ふたつのスピカ/柳沼行
584 :ふたつのスピカ (1/2) :04/02/03 11:18 ID:???
鴨川アスミはロケット墜落事故で母親を亡くした。
葬式の時、母の遺骨を持って近所の神社へと赴いた。そこで、ロケット事故で死んだ宇宙飛行士・ライオンさんと出会う。
ライオンさんは幽霊で、姿を見られたのはアスミが初めてだったという。
二人は意気投合し、行動を共にするようになる。
アスミに宇宙を語るライオン。次第にライオンの夢はアスミへと受け継がれていく。
アスミは誓った。”ライオンさんを宇宙へ連れて行く”と――。

中学卒業後、アスミは難関を突破して宇宙飛行士養成学校へ入学する。
そこでアスミは生涯初めてライオン以外の友達を得る。
いつも元気なケイ,過去に暗い影をもつ美少女マリカ,金持ちの息子シュウ,そして、由比ヶ浜からアスミを追ってきた府中野。
こうして、アスミは充実した学校生活をスタートさせた。

アスミはその後、ある事情で由比ヶ浜に一時舞い戻る。
そのとき、自宅のパンパンの郵便ポストに一枚の葉書を見つける。
それは、ライオンが死ぬ前に付き合っていて、アスミの小学校の担任でもあった鈴成の結婚式の告知であった。日付は今日――。
その様子を見つめ、涙するライオン。このとき、ライオンは由比ヶ浜を出てアスミと共に東京に出ることを決意する。
鈴成が過去と決別し、新たな道を歩みだした以上、自分がここに縛られている理由は無い。そう思ってのことだった。

585 :ふたつのスピカ (2/2) :04/02/03 11:19 ID:???
その後、色々あるものの順調に訓練を重ねていくアスミたち。
ある日、とてもハードな訓練が幕を開けた。
転がるボールの中で平衡感覚を鍛える訓練かと思いきや、ボールを開けたらそこは深い森の中。
そう、この訓練の真の目的はサバイバル――四日分程度の食料を与えられ、一週間以内に指定のポイントまで辿り着く訓練。
仲間に囲まれ、久しく孤独を味わっていなかったアスミは森で一人涙を流す。
慎重に着実に進むアスミは朝、森全体から立ち昇る煙を見て、皆居るんだと思い気持ちを奮い立たせた。

それと同じ刻、ライオンは由比ヶ浜の森にいた。そこは昔自分の場所だった。
マリカを見たとき、既視感を覚えたのだ。”昔、彼女をこの森で見た気がする”――。
各所を巡り、記憶の糸を手繰り寄せてゆく。そして、自分で作った偽のロケット・オリオン二号を見つける。
苔に隠れて見えなかった文字を見つける。「オリオン2号 まりか らいおんさん」。
昔会ったまりかは、マリカだった。彼女も宇宙を夢見ていたのだ。
彼女は病弱で、明日をも知れぬ体だった。そんなとき、宇宙を夢見るライオン少年と出会った。
さらに下の苔を消すと、まりかの思いがこもった言葉を見つける。
「宇宙へ」――――そう、一言。


ここまで既刊分です。