から出た安居は変わった。常に神経をとぎすませ生き残る術を考え続けた。
安居は人の的を撃つのを躊躇わななくなった。
実習中、激しい船酔いで茂は倒れた。安居は叱咤する。
「本気で頑張れ!脱落したら死ぬぞ!」
「安居は人の的を撃つよね。未来でも人を撃つの?撃たなきゃ未来にいけないなら、僕はいけないよ」
安居は言葉に詰まる。
船の上からは遠くに町灯りが見えた。とても綺麗だ。
―彼らは幸せに暮らしている。でも彼らに未来はない。未来は俺達の上にある―

102 名前:7SEEDS 54 8章[sage] 投稿日:2006/08/30(水) 17:22:18 ID:???
17才になった。最終試験が始まる。
いつ試験が始まるのか、みんな気にしている。
安居は考えていた。前もって通達があると限らない。きっといきなり始まるはずだ。
建物の上階で光る物を見つけた。窓際に水を入れた花びんと木彫りの動物が置いてあった。
放置すれば火事になりかねない。花びんを移動させていると、源五郎と涼もやってきた。
二人とも光に気づき、同じ心配をしたのだ。
それ以来、なぜか涼は食堂に現れなくなった。虹子と二人でバーベキューを続けている。

安居は益々注意深くなる。射撃訓練に使う銃にヒビが入っていた。
ロッククライミングに使うロープが変色していた。食材に毒草が混じっていた。
うかつな者は事故に巻き込まれて脱落していく。
安居は気づいた。涼がバーベキューをしていたのはこのためだ。
食事当番が毒草入りの食事を作るかも知れない。食べる物は自分で調達する方が安全だろう。

深夜、宿舎が火を噴いた。不審を抱いて用心していた安居はすぐに気づく。
慌てて消火器を手に取るが空っぽだ。水道も止まっている。電気もつかない。教官も消えた。
安居は火事を知らせて回る。
パジャマで逃げまどう生徒の中、涼と虹子だけは防寒着に荷物を背負っていた。
安居はやっと気づく。これは最終テストだ。最終テストはもうとっくに始まっていた。

103 名前:7SEEDS 55 8章[sage] 投稿日:2006/08/30(水) 17:24:16 ID:???
安居は小瑠璃と繭に会う。二人は服に着替え荷物も持っていた。
異変を察した繭は着替えて待機していたのだ。安居は二人に教える。
「これは最終テストだ。教官はどこにもいない。
死人もけが人も出る。生死のかかったテストだ」

安居は他の仲間にもこれが最終テストだと教えた。
反応は様々だ。テストに従って行動を始める者、安居についていこうとする者、
怪我をして動けない者、けが人を見捨てられず手当を続ける者。

安居はけが人とともに残ろうとする仲間に言う。
「助けは来ない。教師もこないぞ」
「そんなことないだろ。これだけの災害が起こったんだ。誰か来るさ」
安居は怪我で動けない仲間も手当てする仲間も見捨て、テストが示す方向に歩き出した。
遠くで地響きがした。校舎があった一角が水に飲まれていく。
生き残った仲間はみな飲み込まれただろう。
それでも前に進むしかない。生き残るにはそれしかない。

104 名前:7SEEDS 56 8章[sage] 投稿日:2006/08/30(水) 17:25:30 ID:???
まとめ
遺伝子の段階から選別されて、特殊な環境で育てられた子供達が
7つの枠を掛けて争奪戦を繰り広げる。
幼い頃から薬漬け、鍛錬、教育だけで育ったが、それでも子供達は明るく生きている。
劣っていると見られた者は容赦なく切り捨てられた。
切り捨てられた者達は、生きることを許されず処分された。
17才になった頃、何の前触れもなく最終テストは始まっていく。
事故に見せかけて生徒が殺される。
それが生命力を試す最終テストだった。

補足
・夏Aだけ他チームと異なる選別をされている。
・一部だけ優秀であると生存率が上がるという立案者の考えによる。
・貴士教官が持っていたナイフは花が父親から譲り受けたナイフと似ている。
・作中内の地位が上がると顔が美形化する。